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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1114605
異議申立番号 異議2002-72829  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-12-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-11-27 
確定日 2005-01-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3285666号「食品又は医薬品用材料」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3285666号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3285666号の発明は、平成5年5月28日に出願され、平成14年3月8日にその特許権の設定登録がされたものであって、株式会社大協精工より特許異議の申立てがされて、平成16年8月25日付け取消理由が通知され、同年11月5日付けでの訂正請求がされ、同年11月16日付け取消理由が通知され、その指定期間内である同年12月6日付けでの訂正請求がされるとともに、同年11月5日付けでの上記訂正請求は取り下げられたものである。

2.特許異議の申立ての概要
申立てにおける取消理由は、概ね、以下のとおりのものと認める。
A.特許査定時における請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証に記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、これら請求項に係る特許は、同条第1項の規定に違反して特許されたものである。
B.特許査定時における請求項1〜8に係る発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたから、これら請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
C.特許査定時における請求項1〜8に係る特許は、明細書又は図面の記載が不備な、特許法第36条第4項及び第5項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。

甲第1号証:特開平5-38785号公報
甲第2号証:特開昭62-252406号公報
甲第3号証:特開平5-51468号公報
甲第4号証:特開平2-196832号公報
甲第5号証:特開平3-726号公報
甲第6号証:特開平3-45612号公報
甲第7号証:特開平5-9350号公報

3.通知された取消理由
平成16年8月25日付け及び同年11月16日付け取消理由の概要は、総じて、以下のとおりである。
「請求項3及び8には、それらの末尾に「食品又は医薬品用器具」と記載があるが、その技術的意味が、本件明細書において不明確であって、これら請求項には、発明の構成に欠くことができない事項が記載されているとはいえないから、本件請求項1〜8に係る特許は、明細書の記載が不備な、特許法第36条第5項に規定する要件を満たさない特許出願に対して、特許されたものであって、取り消すべきものである。」

4.訂正請求の適否について

4-1.訂正の内容
「平成16年12月6日付けでの訂正請求による訂正」(以下、「本件訂正」という。)は、以下の訂正事項a〜dからなるものである。
訂正事項a;
【特許請求の範囲】の【請求項3】の記載につき、
「・・・食品又は医薬品用器具」とあるのを、
「・・・食品又は医薬品用ゴム栓」と訂正する。
訂正事項b;
【特許請求の範囲】の【請求項8】の記載につき、
「・・・食品又は医薬品用器具」とあるのを、
「・・・食品又は医薬品用ゴム栓」と訂正する。
訂正事項c;
【発明の詳細な説明】の【0007】の記載につき、
「・・・食品又は医薬品用器具が提供される。」とあるのを、
「・・・食品又は医薬品用ゴム栓が提供される。」と訂正する。
訂正事項d;
【発明の詳細な説明】の【0010】の記載につき、
「・・・食品又は医薬品用器具が提供される。」とあるのを、
「・・・食品又は医薬品用ゴム栓が提供される。」と訂正する。

4-2.判断
ここでは、「願書に添付した明細書又は図面」を訂正前明細書という。また、訂正前の【請求項3】については旧【請求項3】と、訂正後の【請求項3】については新【請求項3】といい、【請求項8】についても同様とする。

4-2-1.訂正事項a及びbについて
これらの訂正は、旧【請求項3】及び旧【請求項8】に記載されていた発明の対象が、食品又は医薬品用器具であったのを、訂正前明細書における「【0105】実施例3〜4及び比較例2 実施例1〜2で得られたゴム栓、および参考例3で得られた環状オレフィン系樹脂(B)を用いた以外は実施例1〜2と同様にして作成したゴム栓(比較例2)を用い、これらのゴム栓を厚み方向に30%圧縮変形させ、1時間その状態で保持した後、元にもどすという操作を行い(実施例3〜4、および比較例2)、積層した被膜の剥れ、破れ等の変化を調べた。結果を表3に示す。この表に示すように、本発明で得られた環状オレフィン系樹脂を積層したゴム栓は、JP11の規格値に合格した。また、圧縮等の変形に対しても剥れ、破れ等を生じなかった。」の記載を根拠に、食品又は医薬品用ゴム栓とするものであって、上記対象を技術的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、これらの訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるとする理由は見当たらない。

4-2-2.訂正事項c及びdについて
これらの訂正は、訂正事項a及びbと整合を図るべく明細書の記載を訂正するもので、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、先の「4-2-1」で検討したことから、訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかであるし、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるとする理由は見当たらない。

4-2-3.まとめ
本件訂正は、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、これを認める。

5.特許異議の申立てについての判断

5-1.本件発明
「本件請求項1〜8に係る発明」(以下、「本件発明1〜8」という。)は、先に「4」で述べたように本件訂正が認められることから、以下に記載のとおりのものと認める。
「【請求項1】 α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれ、かつ、そのガラス転移温度(Tg)が50℃以下で弾性回復率が20%以上である一以上の環状オレフィン系樹脂(a)を含む積層用樹脂を弾性体表面に積層した樹脂積層弾性体を用いることを特徴とする食品又は医薬品用包装材料。
【請求項2】 前記積層用樹脂が、環状オレフィン系樹脂(a)、及び他の熱可塑性樹脂(b)とを含有する組成物であることを特徴とする請求項1記載の食品又は医薬品用包装材料。
【請求項3】 α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれ、かつ、そのガラス転移温度(Tg)が50℃以下で弾性回復率が20%以上である一以上の環状オレフィン系樹脂(a)を含む積層用樹脂を弾性体表面に積層した樹脂積層弾性体を用いることを特徴とする食品又は医薬品用ゴム栓。
【請求項4】 α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれ、かつガラス転移温度が50℃以下で弾性回復率が20%以上である、少なくとも一以上の環状オレフィン系樹脂(a)を、グラフトモノマーによってグラフト変性したグラフト変性環状オレフィン系樹脂を含む積層用樹脂を弾性体表面に積層した樹脂積層弾性体を用いることを特徴とする食品又は医薬品用包装材料。
【請求項5】 前記積層用樹脂が、環状オレフィン系樹脂(a)、及びグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を含有する組成物であることを特徴とする請求項4記載の食品又は医薬品用包装材料。
【請求項6】 前記積層用樹脂が、グラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)、及び他の熱可塑性樹脂(b)を含有する組成物であることを特徴とする請求項4記載の食品又は医薬品用包装材料。
【請求項7】 前記積層用樹脂が、環状オレフィン系樹脂(a)、他の熱可塑性樹脂(b)、及びグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を含有する組成物であることを特徴とする請求項4記載の食品又は医薬品用包装材料。
【請求項8】 α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれ、かつガラス転移温度が50℃以下で弾性回復率が20%以上である、少なくとも一以上の環状オレフィン系樹脂(a)を、グラフトモノマーによってグラフト変性したグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を含む積層用樹脂を弾性体表面に積層した樹脂積層弾性体を用いることを特徴とする食品又は医薬品用ゴム栓。」

5-2.取消理由の整理
申立てにおける取消理由は、先に「2」で述べたとおりであるが、先に「4」で述べたように本件訂正が認められることから、結局、以下のとおりになったものと認める。
a.本件発明1〜3は、甲第1号証に記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、これら請求項に係る特許は、同条第1項の規定に違反して特許されたものである。(以下、「取消理由a」という。)
b.本件発明1〜8に係る発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたから、これら請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。(以下、「取消理由b」という。)
c.本件発明1〜8に係る特許は、明細書又は図面の記載が不備な、第36条第4項及び第5項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下、「取消理由c」という。)

なお、甲第1〜7号証は、先に「2」で述べたとおりである。

5-3.判断

5-3-1.取消理由c

(1)取消理由cについて
取消理由cは、先に「5-2」で述べたとおりであって、申立人は、具体的には以下の記載不備A〜Cを指摘するものと認める。
A.請求項1〜8には、積層用樹脂が20%以上の弾性回復率を有することが記載されている。しかしながら、発明の詳細な説明には、この値の臨界的意義が、実施例及び比較例で用いられた上記樹脂につき、その「弾性回復率」が示されていないこともあって、不明であって、上記請求項には、発明の構成に欠くことができない事項が記載されているとは云えない。
B.請求項1、2、4〜7には、「食品又は医薬品用包装材料」と記載されているが、この記載されているものが如何なる範囲のものを指すのかがわからず、発明の外延が不明確となっているから、発明の構成に欠くことができない事項が明確に記載されているとは云えない。
C.請求項3、8には、「食品又は医薬品用ゴム栓」と記載されているが、この記載されているものが如何なる範囲のものを指すのかがわからず、発明の外延が不明確となっているから、発明の構成に欠くことができない事項が明確に記載されているとは云えない。

(2)記載不備Aについて
発明の詳細な説明には、「【0083】 本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂の弾性回復率は20%以上であり、30%以上がさらに好ましい。 20%未満であると、たとえばゴム栓が変形したときに弾性体と積層用樹脂との間に剥れを生ずることがある。」と記載され、環状オレフィン系樹脂(a)を含む積層用樹脂、或いは、該環状オレフィン系樹脂(a)をグラフトモノマーによってグラフト変性したグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を含む積層用樹脂を弾性体表面に積層した場合の、これら積層用樹脂の弾性回復率を20%以上とすることの技術的意義が実質的に記載されているから、この弾性回復率を積層用樹脂が有することを請求項1〜8に記載することに、何らの、記載上の不備があるとは云えない。
申立人は、特に、これら積層用樹脂が20%以上の弾性回復率を有することの臨界的意義が記載されていないことを不備の根拠として挙げるが、仮に臨界的意義がないとしても、このことが、必ずしも、発明の構成に欠くことができない事項が記載されていないと云うことにはならない。

(3)記載不備Bについて
請求項1、2、4〜7には、「食品又は医薬品用包装材料」と記載されている。その一方で、「食品」、「医薬品」及び「包装材料」は、全て、明確な技術用語であって、上記の記載のあることが、これら請求項に、発明の構成に欠くことができない事項が明確に記載されていないと云うことにはならない。

(4)記載不備Cについて
請求項3、8には、「食品又は医薬品用ゴム栓」と記載されている。その一方で、「食品」、「医薬品」及び「ゴム栓」は、全て、明確な技術用語であって、上記の記載のあることが、これら請求項に、発明の構成に欠くことができない事項が明確に記載されていないと云うことにはならない。
なお、先に「3」で述べた、平成16年8月25日付け及び同年11月16日付け取消理由については、ここで述べたことから理由が無くなっていることは明らかである

