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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  C08F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
管理番号 1114611
異議申立番号 異議2003-72455  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-03-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-02 
確定日 2005-02-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3402950号「エチレン・スチレン共重合体」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3402950号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 (1)手続の経緯
本件特許3402950号の発明は、平成8年8月27日に出願され、平成15年2月28日にその特許権の設定登録がなされ、その後、電気化学工業株式会社より特許異議の申立てがなされ、それに基づく取消理由通知がなされ、それに対して、その指定期間内である平成16年12月7日に、特許異議意見書が提出されるとともに、訂正請求がなされ、同時に、特許異議申立人に対し審尋がなされ、それに対して回答書が提出されたものである。
(2)訂正の適否についての判断
ア、訂正の内容
訂正事項a:特許請求の範囲の訂正
a-1、請求項1の
「【請求項1】以下の(1) 〜(4) を満足するエチレン・スチレン共重合体。
(1) スチレン含有量が3〜50mol%の範囲にある
(2) 密度が0.930〜1.05g/cm3 の範囲にある
(3) デカリン溶液の還元粘度(ηsp/C(dl/g))と濃度(C(g/dl))の関係から求めた固有粘度〔η〕が0.2〜5.0の範囲にある
(4) 示差走査型熱量計(DSC)から求めたガラス転移温度(Tg(℃))とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(I) を満足する
-30.00+1.05×St≧Tg≧-37.00+1.05×St・・・(I) 」を、
「【請求項1】以下の(1) 〜(5) を満足するエチレン・スチレン共重合体(ただし、エチレンとスチレンの交互構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクダイアッド分率で0.95を超える共重合体を除く)。
(1) スチレン含有量が3〜50mol%の範囲にある
(2) 密度が0.930〜1.05g/cm3 の範囲にある
(3) デカリン溶液の還元粘度(ηsp/C(dl/g))と濃度(C(g/dl))の関係から求めた固有粘度〔η〕が0.2〜5.0の範囲にある
(4) 示差走査型熱量計(DSC)から求めたガラス転移温度(Tg(℃))とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(I) を満足する
-30.00+1.05×St≧Tg≧-37.00+1.05×St・・・(I)
(5)ヘイズメータから求めたヘイズ(%)とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(VI)を満足する
ヘイズ(%)≦11.4982-0.2883×St・・・(VI)」と訂正する。
a-2、請求項2の
「【請求項2】 以下の(5) を満足する請求項1に記載のエチレン・スチレン共重合体。
(5) 弾性率(E(dyne/cm2 )とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(II)を満足する
logE≦8.850-0.0342×St・・・(II)」を、
「【請求項2】 以下の(6) を満足する請求項1に記載のエチレン・スチレン共重合体。
(6) 弾性率(E(dyne/cm2 )とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(II)を満足する
logE≦8.850-0.0342×St・・・(II)」と訂正する。
訂正事項b:発明の詳細な説明の訂正
b-1、明細書の段落【0005】中の
「(1)以下の(1) 〜(4) を満足するエチレン・スチレン共重合体。
(1) スチレン含有量が3〜50mol%の範囲にある
(2) 密度が0.930〜1.05g/cm3 の範囲にある
(3) デカリン溶液の還元粘度(ηsp/C(dl/g))と濃度(C(g/dl))の関係から求めた固有粘度〔η〕が0.2〜5.0の範囲にある
(4) 示差走査型熱量計(DSC)から求めたガラス転移温度(Tg(℃))とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(I) を満足する
-30.00+1.05×St≧Tg≧-37.00+1.05×St・・・(I)
(2)以下の(5) を満足する上記(1)に記載のエチレン・スチレン共重合体。
(5) 弾性率(E(dyne/cm2 )とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(II)を満足する
logE≦8.850-0.0342×St・・・(II)」を、
「(1)以下の(1) 〜(5) を満足するエチレン・スチレン共重合体(ただし、エチレンとスチレンの交互構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクダイアッド分率で0.95を超える共重合体を除く)。
