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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1114597 |
異議申立番号 | 異議2003-70275 |
総通号数 | 65 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-12-18 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-01-29 |
確定日 | 2005-02-02 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3308855号「半導体装置の製造方法」の請求項1ないし3、6ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3308855号の請求項1ないし3、6ないし8に係る特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第3308855号の発明についての出願は、平成9年5月27日の出願であって、平成14年5月17日にその発明についての特許権の設定登録がなされ、その後、雨山範子より特許異議の申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年1月23日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、平成16年8月25日に訂正請求書の手続補正書が提出されたものである。 II.訂正の適否について 1.訂正請求に対する補正の適否について 特許権者は、平成16年8月25日付けの訂正請求書の手続補正書により訂正請求書の「(3)訂正の要旨」における訂正事項d〜fを削除する補正をするものである。この当該訂正請求に対する補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。 2.訂正の内容 上記訂正請求書の手続補正書により特許権者の求める訂正事項は、訂正事項a〜cとなった。 (1)訂正事項a 特許明細書の【請求項1】に記載の「上記接着剤を硬化させる工程」を「上記接合する工程の後に上記接着剤を硬化させる工程」と訂正するとともに、特許明細書の段落【0007】に記載の「接着剤を硬化させるものである。」を「上記接合の後に接着剤を硬化させるものである。」と訂正し、同段落【0067】に記載の「接着剤を硬化させるので」を「上記接合の後に接着剤を硬化させるので」と訂正する。 (2)訂正事項b 特許明細書の【請求項2】に記載の「上記接着剤を硬化させる工程」を「上記接合する工程の後に上記接着剤を硬化させる工程」と訂正するとともに、特許明細書の段落【0008】に記載の「接着剤を硬化させるものである。」を「上記接合の後に接着剤を硬化させるものである。」と訂正し、同段落【0068】に記載の「接着剤を硬化させるので、」を「上記接合の後に接着剤を硬化させるので、」と訂正する。 (3)訂正事項c 特許明細書の【請求項6】に記載の「請求項1ないし請求項5のいずれかに」を「請求項4または請求項5に」と訂正するとともに、特許明細書の段落【0012】に記載の「請求項1ないし請求項5のいずれかに」を「請求項4または請求項5に」と訂正し、同段落【0072】に記載の「請求項1ないし請求項5のいずれかに」を「請求項4または請求項5に」と訂正する。 3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項aは、請求項1に記載の半導体素子と配線基板とを接合する工程の後に接着剤を硬化させる工程がくることを限定したものであって、このような限定は、特許明細書の段落【0020】に記載されたもので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また請求項1の訂正に伴って、段落【0007】と段落【0067】の記載を整合させたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。 (2)訂正事項bは、訂正事項aと同様に、請求項2に記載の半導体素子と配線基板とを接合する工程の後に接着剤を硬化させる工程がくることを限定したものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また請求項2の訂正に伴って、段落【0008】と段落【0068】の記載を整合させたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。 (3)訂正事項cは、請求項6の引用する請求項1〜5を請求項4、5に減縮したもので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また請求項6の訂正に伴って、段落【0012】と段落【0072】の記載を整合させたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。 そして、上記訂正事項a〜cは、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 4.独立特許要件について 請求項9に係る発明は請求項1〜8を引用する発明であって、そのうち請求項1、2は上記のとおり訂正され、又請求項1または2を引用する請求項3も実質的に訂正されたことになっている。そうすると、請求項1〜3を引用する請求項9も訂正されたこととなり、当該請求項9は異議申立の申立てがされていない請求項についての訂正に該当し、しかもこの訂正は特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当するから、当該請求項9に係る発明(以下、「本件発明9」という。)の独立特許要件について次に検討する。 (1)請求項1を引用する本件発明9について (1-1)請求項1を引用する本件発明9(以下、「本件発明9-1」という。)は、訂正明細書の請求項1を引用する請求項9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項9】 接着剤としてフィルム状の熱硬化性接着シートを、Bステージ状態にて配置することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。」 なお、訂正後の請求項1は次のとおりである。 「【請求項1】 複数の電極を有する配線基板上に、上記複数の電極を覆う樹脂にてなる接着剤を配設する工程と、上記複数の電極と相対する複数の突起電極を有する半導体素子と上記配線基板とを上記接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、上記複数の突起電極で上記接着剤の層を突き破り上記複数の電極と上記複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、その後に上記複数の電極と上記複数の突起電極との上記接触箇所に超音波振動を印加し、上記接触箇所に固相拡散にて成る接合部を形成して、上記半導体素子と上記配線基板とを接合する工程と、上記接合する工程の後に上記接着剤を硬化させる工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。」 (1-2)引用刊行物1〜3及びその記載事項 当審において通知した取消理由で引用した刊行物1〜3及びその記載事項は次のとおりのものである。 刊行物1:特開平8-153752号公報(甲第3号証) 刊行物2:「3rd Symposium on ”Microjoin ing and Assembly Technology in Electronics”」(1997.2.6 社団 法人溶接学会)(甲第2号証) 刊行物3:特開平3-24742号公報(甲第1号証) 1)刊行物1の記載事項 1a)「本発明は、LSI等の半導体素子を回路基板上に搭載するフリップチップ実装方法に関するものである。」(段落【0001】) 1b)従来技術として、「図3に従来の方法で半導体素子6を回路基板1上に実装したフリップチップ実装構造の断面図を示す。ここで、7は半導体素子6のパッド上に形成されたバンプ電極であり、回路基板1上の実装用パッド3と接続されている。4は半導体素子6と回路基板1を接続させた状態で固定してしまうための接着剤であり、光硬化性のものや、熱硬化性の樹脂が用いられる。 図3に示す構造のように半導体素子6をフリップチップ実装する方法は、特開平4-82241号公報に示されている。すなわち、回路基板1上の半導体素子6が固定される領域(回路基板1上の実装用パッド3も含む)に接着用樹脂4をスクリーン印刷により塗布する。樹脂の供給方法については、この他にもディスペンサー等により半導体素子6が固定される領域の中央にのみ供給する方法も公知となっている(実装用パッド3には供給しない)。次に、半導体素子6のバンプ電極7と回路基板1上の実装用パッド3とを位置合わせし、半導体素子6を回路基板1上に加圧圧接し硬化する。この時、半導体素子6のバンプ電極7と回路基板1上の実装用パッド3とは、その間に存在していた接着用樹脂4が押し出されて電気的接続が可能となる。」(段落【0004】〜段落【0005】) 1c)発明が解決しようとする課題として、「上述したような従来のフリップチップ実装方法において、その信頼性および歩留まりを高くするためには、半導体素子のバンプ電極と回路基板上の実装用パッドとの接合部周辺のボイド(接着用樹脂の未充填部)の発生有無が重要なファクターになる。 