5-3-2.取消理由a、b

(1)各甲号証の記載及び記載事項

甲第1号証:
甲1-ア.「【請求項1】 環状オレフィン系化合物又は架橋多環式炭化水素系化合物を重合体成分とする樹脂をゴム表面に積層してなる衛生ゴム製品。」
甲1-イ.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は各種容器、特に食品や医薬品用の容器、運搬器、器具、包装材料などに使用して安全且つ衛生的である、積層した衛生ゴム製品に関するものである。」
甲1-ウ.「【0017】本発明の環状樹脂においては、上記した環状オレフィン系化合物及び架橋多環式炭化水素系化合物から選ばれる1種以上を重合体成分とするが、これらの重合体成分と共重合可能な低級オレフィン類、芳香族類又は低級オレフィン類もしくは芳香族のビニルモノマーを共重合体成分として含有することができる。このような他の重合体成分の具体例としては、例えばエチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、メチルペンテン、ノルボルネン、ブテン、ビニルトルエン等を挙げることができる。このような他の共重合体成分は2種以上併用してもよい。」
甲1-エ.「【0029】合成例2(DCP-エチレン共重合体)
・・・、脱水したDCP150gを入れ、・・・、乾燥したエチレンガスと窒素ガスの混合ガス(1/2)を7分間通じ、・・・重合した。メタノール30mlを添加して共重合を停止し、樹脂体を析出させ、アセトンで洗浄し約60℃で乾燥して共重合体88gを得た。この共重合体中DCPは68mol%である。
【0030】容量1000mlの攪拌機付きオートクレーブ、上記で得た共重合樹脂10重量%のシクロヘキサン溶液500gとパラジウムカーボン5gとを入れ、反応器内を水素に置換後、攪拌しつつ120℃に昇温した。次に同温度で水素圧70気圧に昇圧し、同圧に水素を補充しながら8時間水素添加を行なう。次に遠心分離及び濾過により、反応物中の触媒を除去し、多量のアセトン-イソプロピルアルコール(1:1)混合溶媒中に沈殿させ、濾過、乾燥して樹脂(b)60gを得た。該樹脂(b)の軟化点は130℃、臭素価0.3であった。
【0031】上記で得られた共重合樹脂(b)は、フィルム成形にはステアリン酸ソルビタンエステル3重量%、ジメチルポリシロキサン1重量%、BHT0.5重量%を添加して成形した。ハケ塗布又は飛散の場合にはシクロヘキサン溶液(5重量%)としてゴム表面に適用する。」
甲1-オ.「【図1】全表面を本発明の環状樹脂体フィルムで積層した本発明のゴム栓の断面図」

甲第3号証:
甲3-ア.「【請求項1】 α-オレフィンに由来する繰り返し単位と環状オレフィンに由来する繰り返し単位とを有し、ガラス転移温度(Tg)が30℃以下である環状オレフィン系共重合体からなることを特徴とするラップフィルム。」
甲3-イ.「【0047】(2)エチレンと2-ノルボルネンとの共重合
・・・、ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド0.11ミリモル、・・・、続いて2-ノルボルネンを70重量%含有するトルエン溶液2.25リットル(2-ノルボルネンとして15.0モル)を加え、90℃に昇温したのち、エチレン分圧が7Kg/cm2になるように連続的にエチレンを導入しつつ110分間反応を行なった。・・・、環状オレフィン系共重合体(a1)を得た。環状オレフィン系共重合体(a1)の収量は3.48Kgであった。重合活性は347Kg/gZrであった。
【0048】得られた環状オレフィン系共重合体(a1)の物性は下記の通りであった。13C-NMRの30ppm付近に現れるエチレンに基づくピークとノルボルネンの5及び6位のメチレンに基づくピークの和と32.5ppm付近に現れるノルボルネンの7位のメチレン基に基づくピークとの比から求めたノルボルネン含量は9.2モル%であった。・・・。測定装置として東洋ボールディング社製パイプロン11-EA型を用い、巾4mm,長さ40mm,厚さ0.1mmの測定片を昇温速度3℃/分、周波数3.5Hzで測定し、この時の損失弾性率(E”)のピークからガラス転移温度(Tg)求めたところ、Tgは3℃であった。・・・。
【0049】実施例1
上記参考例1で得られた環状オレフィン系共重合体(a1)の粉砕品100重量部に対し、抗ブロッキング剤としてケイソウ土を0.2重量部、滑剤としてエルカ酸アミドを0.05重量部混合し、直径50mmの単軸押出機に供給した。直径100mm、ギャップ3mmの環状ダイより160℃で押し出し、インフレーション成形により厚さ15μm、折幅450mmのラップフィルムを得た。吐出量は7Kg/hr、引取速度は12m/分であった。成形性は良好であった。得られたラップフィルムの引張特性、弾性回復性、光学特性、気体透過度等の物性を測定した結果を表1、表2に示す。」
甲3-ウ.「【0052】参考例2
参考例1の(2)において、ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライドの使用量を0.075ミリモル、2-ノルボルネンの使用量を7.5モルとした以外は、参考例1と同様にして環状オレフィン系共重合体(a2)を得た。・・・、また、参考例1と同様にして求めた・・・、ガラス転移温度(Tg)は-7℃、・・・であった。」
甲3-エ.「【0053】実施例2〜5,比較例1〜3
成分の種類及び配合量を表1のように変えた以外は、実施例1と同様に行なった。物性測定の結果を表1、表2に示す。」、
及び実施例1〜5に対応して弾性回復率の記載されている【表1】

甲第2、4〜7号証:
甲第2号証には、概ね、「エチレン成分及び環状オレフィン成分からなる環状オレフィン系ランダム共重合体であって、エチレンに由来する繰り返し単位が40ないし90モル%及び前記環状オレフィンに由来する繰り返し単位が10ないし60モル%の範囲にあり、しかもガラス転移点(Tg)が10ないし130℃の範囲にある、環状オレフィン系ランダム共重合体」に係る発明が記載され(請求項1、参照。)、
甲第4号証には、概ね、「エチレン成分とノルボルネン系環状オレフイン成分とからなるランダム共重合体を2軸延伸したシート又はフィルム」に係る発明が記載され(請求項1、参照。)、
甲第5号証には、概ね、「環状オレフィン成分とエチレン成分とを付加重合した共重合体から成形されたブロー成形品」に係る発明が記載され(請求項1、参照。)、
甲第6号証には、概ね、「重合触媒としてメタロセンA(rac-ジメチルシリル-ビス-(1-インデニル)-ジルコニウム-ジクロライド)/メチルアルミノキサンを用い、ノルボルネン及びエチレンを共重合したときに得られる共重合体のガラス転移点Tgは、ほぼ31〜38℃であること」に係る発明が記載され(実施例1、13〜16、第3表、参照。)、
甲第7号証には、概ね、「エチレン及び環状オレフィンの共重合体(a-1)のグラフト変性物(b)を含むポリオレフィン系樹脂組成物」に係る発明が記載されている(請求項1、参照。)。

(2)取消理由aについて

1)本件発明1について
甲第1号証には、記載甲1-ア、ウによれば、エチレンやプロピレンと云ったα-オレフィンと、環状オレフィン系化合物又は架橋多環式炭化水素系化合物とを重合体成分とする樹脂をゴム表面に積層してなる衛生ゴム製品の発明(以下、「甲1-1発明」と云う。)が記載され、更に、記載甲1-イ、オによれば、該衛生ゴム製品とは、食品又は医薬品用の包装材料やゴム栓を具体的には意味しているものと認められるが、このゴム表面に積層している樹脂について見ると、環状オレフィン系化合物又は架橋多環式炭化水素系化合物が具体的な化合物として特定されていないことだけみても、一般的に、そのガラス転移温度(Tg)や弾性回復率と云うものは把握できるものではなく、他の甲号証を見ても、やはり把握できないものである。よって、本件発明1は、甲1-1発明と対比して、少なくとも、積層用樹脂が「ガラス転移温度(Tg)が50℃以下で弾性回復率が20%以上である」点(以下、「相違点a」と云う。)で相違していると認められる。
また、更に検討すると、甲第1号証には、記載甲1-エによれば、概ね、DCP(決定注;ジシクロペンタジエン)-エチレン共重合体に水素添加を行なって得られた樹脂をシクロヘキサン溶液にしてゴム表面に適用し、溶媒であるシクロヘキサンが、大方、蒸発飛散することは明らかであるから、この蒸発飛散した樹脂がゴム表面に積層された物に係る発明(以下、「甲1-2発明」と云う。)が記載されていると認められる。ここで、本件発明1と甲1-2発明とを対比すると、甲1-2発明の「DCP-エチレン共重合体に水素添加を行なって得られた樹脂」及び「シクロヘキサンが蒸発飛散した樹脂」は、本件発明1の「環状オレフィン系樹脂(a)」及び「積層用樹脂」に対応するものの、やはり、本件発明1は、積層用樹脂が「ガラス転移温度(Tg)が50℃以下で弾性回復率が20%以上である」点、即ち相違点aで、少なくとも、相違していると認められる。
特に、甲第2号証についてみると、ここには、先に「5-3-2」の「(1)」で述べた発明が記載されているものの、ここに記載された環状オレフィン系ランダム共重合体につき、その弾性回復率についての開示すらない。また、甲第3号証についてみると、ここには、甲3-イ〜エによれば、概ね、「エチレンと2-ノルボルネンとの共重合体である環状オレフィン系共重合体(a1)、(a2)を得、この得られた共重合体のガラス転移温度(Tg)が3℃や-7℃であって、更に、この共重合体にケイソウ土等を加えてインフレーション成形により得られたフィルムの弾性回復率が66〜87%の範囲内のものとなっているもの」(以下、「甲3発明」と云う。)が記載されていると認められる。しかしながら、甲第3号証に記載された、少なくとも、弾性回復率についての知見は、エチレンと2-ノルボルネンとの共重合体についてのもので、更には、インフレーション成形により得られたフィルムについてのもので、甲1-2発明の「DCP-エチレン共重合体に水素添加を行なって得られた樹脂をシクロヘキサン溶液にしてゴム表面に適用し、溶媒であるシクロヘキサンが、大方、蒸発飛散した樹脂」とは、その構成成分や形成法において相違するから、上記知見を持って、甲1-2発明の上記樹脂のガラス転移温度(Tg)や弾性回復率を窺い知ることはできないというべきである。よって、同甲号証をみても、相違点aが、実質的に相違点でないとする理由はない。
したがって、本件発明1は、甲1-1発明でも甲1-2発明でもないし、他に甲第1号証記載の発明であるとする理由も見当たらない。

2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を技術的に限定するものであるから、本件発明1が、先に「1)」で述べたことから明らかなように、甲第1号証記載の発明であると云えない以上、本件発明2も甲第1号証記載の発明であると云うことはできない。