(1) スチレン含有量が3〜50mol%の範囲にある
(2) 密度が0.930〜1.05g/cm3 の範囲にある
(3) デカリン溶液の還元粘度(ηsp/C(dl/g))と濃度(C(g/dl))の関係から求めた固有粘度〔η〕が0.2〜5.0の範囲にある
(4) 示差走査型熱量計(DSC)から求めたガラス転移温度(Tg(℃))とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(I) を満足する
-30.00+1.05×St≧Tg≧-37.00+1.05×St・・・(I)
(5) ヘイズメータから求めたヘイズ(%)とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(VI)を満足する
ヘイズ(%)≦11.4982-0.2883×St・・・(VI)
(2)以下の(6) を満足する上記(1)に記載のエチレン・スチレン共重合体。
(6)弾性率(E(dyne/cm2 )とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(II)を満足する
logE≦8.850-0.0342×St・・・(II)」と訂正する。
b-2、明細書の段落【0006】中の
「本発明のエチレン・スチレン共重合体は、以下の(1) 〜(4) を満足する重合体である。
(1) スチレン含有量が3〜50mol%の範囲にある。
(2) 密度が0.930〜1.05g/cm3 の範囲にある。
(3) デカリン溶液の還元粘度(ηsp/C(dl/g))と濃度(C(g/dl))との間には、関係式(III)
ηsp/C=〔η〕+K’〔η〕2 C ・・・(III)
(〔η〕:固有粘度 )
が成立し、これから求めた固有粘度〔η〕が0.2〜5.0の範囲にある。
(4) 示差走査型熱量計(DSC)から求めたガラス転移温度(Tg(℃))とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(I)
-30.00+1.05×St≧Tg≧-37.00+1.05×St・・・(I)
の範囲にある。スチレン含有量が3mol%未満では、弾性回復性におけるスチレンの添加効果が得られない。一方、50mol%を超えると十分な衝撃強度が得られない。好ましいスチレン含有量としては、5〜40mol%の範囲であり、さらに好ましくは、14〜30mol%の範囲である。」を、
「本発明のエチレン・スチレン共重合体は、以下の(1) 〜(5) を満足する重合体(ただし、エチレンとスチレンの交互構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクダイアッド分率で0.95を超える共重合体を除く)である。
(1) スチレン含有量が3〜50mol%の範囲にある。
(2) 密度が0.930〜1.05g/cm3 の範囲にある。
(3) デカリン溶液の還元粘度(ηsp/C(dl/g))と濃度(C(g/dl))との間には、関係式(III)
ηsp/C=〔η〕+K’〔η〕2 C・・・(III)
(〔η〕:固有粘度 )
が成立し、これから求めた固有粘度〔η〕が0.2〜5.0の範囲にある。
(4) 示差走査型熱量計(DSC)から求めたガラス転移温度(Tg(℃))とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(I)
-30.00+1.05×St≧Tg≧-37.00+1.05×St・・・(I)
の範囲にある。スチレン含有量が3mol%未満では、弾性回復性におけるスチレンの添加効果が得られない。一方、50mol%を超えると十分な衝撃強度が得られない。好ましいスチレン含有量としては、5〜40mol%の範囲であり、さらに好ましくは、14〜30mol%の範囲である。
(5) ヘイズメータから求めたヘイズ(%)とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(VI)
ヘイズ(%)≦11.4982-0.2883×St・・・(VI)
の範囲にある。」と訂正する。
b-3、明細書の段落【0009】の
「また、本発明のエチレン・スチレン共重合体は、以下の(5) を満足する重合体であることが好ましい。
(5) 弾性率(E(dyne/cm2 )とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(II)
logE≦8.850-0.0342×St・・・(II)
を満足する。これを満足しない重合体は、弾性率が高く、柔軟性に劣る場合がある。さらに、好ましいものは、式(II)'
logE≦8.830-0.0342×St・・・(II)'
を満足するものであり、特に好ましくは、式(II)''
logE≦8.810-0.0342×St・・・(II)''
を満足するものである。」を、
「さらに、本発明のエチレン・スチレン共重合体は、ランダム性に優れることから、それからなるフィルムは透明性が良好であり、ヘイズ(%)とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(VI)
ヘイズ(%)≦11.4982-0.2883×St・・・(VI)
を満足するものである。これを満足しないものは、透明性が不十分で実用上問題となる場合がある。」と訂正する。
b-4、明細書の段落【0010】の