ボイドの発生場所が接合部近辺に生じた場合、接着用樹脂の接着力が接合部で弱くなり熱等のストレスに対してその接合が維持できなくなり、結果的に断線してしまう恐れがある。・・・ 特開平4-82241号公報に示されたような接着用樹脂供給方法では、塗布の際そのエッジ部にボイドを生じるという問題を有している。 また、公知となっている中央にのみ樹脂を供給する方法においても、半導体素子が加圧され接着用樹脂が押し広がるときこのソルダーレジストの溝への流れ込みが悪く、溝内に存在する接合部周辺にボイドが発生するという問題を有している。」(段落【0006】〜段落【0011】) 1d)課題を解決するための手段として、「本発明のフリップチップ実装方法は、回路基板を覆う絶縁膜に形成され底に実装用パッドが配設された溝に封止樹脂aを供給する第1の供給工程と、この第1の供給工程の次に前記封止樹脂aを真空脱泡する脱泡工程と、この脱泡工程の次に前記回路基板上の半導体素子の実装部中央に封止樹脂bを供給する第2の供給工程と、前記半導体素子のバンプと前記実装用パッドとを位置合わせして前記半導体素子を前記回路基板に押し付けて加熱し前記封止樹脂a、bを硬化させる硬化工程とを有する。 本発明のフリップチップ実装方法は、回路基板を覆う絶縁膜に形成され底に実装用パッドが配設された溝に封止樹脂aを供給する第1の供給工程と、この第1の供給工程の次に前記封止樹脂aに超音波振動を与える脱泡工程と、この脱泡工程の次に前記回路基板上の半導体素子の実装部中央に封止樹脂bを供給する第2の供給工程と、前記半導体素子のバンプと前記実装用パッドとを位置合わせして前記半導体素子を前記回路基板に押し付けて加熱し前記樹脂封止a、bを硬化させる硬化工程とを有する。」(段落【0012】〜段落【0013】) 1e)「〔実施例2〕上述の実施例1と共に図1を用いて本発明の実施例2のフリップチップ実装工程を説明する。 本実施例でも未実装の回路基板1は、図1(a)に示すように実装用パッド3がソルダーレジスト等の絶縁膜2の溝9の底に形成されている。なお、回路基板1の材質については特に限定されるものではないが、本実施例ではプリント配線板を使用した。・・・ 本実施例では、まず図1(b)に示されるように、絶縁膜2の溝9に封止樹脂a4を供給する。ここで供給方法として本実施例ではスクリーン印刷工法を用いたが、・・・公知となっている供給方法で行われる。また封止樹脂a4としては、溝9への流し込み性が良好のものであれば特に限定されないが、本実施例ではエポキシ樹脂系の熱硬化性樹脂を使用した。本樹脂は、270℃で30secほどで硬化が完了するものである。 次に図1(c)に示されるように、図1(b)の工程後の回路基板1に超音波による振動を与え、封止樹脂a4に超音波振動を伝えて脱泡を行う。ここで、超音波の周波数は28kHzとし、振動時間は15分とし(・・溝9中の樹脂に包含されたエアーが完全に排出させることを目的としている)。 次に図1(d)に示されるように、図1(b)の工程で供給した樹脂量では接着力が不足するためにその不足分として封止樹脂b8を供給する。・・・また封止樹脂b8としては、・・・本実施例では封止樹脂a4とは異なるエポキシ樹脂系の即硬化性樹脂を使用した。・・・ 最後に半導体素子6のバンプ電極7と回路基板1上の実装用パッド3を位置合わせし、半導体素子6に超音波振動を与え、封止樹脂a、bに超音波振動を伝えながら加圧・加熱する。ここで、振動周波数は28kHz、加圧量はバンプ当たり30g、加熱は素子側270℃、回路基板側80℃、保持時間30secとした。・・・ なお、・・・実施例2で半導体素子6を加圧、加熱して封止樹脂a4および封止樹脂b8を硬化させる時に超音波振動を与える代わりに真空脱泡を行ってもよい。また、これらの時に真空脱泡および超音波振動のいずれを行なわなくても封止樹脂a4の脱泡は行われているので、その分の半導体素子と回路基板との接合状態の向上が得られる。」(段落【0023】〜段落【0030】) 2)刊行物2の記載事項 2a)「半導体デバイスや電子デバイスなどのチップの電極と基板の電極とをバンプを介して接続するフリップチップボンディングは,実装面積が小さく,また,回路の配線長が短いという特徴があり,高密度実装や高速デバイスの実装に適している.・・・金ボールバンプと基板電極の接続には,・・・超音波を併用した熱圧着で,金属間の固相拡散により接合する方式がある.」(9頁左欄2〜19行) 2b)「本研究で用いたプロセスをFig.1に示す.・・・ アルミ電極上にバンプが形成されたチップを,配線面を下向きにした状態でボンディングツールに吸着する.基板はワークステージに固定する.次にアルミ電極と基板電極を位置合わせし,超音波ホーンを鉛直下方に駆動し,加圧を開始する.所定荷重に達したと同時に60KHzの超音波振動を接合部に印加し,接合する.」(10頁左欄10〜右欄2行) 3)刊行物3の記載事項 3a)「本発明の半導体実装構造は回路基板上での半導体の接続パターン部を他の引き回しパターン部より突出させて構成し、半導体を実装する回路基板上に接着剤を塗布し上下から超音波加圧を加えながら加熱し電気的導通を得ると共に半導体への外圧から保護する構成としたことを特徴とする。」(2頁左上欄15行〜右上欄1行) 3b)「第1図(a)、(b)は本発明の実施例における断面図及び平面図である。・・・ 回路基板1上のパターン2より突出したパターン部4を構成した回路基板に突出パターン部4を除く半導体5が接する範囲に接着剤7を塗布する。回路基板1及び半導体5を位置合わせし回路基板1に半導体5をのせ、回路基板1の下面及び半導体5の上面方向から超音波加圧を加えながら熱を加える。 以上の構成により突出パターン部4と半導体電極部6は超音波加圧により金属化合を生じて回路基板1上のパターン2と半導体5は電気的導通を得る。また加圧されたことにより接着剤7は回路基板1と半導体5の接合外周部に流れ出し半導体5の能動面をおおう。また加熱されることにより接着剤7は硬化する。 回路基板1及び半導体5の間に接着剤7が硬化することにより、回路基板1と半導体5は機械的により固定される。回路基板1及び半導体5の接合外周部に流れ出した接着剤7が硬化することにより半導体5の能動面をおおうことにより外部からの応力、環境の変化から半導体5を保護する。」(2頁右上欄3行〜左下欄9行) (1-3)対比・判断 刊行物1には、上記摘記事項1b)に従来技術として、回路基板上の半導体素子が固定される領域(回路基板上の実装用パッドも含む)に接着用樹脂を塗布し、次に、半導体素子のバンプ電極と回路基板上の実装用パッドとを位置合わせし、半導体素子を回路基板上に加圧圧接し硬化する、この時、半導体素子のバンプ電極と回路基板上の実装用パッドとは、その間に存在していた接着用樹脂が押し出されて電気的接続が可能となることが記載されている。そして、上記摘記事項1a)〜1e)を総合すれば、「回路基板を覆う絶縁膜に形成され底に実装用パッドが配設された溝に封止樹脂aを供給する第1の供給工程と、この第1の供給工程の次に前記封止樹脂aに超音波振動を与える脱泡工程と、この脱泡工程の次に前記回路基板上の半導体素子の実装部中央に封止樹脂bを供給する第2の供給工程と、前記半導体素子のバンプと前記実装用パッドとを位置合わせし、半導体素子に超音波振動を与え、樹脂封止樹脂a、bに超音波振動を与えながら加圧・加熱し、前記樹脂封止a、bを硬化させる硬化工程と、その時前記半導体素子を前記回路基板に押し付けるので、その間に存在していた接着用樹脂が押し出されるものである硬化工程とを含むフリップチップ実装方法」が記載されていることになる。 本件発明9-1と刊行物1に記載の発明とを対比する。刊行物1に記載の封止樹脂aを供給する第1の供給工程と、封止樹脂bを供給する第2の供給工程とにより、回路基板上の実装用パッドを覆う封止樹脂を供給する工程を構成しており、刊行物1に記載の「封止樹脂a、b」、「バンプ」は、本件発明9-1の「接着剤」、「突起電極」に相当するから、 両者は、「複数の電極を有する配線基板上に、上記複数の電極を覆う樹脂にてなる接着剤を配設する工程と、上記複数の電極と相対する複数の突起電極を有する半導体素子と上記配線基板とを圧接することにより、上記複数の突起電極で上記接着剤の層を突き破り上記複数の電極と上記複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、上記半導体素子と上記配線基板とを加熱し超音波振動を与え接合する工程とを備えた半導体装置の製造方法」の点で一致するものの、次の点a、bで相違する。 相違点a:本件発明9-1は、半導体素子と配線基板とを上記接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、上記複数の突起電極で上記接着剤の層を突き破り上記複数の電極と上記複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、その後に上記複数の電極と上記複数の突起電極との上記接触箇所に超音波振動を印加し、上記接触箇所に固相拡散にて成る接合部を形成する工程と、上記接合する工程の後に上記接着剤を硬化させる工程とを備えた(引用された請求項1に記載された事項)のに対し、刊行物1に記載の実装方法は、半導体素子のバンプと実装用パッドとを位置合わせし、半導体素子に超音波振動を与え、樹脂封止樹脂a、bに超音波振動を与えながら加圧・加熱し、前記樹脂封止a、bを硬化させる硬化工程であって、その時半導体素子を回路基板に押し付けて、その間に存在していた接着用樹脂が押し出される硬化工程であって、超音波振動によって上記接触箇所に固相拡散を生起させる記載がなく、接合と硬化が同時に行われる点。 