3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1が食品又は医薬品用包装材料に係るものであるのに対し、食品又は医薬品用ゴム栓に係るものである点においてのみ相違するものであって、本件発明1が甲第1号証記載の発明でない、とした先に「1)」で述べたのと同じ理由により、甲第1号証記載の発明であると云うことはできない。

(3)取消理由bについて

1)本件発明1、2について
本件発明1は、先に「(2)」の「1)」で述べたように、甲1-1発明や甲1-2発明と相違点aで相違しているが、甲第2〜7号証に記載の発明を加味しても、相違点aが容易になし得たとする理由は見当たらないから、本件発明1は、甲第1〜7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたと云うことはできない。また、そうである以上、本件発明1を技術的に限定する本件発明2も容易に発明をすることができたと云うことはできない。
念のために、甲第3〜7号証に記載の発明についてみると、甲第2、4〜7号証には、先に「(1)」で述べた発明が記載されているものの、「α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれ、かつ、そのガラス転移温度(Tg)が50℃以下で弾性回復率が20%以上である環状オレフィン系樹脂(a)を含む積層用樹脂」についての記載はなく、これら発明に基づいても、相違点aが容易になし得たとする理由は見当たらない。また、甲第3号証には、先に「(2)」の「1)」で述べたように、甲3発明が記載されている。しかしながら、甲3発明は、記載甲3-アによれば、ラップフィルムに係るものであって、しかも、弾性体表面に積層することを想定していないものであるから、これを、甲1-1発明や甲1-2発明のゴム表面に積層する樹脂として採用することが容易に為し得るとする理由すらない。

2)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1が食品又は医薬品用包装材料に係るものであるのに対し、食品又は医薬品用ゴム栓に係るものである点においてのみ相違するものであって、本件発明1が甲第1〜7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたと云うことはできない、とした先に「1)」で述べたのと同じ理由により、これら発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたと云うことはできない。

3)本件発明4〜7について
甲第1号証には、先に「1)」で述べた甲1-1発明や甲1-2発明が記載され、甲第2、4〜7号証には、先に「(1)」で述べた発明が記載され、更に、甲第3号証には、先に「1)」で述べた甲3発明が開示されているが、いずれにも、「α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれ、かつガラス転移温度が50℃以下で弾性回復率が20%以上である、少なくとも一以上の環状オレフィン系樹脂(a)を、グラフトモノマーによってグラフト変性したグラフト変性環状オレフィン系樹脂を含む積層用樹脂」についての記載はない。
特に、甲第7号証には、「エチレン及び環状オレフィンの共重合体(a-1)のグラフト変性物(b)を含むポリオレフィン系樹脂組成物」が開示されているものの、該グラフト変性物(b)やポリオレフィン系樹脂組成物に関連して、ガラス転移温度や弾性回復率についての記載すらないものである。
したがって、本件発明4〜7は、甲第1〜7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたと云うことはできない。

4)本件発明8について
本件発明8は、本件発明4が食品又は医薬品用包装材料に係るものであるのに対し、食品又は医薬品用ゴム栓に係るものである点においてのみ相違するものであって、本件発明4が甲第1〜7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたと云うことはできない、とした先に「3)」で述べたのと同じ理由により、これら発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたと云うことはできない。

6.むすび
特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
食品又は医薬品用材料
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれ、かつ、そのガラス転移温度(Tg)が50℃以下で弾性回復率が20%以上である一以上の環状オレフィン系樹脂(a)を含む積層用樹脂を弾性体表面に積層した樹脂積層弾性体を用いることを特徴とする食品又は医薬品用包装材料。
【請求項2】 前記積層用樹脂が、環状オレフィン系樹脂(a)、及び他の熱可塑性樹脂(b)とを含有する組成物であることを特徴とする請求項1記載の食品又は医薬品用包装材料。
【請求項3】 α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれ、かつ、そのガラス転移温度(Tg)が50℃以下で弾性回復率が20%以上である一以上の環状オレフィン系樹脂(a)を含む積層用樹脂を弾性体表面に積層した樹脂積層弾性体を用いることを特徴とする食品又は医薬品用ゴム栓。
【請求項4】 α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれ、かつガラス転移温度が50℃以下で弾性回復率が20%以上である、少なくとも一以上の環状オレフィン系樹脂(a)を、グラフトモノマーによってグラフト変性したグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を含む積層用樹脂を弾性体表面に積層した樹脂積層弾性体を用いることを特徴とする食品又は医薬品用包装材料。
【請求項5】 前記積層用樹脂が、環状オレフィン系樹脂(a)、及びグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を含有する組成物であることを特徴とする請求項4記載の食品又は医薬品用包装材料。
【請求項6】 前記積層用樹脂が、グラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)、及び他の熱可塑性樹脂(b)を含有する組成物であることを特徴とする請求項4記載の食品又は医薬品用包装材料。
【請求項7】 前記積層用樹脂が、環状オレフィン系樹脂(a)、他の熱可塑性樹脂(b)、及びグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を含有する組成物であることを特徴とする請求項4記載の食品又は医薬品用包装材料。
【請求項8】 α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれ、かつガラス転移温度が50℃以下で弾性回復率が20%以上である、少なくとも一以上の環状オレフィン系樹脂(a)を、グラフトモノマーによってグラフト変性したグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を含む積層用樹脂を弾性体表面に積層した樹脂積層弾性体を用いることを特徴とする食品又は医薬品用ゴム栓。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は各種容器、特に食品や医薬品用の容器、運搬器、器具、包装材料などに使用して安全且つ衛生的である、樹脂を積層した弾性体に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品容器類に関する包装物、器具材料に関する法律として食品衛生法があり、無毒、無味、無臭と記載されている。この衛生性には耐熱性、耐熱水性も含まれている。
医薬品容器については人体に影響が大なる点から高度な衛生性、安全性を要求されている。
食品用ゴム製品としては、EPDMにトコフェロールを配合して加熱殺菌食品包装用積層体としたもの(特開昭53-134574号公報)等のように各種の技術が開発されている。
【0003】
また、表面に樹脂フィルムを積層した医薬品、医療用具用ゴム製品としては、加硫ゴムにポリプロピレン(PPと略す)のフィルムを積層した技術(実公昭44-5751号、同44-27753号公報)、さらに耐薬品性が優れたフッ素樹脂を全面に被覆した栓(実公昭45-17831号公報)、薬液面を三フッ化エチレン樹脂で包んだゴム栓(実公昭49-21346号公報)、ゴム栓表面特に薬液面をフッ素樹脂フィルムにて積層する栓の製造法(特公昭52-1355、同54-9119、同57-53184、特開昭61-272134、特開平2-23961各号公報)、IIRにフッ素ゴムを積層したゴム栓(特公昭63-43104、実開昭55-47850各号公報)等の記載の技術が知られている。
【0004】
以上の公知技術では、どのようなゴム配合剤を用いても、ゴム配合剤及びゴムから溶出物又は剥離物を生じ、外部の薬液などを汚染する。ゆえにフッ素樹脂、PE又はPP樹脂フィルムに包装することで外部(薬液)汚染の防止手段としていた。しかし、衛生的なフッ素樹脂、PE、PP等のフィルムはゴム表面を包む接着力が弱く、容易に剥離する。また、フィルム表面をコロナ放電処理する等により強力に接着させる技術は存在するものの、高度な技術であり経済性に問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
また、環状オレフィン系化合物を主成分とする樹脂をゴム表面に積層する技術(特開平5-38785号公報)が知られているが、ここで用いている環状オレフィン系樹脂は、軟化温度が90℃以上であり、硬質な樹脂であるため、弾性、および柔軟性が十分でなく、ゴム栓等の成形品が変形した時に積層フィルムに剥れや割れを生じるという問題があった。さらに、ここで用いている環状オレフィン系樹脂中には触媒成分として用いている遷移金属(アルミニウム、チタン、バナジウム等)が大量に残留しており、薬液へ溶出するという問題があった。
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、弾性体との接着性に優れ、かつ、弾性、柔軟性に優れるとともに、医薬的、化学的に不活性な樹脂を含有する積層用樹脂を用いた樹脂積層弾性体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によって、α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれ、かつ、そのガラス転移温度(Tg)が50℃以下で弾性回復率が20%以上である一以上の環状オレフィン系樹脂(a)を含む積層用樹脂を弾性体表面に積層した樹脂積層弾性体を用いることを特徴とする食品又は医薬品用包装材料が提供される。
また、前記積層用樹脂が、環状オレフィン系樹脂(a)、及び他の熱可塑性樹脂(b)とを含有する組成物であることを特徴とする食品又は医薬品用包装材料が提供される。
【0007】
また、α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれ、かつ、そのガラス転移温度(Tg)が50℃以下で弾性回復率が20%以上である一以上の環状オレフィン系樹脂(a)を含む積層用樹脂を弾性体表面に積層した樹脂積層弾性体を用いることを特徴とする食品又は医薬品用ゴム栓が提供される。
【0008】
また、α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれ、かつガラス転移温度が50℃以下で弾性回復率が20%以上である、少なくとも一以上の環状オレフィン系樹脂(a)を、グラフトモノマーによってグラフト変性したグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を含む積層用樹脂を弾性体表面に積層した樹脂積層弾性体を用いることを特徴とする食品又は医薬品用包装材料が提供される。
【0009】
また、前記積層用樹脂が、環状オレフィン系樹脂(a)、及びグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を含有する組成物であることを特徴とする食品又は医薬品用包装材料が提供される。
また、前記積層用樹脂が、グラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)、及び他の熱可塑性樹脂(b)を含有する組成物であることを特徴とする食品又は医薬品用包装材料が提供される。
さらに、前記積層用樹脂が、環状オレフィン系樹脂(a)、他の熱可塑性樹脂(b)、及びグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を含有する組成物であることを特徴とする食品又は医薬品用包装材料が提供される。
【0010】
また、α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれ、かつガラス転移温度が50℃以下で弾性回復率が20%以上である、少なくとも一以上の環状オレフィン系樹脂(a)を、グラフトモノマーによってグラフト変性したグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を含む積層用樹脂を弾性体表面に積層した樹脂積層弾性体を用いることを特徴とする食品又は医薬品用ゴム栓が提供される。
【0011】
前記環状オレフィン系樹脂(a)は、0.05〜10dl/gの範囲内にある極限粘度[η](130℃のデカリン中で測定)を有することができる。
前記環状オレフィン系樹脂(a)が下記式[X]、及び[Y]で表わされる繰り返し単位を有するものであり得る。
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
【0014】
【0015】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の樹脂積層弾性体は、前述のようにランダム付加共重合体(a-1)及び(a-1)の水素添加物(a-2)からなる群から選ばれる、ガラス転移温度(Tg)が50℃以下で弾性回復率が20%以上である環状オレフィン系樹脂(a)又は、グラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を含む積層用樹脂を、弾性体表面に積層してなることを特徴とする。
【0016】
1.環状オレフィン系樹脂(a)
▲1▼α-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)
本発明に用いられるα-オレフィンとしては、特に制限はないが、例えば下記一般式[X]
【化1】