「この弾性率に関連して、同時に測定される貯蔵弾性率(E’(dyne/cm2 ))と損失弾性率(E''(dyne/cm2 ))がある。その比であるtanδ=E''/E’は、高分子材料の非流動領域で主鎖のミクロブラウン運動に起因する熱エネルギーへの変換効率を表す指標となり、この値が大きい程、制振性能の向上や衝撃吸収の向上等の特長が得られる。本発明のエチレン・スチレン共重合体は、この値が大きく、制振性能や衝撃吸収が高いことも特徴とするものである。」を、
「また、本発明のエチレン・スチレン共重合体は、以下の(6) を満足する重合体であることが好ましい。
(6) 弾性率(E(dyne/cm2 )とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(II)
logE≦8.850-0.0342×St・・・(II)
を満足する。これを満足しない重合体は、弾性率が高く、柔軟性に劣る場合がある。さらに、好ましいものは、式(II)'
logE≦8.830-0.0342×St・・・(II)'
を満足するものであり、特に好ましくは、式(II)''
logE≦8.810-0.0342×St・・・(II)''
を満足するものである。」と訂正する。
b-5、明細書の段落【0011】の
「さらに、本発明のエチレン・スチレン共重合体は、ランダム性に優れることから、それからなるフィルムは透明性が良好であるが、好ましいものとしては、ヘイズ(%)とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(VI)
ヘイズ(%)≦11.4982-0.2883×St・・・(VI)
を満足するものである。これを満足しないものは、透明性が不十分で実用上問題となる場合がある。」を、
「この弾性率に関連して、同時に測定される貯蔵弾性率(E’(dyne/cm2 ))と損失弾性率(E''(dyne/cm2 ))がある。その比であるtanδ=E''/E’は、高分子材料の非流動領域で主鎖のミクロブラウン運動に起因する熱エネルギーへの変換効率を表す指標となり、この値が大きい程、制振性能の向上や衝撃吸収の向上等の特長が得られる。本発明のエチレン・スチレン共重合体は、この値が大きく、制振性能や衝撃吸収が高いことも特徴とするものである。」と訂正する。
イ、訂正の適否
訂正事項aは、特許請求の範囲に関する訂正であり、 訂正a-1は、請求項1におけるエチレン・スチレン共重合体に対して、「(ただし、エチレンとスチレンの交互構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクダイアッド分率で0.95を超える共重合体を除く)」と限定するとともに、ヘイズに関する(5)の要件を付加することによって、限定しようとするものであり、「(ただし、エチレンとスチレンの交互構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクダイアッド分率で0.95を超える共重合体を除く)」とする限定は、後述の先願1の実施例6における共重合体を除くためのものであり、また、(5)の要件は明細書の段落【0011】に記載されるものであり、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正と認められる。
訂正a-2は、請求項1において新たな要件(5)を付加したために、訂正前の請求項2の要件の(5)を、(6)と訂正したものであり、訂正a-1に伴い、整合性を図るために、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
訂正事項b(訂正b-1〜b-4)は、発明の詳細な説明の訂正であり、いずれも、訂正事項aに伴い、特許請求の範囲との整合性を図るために、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
そして、上記訂正事項a(訂正a-1及びa-2)及び訂正事項b(訂正b-1〜b-4)は、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。
(3)特許異議の申立てについての判断
ア、申立て理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証(特願平9-60940号(特開平9-309925号公報参照))、甲第2号証(荒井亨作成の実験成績証明書「エチレン-スチレン共重合体の物性」(電気化学工業株式会社中央研究所基盤技術研究室))及び甲第3号証(高分子学会講演要旨集「グローバル企業側から見た21世紀の高分子素材は何か?」、社団法人高分子学会、1996年7月5日、第41〜47頁)、さらに参考資料1〜5を提出し、訂正前の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであって、訂正前の請求項1及び2に係る発明の特許は、取り消されるべき旨主張している。
イ、訂正明細書の請求項1及び2に係る発明
訂正明細書の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】以下の(1) 〜(5) を満足するエチレン・スチレン共重合体(ただし、エチレンとスチレンの交互構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクダイアッド分率で0.95を超える共重合体を除く)。
(1) スチレン含有量が3〜50mol%の範囲にある
(2) 密度が0.930〜1.05g/cm3 の範囲にある
(3) デカリン溶液の還元粘度(ηsp/C(dl/g))と濃度(C(g/dl))の関係から求めた固有粘度〔η〕が0.2〜5.0の範囲にある
(4) 示差走査型熱量計(DSC)から求めたガラス転移温度(Tg(℃))とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(I) を満足する