相違点b:本件発明9-1の接着剤は、「フィルム状の熱硬化性接着シートを、Bステージ状態にて配置する」(請求項9に記載された事項)のに対し、刊行物1に記載の接着用樹脂aはそのようなものではない点。 そこで、まず上記相違点aについて検討する。 刊行物2には、ボールバンプと基板電極を位置合わせし、所定加重まで加圧してから超音波振動を接合部に印加し熱圧着して固相拡散により接合すること、即ち一般的な超音波振動を併用した熱圧着で固相拡散により接合することは記載されているものの、本件発明9-1のように、接着剤を用いる接合でないから、接着剤の層を突き破ってボールバンプと基板電極を接触させてから、超音波振動により金属間を接合する記載はないし、このような接合方法が周知の技術であるとすることもできない。 また、刊行物3に記載の実装方法は、接着剤を回路基板上の突出パターン部を除く半導体が接する範囲に塗布し、超音波加圧を加えながら熱を加えて、突出パターン部と半導体電極部に金属化合を生じさせ、突出パターン部と半導体電極部に固相拡散させ接合すると同時に接着剤を硬化させるものであって、本件発明9-1のように、接着剤を回路基板上の突出パターン部にも塗布するものではないから、半導体素子と配線基板とを上記接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、接着剤の層を突き破って突出パターン部と半導体電極部を接触させて接合させるものではなく、また超音波加圧の電気的接続と加熱による硬化が同時に起こるもので、接着剤を突出パターン部以外にあらかじめ塗布することを示唆するにすぎない。 そうすると、刊行物1の記載においては接合と硬化が同時に行われており、その接合と硬化を同時に行なう工程を、刊行物2に記載の接着剤を用いない超音波接合方法と、刊行物3に記載の超音波加圧と加熱による電気的接続と硬化を同時に起こす接合方法とを参酌しても、あえて接合工程と硬化工程とに区別して設け、且つその接合工程において、超音波振動によってその接合箇所に固相拡散を生起させる必然性はなく、相違点aなる構成を当業者といえども容易に想到することができるものではない。 そして、本件発明9-1は、上記相違点a、bなる構成により刊行物1〜3の記載からは予測することのできない、即ち接着剤を先に配設することにより、生産性を向上することができ、かつ、接着剤が硬化する温度領域以下で超音波接合により半導体素子と配線基板との接合部を固相拡散にて形成し、その後接着剤を硬化させることにより、半導体素子と配線基板との接合が均一でかつ信頼性の高い半導体装置の製造方法を提供することができ、また接着剤としてフィルム状の熱硬化性接着シートを、Bステージ状態にて配置するので、接着剤の硬化速度が速く、生産性をより一層向上することが可能となる半導体装置の製造方法を提供することができるという明細書記載の顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件発明9-1は、相違点bについて検討するまでもなく、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)請求項2を引用する本件発明9について (2-1)請求項2を引用する本件発明9(以下、「本件発明9-2」という。)は、訂正明細書の請求項2を引用する請求項9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項9】 接着剤としてフィルム状の熱硬化性接着シートを、Bステージ状態にて配置することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。」 なお、訂正後の請求項2は次のとおりである。 「【請求項2】 複数の突起電極を有する配線基板上に、上記複数の突起電極を覆う樹脂にてなる接着剤を配設する工程と、上記複数の突起電極と相対する複数の電極を有する半導体素子と上記配線基板とを上記接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、上記複数の突起電極で上記接着剤の層を突き破り上記複数の電極と上記複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、その後に上記複数の突起電極と上記複数の電極との上記接触箇所に超音波を印加し、上記接触箇所に固相拡散にて成る接合部を形成し、上記半導体素子と上記配線基板とを接合する工程と、上記接合する行程の後に上記接着剤を硬化させる工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。」 (2-2)対比・判断 本件発明9-2は、本件発明9-1の「電極を有する配線基板」、「突起電極を有する半導体素子」に替えて、「突起電極を有する配線基板」、「電極を有する半導体素子」としたものである。 そこで、本件発明9-2と刊行物1に記載の発明とを対比すると、本件発明9-2は、上記本件発明9-1と刊行物1に記載の発明との相違点a、bの他に、「突起電極を有する配線基板」、「電極を有する半導体素子」としているのに対し、刊行物1に記載の回路基板上には実装用パッドを設け、半導体素子にはバンプ電極を設けている点cで相違する。 しかしながら、上記相違点aについては、上記(1-3)において説示したとおり、当業者が容易に想到することができない以上、上記相違点b、cについて検討するまでもなく、本件発明9-2は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)請求項3を引用する本件発明9について (3-1)請求項3を引用する本件発明9(以下、「本件発明9-3」という。)は、訂正明細書の請求項3を引用する請求項9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項9】 接着剤としてフィルム状の熱硬化性接着シートを、Bステージ状態にて配置することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。」 なお、請求項3は次のとおりである。 「【請求項3】 請求項1または請求項2において、複数の突起電極の表面を金またはアルミにて形成し、上記複数の突起電極の表面が金にて成る場合には、表面が金またはアルミにて成る複数の電極を形成し、また、上記複数の突起電極の表面がアルミにて成る場合には、表面が金にて成る複数の電極を形成し、接合部の固相拡散を、金-アルミ固相拡散または金-金固相拡散とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。」 (3-2)対比・判断 本件発明9-3は、本件発明9-1、本件発明9-2の「突起電極」について、「複数の突起電極の表面を金またはアルミにて形成し、上記複数の突起電極の表面が金にて成る場合には、表面が金またはアルミにて成る複数の電極を形成し、また、上記複数の突起電極の表面がアルミにて成る場合には、表面が金にて成る複数の電極を形成し、接合部の固相拡散を、金-アルミ固相拡散または金-金固相拡散と」したもので、本件発明9-1、本件発明9-2の構成をすべて引用する発明である。 そうすると、本件発明9-1、本件発明9-2が刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができない以上、同様に本件発明9-3は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件発明9は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 5.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.特許異議申立について 1.特許異議申立の概要 特許異議申立人は、証拠として下記の甲第1〜3号証を提出して、訂正前の請求項1〜3、6〜8に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1〜3、6〜8に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、これを取り消すべき旨主張する。 記 甲第1号証:特開平3-24742号公報 甲第2号証:「3rd Symposium on ”Microjoi ning and Assembly Technolog y in Electronics”」(1997.2.6 社団法人溶接学会) 甲第3号証:特開平8-153752号公報 2.本件発明 本件特許第3308855号の請求項1〜9に係る発明は、平成16年1月23日付の訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、異議申立てがされている請求項1〜3は次のとおりである(なお、異議申立てがされている請求項6〜8については、異議申立てがされていない請求項4または5のみを引用することとなっているので、審理することができないこととなった。)。 「【請求項1】 複数の電極を有する配線基板上に、上記複数の電極を覆う樹脂にてなる接着剤を配設する工程と、上記複数の電極と相対する複数の突起電極を有する半導体素子と上記配線基板とを上記接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、上記複数の突起電極で上記接着剤の層を突き破り上記複数の電極と上記複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、その後に上記複数の電極と上記複数の突起電極との上記接触箇所に超音波振動を印加し、上記接触箇所に固相拡散にて成る接合部を形成して、上記半導体素子と上記配線基板とを接合する工程と、上記接合する工程の後に上記接着剤を硬化させる工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。 