(式[X]中、Raは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で表わされる繰り返し単位を与えるものを挙げることができる。
【0017】
上記一般式[X]で示される繰り返し単位において、Raは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示している。
ここで、炭素数1〜20の炭化水素基として、具体的には、例えばメチル基,エチル基,イソプロピル基,n-プロピル基,イソブチル基,n-ブチル基,n-ヘキシル基,n-オクチル基,n-オクタデシル基等を挙げることができる。
また、一般式[X]で示される繰り返し単位を与えるα-オレフィンの具体例としては、例えば、エチレン,プロピレン,1-ブテン,3-メチル-1-ブテン,4-メチル-1-ペンテン,1-ヘキセン,1-オクテン,1-デセン,1-エイコセン等を挙げることができる。
【0018】
また、本発明に用いられる環状オレフィン類としては、環状オレフィンと環状ジエンを挙げることができる。
環状オレフィン
本発明に用いられる環状オレフィンとしては、特に制限はないが、例えば前記一般式[Y]で表わされる繰り返し単位を与えるものを挙げることができる。
【0019】
上記一般式[Y]で表わされる繰り返し単位において、Rb〜Rmは、それぞれ水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、又はハロゲン原子,酸素原子若しくは窒素原子を含む置換基を示している。
ここで、炭素数1〜20の炭化水素基として、具体的には、例えばメチル基,エチル基,n-プロピル基,イソプロピル基,n-ブチル基,イソブチル基,t-ブチル基,ヘキシル基等の炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基,トリル基,ベンジル基等の炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基、メチリデン基,エチリデン基,プロピリデン基等の炭素数1〜20のアルキリデン基、ビニル基,アリル基等の炭素数2〜20のアルケニル基等を挙げることができる。但し,Rb,Rc,Rf,Rgはアルキリデン基を除く。なお、Rd,Re,Rh〜Rmのいずれかがアルキリデン基の場合、それが結合している炭素原子は他の置換基を有しない。
【0020】
また、ハロゲン原子を含む置換基として具体的には、例えば、フッ素,塩素,臭素,ヨウ素等のハロゲン基、クロロメチル基,ブロモメチル基,クロロエチル基等の炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基等を挙げることができる。
酸素原子を含む置換基として具体的には、例えば、メトキシ基,エトキシ基,プロポキシ基,フェノキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基、メトキシカルボニル基,エトキシカルボニル基等の炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基等を挙げることができる。
窒素原子を含む置換基として具体的には、例えば、ジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基等の炭素数1〜20のアルキルアミノ基やシアノ基等を挙げることができる。
【0021】
一般式[Y]で表わされる繰り返し単位を与える環状オレフィンの具体例としては、例えば、ノルボルネン、5-メチルノルボルネン、5-エチルノルボルネン、5-プロピルノルボルネン、5,6-ジメチルノルボルネン、1-メチルノルボルネン、7-メチルノルボルネン、5,5,6-トリメチルノルボルネン、5-フェニルノルボルネン、5-ベンジルノルボルネン、5-エチリデンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2,3-ジメチル-1、4、5、8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-ヘキシル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-エチリデン-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-フルオロ-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,5-ジメチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-シクロヘキシル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2,3-ジクロロ-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-イソブチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,2-ジヒドロジシクロペンタジエン、5-クロロノルボルネン、5,5-ジクロロノルボルネン、5-フルオロノルボルネン、5,5,6-トリフルオロ-6-トリフルオロメチルノルボルネン、5-クロロメチルノルボルネン、5-メトキシノルボルネン、5,6-ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5-ジメチルアミノノルボルネン、5-シアノノルボルネン等を挙げることができる。
【0022】
また、下記式[Z]で表わされる繰り返し単位を与えるものであってもよい。
【0023】
【化3】

(式中、lは0または1の整数であり、mおよびnは、0、1または2であり、R1〜R15はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R5(またはR6)とR9(またはR7)とは、炭素数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、また何の基も介さずに直接結合していてもよい。)
【0024】
前記式[Z]で表わされる繰り返し単位を与える環状オレフィンの具体例としては、
5-メチル-5-フェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-トリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-(エチルフェニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-(イソプロピルフェニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
1,4-メタノ-1,1a,4,4a-テトラヒドロフルオレン、
1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセン、
シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物、
5-(α-ナフチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、
5-(アントラセニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン
を挙げることができる。
【0025】
環状ジエン
本発明に用いられる環状ジエンとしては、特に制限はないが、例えば、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン、5-エチル-1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロヘプタジエン、1,4-シクロヘプタジエン、1,3-シクロオクタジエン、1,4-シクロオクタジエン、1,5-シクロオクタジエン、5-メチレン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン、及び、
【化4】

等を挙げることができる。これらの中では、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンが特に好ましい。なお、環状ジエンは少なくとも2個の二重結合を有しておればよく、例えば環状トリエン等も包含される。
【0026】
環状オレフィン系樹脂(a)に用いられるα-オレフィンと環状オレフィン類とをランダム付加重合してなる共重合体の、α-オレフィンと環状オレフィン類との組成割合は、モル%で、80:20〜99.9:0.1が好ましい。α-オレフィンが80モル%未満であると、Tg、弾性率が高くなり、得られる樹脂の弾性回復性や柔軟性が低下する。また、環状オレフィン類が0.1モル%未満であると共重合体の結晶性が高くなり、弾性回復性等の面で環状オレフィンを導入した効果が不十分となる。
さらに好ましくは、モル比で、82:18〜99.5:0.5で、中でも、モル比で85:15〜98:2が最も好ましい。
【0027】
なお、α-オレフィンとしてエチレンを用いる場合、エチレンの他に、下記一般式
【化5】

(Rpは炭素数1〜20の炭化水素基、好ましくは、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ブテン、1-オクテンである。)で示されるα-オレフィンとの二種類を用いる場合、その組成割合は、エチレン5〜99.8モル%、及び一般式のα-オレフィン75〜0.1モル%、並びに環状オレフィン類20〜0.1モル%とすることが好ましい。さらに好ましくは、エチレン32〜99モル%、及びα-オレフィン50〜0.5モル%,並びに環状オレフィン類18〜0.5モル%である。中でも、エチレン55〜98モル%、及びα-オレフィン30〜1モル%、並びに環状オレフィン類15〜1モル%であることが最も好ましい。なお、この場合、エチレンとα-オレフィンは、共重合体の全体の80〜99.9モル%であることが好ましい。
【0028】
α-オレフィンと環状オレフィン類とをランダム付加重合する方法は、たとえば、触媒として、イオン錯体系、アルミノキサン系のものを使用することができる。この中でも重合活性の高いイオン錯体系触媒が好ましい。たとえば下記化合物(A)及び(B)を主成分とする触媒又は下記化合物(A)、(B)及び(C)を主成分とするイオン錯体系触媒を用いてα-オレフィンと環状オレフィン類との共重合を行なうことにより、効率的に共重合体を製造することができる。
(A)IVB族の四価の遷移金属化合物
(B)遷移金属化合物(A)、又はその派生物からイオン性錯体を形成しうる化合物
(C)有機アルミニウム化合物
【0029】
【0030】
このような遷移金属化合物(A)としては、周期律表のIVB族から選ばれる遷移金属、すなわちチタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)又はハフニウム(Hf)を含有する化合物を好適に使用することができ、特に下記一般式(I),(II)又は(III)で示されるシクロペンタジエニル化合物又はこれらの誘導体あるいは下記一般式(IV)で示される化合物又はこれらの誘導体が好適である。
CpM1R1aR2bR3c …(I)
Cp2M1R1aR2b …(II)
(Cp-Ae-Cp)M1R1aR2b …(III)
M1R1aR2bR3cR4d …(IV)
【0031】
[(I)〜(IV)式中、M1はTi,Zr又はHf原子を示し、Cpはシクロペンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,テトラヒドロインデニル基,置換テトラヒドロインデニル基,フルオレニル基又は置換フルオレニル基等の環状不飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基を示す。R1,R2,R3及びR4はそれぞれそれぞれσ結合性の配位子,キレート性の配位子,ルイス塩基等の配位子を示し、σ結合性の配位子としては、具体的に水素原子,酸素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基,炭素数1〜20のアシルオキシ基,アリル基,置換アリル基,けい素原子を含む置換基等を例示でき、またキレート性の配位子としてはアセチルアセトナート基,置換アセチルアセトナート基等を例示できる。Aは共有結合による架橋を示す。a,b,c及びdはそれぞれ0〜4の整数、eは0〜6の整数を示す。R1,R2,R3及びR4はその2以上が互いに結合して環を形成していてもよい。上記Cpが置換基を有する場合には、当該置換基は炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。(II)式及び(III)式において、2つのCpは同一のものであってもよく、互いに異なるものであってもよい。]
【0032】
上記(I)〜(III)式における置換シクロペンタジエニル基としては、例えば、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、イソプロピルシクロペンタジエニル基、1,2-ジメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、1,3-ジメチルシクロペンタジエニル基、1,2,3-トリメチルシクロペンタジエニル基、1,2,4-トリメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基等を挙げることができる。また、上記(I)〜(IV)式におけるR1〜R4の具体例としては、例えば、ハロゲン原子としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子;炭素数1〜20のアルキル基としてメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基;炭素数1〜20のアルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基;炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基としてフェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基;炭素数1〜20のアシルオキシ基としてヘプタデシルカルボニルオキシ基;けい素原子を含む置換基としてトリメチルシリル基、(トリメチルシリル)メチル基:ルイス塩基としてジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、テトラヒドロチオフェン等のチオエーテル類、エチルベンゾエート等のエステル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、2,2’-ビピリジン、フェナントロリン等のアミン類、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;鎖状不飽和炭化水素としてエチレン、ブタジエン、1-ペンテン、イソプレン、ペンタジエン、1-ヘキセン及びこれらの誘導体;環状不飽和炭化水素としてベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘプタトリエン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロオクタテトラエン及びこれらの誘導体等を挙げることができる。また、上記(III)式におけるAの共有結合による架橋 としては、例えばメチレン架橋、ジメチルメチレン架橋、エチレン架橋、1,1’-シクロヘキシレン架橋、ジメチルシリレン架橋、ジメチルゲルミレン架橋、ジメチルスタニレン架橋等を挙げることができる。
【0033】
このような化合物として、例えば下記のもの及びこれら化合物のジルコニウムをチタニウム又はハフニウムで置換した化合物を挙げることができる。
(I)式の化合物
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリメチルジルコニウム、
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリフェニルジルコニウム、
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリベンジルジルコニウム、
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリメトキシジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリメチルジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリフェニルジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリベンジルジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリメトキシジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)ジメチル(メトキシ)ジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)トリメチルジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)トリフェニルジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)トリベンジルジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)ジメチル(メトキシ)ジルコニウム、
(ジメチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(トリメチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチルジルコニウム、
(テトラメチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
【0034】
(II)式の化合物
ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジエチルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジメトキシジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジヒドリドジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)モノクロロモノヒドリドジルコニウム、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)クロロメチルジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ヒドリドメチルジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
【0035】
(III)式の化合物
エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、
エチレンビス(インデニル)ジクロロジルコニウム、
エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジメチルジルコニウム、
エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジクロロジルコニウム、
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジメチルジルコニウム、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジクロロジルコニウム、
[フェニル(メチル)メチレン](9-フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジメチルジルコニウム、
エチレン(9-フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
シクロヘキシリデン(9-フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
シクロペンチリデン(9-フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
シクロブチリデン(9-フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジメチルシリレン(9-フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジメチルシリレンビス(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
ジメチルシリレンビス(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジメチルシリレンスビス(インデニル)ジクロロジルコニウム
【0036】
上記一般式(I),(II),(III)で示されるシクロペンタジエニル化合物以外の化合物の例としては、前記(IV)式の化合物が挙げられ、例えば下記化合物あるいはこれらのジルコニウムをハフニウム、チタニウムに置き換えた化合物等のアルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子の一種又は二種以上を持つジルコニウム化合物、ハフニウム化合物、チタニウム化合物を挙げることができる。
テトラメチルジルコニウム、
テトラベンジルジルコニウム、
テトラメトキシジルコニウム、
テトラエトキシジルコニウム、
テトラブトキシジルコニウム、
テトラフェノキシジルコニウム、
テトラキス(2-エチルヘキシロキシ)ジルコニウム、
テトラクロロジルコニウム、
テトラブロモジルコニウム、
ブトキシトリクロロジルコニウム、
ジブトキシジクロロジルコニウム、
ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノキシ)ジメチルジルコニウム、
ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノキシ)ジクロロジルコニウム、
ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
また、遷移金属化合物として、下記一般式[U]で示すものを挙げることができる。
【化6】