-30.00+1.05×St≧Tg≧-37.00+1.05×St・・・(I)
(5)ヘイズメータから求めたヘイズ(%)とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(VI)を満足する
ヘイズ(%)≦11.4982-0.2883×St・・・(VI)
【請求項2】 以下の(6) を満足する請求項1に記載のエチレン・スチレン共重合体。
(6) 弾性率(E(dyne/cm2 )とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(II)を満足する
logE≦8.850-0.0342×St・・・(II)」
ウ、先願明細書に記載された事項
特許異議申立人の提出した甲第1号証を「先願1」といい、先願1に係る願書に最初に添付した明細書(以下、「先願明細書」という。)及び甲第2号証に記載された事項は次のとおりである。
a、先願明細書(特開平9-309925号公報より)
「実施例6
窒素置換後、エチレンで置換された攪拌機付き容量1Lのオートクレーブに、スチレン80ml、トルエン360ml、及びメチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、MMAO-3A)をAl原子基準で8.4mmol仕込んだ。約10℃でエチレンを導入し、9kg/cm2 Gに昇圧したところで、重合器上部に設置した耐圧タンクから、上記のrac{Ind-C(Me)2 -Ind}ZrCl2 8.4μmolをトルエン40mlに溶解した触媒液をオートクレーブ中に投入した。以降、エチレン圧を10kg/cm2 Gに維持しながら1時間重合を行った。重合中、発熱により反応液は最高70℃まで上昇した。重合終了後、エチレンをゆっくり放圧し、実施例1と同様の処理をしたところ、97gのポリマーを回収した。」(第12頁第21欄、段落【0063】)
なお、実施例6のエチレン・スチレン共重合体について、明細書の段落【0082】の【表1】にSt含量(mol分率)(%)が「17.7」と記載され、同じく段落【0108】の【表6】には、アイソタクティクダイアッド分率(m)が「>0.95」と記載されている。
b、甲第2号証
特開平9-309925号公報の実施例6により得られたエチレン・スチレン共重合体(スチレン含量17.7モル%)が、密度0.964g/cm3、固有粘度[η]1.15(dl/g)、ガラス転移温度-16.8℃、弾性率8×106Pa(8×107dyn/cm2)及びヘイズ6.0%であり、ガラス転移温度及び弾性率が本件発明1の式(I)及び(II)を満足することが示されている。
エ、対比・判断
本件発明1と先願明細書に記載された発明とを対比する。
上記甲第2号証によると、先願明細書の実施例6に記載のエチレン・スチレン共重合体は、本件発明1の(1)〜(4)の要件を満たすものと認められる。
また、同じく甲第2号証によれば、スチレン17.7モル%で、ヘイズは6.0%とあるから、
6.0≦11.4982-0.2883×17.7=6.39529となり、先願明細書の実施例6のエチレン・スチレン共重合体は本件発明の(5)の要件をも満たすものと認められる。
しかしながら、本件発明1は、エチレン・スチレン共重合体が、エチレンとスチレンの交互構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクダイアッド分率で0.95を超える共重合体を除くとするものであり、それに対し、先願明細書の実施例6のエチレン・スチレン共重合体のアイソタクティクダイアッド分率は、「>0.95」と記載されており、0.95を超えるものと認められ、その点で相違するものといわざるを得ない。
したがって、本件発明1は、先願明細書の実施例6に記載のエチレン・スチレン共重合体と同一とはいえず、また、その他に本件発明1と同一とするに足る記載はなく、先願明細書に記載された発明と同一とすることはできない。
本件発明2は、本件発明1を引用する発明であるから、本件発明1と同様の理由により、先願明細書に記載された発明と同一とすることはできない。
オ、甲第3号証について
特許異議申立人は、その「結論」において、29条の2の規定に基づく違反以外には何ら主張していないものであるが、公知文献である甲第3号証について、特許異議申立書の「b.証拠の説明及び本件特許発明と証拠の対比」において、証拠の説明と本件発明1及び2との対比がなされているので、甲第3号証に記載された発明についても、本件発明1及び2と対比・判断する。
甲第3号証には、その第46頁に、エチレン・スチレン擬似ランダム共重合体について、その組成とガラス転移温度及び組成と密度の関係が示されており、それによると、本件発明1の(1)、(2)及び(4)の要件を満たすものといえる。また、甲第3号証のエチレン・スチレン共重合体について、参考資料1〜5により、粘度平均分子量及び固有粘度との関係から、本件発明1の(3)の要件をも満たすものといえるとしても、甲第3号証には、本件発明1の(5)の要件に係るヘイズについての記載も示唆も認められないものであるから、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
本件発明2についても、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の提出した証拠方法によっては、本件発明1及び2の特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1及び2の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