【請求項2】 複数の突起電極を有する配線基板上に、上記複数の突起電極を覆う樹脂にてなる接着剤を配設する工程と、上記複数の突起電極と相対する複数の電極を有する半導体素子と上記配線基板とを上記接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、上記複数の突起電極で上記接着剤の層を突き破り上記複数の電極と上記複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、その後に上記複数の突起電極と上記複数の電極との上記接触箇所に超音波を印加し、上記接触箇所に固相拡散にて成る接合部を形成し、上記半導体素子と上記配線基板とを接合する工程と、上記接合する行程の後に上記接着剤を硬化させる工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。 【請求項3】 請求項1または請求項2において、複数の突起電極の表面を金またはアルミにて形成し、上記複数の突起電極の表面が金にて成る場合には、表面が金またはアルミにて成る複数の電極を形成し、また、上記複数の突起電極の表面がアルミにて成る場合には、表面が金にて成る複数の電極を形成し、接合部の固相拡散を、金-アルミ固相拡散または金-金固相拡散とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。」 3.引用刊行物及びその記載事項 当審において通知した取消理由で引用した刊行物1〜3及びその記載事項は、上記II.4.(1-2)に示すとおりである。 4.対比・判断 (1)請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)について 本件発明1は、請求項9において引用された請求項1に係る発明であって、本件発明1と刊行物1に記載の発明との相違点は、上記II.4.(1-3)において説示したとおり、相違点aに相当するものである。そして、相違点aについては上記において説示したとおり当業者が容易に想到することができない以上、本件発明1は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)について 本件発明2は、請求項9において引用された請求項2に係る発明であって、本件発明2と刊行物1に記載の発明との相違点は、上記II.4.(2-2)において説示したとおり、相違点a、cに相当するものである。そして、相違点aについては上記において説示したとおり当業者が容易に想到することができない以上、本件発明2は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)請求項3に係る発明(以下、「本件発明3」という。)について 本件発明3は、本件発明1、2の構成をすべて引用しさらに構成を限定する発明である。 そうすると、本件発明1、2が刊行物1〜3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができない以上、同じく本件発明3は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5.むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1〜3及び本件請求項6〜8に係る発明ついての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1〜3及び本件請求項6〜8に係る発明ついての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 半導体装置の製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 複数の電極を有する配線基板上に、上記複数の電極を覆う樹脂にてなる接着剤を配設する工程と、上記複数の電極と相対する複数の突起電極を有する半導体素子と上記配線基板とを上記接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、上記複数の突起電極で上記接着剤の層を突き破り上記複数の電極と上記複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、その後に上記複数の電極と上記複数の突起電極との上記接触箇所に超音波振動を印加し、上記接触箇所に固相拡散にて成る接合部を形成して、上記半導体素子と上記配線基板とを接合する工程と、上記接合する工程の後に上記接着剤を硬化させる工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。 【請求項2】 複数の突起電極を有する配線基板上に、上記複数の突起電極を覆う樹脂にてなる接着剤を配設する工程と、上記複数の突起電極と相対する複数の電極を有する半導体素子と上記配線基板とを上記接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、上記複数の突起電極で上記接着剤の層を突き破り上記複数の電極と上記複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、その後に上記複数の突起電極と上記複数の電極との上記接触箇所に超音波振動を印加し、上記接触箇所に固相拡散にて成る接合部を形成して、上記半導体素子と上記配線基板とを接合する工程と、上記接合する工程の後に上記接着剤を硬化させる工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。 【請求項3】 請求項1または請求項2において、複数の突起電極の表面を金またはアルミにて形成し、上記複数の突起電極の表面が金にて成る場合には、表面が金またはアルミにて成る複数の電極を形成し、また、上記複数の突起電極の表面がアルミにて成る場合には、表面が金にて成る複数の電極を形成し、接合部の固相拡散を、金-アルミ固相拡散または金-金固相拡散とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。 【請求項4】 配線基板上に形成された複数の電極上にはんだをそれぞれ形成する工程と、上記複数の電極およびはんだを覆う樹脂にてなる接着剤を配設する工程と、複数の突起電極を有する半導体素子および上記配線基板を上記はんだの融点温度以下の上記接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、上記複数の突起電極で上記接着剤の層を突き破り上記はんだと上記複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、その後に上記はんだと上記突起電極との上記接触箇所に超音波振動を印加し、上記接触箇所の上記はんだ表面に生じている酸化膜を除去する工程と、上記はんだが上記はんだの融点温度以上と成るように加熱し、上記複数の電極と上記複数の突起電極とを上記はんだを介してそれぞれ接合する工程と、上記はんだの融点温度以下にて上記接着剤を硬化させる工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。 【請求項5】 半導体素子上に形成された複数の突起電極上にはんだをそれぞれ形成する工程と、配線基板上に形成された複数の電極を覆う樹脂にてなる接着剤を配設する工程と、上記半導体素子および上記配線基板を上記はんだの融点温度以下の上記接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、上記複数の突起電極で上記接着剤の層を突き破り上記複数の電極と上記はんだとを接触させ、その後に上記電極と上記はんだとの上記接触箇所に超音波振動を印加し、上記接触箇所の上記はんだ表面に生じている酸化膜をそれぞれ除去する工程と、上記はんだが上記はんだの融点温度以上と成るように加熱し、上記複数の電極と上記複数の突起電極とを上記はんだを介して接合する工程と、上記はんだの融点温度以下にて上記接着剤を硬化させる工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。 【請求項6】 複数の突起電極が先端に向かうにしたがって、断面が小さくなるように形成されたものを用いることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の半導体装置の製造方法。 【請求項7】 複数の突起電極の先端形状が凸曲面形状にて形成されたものを用いることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。 【請求項8】 複数の突起電極が階段形状に形成されたものを用いることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。 【請求項9】 接着剤としてフィルム状の熱硬化性接着シートを、Bステージ状態にて配置すること特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明は、電極を有する半導体素子を配線基板に接続して構成される半導体装置の製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 配線基板上に半導体素子を搭載した半導体装置の製造においては、半導体素子の高密度実装の要求が年々高まっており、その方法として、半導体素子の電極と配線基板の電極とを直に接続するフリップチップ接続方法が用いられている。 