[式中、Rqは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基であり、Yaは-O-、-S-、-NRs-、-PRs-、またはORs、SRs、NRs2、PRs2から選ばれた中性の2個の原子の供与体リガンドであり、M1は周期律表IVB族から選ばれる元素であり、Zaは、SiRs2、CRs2、SiRs2-SiRs2、CRs2-CRs2、CRs=CRs、またはGeRs2、BRs、BRs2、である。
Rsは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、酸素もしくは窒素もしくはケイ素原子を含む置換基、および20個までの非水素原子をもつそれらの組合せから選ばれた部分であるか、あるいはYa,ZaまたはYaとZaの双方からの2個またはそれ以上のRs基は縮合環を形成する。]
【0042】
化合物(B)としては、必ずしも制限されないが、遷移金属化合物(A)、又はその派生物からカチオン種を形成し得る化合物であればいずれのものでも使用できる。たとえば、遷移金属化合物(A)又はその派生物からイオン性錯体を形成しうるイオン性化合物(B-1)、具体的にはカチオンと複数の基が元素に結合したアニオンとからなる化合物、特にカチオンと複数の基が元素に結合したアニオンとからなる配位錯化合物を好適に使用することができる。このようなカチオンと複数の基が元素に結合したアニオンとからなる化合物としては、下記式(V)あるいは(VI)で示される化合物を好適に使用することができる。
([L1-R7]k+)p([M3Z1Z2…Zn](n-m)-)q
…(V)
([L2]k+)p([M4Z1Z2…Zn](n-m)-)q
…(VI)
(但し、L2はM5,R8R9M6,R103C又はR11M6である)
【0043】
[(V),(VI)式中、L1はルイス塩基、M3及びM4はそれぞれ周期律表のVB族,VIB族,VIIB族,VIII族,IB族,IIB族,IIIA族,IVA族及びVA族から選ばれる元素、好ましくは、IIIA族,IVA族及びVA族から選ばれる元素、M5及びM6はそれぞれ周期律表のIIIB族,IVB族,VB族,VIB族,VIIB族,VIII族,IA族,IB族,IIA族,IIB族及びVIIA族から選ばれる元素、Z1〜Znはそれぞれ水素原子,ジアルキルアミノ基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基,アリールアルキル基,炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基,炭素数1〜20のアシルオキシ基,有機メタロイド基又はハロゲン原子を示し、Z1〜Znはその2以上が互いに結合して環を形成していてもよい。R7は水素原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示し、R8及びR9はそれぞれシクロペンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基,インデニル基又はフルオレニル基、R10は炭素数1〜20のアルキル基,アリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基をを示す。R11はテトラフェニルポルフィリン、フタロシアニン等の大環状配位子を示す。mはM3,M4の原子価で1〜7の整数、nは2〜8の整数、kは[L1-R7],[L2]のイオン価数で1〜7の整数、pは1以上の整数、q=(p×k)/(n-m)である。]
【0044】
上記ルイス塩基の具体例としては、アンモニア、メチルアミン、アニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルアニリン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、メチルジフェニルアミン、ピリジン、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン、p-ニトロ-N,N-ジメチルアニリン等のアミン類、トリエチルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、ジフェニルフォスフィン等のフォスフィン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジエチルチオエーテル、テトラヒドロチオフェン等のチオエーテル類、エチルベンゾエート等のエステル類等を挙げることができる。M3及びM4の具体例としてはB,Al,Si,P,As,Sb等,好ましくはB又はP、M5の具体例としてはLi,Na,Ag,Cu,Br,I,I3等,M6の具体例としてはMn,Fe,Co,Ni,Zn等を挙げることができる。
【0045】
Z1〜Znの具体例としては、例えば、ジアルキルアミノ基としてジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基;炭素数1〜20のアルコシキ基としてメトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基;炭素数6〜20のアリールオキシ基としてフェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基;炭素数1〜20のアルキル基としてメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基;炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基としてフェニル基、p-トリル基、ベンジル基、4-ターシャリ-ブチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基;炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基としてp-フルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基;ハロゲン原子としてF、Cl、Br、I;有機メタロイド基として五メチルアンチモン基、トリメチルシリル基、トリメチルゲルミル基、ジフェニルアルシン基、ジシクロヘキシルアンチモン基、ジフェニル硼素基を挙げることができる。R7,R10の具体例としては、先に挙げたものと同様なものを挙げることができる。R8及びR9の置換シクロペンタジエニル基の具体例としては、メチルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基等のアルキル基で置換されたものを挙げることができるここで、アルキル基は通常炭素数が1〜6であり、置換されたアルキル基の数は1〜5の整数で選ぶことができる。
(V),(VI)式の化合物の中では、M3,M4が硼素であるものが好ましい。
【0046】
(V),(VI)式の化合物の中で、具体的には、下記のものを特に好適に使用できる。
(V)式の化合物
テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸トリ(n-ブチル)アンモニウム、
テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸メチルトリ(n-ブチル)アンモニウム、
テトラフェニル硼酸ベンジルトリ(n-ブチル)アンモニウム、
テトラフェニル硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸メチルトリフェニルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸トリメチルアニリニウム、
テトラフェニル硼酸メチルピリジニウム、
テトラフェニル硼酸ベンジルピリジニウム、
テトラフェニル硼酸メチル(2-シアノピリジニウム)、
テトラフェニル硼酸トリメチルスルホニウム、
テトラフェニル硼酸ベンジルジメチルスルホニウム、
【0047】
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ(n-ブチル)アンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラブチルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラエチルアンモニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(メチルトリ(n-ブチル)アンモニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(ベンジルトリ(n-ブチル)アンモニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルトリフェニルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸アニリニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアニリニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチル(m-ニトロアニリニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチル(p-ブロモアニリニウム)、
【0048】
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ピリジニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(p-シアノピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(N-メチルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(N-ベンジルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(O-シアノ-N-メチルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(p-シアノ-N-メチルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(p-シアノ-N-ベンジルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルスルホニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルジメチルスルホニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラフェニルホスホニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム、
テトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム、
ヘキサフルオロ砒素酸トリエチルアンモニウム、
【0049】
(VI)式の化合物
テトラフェニル硼酸フェロセニウム、
テトラフェニル硼酸銀、
テトラフェニル硼酸トリチル、
テトラフェニル硼酸(テトラフェニルポルフィリンマンガン)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(1,1’-ジメチルフェロセニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸アセチルフェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ホルミルフェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸シアノフェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラフェニルポルフィリンマンガン)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラフェニルポルフィリン鉄クロライド)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラフェニルポルフィリン亜鉛)、
テトラフルオロ硼酸銀、
ヘキサフルオロ砒素酸銀、
ヘキサフルオロアンチモン酸銀、
【0050】
また、(V),(VI)式以外の化合物、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)硼素、トリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)硼素、トリフェニル硼素等も使用可能である。
また、化合物(B)としては、アルミノキサン類(B-2)を用いることもできる。アルミノキサン類としては、具体的には、
【0051】
【化7】

(R16は、炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基,アルケニル基,アリール基,アリールアルキル基等の炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子を示し、これらはそれぞれ独立に、同じでも異なっていてもよい。sは重合度を示し、通常3〜50、好ましくは7〜40である。)
で示される鎖状アルミノキサン。
【0052】
【化8】