エチレン・スチレン共重合体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 以下の(1)〜(5)を満足するエチレン・スチレン共重合体(ただし、エチレンとスチレンの交互構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクダイアッド分率で0.95を超える共重合体を除く)。
(1)スチレン含有量が3〜50mol%の範囲にある
(2)密度が0.930〜1.05g/cm3の範囲にある
(3)デカリン溶液の還元粘度(ηsp/C(dl/g))と濃度(C(g/dl))の関係から求めた固有粘度〔η〕が0.2〜5.0の範囲にある
(4)示差走査型熱量計(DSC)から求めたガラス転移温度(Tg(℃))とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(I)を満足する
-30.00+1.05×St≧Tg≧-37.00+1.05×St・・・(I)
(5)ヘイズメータから求めたヘイズ(%)とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(VI)を満足する
ヘイズ(%)≦11.4982-0.2883×St・・・(VI)
【請求項2】 以下の(6)を満足する請求項1に記載のエチレン・スチレン共重合体。
(6)弾性率(E(dyne/cm2)とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(II)を満足する
logE≦8.850-0.0342×St・・・(II)
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エチレン・スチレン共重合体に関するものである。さらに詳しくは、柔軟性、弾性回復性に優れ、また、透明性が良好なエチレン・スチレン共重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】チーグラー系不均一触媒により重合したエチレン・スチレン共重合体は、ランダム性を有するものの共重合性が悪く、スチレン含有量を上げることができず、弾性回復性が殆どなく、また、透明性も悪いことが知られている。一方、メタロセン系触媒により重合したエチレン・スチレン共重合体は、特開平7-70223号公報や国際公開WO95/2775号公報に、共重合性が良く、構造的には疑似ランダムポリマーであり、熱可塑性エラストマーとしての性質を有し、弾性回復性に優れることや組成物における第3成分として用いる改質材として有用であることが開示されている。
【0003】
しかし、このメタロセン系触媒により重合したエチレン・スチレン共重合体においても、柔軟性、弾性回復性は十分なものではなく、また、それを成形したフィルムの透明性も十分なものではない。従って、柔軟性、弾性回復性に優れ、また、透明性が良好なエチレン・スチレン共重合体が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来よりエチレンとスチレンの共重合性が良好で、よりランダム性に優れた共重合体にすることにより、柔軟性、弾性回復性に優れ、また、透明性が良好なエチレン・スチレン共重合体を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、重合触媒等の改良によりエチレンとスチレンの共重合性、ランダム性を改善すべく鋭意検討した結果、以下に示す特定の関係を満足するエチレン・スチレン共重合体が従来にない柔軟性、弾性回復性に優れ、また、透明性が良好なエチレン・スチレン共重合体を提供できることを見出し、本発明に至った。
(1)以下の(1)〜(5)を満足するエチレン・スチレン共重合体(ただし、エチレンとスチレンの交互構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクダイアッド分率で0.95を超える共重合体を除く)。
(1)スチレン含有量が3〜50mol%の範囲にある
(2)密度が0.930〜1.05g/cm3の範囲にある
(3)デカリン溶液の還元粘度(ηsp/C(dl/g))と濃度(C(g/dl))の関係から求めた固有粘度〔η〕が0.2〜5.0の範囲にある
(4)示差走査型熱量計(DSC)から求めたガラス転移温度(Tg(℃))とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(I)を満足する
-30.00+1.05×St≧Tg≧-37.00+1.05×St・・・(I)
(5)ヘイズメータから求めたヘイズ(%)とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(VI)を満足する
ヘイズ(%)≦11.4982-0.2883×St・・・(VI)
(2)以下の(6)を満足する請求項1に記載のエチレン・スチレン共重合体。
(6)弾性率(E(dyne/cm2)とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(II)を満足する
logE≦8.850-0.0342×St・・・(II)
【0006】
【発明の実施の形態】本発明のエチレン・スチレン共重合体は、以下の(1)〜(5)を満足する重合体(ただし、エチレンとスチレンの交互構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクダイアッド分率で0.95を超える共重合体を除く)である。
(1)スチレン含有量が3〜50mol%の範囲にある。
(2)密度が0.930〜1.05g/cm3の範囲にある。
(3)デカリン溶液の還元粘度(ηsp/C(dl/g))と濃度(C(g/dl))との間には、関係式(III)