【0003】 図10は例えば3rd Symposium on Microjoining and Assembly Technology in Electronics,Feb.6-7,1997,Yokohama,pp.9-14,1997.に示された従来の超音波併用熱圧着によるフリップチップボンディング方法を示した断面図である。次に、図に基づいてフリップチップボンディング方法について説明する。まず、半導体素子1上に形成されている電極パッド1a上にもうけられた金にて成る突起電極2と、配線基板3上に形成された金にて成る電極4との位置合わせを行う(図10(a))。 【0004】 次に、半導体素子1を配線基板3に熱圧着して超音波振動5を印加する。そして、突起電極2と電極4との界面にて、熱圧着による金-金固相拡散が生じ接合部6が形成される。そして、突起電極2と電極4とは接合されることとなる(図10(b))。次に、ディスペンサ55により、半導体素子1と配線基板3との隙間に接着剤7を注入し硬化させる(図10(c))。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 従来の半導体装置の製造方法は以上のように行われているので、半導体素子1と配線基板3との微少な隙間(通常数十μm程度の間隔となる)に、接着剤7を注入する必要があるため、この注入にかなりの時間を要する。また、この注入時に接着剤7にボイドを巻き込むという可能性があり、生産性が悪くなるという問題点があった。 【0006】 この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、生産性よく、半導体素子と配線基板との接合を安定して行うことができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】 この発明に係る請求項1の半導体装置の製造方法は、複数の電極を有する配線基板上に、複数の電極を覆う樹脂にてなる接着剤を配設し、複数の電極と相対する複数の突起電極を有する半導体素子と配線基板とを接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、複数の突起電極で接着剤の層を突き破り複数の電極と複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、その後に複数の電極と複数の突起電極との接触箇所に超音波振動を印加し、接触箇所に固相拡散にて成る接合部を形成して、半導体素子と配線基板とを接合し、上記接合の後に接着剤を硬化させるものである。 【0008】 また、この発明に係る請求項2の半導体装置の製造方法は、複数の突起電極を有する配線基板上に、複数の突起電極を覆う樹脂にてなる接着剤を配設し、複数の突起電極と相対する複数の電極を有する半導体素子と配線基板とを接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、複数の突起電極で接着剤の層を突き破り複数の電極と複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、その後に複数の突起電極と複数の電極との接触箇所に超音波振動を印加し、接触箇所に固相拡散にて成る接合部を形成して、半導体素子と配線基板とを接合し、上記接合の後に接着剤を硬化させるものである。 【0009】 また、この発明に係る請求項3の半導体装置の製造方法は、請求項1または請求項2において、複数の突起電極の表面を金またはアルミにて形成し、複数の突起電極の表面が金にて成る場合には、表面が金またはアルミにて成る複数の電極を形成し、また、複数の突起電極の表面がアルミにて成る場合には、表面が金にて成る複数の電極を形成し、接合部の固相拡散を、金-アルミ固相拡散または金-金固相拡散とするものである。 【0010】 また、この発明に係る請求項4の半導体装置の製造方法は、配線基板上に形成された複数の電極上にはんだをそれぞれ形成し、複数の電極およびはんだを覆う樹脂にてなる接着剤を配設し、複数の突起電極を有する半導体素子および配線基板をはんだの融点温度以下の接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、複数の突起電極で接着剤の層を突き破りはんだと複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、その後にはんだと突起電極との接触箇所に超音波振動を印加し、接触箇所のはんだ表面に生じている酸化膜を除去し、はんだがはんだの融点温度以上と成るように加熱し、複数の電極と複数の突起電極とをはんだを介してそれぞれ接合し、はんだの融点温度以下にて接着剤を硬化させるものである。 【0011】 また、この発明に係る請求項5の半導体装置の製造方法は、半導体素子上に形成された複数の突起電極上にはんだをそれぞれ形成し、配線基板上に形成された複数の電極を覆う樹脂にてなる接着剤を配設し、半導体素子および配線基板をはんだの融点温度以下の接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、複数の突起電極で接着剤の層を突き破り複数の電極とはんだとを接触させ、その後に電極とはんだとの接触箇所に超音波振動を印加し、接触箇所のはんだ表面に生じている酸化膜をそれぞれ除去し、はんだがはんだの融点温度以上と成るように加熱し、複数の電極と複数の突起電極とをはんだを介して接合し、はんだの融点温度以下にて接着剤を硬化させるものである。 【0012】 また、この発明に係る請求項6の半導体装置の製造方法は、請求項4または請求項5において、複数の突起電極が先端に向かうにしたがって、断面が小さくなるように形成されたものを用いるものである。 【0013】 また、この発明に係る請求項7の半導体装置の製造方法は、請求項6において、複数の突起電極の先端形状が凸曲面形状にて形成されたものを用いるものである。 【0014】 また、この発明に係る請求項8の半導体装置の製造方法は、請求項6において、複数の突起電極が階段形状に形成されたものを用いるものである。 【0015】 また、この発明に係る請求項9の半導体装置の製造方法は、請求項1ないし請求項8のいずれかにおいて、接着剤としてフィルム状の熱硬化性接着シートを、Bステージ状態にて配置するものである。 【0016】 【発明の実施の形態】 実施の形態1. 以下、この発明の実施の形態を図について説明する。図1はこの発明の実施の形態1による半導体装置の製造方法を示す断面図である。図において、8は半導体素子、8aはこの半導体素子8上に形成された電極パッド、9はこの電極パッド8a上に形成され、金にて成る突起電極で、例えばボールボンダまたはめっきなどにて容易に形成することができる。また、ニッケルの表面に金メッキを施したものなどで形成することもできる。 【0017】 10は配線基板で、例えばアルミナ・ガラスセラミックス等にて形成することができる。11はこの配線基板10上に形成され、金にて成る電極、12は熱硬化型の例えばエポキシ系の樹脂にて成る接着剤、12aは硬化後の接着剤、13は突起電極9と電極11との界面に金-金固相拡散にて形成される接合部、14は超音波振動である。 【0018】 次に、上記のように形成された実施の形態1の半導体装置の製造方法について説明する。まず、配線基板10上の電極11を覆うように接着剤12を塗布する(図1(a))。次に、半導体素子8を120℃、および、配線基板10を100℃にそれぞれ加熱する。この加熱は、接着剤12の粘度を所望の値とするためのもので、適宜設定すればよい。そしてこの状態にて、突起電極9と電極11との位置合わせを行い、半導体素子8を配線基板10上から押し当てる。すると、突起電極9が接着剤12の層を突き破り、突起電極9と電極11との接触が行なわれる(図1(b))。 【0019】 次に、この状態にて半導体素子8に超音波振動14を印加する。この超音波振動14の印加時の条件としては、超音波振動14は、例えば1つの突起電極9あたり0.1〜0.8Wのパワーにて、例えば数十msec程度の時間の印加にて行われる。またその際の、1つの突起電極9の1つの電極11に対する加圧力は、例えば25〜200gにて、また、温度としては80℃以上、接着剤12の硬化による支障が生じない程度の温度の例えば220℃以下にて行われる。 【0020】 このような条件にて、超音波振動14の印加が行われると、突起電極9の金と電極11の金とが反応し、金-金固相拡散を生じさせることができ、突起電極9と電極11との界面に接合部13が形成される(図1(c))。次に、半導体素子8の加熱温度を接着剤12の硬化温度まで上昇させるか、あるいは、半導体素子8の接合された配線基板10を全体的に加熱装置内に入れ、接着剤12の硬化温度まで加熱することにより硬化させて接着剤12aとする(図1(d))。 【0021】 上記のように行われた実施の形態1の半導体装置の製造方法によれば、配線基板10上に接着剤12を塗布した後に、半導体素子8と配線基板10との接続を行うようにしているので、生産性よく半導体装置を製造することができる。また、突起電極9と電極11とは金-金固相拡散により、接合部13を形成しているため、信頼性の高い接続を得ることができる。 【0022】 実施の形態2. 