(R16は、式(VII)と同じものを示す。また、sは重合度を示し、好ましい繰り返し単位数は3〜50、好ましくは7〜40である。)
で示される繰り返し単位を有する環状アルミノキサン。
(VII)〜(VIII)式の化合物の中で、好ましいのは重合度7以上のメチルアルミノキサン,エチルアルミノキサン,イソブチルアルミノキサンである。さらにアルミノキサンとしては、アルミノキサンを水等の活性水素を有する化合物で変性してなる、一般の溶剤に不溶の変性アルミノキサンであってもよい。
【0053】
前記アルミノキサンの製造法としては、アルキルアルミニウムと水等の縮合剤とを接触させる方法を挙げることができるが、その手段に特に限定はなく、公知の方法に準じて反応させればよい。例えば、▲1▼有機アルミニウム化合物を有機溶剤に溶解しておき、これを水と接触させる方法、▲2▼重合時に当初有機アルミニウム化合物を加えておき、後に水を添加する方法、▲3▼金属塩等に含有されている結晶水、無機物や有機物への吸着水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法、▲4▼テトラアルキルジアルミノキサンにトリアルキルアルミニウムを反応させ、さらに水を反応させる方法等がある。
【0054】
さらに、化合物(B)としてはルイス酸を用いてもよい。
このルイス酸(B-3)としては、特に制限はなく、有機物でも、固体状無機物でもよい。有機物としては、硼素化合物、アルミニウム化合物、無機物では、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物等が好適に用いられる。
アルミニウム化合物としては、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウムメチル、(1,1’-ビ-2-ナフトキシ)アルミニウムメチル、マグネシウム化合物としては、塩化マグネシウム、ジエトキシマグネシウム、アルミニウム化合物としては、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硼素化合物としては、トリフェニル硼素、トリス(ペンタフルオロフェニル)硼素、トリス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]硼素、トリス[(4-フルオロメチル)フェニル]硼素、トリメチル硼素、トリエチル硼素、トリ(n-ブチル)硼素、トリス(フルオロメチル)硼素、トリス(ペンタフルオロエチル)硼素、トリス(ノナフルオロブチル)硼素、トリス(2,4,6-トリフルオロフェニル)硼素、トリス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]硼素、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)硼素、ビス(ペンタフルオロフェニル)フルオロ硼素、ジフェニルフルオロ硼素、ビス(ペンタフルオロフェニル)クロロ硼素、ジメチルフルオロ硼素、ジエチルフルオロ硼素、ジ(n-ブチル)フルオロ硼素、(ペンタフルオロフェニル)ジフルオロ硼素、フェニルジフルオロ硼素、(ペンタフルオロフェニル)ジフルオロ硼素、フェニルジフルオロ硼素、(ペンタフルオロフェニル)ジクロロ硼素、メチルジフルオロ硼素、エチルジフルオロ硼素、(n-ブチル)ジフルオロ硼素を挙げることができる。
【0055】
ここで、化合物(A)と化合物(B)との混合割合(モル比)は、化合物(B)として化合物(B-1)を用いた場合は10:1〜1:100、好ましくは2:1〜1:10、化合物(B-2)を用いた場合は1:1〜1:100,000、好ましくは1:10〜1:10,000である。
【0056】
化合物(A)と化合物(B-3)との混合割合(モル比)は1:0.1〜1:2,000、好ましくは1:0.2〜1:1,000、特に好ましくは1:0.5〜1:500である。また、化合物(B)としては、(B-1)、(B-2)及び(B-3)等を単独で用いることができるが、これらの二種以上を組合せて用いることもできる。
【0057】
(C)成分である有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(IX)で示されるものを挙げることができる。
R17rAlQ3-r …(IX)
(R17は炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基、Qは水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基を示す。rは0〜3の整数である。)
式(IX)の化合物として、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド,ジメチルアルミニウムフルオリド,ジイソブチルアルミニウムハイドライド,ジエチルアルミニウムハイドライド,エチルアルミニウムセスキクロリド等を挙げることができる。
【0058】
また、(C)成分の使用量は、(A)成分1モルに対し通常0〜2,000モル、好ましくは5〜1,000モル、特に好ましくは10〜500モルである。(C)成分を用いると重合活性の向上を図ることができるが、あまり多いと有機アルミニウム化合物が重合体中に多量に残存し好ましくない。
【0059】
触媒成分の使用態様には制限はなく、例えば(A)成分,(B)成分を予め接触させ、あるいはさらに接触生成物を分離,洗浄して使用してもよく、重合系内で接触させて使用してもよい。また、(C)成分は、予め(A)成分、(B)成分あるいは(A)成分と(B)成分との接触生成物と接触させて用いてもよい。接触は、あらかじめ接触させてもよく、重合系内で接触させてもよい。さらに、触媒成分は、モノマー、重合溶媒に予め加えたり、重合系内に加えることもできる。なお、触媒成分は、必要により無機あるいは有機の担体に担持して用いることもできる。
【0060】
反応原料に対する触媒の使用割合は、原料モノマー/上記(A)成分(モル比)あるいは原料モノマー/上記(B)成分(モル比)が1〜109、特に100〜107となることが好ましい。
【0061】
重合方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、気相重合等のいずれの方法を用いてもよい。また、バッチ法でも連続法でもよい。
重合溶媒をとしては、非芳香族系溶媒を用いる。例えば、シクロペンタン,メチルシクロペンタン,シクロヘキサン,メチルシクロヘキサン,シクロオクタン等の脂環式炭化水素、ヘキサン,オクタン,デカン,ドデカン等の脂肪族炭化水素、クロロホルム,ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等を用いることができる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上のものを組合せてもよい。また、α-オレフィン等のモノマーを溶媒として用いてもよい。
【0062】
重合条件に関し、重合温度は50〜250℃が好ましく、70〜220℃とすることがさらに好ましく、中でも80〜200℃が最も好ましい。
重合時間は通常1分〜10時間、反応圧力は常圧〜100kg/cm2G、好ましくは常圧〜50kg/cm2Gである。
共重合体の分子量の調節方法としては、各触媒成分の使用量や重合温度の選択、さらには水素存在下での重合反応によることができる。なお、得られる共重合体の濃度は、5〜500グラム/リットルが好ましく10〜400グラム/リットルがさらに好ましい。
【0063】
本発明で用いる環状オレフィン系樹脂においては、上記のα-オレフィンと環状オレフィン類とのランダム付加共重合体(a-1)中に存在する二重結合の少なくとも一部を水素化することによって得られる水添物(a-2)をも使用することができる。
【0064】
この環状オレフィン共重合体を、水素化(水添)する方法は、通常ポリマーの有機溶剤溶液中において行なう。この溶剤としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶剤が使用される。環状オレフィン系共重合体溶液の濃度は適宜定めうるが、通常0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%の濃度で水素化が実施される。
本発明の方法において使用される水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化に際して一般に使用されている触媒であれば使用可能であり、特に制限されないが、たとえば次のようなものを挙げることができる。
不均一系触媒としては、ニッケル、パラジウム、白金またはこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた固体触媒、例えばニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどを挙げることができる。また、ニッケル系触媒としては、ラネーニッケル触媒など、白金系触媒では、酸化白金触媒、白金黒などを挙げることができる。均一系触媒としては、周期律表VIII族の金属を基体とするもの、例えばナフテン酸コバルト/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n-ブチルリチウム、ニッケルアセチルアセトネート/トリエチルアルミニウムなどのNi,Co化合物と周期律表IA,IIA,IIIB 族から選ばれる金属の有機金属化合物からなるもの、又はRh化合物などを挙げることができる。
また、エム・エス・サロアン(M.S.Saloan)らが開示しているチーグラー系水素化触媒(J.Am.Chem.Soc.,85,4014(1983))も有効に使用できる。これらの触媒としては、例えば、次のようなものを挙げることができる。
Ti(O-iC3H7)4-(iC4H9)3Al、
Ti(O-iC3H7)4-(C2H5)3Al、
(C2H5)2TiCl2-(C2H5)3Al、
Cr(acac)3-(C2H5)3Al、
Na(acac)3-(iC4H9)3Al、
Mn(acac)3-(C2H5)3Al、
Fe(acac)3-(C2H5)3Al、
Ca(acac)2-(C2H5)3Al、
(C2H5COO)3Co-(C2H5)3Al、
水素添加(水素化)反応は、触媒の種類により均一系または不均一系で、1〜150気圧の水素圧化、0〜180℃、好ましくは20〜120℃の反応温度で実施される。水素添加率は、水素圧、反応温度、反応時間、触媒濃度等の反応条件を変えることによって0〜100%の範囲で任意に調節することができるが、上記環状オレフィン系共重合体水添物が優れた熱安定性を示すためには、共重合体中の不飽和結合の30%以上が水素添加されるのが好ましく、より好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上の水添率である。
後処理としては、水素化反応後、遠心分離、濾過あるいはチーグラー系触媒の場合は酸による触媒失活等によって触媒を除去し、次いで反応生成物を多量のアセトンまたはアルコールなどの極性溶剤中で沈殿させ、その後溶剤を除去、乾燥することによりオレフィン系共重合体の水素化物を得ることができる。
【0065】
また、可溶性バナジウム系の触媒としては、反応溶媒として用いる炭化水素溶媒に可溶性のバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を挙げることができる。ここで触媒として用いられるバナジウム化合物としては、式VO(OR)aVb、もしくは、式V(OR)cXdで表わされる化合物を挙げることができる。ただし、上記の式において、Rは炭化水素基であり、0≦a≦3、0≦b≦3、2≦a+b≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦c+d≦4の関係を有する。
【0066】
さらに、バナジウム化合物は、上記式で表わされるバナジウム化合物の電子供与体付加物であってもよい。これらのバナジウム化合物の例としては、VOCl3、VO(OC2H5)Cl2、VO(OC2H5)2Cl、VO(O-iso-C3H7)Cl2、VO(O-n-C4H9)Cl2、VO(OC2H5)3、VOBr2、VCl4、VOCl2、VO(O-n-C4H9)3およびVCl3・2(OC8H17OH)等のバナジウム化合物を挙げることができる。これらのバナジウム化合物は単独で、または組合わせて使用することができる。
【0067】
上記のバナジウム化合物と付加物を形成する電子供与体の例としては、炭素数1〜18のアルコール類、炭素数6〜20のフェノール類(これらのフェノール類は低級アルキル基を有してよい)、炭素数3〜15のケトン類、炭素数2〜15のアルデヒド、炭素数2〜30のカルボン酸、有機酸または無機酸のエステル類、炭素数2〜15の酸ハライド類、炭素数2〜20のエーテル類、酸アミド類、酸無水物、アルコキシシラン等の含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアネート等の含窒素電子供与体を挙げることができる。これらの電子供与体は、単独であるいは組合わせて使用することができる。
ここで使用される有機アルミニウム化合物としては、分子内に少なくとも1個のAl-炭素結合を有する化合物を用いることができる。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
2.熱可塑性樹脂(b)
本発明に用いられる積層用樹脂は、前述のように環状オレフィン系樹脂(a)を単独で含むものでもよく、また環状オレフィン系樹脂(a)、及び他の熱可塑性樹脂(b)の組成物であってもよい。