ηsp/C=〔η〕+K’〔η〕2C・・・(III)
(〔η〕:固有粘度)
が成立し、これから求めた固有粘度〔η〕が0.2〜5.0の範囲にある。
(4)示差走査型熱量計(DSC)から求めたガラス転移温度(Tg(℃))とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(I)
-30.00+1.05×St≧Tg≧-37.00+1.05×St・・・(I)
の範囲にある。スチレン含有量が3mol未満では、弾性回復性におけるスチレンの添加効果が得られない。一方、50mol%を超えると十分な衝撃強度が得られない。好ましいスチレン含有量としては、5〜40mol%の範囲であり、さらに好ましくは、14〜30mol%の範囲である。
(5)ヘイズメータから求めたヘイズ(%)とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(VI)
ヘイズ(%)≦11.4982-0.2883×St・・・(VI)
の範囲にある。
【0007】
密度が0.930g/cm3未満では、スチレン含有量が少なく、十分な弾性回復性が得られない。一方、1.05g/cm3を超えるとスチレン含有量が多くなり、十分な衝撃強度が得られない。好ましい密度としては、0.930〜1.02g/cm3の範囲であり、さらに好ましくは、0.950〜0.995g/cm3の範囲である。
【0008】
〔η〕が0.2未満では、脆くなり、強度に問題がある。一方、5.0を超えると流動性不良となり、成形加工性に問題がある。好ましい〔η〕としては、0.5〜4.0の範囲であり、さらに好ましくは、0.7〜3.0の範囲である。Tgが、式(IV)
Tg>-30.00+1.05×St・・・(IV)
では、十分な柔軟性が得られない。一方、式(V)
Tg<-37.00+1.05×St・・・(V)
では、低温下から柔軟性があるが、十分な剛性、強度がバランスしたものが得られない。好ましいTgとしては、式(I)’
-30.5+1.05×St≧Tg≧-35.0+1.05×St・・・(I)’
の範囲である。
【0009】
さらに、本発明のエチレン・スチレン共重合体は、ランダム性に優れることから、それからなるフィルムは透明性が良好であり、ヘイズ(%)とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(VI)
ヘイズ(%)≦11.4982-0.2883×St・・・(VI)
を満足するものである。これを満足しないものは、透明性が不十分で実用上問題となる場合がある。
【0010】
また、本発明のエチレン・スチレン共重合体は、以下の(6)を満足する重合体であることが好ましい。
(6)弾性率(E(dyne/cm2)とスチレン含有量(St(mol%))の関係が式(II)
logE≦8.850-0.0342×St・・・(II)
を満足する。これを満足しない重合体は、弾性率が高く、柔軟性に劣る場合がある。さらに、好ましいものは、式(II)’
logE≦8.830-0.0342×St・・・(II)’
を満足するものであり、特に好ましくは、式(II)”
logE≦8.810-0.0342×St・・・(II)”
を満足するものである。
【0011】
この弾性率に関連して、同時に測定される貯蔵弾性率(E’(dyne/cm2))と損失弾性率(E”(dyne/cm2))がある。その比であるtanδ=E”/E’は、高分子材料の非流動領域で主鎖のミクロブラウン運動に起因する熱エネルギーへの変換効率を表す指標となり、この値が大きい程、制振性能の向上や衝撃吸収の向上等の特長が得られる。本発明のエチレン・スチレン共重合体は、この値が大きく、制振性能や衝撃吸収が高いことも特徴とするものである。
【0012】
一般的にランダム性の良好な共重合体は、TgとTmの温度差が小さい傾向にある。しかしながら、前述のDSCによるTgとTmにおいては、Tgは結晶化度に関係なく測定できるが、Tmは結晶化度が無となる無定形状態では測定できず、本発明のエチレン・スチレン共重合体では、スチレン含有量が約20mol%以上で測定できない。
【0013】
これに対して、ポリマーの所定の分極温度で電圧を印加し、非晶及び結晶の界面近傍にイオン及び注入電荷をトラップされたものを一端冷却後、分極温度まで昇温する過程でそれらが放出されるのを検出することでポリマーの熱緩和過程を観測できる熱刺激電流法(TSC法)においては、結晶化度に関係なく、TgとTmの温度差に対応する評価が可能である。このTSC法では、上記の過程で放出されるイオン及び注入電荷を電流値対温度で示されるグローバル曲線における電流ピークとして検出できる。
【0014】
エチレン・スチレン共重合体では、スチレン含有量が約20mol%未満では、低温側からそれぞれTp1は、主鎖のミクロブラウン運動に伴う電荷の放出を、Tp2は、結晶近傍にトラップされた電荷の放出を、Tp3は、ポリマーの融解に伴う電荷の放出を示す3つの電流ピークが観測され、Tp1及びTp3は、それぞれがDSCによるTg及びTmに対応するものである。なお、DSCの融解曲線にはTp2に対応するピークは観測させず、Tp2ピークが観測されるのはTSC曲線の測定に限られる。また、スチレン含有量が約20mol%以上では、低温側からそれぞれTp1は、主鎖のミクロブラウン運動に伴う電荷の放出を、Tp3は、ポリマーの融解に伴う電荷の放出を示す2つの電流ピークが観測され、それぞれがDSCによるTg及びTmに対応するものである。本発明のエチレン・スチレン共重合体では、TgとTmの温度差に相当する上記のTp3とTp1の差が公知のメタロセン系触媒で得られたものよりも小さく、よりランダム性の良好なポリマーと言える。本発明のエチレン・スチレン共重合体は、上記のようにランダム性の良好なポリマーであるが、これを示すものとして、クロロホルム可溶分と不溶分の類似性を挙げることができる。