上記実施の形態1においては、配線基板10上に接着剤12を塗布した状態にて行う場合、突起電極9が接着剤12の層を突き破り、突起電極9と電極11とを接触させる必要がある。この際、突起電極9の幅を同一幅にて行うと、応力が分散してしまい、接着剤12の層を確実に突き破ることは非常に困難であると考えられる。よって、以下の実施の形態において、このことを解決するための例について説明する。 【0023】 図2はこの発明の実施の形態2による半導体装置の製造方法を示す断面図である。図において、15は半導体素子、15aはこの半導体素子15上に形成された電極パッド、16はこの電極パッド15a上に形成され、金にて成り、かつ、凸曲面形状にて成る突起電極で、例えばボールボンダまたはめっきなどにて容易に形成することができる。また、ニッケルの表面に金メッキを施したものなどで形成することもできる。そして、先端に向かうにしたがって、断面が小さくなるように形成されている。 【0024】 この、凸曲面形状の形成方法を図3を用いて説明する。まず、半導体素子15に複数の突起電極16aを形成した後、一旦、突起電極16aを硬質な平坦面に押し付ける工程を行って、複数の突起電極16aの高さを揃える。そして、図3に示すように、突起電極16aを有する半導体素子15を、弾性体22上に形成した金属膜23に押し付ける。このことにより、凸曲面形状を有する突起電極16を形成することができる。これは、弾性体に平板を押し付けると、平板の中心部から端面方向に行くにつれて応力が大きくなり、端面部には応力集中領域が生じる原理を利用している。 【0025】 17は配線基板で、例えばアルミナ・ガラスセラミックス等にて形成することができる。18はこの配線基板17上に形成され、表面が金にて成る電極、19は熱硬化型の例えばエポキシ系の樹脂にて成る接着剤、19aは硬化後の接着剤、20は突起電極16と電極18との界面に金-金固相拡散にて形成される接合部、21は超音波振動である。 【0026】 次に、上記のように形成された実施の形態2の半導体装置の製造方法について説明する。まず、上記実施の形態1と同様に、配線基板17上の電極18を覆うように接着剤19を塗布する(図2(a))。次に、半導体素子15を120℃、および、配線基板17を100℃にそれぞれ加熱する。この加熱は、接着剤19の粘度が所望の値と成るように設定すればよい。そしてこの状態にて、突起電極16と電極18との位置合わせを行い、半導体素子15を配線基板17上からに押し当てる。すると、突起電極16が接着剤19の層を突き破り、突起電極16と電極18との接触が行なわれる(図2(b))。 【0027】 次に、この状態にて半導体素子15に超音波振動21を印加し、突起電極16と電極18との接触箇所に超音波振動21が印加される。この超音波振動21の印加時の条件としては、超音波振動21は、例えば1つの突起電極16あたり0.1〜0.8Wのパワーにて、例えば数十msec程度の時間の印加にて行われる。またその際の、1つの突起電極16の1つの電極18に対する加圧力は、例えば25〜200gにて、また、温度としては80℃以上、接着剤19の硬化による支障が生じない程度の温度の例えば220℃以下にて行われる。 【0028】 このような条件にて、超音波振動21の印加が行われると、突起電極16の表面の金と電極18の表面の金とが反応し、金-金固相拡散を生じさせることができ、突起電極16と電極18との界面に接合部20が形成される。(図2(c))。次に、半導体素子16の加熱温度を接着剤19の硬化温度まで上昇させるか、あるいは、半導体素子16の接合された配線基板17を全体的に加熱装置内に入れ、接着剤19の硬化温度まで加熱することにより硬化させて、接着剤19aとする(図2(d))。 【0029】 上記のように行われた実施の形態2の半導体装置の製造方法によれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏することはもちろんのこと、半導体素子15を押しつける際に、突起電極16が凸曲面形状にて形成されているため、この凸曲面形状の先端部分に応力が集中する。よって、接着剤19の層を突き破り易く、かつ、接触後の超音波振動21の印加の際には、この接触部分の接着剤19をさらに除去し、突起電極16と電極18との接合が確実となる。よって、さらに信頼性の高い半導体装置を得ることができる。 【0030】 尚、上記各実施の形態においては、突起電極と電極とを金にて形成し、金-金固相拡散を生じるようにしたが、これに限られることはなく、金属同士であればよく、例えば、突起電極を金、電極をアルミ、または、突起電極をアルミ、電極を金にて形成し、上記各実施の形態と同様の半導体装置の製造方法を行うようにすれば、突起電極と電極との界面に、金-アルミ固相拡散が生じ、金-アルミ固相拡散にて成る接合部を形成することができる。 【0031】 実施の形態3. 図4はこの発明の実施の形態3による半導体装置の製造方法を示す断面図である。図において、24は半導体素子、24aはこの半導体素子24上に形成された電極パッド、25はこの電極パッド24a上に形成された凸曲面形状にて成る突起電極で、先端に向かうにしたがって、断面が小さくなるように形成されている。凸曲面形状の形成方法は、上記実施の形態2にて説明した方法と同様の方法にて形成することができる為ここでは省略する。 【0032】 26は配線基板で、例えばアルミナ・ガラスセラミックスまたはプリント基板等の樹脂基板等にて形成することができる。27はこの配線基板26上に形成された電極、28は熱硬化型の例えばエポキシ系の樹脂にて成る接着剤、28aは硬化後の接着剤、29ははんだ、29aはこのはんだ29表面に形成された酸化膜、30は超音波振動である。 【0033】 そして、突起電極25の材料は、はんだ29に例えば鉛-錫を用いる場合は、ニッケル、銅、金メッキを施したニッケルまたは銅等にて形成することができる。また、はんだ29に例えば鉛-錫-インジウムを用いる場合は、ニッケル、銅、金メッキを施したニッケルまたは銅、金等にて形成することができる。ここでは、はんだ29は錫が63%、鉛が37%に成る共晶はんだを用いることとする。このはんだ29の融点温度は183℃である。 【0034】 次に、上記のように形成された実施の形態3の半導体装置の製造方法について説明する。まず、配線基板26の電極27上面にはんだ29を、例えばメッキ法、またはマスクを用いてはんだペーストを電極27上に供給した後にリフローを行う方法などにて形成する。そして形成後のはんだ29の状態は硬化状態にあり、表面には空気酸化による酸化膜29aが生じている。次に、電極27およびはんだ29を覆うように接着剤28を塗布する(図4(a))。 【0035】 次に、配線基板26を90℃ないし130℃、および半導体素子24を150℃程度にそれぞれに加熱する。この加熱は、はんだ29の溶融温度以下で、接着剤28の粘度が所望の値と成るように設定すればよい。そしてこの状態にて、突起電極25と電極27との位置合わせを行い、半導体素子24を配線基板26上からに押し当て、突起電極25が接着剤28の層を突き破り、突起電極25とはんだ29との接触が行なわれる(図4(b))。 【0036】 次に、半導体素子24に超音波振動30を印加して、突起電極25とはんだ29との接触箇所に超音波振動30が印加される。この超音波振動30の印加時の条件としては、超音波振動30は、例えば1つの突起電極25あたり0.1〜0.8Wのパワーにて、例えば数十msec程度の時間の印加にて行われる。またその際の、1つの突起電極25の1つのはんだ29に対する加圧力は、例えば25〜200gにて、また、温度としては80℃以上、はんだ29の融点温度以下にて行われる。 【0037】 このような条件にて、超音波振動30の印加が行われると、突起電極25とはんだ29とが擦り合わさり、はんだ29の表面に生じていた酸化膜29aがはがれる。次に、はんだ29が融点温度以上の例えば183℃以上と成るように、半導体素子24を加熱する。そして、はんだ29を溶融させ、突起電極25と電極27とがはんだ29を介して接合させる(図4(c))。 【0038】 次に、半導体素子24を冷却し、はんだ29を硬化させる。次に、半導体素子24を加熱するか、あるいは、半導体素子24の接合された配線基板26を全体的に加熱装置内に入れ、はんだ29の融点温度以下にて、接着剤28の硬化可能な温度まで加熱することにより硬化させて、接着剤28aとする(図4(d))。 【0039】 上記のように行われた実施の形態3の半導体装置の製造方法によれば、配線基板26上に接着剤28を塗布した後に、半導体素子24と配線基板26との接続を行うようにしているので、生産性よく半導体装置を製造することができる。また、半導体素子24を押しつける際に、突起電極25が凸曲面形状にて形成されているため、この凸曲面形状の先端部分に応力が集中する。よって、接着剤28の層を突き破り易くなると同時に、はんだ29の表面に生じた酸化膜29aを効率良く除去することができる。 【0040】 また、このように、突起電極25と電極27とをはんだ29を介して接合できるため、配線基板26の電極27の高さにばらつきが生じている場合、はんだ29の高さ分、突起電極25と電極27との接合に余裕が生じるため、突起電極25と電極27と接合がさらに確実となり、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。 【0041】 実施の形態4. 図5はこの発明の実施の形態4による半導体装置の製造方法を示す断面図である。