このような熱可塑性樹脂(b)としては、特に制限はないが、具体的には、高密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,直鎖低密度ポリエチレン等のポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体およびその金属塩、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、ポリ1-ブテン、1-ブテン・4-メチル-1ペンテン共重合体、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン等を挙げることができる。
また、熱可塑性樹脂としては、その他に、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリカーボネート、ポリアリーレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール等を使用することができる。
熱可塑性樹脂として特に好ましいのは、HDPE、LDPE、L-LDPE、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等である。
なお、熱可塑性樹脂は必要により二種以上を併用することができる。
このような熱可塑性樹脂を含有する組成物を用いることによって樹脂の耐熱性,接着性を改良することができる。
この熱可塑性樹脂の配向割合については特に制限はなく、他の成分である環状オレフィン系樹脂の物性にもよるが、組成物全体の0.1〜99.9重量%特に0.5〜90重量%とすることが好ましい。
また、本発明においては、必要により、この熱可塑性樹脂のほかに他の樹脂、エラストマー等を配合することもできる。例えば、極性基含有ポリマーの添加により、染色性,帯電防止性,親水性を付与することができ、また、充填剤あるいは安定剤等の種々の添加剤を配合することもできる。配合可能な添加剤として、具体的には、下記のものを例示することができる。
充填剤としては、無機充填剤あるいは有機充填剤があり、特に制限なく公知のものを用いることができる。使用可能な充填剤として、例えば、シリカ,けい藻土,アルミナ,酸化チタン,酸化マグネシウム,軽石粉,軽石バルーン,水酸化アルミニウム,窒化アルミニウム,水酸化マグネシウム,塩基性炭酸マグネシウム,ドロマイト,硫酸カルシウム,チタン酸カリウム,チタン酸バリウム,硫酸バリウム,亜硫酸カルシウム,タルク,クレー,マイカ,ケイ酸カルシウム,モンモリロナイト,ベントナイト,カーボンブラック,グラファイト,アルミニウム粉,硫化モリブデンなどを例示することができる。
また、各種添加剤としては、耐熱安定剤,耐候安定剤,耐電防止剤,スリップ剤,アンチブロッキング剤,防曇剤,滑剤,発泡剤,染料,顔料,天然油,合成油,ワックス等を配合することができ、その配合割合は適宜決定することができる。例えば、任意成分として配合される安定剤として、具体的には、テトラキス(メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2’-オキザミドビス(エチル-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などのフェノール系酸化防止剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2-ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート等の多価アルコール脂肪酸エステルなどを挙げることができる。これらは単独で配合してもよいが、組合わせて配合してもよく、例えばテトラキス(メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンとステアリン酸亜鉛及びグリセリンモノステアレートとの組合わせ等を例示することができる。
【0073】
3.グラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)
本発明で用いられるグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)は、上述の環状オレフィン系樹脂(a)をグラフトモノマーを用いてグラフト変性することにより調製することができる。
【0074】
本発明で用いられるグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を製造するために用いられるグラフトモノマーとしては、不飽和カルボン酸又はその誘導体が好適である。このような不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸TM(エンドシス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)を挙げることができる。さらに、上記の不飽和カルボン酸の誘導体としては、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミドおよび不飽和カルボン酸のエステル化合物を挙げることができる。このような誘導体の具体的な例としては、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートを挙げることができる。
【0075】
これらのグラフトモノマーは、単独で使用することもできるし、組み合わせて使用することもできる。上記のようなグラフトモノマーのうちでは、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好ましく、さらにマレイン酸、ナジック酸TMもしくはこれらの酸無水物、またはグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートが特に好ましい。
【0076】
本発明で使用されるグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)は、例えば、上記のようなグラフトモノマーと未変性の環状オレフィン系樹脂(a)とを用いて、従来公知の種々の方法を採用して変性することにより製造することができる。たとえば、環状オレフィン系樹脂(a)を溶融させ、グラフトモノマーを添加してグラフト重合させる方法、又は溶媒に溶解させグラフトモノマーを添加してグラフト共重合させる方法がある。さらに、グラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を製造する方法としては、未変性の環状オレフィン系樹脂(a)を所望のグラフト変性率になるようにグラフトモノマーを配合して変性する方法、予め高グラフト変性率のグラフト変性環状オレフィン樹脂(c)を調製し、この高変性率のグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を未変性の環状オレフィン樹脂(a)で希釈して所望の変性率のグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)を製造する方法がある。本発明においては、いずれの方法により製造したグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)も使用することができる。そして、本発明において使用されるグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)の変性率は、通常は、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%の範囲内にある。
【0077】
本発明で用いるグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)は、上記のようにして得られたグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)をそのまま使用してもよいし、さらに、このグラフト変性環状オレイン系樹脂(c)に未変性の環状オレフィン系樹脂(a)を配合して用いることもできる。この場合において、グラフト変性環状オレフィン系樹脂と未変性の環状オレフィン系樹脂との混合物中におけるグラフト変性率は、通常は、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%の範囲内に調製される。
【0078】
このような反応はラジカル開始剤の存在下に行うことが好ましい。ラジカル開始剤を用いることにより前記グラフトモノマーを効率よくグラフト共重合させることができる。グラフト反応は通常60〜350℃の温度で行われる。ラジカル開始剤は、変性される環状オレフィン系樹脂(a)100重量部に対して通常0.001〜5重量部の範囲内の量で使用される。
【0079】
また、必要に応じて、グラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)または、グラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)及び環状オレフィン系樹脂(a)の組成物に、前記他の熱可塑性樹脂(b)を配合してもよい。熱可塑性樹脂(b)の配合比については、前述の場合と同様である。
【0080】
4.環状オレフィン系樹脂(a)の諸物性
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が50℃以下であることが必要である。このような樹脂を用いれば、ガラス転移温度(Tg)以上の温度において柔らかく、優れた弾性回復性を有する積層弾性体を得ることができるという効果がある。好ましいガラス転移温度(Tg)は-30〜45℃、中でも-30〜40℃が最も好ましい。このガラス転移温度(Tg)は、目的とする用途、要求される物性に応じて樹脂に用いられる重合体又は共重合体の単量体の種類、組成を変更することにより、任意に変えることができる。
【0081】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.05〜10dl/gであることが好ましい。極限粘度[η]が0.05dl/g未満であると積層弾性体の強度が低下することがあり、10dl/gを超えると積層弾性体への成形性が悪くなることがある。より好ましい極限粘度[η]は0.1〜8dl/gである。
【0082】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂は、メルトインデックス(MI)[190℃,2.16kg]が0.001〜10,000g/10分であることが好ましい。
0.001g/10分未満だと成形性が著しく悪化することがあり、10,000g/10分を超えると積層弾性体の強度が低下する場合がある。
さらに好ましくは、0.01〜5,000g/10分であり、中でも0.1〜100g/10分が最も好ましい。
【0083】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂の弾性回復率は20%以上であり、30%以上がさらに好ましい。
20%未満であると、たとえばゴム栓が変形したときに弾性体と積層用樹脂との間に剥れを生ずることがある。
【0084】
また、環状オレフィン系樹脂の分子量は特に制限されるものではないが、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量Mwが1,000〜5,000,000、特に5,000〜1,000,000、数平均分子量Mnが500〜1,000,000、特に2,000〜800,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.3〜4、特に1.4〜3であることが好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が4より大きくなると低分子量体含有量が多くなり、積層弾性体にした時にべたつきの原因となることがある。
【0085】
また、環状オレフィン系樹脂は、X線回折法により測定した結晶化度が0〜40%であることが好ましい。結晶化度が40%を超えると、積層材料の弾性回復性,透明性が低下することがある。より好ましい結晶化度は0〜30%、特に0〜25%である。
【0086】
さらに、環状オレフィン系樹脂は、DSCによるブロードな融解ピークが90℃未満であることが好適である。DSCによるシャープな融解ピークが90℃以上にあるような樹脂は、重合成分の配列のランダム性が不充分で、積層材料に成形したときに弾性が不充分になることがある。なお、DSCによるブロードな融解ピークは、10〜85℃の範囲にあることがより好ましい。
DSC測定おいて、本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂の融点(融解)ピークはシャープにはみられず、特に低結晶化度のものにあっては、通常のポリエチレンの測定条件レベルではほとんどピークがでない。
【0087】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂としては、上述した範囲の物性を有するもののみからなる樹脂であってもよく、上記範囲外の物性を有する樹脂が一部含まれているものであってもよい。前者の場合には、ガラス転移温度(Tg)が50℃以下である異なるTgを有する樹脂の混合物であってもよい。後者の場合には、全体の物性値が上記範囲に含まれていればよい。
【0088】
5.弾性体
本発明に用いられる弾性体としては、特に制限はなく、具体的には、熱可塑性ポリウレタン、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・イソプレンブロック共重合体等を挙げることができる。