【0015】
この重合体から図1に示すようにして抽出分離して得られるクロロホルム可溶分はスチレン含有量の増加に伴い増大し、逆にクロロホルム不溶分はスチレン含有量の増加に伴い減少するが、これらの可溶分と不溶分は、組成差よりも分子量差によって分別されるものである。そのため、可溶分と不溶分のDSCによるTg、Tm、ΔHやスチレン含有量等が類似することは、組成差が小さく、共重合性が良好で、引いてはランダム性が良好であることを示唆するものである。本発明のエチレン・スチレン共重合体では、公知のメタロセン系触媒で得られたものよりも上記の特徴を有し、よりランダム性の良好なポリマーと言える。
【0016】
以下にそれぞれの特性を測定する方法を説明する。スチレン含有量(mol%)は、H-NMR(日本電子社製、JEOL-JSX400)を用いて、試料をTCB/D化ベンゼン溶媒に溶解し、130℃でスペクトルを観測し、1.3ppmのスチレンシグナルに基づく積分強度から、スチレン含有量を算出する。密度(g/cm3)は、190℃において、100μm厚みのプレスフィルムを作成し、それを急冷(降温速度100℃/min)したものを用いて、密度勾配管法(JIS-K-7112のD法に準拠)により測定する。密度勾配管用溶液は、イソプロパノール/水及び硝酸カルシウム/水系にて調製したものである。
【0017】
固有粘度〔η〕は、毛細管粘度計(離合社製)を用いて、135℃デカリン溶液系の還元粘度ηsp/Cと濃度Cの関係を得て、その切片となる値とする。ガラス転移温度(Tg(℃))、結晶化温度(Tc(℃))、融解温度(Tm(℃))及び融解熱量(ΔH(J/g))は、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、DSC-7型)により測定する。Tcは、室温から150℃まで200℃/minの速度で昇温し、150℃で5min溶融保持させた後、10℃/minの速度で-150℃まで降温する過程でみられる吸熱ピークの温度から求める。Tgは、それを-150℃で3min保持後、10℃/minの速度で150℃まで昇温する過程でみられる融解曲線における熱量の変曲点(比熱の変化の変曲点)から求める。また、Tm及びΔHは、その後の融解挙動における発熱ピーク温度とそのピークの熱量から求める。なお、測定試料は8mgとする。測定した融解熱量からポリエチレンの完全結晶の融解熱292J/gを用いて、試料の結晶化度を算出する。
【0018】
弾性率は、固体粘弾性測定装置(レオメトリックス社製、RSA-II型)を用いて、測定温度は室温(25℃)、周波数(f)=1Hz、歪量=0.15%の条件で測定する。測定試料は、プレス成形により、190℃で溶融後、加圧と脱圧を繰り返し、気泡を取り除き、急冷して200μm厚みのフィルムとしたものを幅2〜3mm、長さ35mmとして用いる。
【0019】
固体粘弾性の室温下の貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)は、上記の条件で測定し、得られたE”とE’の比からtanα(=E”/E’)を算出する。弾性回復性はオートグラフ(島津製作所製、IS5000)を用いて、室温(25℃)下、100%変形の条件で測定する。測定試料は、プレス成形により、190℃で溶融後、加圧と脱圧を繰り返し、気泡を取り除き、急冷して200μm厚みのフィルムとしたものを幅:2mm、長さ:40mmにダンベル状に打ち抜いたものを用いる。弾性回復性は、チャック間:L0を20mmとしたチャックに測定試料をセットし、引張速度20mm/minで100%変形後、同じ速度でチャックを戻し、1min経過後の長さ:Lを測定し、次式より算出する。
弾性回復性={1-〔(L-L0)/L0〕}×100(%)
【0020】
ヘイズは、ヘイズメータ(スガ試験機社製)を用いて測定する(JIS-K-7105に準拠)。測定試料は、プレス成形により、190℃で溶融後、加圧と脱圧を繰り返し、気泡を取り除き、急冷して200μm厚みのフィルムとしたものを液体窒素下でスペーサから剥離したものを用いる。
【0021】
熱刺激電流法(TSC法)装置として、TSC/RMA(サーモルド社製、model 9000)を用いて測定する。測定試料は、プレス成形により、190℃で溶融後、加圧と脱圧を繰り返し、気泡を取り除き、急冷して100μm厚みのフィルムとしたものを液体窒素下でスペーサから剥離したものを用いる。
【0022】
この測定条件及びサーマルクリーニング処理としては、上記フィルムから1cm角形状に測定試料を切り出し、鏡面仕上げしたステンレス板に圧着後、5m/mφ自由回転できる治具で押さえ密着させ、その測定試料に電圧をかけずに電流計を繋いだ状態で電流を流すサーマルクリーニングを3回行う。なお、分極温度までのサーマルクリーニングをモニターして、応力緩和に基づく電流ピークは除外する。次に、所定の分極温度(例えば60〜80℃)で5min間、電圧を500mV、1kV、2kV/mm印加して、分極を行う。その後、電界を与えたまま、ほぼ一定速度(20〜30℃/min)で-150℃まで冷却し、この温度で5min間保持した後、7℃/minの速度で昇温し、非晶及び結晶の界面近傍にトラップされたイオン及び注入電荷の放出を分極温度域まで観測し、この過程で検出される電流ピークと温度の関係をグローバル曲線として得る。
【0023】
本発明のエチレン・スチレン共重合の緩和過程では、結晶性の有無で3つないしは2つの電流ピークが観測される。溶媒抽出分離のクロロホルム可溶分及び不溶分は、図1に示す溶媒抽出分離スキームにより、各試料のクロロホルム可溶分及び不溶分を求める。