図において、31は半導体素子、31aはこの半導体素子31上に形成された電極パッド、32はこの電極パッド31a上に形成された凸曲面形状にて成る突起電極で、先端に向かうにしたがって、断面が小さくなるように形成されている。凸曲面形状の形成方法は、上記各実施の形態にて説明した方法と同様の方法にて形成することができる為ここでは省略する。 【0042】 33は配線基板で、例えばアルミナ・ガラスセラミックスまたはプリント基板等の樹脂基板等にて形成することができる。34はこの配線基板33上に形成された電極、35は熱硬化型の例えばエポキシ系の樹脂にて成る接着剤、35aは硬化後の接着剤、36ははんだ、36aはこのはんだ36表面に形成された酸化膜、37は超音波振動、38ははんだペースト39が入っているトレーである。はんだペースト39とははんだの粒が溶剤に分散しているようなものである。 【0043】 そして、突起電極32の材料は、はんだ36が例えば鉛-錫にて形成される場合は、ニッケル、銅、金メッキを施したニッケルまたは銅等にて形成することができる。また、はんだ36が例えば鉛-錫-インジウムにて形成される場合は、ニッケル、銅、金メッキを施したニッケルまたは銅、金等にて形成することができる。ここでは、はんだ36は錫が63%、鉛が37%に成る共晶はんだを用いることとする。このはんだ36の融点温度は183℃である。 【0044】 次に、上記のように形成された実施の形態4の半導体装置の製造方法について説明する。まず、半導体素子31の突起電極32の先端を、トレー38内のはんだペースト39に押しつける(図5(a))。そして、はんだペースト39を突起電極32の先端に付着させた後、半導体素子31を引き上げる。 【0045】 そして、はんだ36が融点温度以上の例えば183℃以上となるように、半導体素子31を加熱し、はんだペースト39内の溶剤を蒸発させ、さらに複数の粒状のはんだが一塊となるようした後、半導体素子31を冷却して硬化させ、はんだ36とする(図5(b))。次に、配線基板33上の電極34を覆うように接着剤35を塗布する。 【0046】 次に、配線基板33を90℃ないし130℃、および、半導体素子31を150℃程度にそれぞれ加熱する。この加熱は、はんだ36の溶融温度以下で、接着剤35の粘度が所望の値と成るように設定すればよい。そしてこの状態にて、突起電極32と電極34との位置合わせを行い、半導体素子31を配線基板33上からに押し当て、突起電極32が接着剤35の層を突き破り、はんだ36と電極34との接触が行なわれる(図5(c))。 【0047】 次に、半導体素子31に超音波振動37を印加し、突起電極32とはんだ36との接触箇所に超音波振動37が印加される。この超音波振動37の印加時の条件としては、超音波振動37は、例えば1つの突起電極32あたり0.1〜0.8Wのパワーにて、例えば数十msec程度の時間の印加にて行われる。またその際の、1つの突起電極32の1つのはんだ36に対する加圧力は、例えば25〜200gにて、また、温度としては80℃以上、はんだ29の融点温度以下にて行われる。 【0048】 このような条件にて、超音波振動37の印加が行われると、はんだ36と電極34とが擦り合わさり、はんだ36の表面に生じていた酸化膜36aがはがれる。次に、はんだ36が融点温度以上の例えば183℃以上と成るように、半導体素子31を加熱する。そして、はんだ36を溶融させ、突起電極32と電極34とがはんだ36を介して接合される(図5(e))。 【0049】 次に、半導体素子31を冷却し、はんだ36を硬化させる。次に、半導体素子31を加熱するか、あるいは、半導体素子31の接合された配線基板33を全体的に加熱装置内に入れ、はんだ36の融点温度以下にて、接着剤35の硬化可能な温度まで加熱することにより硬化させて、接着剤35aとする(図4(d))。 【0050】 上記のように行われた実施の形態4の半導体装置の製造方法によれば、上記実施の形態3と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、半導体素子31の突起電極32の先端にはんだ36を形成するようにしたので、配線基板33の内、この半導体素子1と接合する箇所のみにて、このはんだ36が形成されることとなる。よって、配線基板33の他の箇所、例えば抵抗などの素子を接続する箇所においては、上記使用したはんだ36とは別のはんだにて接続することができる。 【0051】 これは、半導体素子31の接続に使用されるはんだ36は一般的に高価ものであり、このはんだ36を半導体素子31の接続以外の他の箇所の接合に使用せず、他の箇所の接続は安価なはんだを用いるようにし、半導体装置のコストが上昇するのを防ぐ。 【0052】 実施の形態5. 上記各実施の形態において、突起電極の先端を凸曲面形状にする事により、突起電極の先端に向かうにしたがって、断面が小さくなるように形成する例を示したが、これに限られることはなく、突起電極を階段形状に形成することにより、突起電極の先端に向かうにしたがって、断面が小さくなるように形成してもよい。 【0053】 この様に形成すれば、半導体素子と配線基板とを押しつける際に、突起電極の先端の幅の小さい箇所が、上記実施の形態にて示した凸曲面形状の先端部分と同様に、応力が集中する。よって、上記各実施の形態とそれぞれ同様の効果を奏することができる。 【0054】 以下、突起電極が階段形状にて形成された半導体装置の例を図に示す。図6および図7は突起電極が階段形状にて形成された半導体装置の構成を示す断面図である。図において、40は半導体素子、40aはこの半導体素子40上に形成された電極パッド、41はこの電極パッド40a上に形成された階段形状にて成る突起電極で、階段形状の形成方法は、例えば、金ワイヤを用いたボールボンダにより形成することができる。直径25μmの金ワイヤを用いると、下段の部分は直径75μm程度に、また、上段の部分は直径25μmにて形成することが可能である。 【0055】 42は配線基板、43はこの配線基板42上に形成された電極、44は熱硬化型の例えばエポキシ系の樹脂にて成る硬化後の接着剤、45は突起電極41と電極43との界面に金-金固相拡散にて形成される接合部、46ははんだである。そして、各図にて示すように、突起電極41は先端に向かうにしたがって、断面が小さくなるように形成されている。 【0056】 実施の形態6. 上記各実施の形態では半導体素子側に突起電極を形成する例を示したが、これに限られることはなく、配線基板側に突起電極を形成するようにしてもよい。以下、配線基板側に突起電極を形成する場合の例について説明する。 【0057】 図8はこの発明の実施の形態6による半導体装置の製造方法を示す断面図である。図において、47は半導体素子、47aはこの半導体素子47上に形成され、アルミにて成る電極としての電極パッド、48は配線基板で、例えばアルミナ・ガラスセラミックス等にて形成することができる。49はこの配線基板48上に形成された電極である。 【0058】 50は電極49上に形成され、表面が金にて成り、かつ、凸曲面形状にて成る突起電極で、例えば金または銅の突起部に金のメッキを施して形成することができ、先端に向かうにしたがって、断面が小さくなるように形成されている。この、凸曲面形状の形成方法を上記各実施の形態と同様に形成することができるため説明を省略する。 【0059】 51は熱硬化型の例えばエポキシ系の樹脂にて成る接着剤、51aは硬化後の接着剤、52は突起電極50と電極パッド47aとの界面に金-アルミ固相拡散にて形成される接合部、53は超音波振動である。 【0060】 次に、上記のように形成された実施の形態6の半導体装置の製造方法について説明する。まず、配線基板48上の突起電極50を覆うように接着剤51を塗布する(図8(a))。次に、半導体素子47を120℃、および、配線基板48を100℃にそれぞれ加熱する。 【0061】 この加熱は、接着剤51の粘度が所望の値と成るように設定すればよい。そしてこの状態にて、突起電極50と電極パッド47aとの位置合わせを行い、半導体素子47を配線基板48上からに押し当てる。すると、突起電極50が接着剤51の層を突き破り、突起電極50と電極パッド47aとの接触が行なわれる(図8(b))。 【0062】 次に、この状態にて半導体素子47に超音波振動53を印加し、突起電極50と電極パッド47aとの接触箇所に超音波振動53が印加される。この超音波振動53の印加時の条件としては、超音波振動53は、例えば1つの突起電極50あたり0.1〜0.8Wのパワーにて、例えば数十msec程度の時間の印加にて行われる。またその際の、1つの突起電極50の1つの電極パッド47aに対する加圧力は、例えば25〜200gにて、また、温度としては80℃以上、接着剤51の硬化による支障が生じない程度の温度の例えば220℃以下にて行われる。 【0063】 このような条件にて、超音波振動53の印加が行われると、突起電極50の表面の金と電極パッド47aの表面のアルミとが反応し、金-アルミ固相拡散が生じさせることができ、突起電極50と電極パッド47aとの界面に接合部52が形成される(図8(c))。次に、半導体素子47の加熱温度を接着剤51の硬化温度まで上昇させるか、あるいは、半導体素子47の接合された配線基板48を全体的に加熱装置内に入れ、接着剤51の硬化温度まで加熱することにより硬化させて、接着剤51aとする(図8(d))。 【0064】 上記のように行われた実施の形態6の半導体装置の製造方法によれば、上記実施の形態2と同様の効果を奏することができる。また、図9に示すように、配線基板48側に形成された突起電極54を、例えばボールボンダにて階段形状にて形成するようにすれば、上記実施の形態6と同様の効果を奏することができる。 