また、ゴム類として、具体的には、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、EPDM、塩素化ポリスチレンゴム、ウレタンゴム等を挙げることができる。また、樹脂の発泡体等であってもよい。
【0089】
6.積層方法
本発明において、弾性体表面に環状オレフィン系樹脂(a)又はグラフト変性環状オレフィン系樹脂(c)等を含む積層用樹脂を積層する方法としては特に制限はなく、たとえば、この樹脂(a)または(c)が汎用溶媒に可溶であるので、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、テトラリン、デカリン、1,2,4-トリクロロベンゼン等の脂肪族又は芳香族溶媒、又はこれらの混合溶媒に1〜10重量%程度に混合して弾性体表面に塗布又は散布した後乾燥する方法,又は公知の技術(Tダイキャスト,インフレーション等の成形)によりフィルム状にして弾性体表面に積層する方法を挙げることができる。
なお、弾性体表面への積層は、必ずしも全面である必要はなく、それぞれの使用目的によって適宜積層する形態を決定することができる。
【0090】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。なお、物性の測定は下記によった。
分子量分布(Mw/Mn)
ウォーターズ社製ALC/GPC-150C[カラム:東ソー社製TSKHM+GMH-6×2],溶媒:1,2,4-トリクロルベンゼン、温度:135℃、ポリエチレン換算で測定した。
弾性回復率
オートグラフを用い、引張速度62mm/分で、幅6mm,クランプ間50mm(L0)の測定片を150%伸ばして引張り、5分間そのままの状態を保った後、はね返させることなく急に収縮させ、1分間後にクランプ間のシートの長さ(L1)を測定し、下記式により求めた。
弾性回復率(%)=[1-{L1-L0}/L0]×100
メルトインデックス(MI)
190℃,2.16kgの条件でJIS-K7210に準じて測定を行なった。
参考例1(エチレンと2-ノルボルネンとの共重合)
窒素雰囲気下、室温において、30リットルのオートクレーブにトルエン15リットル、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)23ミリモル、テトラブトキシジルコニウム38マイクロモル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸アニリニウム60マイクロモルをこの順番に入れ、続いて2-ノボルネンを70重量%含有するトルエン溶液2.9リットル(2-ノルボルネンとして19モル)を加えた。80℃に昇温した後、エチレン分圧が7.5kg/cm2になるように連続的にエチレンを導入しつつ、110分間反応を行なった。
反応終了後、ポリマー溶液を15リットルのメタノール中に投入してポリマーを析出させた。このポリマーを濾取して乾燥し、環状オレフィン系共重合体(A1)を得た。
環状オレフィン系共重合体(A1)の収量は、3.21kgであった。重合活性は928kg/gZrであった。
【0091】
得られた環状オレフィン系共重合体(A1)の物性は下記の通りであった。13C-NMRの30ppm付近に現われるエチレンに基づくピークとノルボルネンの5及び6位のメチレンに基づくピークの和と32.5ppm付近に現われるノルボルネンノ7位のメチレン基に基づくピークとの比から求めたノルボルネン含量は10.1モル%であった。
135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、1.03dl/g、X線回折法により求めた結晶化度は2.0%であった。
測定装置として東洋ボールディング社製バイプロン11-EA型を用い、巾4mm,長さ40mm,厚さ0.1mmの測定片を昇温速度3℃/分、周波数3.5Hzで測定し、この時の損失弾性率(E”)のピークからガラス転移温度(Tg)を求めたところ、Tgは4℃であった。
重量平均分子量Mw,数平均分子量Mn,分子量分布(Mw/Mn)を求めたところ、Mwは62,300、Mnは33,900、Mw/Mn=1.84であった。
パーキンエルマー社製7シリーズのDSCによって10℃/分の昇温速度で、-50℃〜150℃の範囲で融点(Tm)を測定したところ、Tmは78℃(ブロードなピーク)であった。
【0092】
参考例2(エチレンと2-ノルボルネンとの共重合)
参考例1において、テトラブトキシジルコニウムの使用量を75マイクロモル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸アニリニウムの使用量を150マイクロモル、2-ノルボルネンの使用量を7.5モル、エチレン分圧を6kg/cm2とし、かつ重合温度を90℃としたこと以外は、参考例1と同様にして環状オレフィン系共重合体(A2)を得た。
環状オレフィン系共重合体(A2)の収量は2.66kgであった。重合活性は389kg/gZrであった。
また、参考例1と同様にして求めたノルボルネン含量は5.2モル%、極限粘度[η]は1.17dl/g、結晶化度は4.7%、Tgは0℃、Mwは73,600、Mnは36,400、Mw/Mnは2.02、Tmは92℃(ブロードなピーク)であった。
【0093】
【0094】
参考例3(エチレンとジシクロペンタジエンの共重合)
乾燥した5000mlの三口フラスコの中央に撹拌機、滴下ロートを取り付けた。窒素雰囲気下に脱水したトルエン2500ml,脱水したDCP150gを入れ、触媒としてエチレンアルミニウムセスキクロリド31g、ジクロロエトキシオキソバナジウム4.2gを加え、乾燥したエチレンガスと窒素ガスの混合ガス(1/2)を7分間通じ、さらに20℃で60分間該混合ガスを通じて、30分間重合した。メタノール30mlを添加して共重合を停止し、樹脂体を析出させ、アセトンで洗浄し、約60℃で乾燥して共重合体88gを得た。この共重合体中DCPは68mol%であった。
【0095】
容量1000mlの撹拌機付きオートクレーブ、上記で得た共重合樹脂10重量%のシクロヘキサン溶液500gとパラジウムカーボン5gとを入れ、反応器内を水素に置換後、撹拌しつつ120℃に昇温した。次に同温度で水素圧70気圧に昇圧し、同圧に水素を補充しながら8時間水素添加を行なった。次に遠心分離及び濾過により、反応物中の触媒を除去し、多量のアセトン-イソプロピルアルコール(1:1)混合溶媒中に沈殿させ、濾過、乾燥して樹脂(B)を48g得た。この樹脂(B)の[η]は1.53、Tgは130℃であった。
【0096】
実施例1〜2
以上の参考例1〜2で得られた本発明の樹脂(A1)〜(A2)を用いてゴム栓基体に積層被覆を行った。基体としたBRゴム配合は以下のように製造した。
BR(Nipol BR1242S,日本ゼオン社製,cis含量37.2%,ML1+4 100℃ 53)…100重量部
粉末ポリエチレン(製鉄化学社製)…3重量部
酸化チタン(石原産業社製)…15重量部
焼成クレー(バーゲスピグメント社製)…20重量部
2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン…1重量部
ビニルトリス(β-メトキシ)シラン…1重量部
BRゴム配合操作及び加硫操作はSRIS(日本ゴム協会規格)3603に準拠して行なう。加硫条件は温度160℃×12分間で成形する。成形したゴム製品は図1のゴム基体1の形状をしており、このゴム基体を本発明の樹脂(A1)〜(A2)のトルエン溶液に2回以上浸漬して膜の厚さを約0.1mmとし、温度約70℃にて完全に乾燥して、図1に示すようにゴム表面に被膜を形成した。
以上で得られた各試料、およびゴム基体のみで樹脂積層のないもの(比較例1)につき、衛生試験としてJP11の「43.輸液用ゴム栓の試験法]に準拠した試験を行い、その結果を表1に示す。またこれらのゴム栓を薬液を充填したガラス容器に打栓し、アルミキャップを巻き締めたものについて特殊な衛生試験を行いその結果を表2に示す。
【0097】
特殊な衛生試験の詳細は下記の通りである。
微粒子数(ゴム栓より発生する粒子数の試験);硬質ガラス瓶中にゴム栓10個を入れ、無塵水300ml加えて、容器口をフィルムで包み、手にて2回転/秒程度にて20秒間振動する。その後1時間静置してから光遮蔽型自動微粒子計測器(HIAC社製)にて水中の微粒子の個数を測定する。なお、注射液中の5μm以上の微粒子の存在は血管を閉塞する等の問題を起こすので最重要項目となっている。
【0098】
ゴム破片の剥離(Fragmentation);容量100mlの瓶に水5mlを入れ、ゴム栓を打栓し、次にアルミキャップを巻き締める。試験針22G(0.70×32mm)を付けた注射筒に2mlの水をいれ、これをゴム栓の針入れ部に20回貫通させる。20回目の貫通時に注射筒内の水を瓶内に注入した後注射針を引き抜く、瓶内を振動したのち、ゴム栓を取り除き、内容液をろ過し、濾紙上のゴム片個数を数える。本試験法は、BSの方法を改良したもので、BS規格はゴム片3個以下であるが、現在当該業界では2個以内が要望されている。
【0099】
ヘッドスペース中のガス成分試験;前記ガラス瓶中に2重量%食塩水溶液8mlを入れ、ゴム栓を打栓し、さらにアルミキャップを巻き締める。このガラス瓶を耐圧容器にて温度80±1℃にて60分間加熱した後、約10時間放置する。次にガス用シリンジにて瓶内のヘッドスペースのガス5mlを採取し、これをガスクロマトグラフ法にて測定する。カラム:10%OV-101(180〜200メッシュWHP)、キャリヤーガスHe50ml/分、カラム温度100〜200℃(4℃/分昇温)、ピークの有無、大小を見る。本試験は近年問題になっているゴム及び配合剤による極微量ガス発生を調べる試験である。
【0100】
耐アルカリ溶液試験;耐アルカリ容器にゴム栓10個を入れ、ゴム栓重量の10倍量の炭酸ソーダ0.5重量%溶液を加えた後、このゴム栓を打栓してアルミキャップを巻き締める。次に耐圧容器にて温度80℃にて30分間蒸気加熱する。室温まで放置、冷却後ゴム栓を除き、試験液を石英セルにて波長430nmと650nmの可視部の透過率を測定する。95%以上を合格とする。本試験は、ゴムと薬液との関係を試験する基本的な試験で透過率の低いゴム製品は採用不適である。
【0101】
吸水試験;加硫成形したゴム製品を温度80℃常圧で3時間乾燥する。次に乾燥剤入りのデシケーター中に約1時間放置後その重量(D)を精秤する。次にこのゴム栓の10倍量の精製水中に浸し、そのまま耐圧容器内で温度80±1℃、30分間加熱する。冷却後、ゴム栓のみをデシケーター中に30分間放置して表面の水を取り、その時の重量(E)を精秤し、((E)-(D)/(D)×100)(%)を求め、重量の増加が2重量%以下を合格とする。
【0102】
滑性試験;ゴム栓をフッ素樹脂板の上に置き、この板の一端を固定し、他の一端を一定の速度で上昇する時にゴム栓は移動する。この移動始めの角度を測定する。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
実施例3〜4及び比較例2
実施例1〜2で得られたゴム栓、および参考例3で得られた環状オレフィン系樹脂(B)を用いた以外は実施例1〜2と同様にして作成したゴム栓(比較例2)を用い、これらのゴム栓を厚み方向に30%圧縮変形させ、1時間その状態で保持した後、元にもどすという操作を行い(実施例3〜4、および比較例2)、積層した被膜の剥れ、破れ等の変化を調べた。結果を表3に示す。この表に示すように、本発明で得られた環状オレフィン系樹脂を積層したゴム栓は、JP11の規格値に合格した。また、圧縮等の変形に対しても剥れ、破れ等を生じなかった。
【0106】
【表3】

【0107】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明に用いる樹脂積層弾性体は、弾性体とその表面に積層される樹脂を含有する積層用樹脂との接着性に優れ、かつ、その積層用樹脂自体が弾性、柔軟性に優れているため、弾性体の変形時に破れや剥れを生ずることがない。
また、積層用樹脂が医薬的、化学的に不活性であるため薬液等に浸漬した場合でも積層用樹脂等が溶出することがない。従って、薬液等を汚染することがなく、また、防湿性が高いため周囲の環境によって変質することがなく医療用、食品用の部材に用いた場合でも安全を確保し衛生を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のゴム栓の実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…ゴム基体(弾性体)
2…積層用樹脂
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-01-04 
出願番号 特願平5-151467
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B32B)
P 1 651・ 113- YA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 菊地 則義
鴨野 研一
登録日 2002-03-08 
登録番号 特許第3285666号(P3285666)
権利者 出光興産株式会社
発明の名称 食品又は医薬品用材料  
代理人 田中 有子  
代理人 渡辺 喜平  
代理人 渡辺 喜平  
代理人 田中 有子  
代理人 石川 祐子  
代理人 内田 明  
代理人 萩原 亮一  
代理人 渡部 崇  
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