【0065】 尚、上記各実施の形態においては、接着剤として、塗布型のエポキシ系にて成るものを用いる例を示したが、これに限られることはなく、接着剤として、例えばBステージ状態のフィルム状の熱硬化性接着シートを用いることもできる。このようにシート状の接着剤を使用する場合、配線基板上への配設時に、フィルム状にて形成されているため、取扱い易く生産性よく製造することができる。 【0066】 さらに、この熱硬化性接着シートの特徴は、所定の温度に加熱されることにより、一次的に液状となり、その温度を越えると急速に硬化が始まるという現象がある。よって、一次的に液状と同様の過程を通過するため、上記各液状の接着剤と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、熱硬化時間が5秒程度と瞬時であるため、塗布型のエポキシ接着剤等の熱硬化時間の数10分と比較して極めて短時間で接着剤の硬化を行うことができる。 【0067】 【発明の効果】 以上のように、この発明の請求項1によれば、複数の電極を有する配線基板上に、複数の電極を覆う樹脂にてなる接着剤を配設し、複数の電極と相対する複数の突起電極を有する半導体素子と配線基板とを接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、複数の突起電極で接着剤の層を突き破り複数の電極と複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、その後に複数の電極と複数の突起電極との接触箇所に超音波振動を印加し、接触箇所に固相拡散にて成る接合部を形成して、半導体素子と配線基板とを接合し、上記接合の後に接着剤を硬化させるので、接着剤を先に配設することにより、生産性を向上することができ、かつ、半導体素子と配線基板との接合部を固相拡散にて形成することにより、半導体素子と配線基板との接合の信頼性の高い半導体装置の製造方法を提供することができるという効果がある。 【0068】 また、この発明の請求項2によれば、複数の突起電極を有する配線基板上に、複数の突起電極を覆う樹脂にてなる接着剤を配設し、複数の突起電極と相対する複数の電極を有する半導体素子と配線基板とを接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、複数の突起電極で接着剤の層を突き破り複数の電極と複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、その後に複数の突起電極と複数の電極との接触箇所に超音波振動を印加し、接触箇所に固相拡散にて成る接合部を形成して、半導体素子と配線基板とを接合し、上記接合の後に接着剤を硬化させるので、接着剤を先に配設することにより、生産性を向上することができ、かつ、半導体素子と配線基板との接合部を固相拡散にて形成することにより、半導体素子と配線基板との接合の信頼性の高い半導体装置の製造方法を提供することができるという効果がある。 【0069】 また、この発明の請求項3によれば、請求項1または請求項2において、複数の突起電極の表面を金またはアルミにて形成し、複数の突起電極の表面が金にて成る場合には、表面が金またはアルミにて成る複数の電極を形成し、また、複数の突起電極の表面がアルミにて成る場合には、表面が金にて成る複数の電極を形成し、接合部の固相拡散を、金-アルミ固相拡散または金-金固相拡散とするので、容易に固相拡散を行うことが可能な半導体装置の製造方法を提供することができるという効果がある。 【0070】 また、この発明の請求項4によれば、配線基板上に形成された複数の電極上にはんだをそれぞれ形成し、複数の電極およびはんだを覆う樹脂にてなる接着剤を配設し、複数の突起電極を有する半導体素子および配線基板をはんだの融点温度以下の接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、複数の突起電極で接着剤の層を突き破りはんだと複数の突起電極とをそれぞれ接触させ、その後にはんだと突起電極との接触箇所に超音波振動を印加し、接触箇所のはんだ表面に生じている酸化膜を除去し、はんだがはんだの融点温度以上と成るように加熱し、複数の電極と複数の突起電極とをはんだを介してそれぞれ接合し、はんだの融点温度以下にて接着剤を硬化させるので、接着剤を先に配設することにより、生産性を向上することができ、かつ、半導体素子と配線基板とをはんだにて接合することにより、半導体素子と配線基板との接合が確実となる半導体装置の製造方法を提供することができるという効果がある。 【0071】 また、この発明の請求項5によれば、半導体素子上に形成された複数の突起電極上にはんだをそれぞれ形成し、配線基板上に形成された複数の電極を覆う樹脂にてなる接着剤を配設し、半導体素子および配線基板をはんだの融点温度以下の接着剤が所望の粘度とし加熱状態にて圧接することにより、複数の突起電極で接着剤の層を突き破り複数の電極とはんだとを接触させ、その後に電極とはんだとの接触箇所に超音波振動を印加し、接触箇所のはんだ表面に生じている酸化膜をそれぞれ除去し、はんだがはんだの融点温度以上と成るように加熱し、複数の電極と複数の突起電極とをはんだを介して接合し、はんだの融点温度以下にて接着剤を硬化させるので、接着剤を先に配設することにより、生産性を向上することができ、かつ、半導体素子と配線基板とをはんだにて接合することにより、半導体素子と配線基板との接合が確実となる半導体装置の製造方法を提供することができるという効果がある。 【0072】 また、この発明の請求項6によれば、請求項4または請求項5において、複数の突起電極が先端に向かうにしたがって、断面が小さくなるように形成されたものを用いるので、接着剤の層を容易に突き破ることができ、半導体素子と配線基板との接続が確実となる半導体装置の製造方法を提供すことができるという効果がある。 【0073】 また、この発明の請求項7によれば、請求項6において、複数の突起電極の先端形状が凸曲面形状にて形成されたものを用いるので、接着剤の層を容易に突き破ることができ、半導体素子と配線基板との接続がより一層確実となる半導体装置の製造方法を提供すことができるという効果がある。 【0074】 また、この発明の請求項8の半導体装置の製造方法は、請求項6において、複数の突起電極が階段形状に形成されたものを用いるので、接着剤の層を容易に突き破ることができ、半導体素子と配線基板との接続がより一層確実となる半導体装置の製造方法を提供すことができるという効果がある。 【0075】 また、この発明の請求項9によれば、請求項1ないし請求項8のいずれかにおいて、接着剤としてフィルム状の熱硬化性接着シートを、Bステージ状態にて配置するもので、接着剤の硬化速度が速く、生産性をより一層向上することが可能となる半導体装置の製造方法を提供すことができるという効果がある。 【図面の簡単な説明】 【図1】 この発明の実施の形態1による半導体装置の製造方法を示す断面図である。 【図2】 この発明の実施の形態2による半導体装置の製造方法を示す断面図である。 【図3】 この発明の実施の形態2による半導体装置の製造方法を示す断面図である。 【図4】 この発明の実施の形態3による半導体装置の製造方法を示す断面図である。 【図5】 この発明の実施の形態4による半導体装置の製造方法を示す断面図である。 【図6】 この発明の実施の形態5による半導体装置の構成を示す断面図である。 【図7】 この発明の実施の形態5による半導体装置の構成を示す断面図である。 【図8】 この発明の実施の形態6による半導体装置の製造方法を示す断面図である。 【図9】 この発明の実施の形態6による半導体装置の製造方法を示す断面図である。 【図10】 従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。 【符号の説明】 8,15,24,31,40,47 半導体素子、 8a,15a,24a,31a,40a,47a 電極パッド、 9,16,16a,25,32,41,50,54 突起電極、 10,17,26,33,42,48 配線基板、 11,18,27,34,43,49 電極、 12,12a,19,19a,28,28a,35,35a,44,51,51a 接着剤、 13,20,45,52 接合部、 14,21,30,37,53 超音波振動、22 弾性体、23 金属膜、 29,36,46 はんだ、29a,36a 酸化膜、38 トレー、 39 はんだペースト。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-01-14 |
出願番号 | 特願平9-136941 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
YA
(H01L)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中澤 登 |
特許庁審判長 |
城所 宏 |
特許庁審判官 |
市川 裕司 瀬良 聡機 |
登録日 | 2002-05-17 |
登録番号 | 特許第3308855号(P3308855) |
権利者 | 三菱電機株式会社 |
発明の名称 | 半導体装置の製造方法 |
代理人 | 村上 啓吾 |
代理人 | 児玉 俊英 |
代理人 | 大岩 増雄 |
代理人 | 竹中 岑生 |
代理人 | 大岩 増雄 |
代理人 | 竹中 岑生 |
代理人 | 村上 啓吾 |
代理人 | 高瀬 彌平 |
代理人 | 宮田 金雄 |
代理人 | 児玉 俊英 |
代理人 | 高瀬 彌平 |
代理人 | 宮田 金雄 |