【0024】
本発明のエチレン・スチレン共重合体の製造方法については、上記の性状を有するものが得られる方法であればよく、特に制限されず、様々な方法を用いることができるが、次に示す重合用触媒を用いて、エチレン及びスチレンモノマーを共重合させる方法が有利である。この重合用触媒としては、(A)一般式(a)
Q1(2-Ind)Z1M1E1E2・・・(a)
〔式中、2-Indは、2位でQ1と結合するインデニル基又は置換インデニル基を示し、Q1はSiR1R2、CR1R2、SiR1R2SiR1R2、CR1R2CR1R2等を示し(なお、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基等を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。)、Z1はQ1とM1に結合する-NR’-、-PR’-等を示す(なお、R’は炭素数1〜20の炭化水素基等を示す。)。M1はチタン、ジルコニウム、ハフニウムを示し、E1及びE2はそれぞれσ配位子を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。〕で表される遷移金属化合物、(B)該(A)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物、及び/又は(C)有機アルミニウム化合物からなる重合用触媒を好ましく用いることができる。
【0025】
(A)成分として用いられる遷移金属化合物は、一般式(a)
Q1(2-Ind)Z1M1E1E2・・・(a)
で表されるものである。上記一般式(a)において、2-Indは、2位でQ1と結合するインデニル基又は置換インデニル基を示す。Q1はSiR1R2、CR1R2、SiR1R2SiR1R2、CR1R2CR1R2等を示し、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基等を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。Q1の具体例としては、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、シリレン、エチレン、イソプロピリデン等を挙げることができる。Z1はQ1とM1に結合する-NR’-、-PR’-等を示し、R’は炭素数1〜20の炭化水素基等を示す。Z1の具体例としては、t-ブチルアミド、メチルアミド、エチルアミド、ベンジルアミド、フェニルアミド等を挙げることができる。M1はチタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを示し、特に好ましいM1はチタニウムである。
【0026】
また、E1及びE2は、それぞれσ結合により該M1に配位するσ配位子であり、このσ配位子としては、例えば、R3、OR3、SR3、SO3R3、NR3R4、PR3R4、NO2、ハロゲン原子、水素原子、1-ピロリル及び1-ピロリジニルを好ましく挙げることができる。ここで、R3及びR4は炭素数1〜20の炭化水素基又は炭化水素基を含むシリル基である。このE1及びE2はたがいに同一でも異なっていてもよい。
【0027】
前記のR3及びR4において、炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フエネチル基等を挙げることができる。また、炭化水素基を含むシリル基としては、例えばトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などを挙げることができる。OR3の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、オクトキシ基、シクロヘキソキシ基、フェノキシ基などを挙げることができる。また、SR3の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、フェニルチオ基などを挙げることができる。そして、SO3R3の具体例としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n-プロパンスルホニル基、イソプロパンスルホニル基、n-ブタンスルホニル基、sec-ブタンスルホニル基、t-ブタンスルホニル基、イソブタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基などを挙げることができる。さらに、NR3R4の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ(n-ブチル)アミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ(sec-ブチル)アミノ基、ジ(t-ブチル)アミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジベンジルアミノ基、メチルエチルアミノ基、(t-ブチル)トリメチルシリルアミノ基、メチルトリメチルシリルアミノ基などを挙げることができる。また、PR3R4の具体例としては、ジメチルフォスフィド基、ジエチルフォスフィド基、ジ(n-プロピル)フォスフィド基、ジイソプロピルフォスフィド基、ジ(n-ブチル)フォスフィド基、ジイソブチルフォスフィド基、ジ(sec-ブチル)フォスフィド基、ジ(t-ブチル)フォスフィド基、ジペンチルフォスフィド基、ジヘキシルフォスフィド基、ジオクチルフォスフィド基、ジフェニルフォスフィド基、ジベンジルフォスフィド基、メチルエチルフォスフィド基、(t-ブチル)トリメチルシリルフォスフィド基、メチルトリメチルシリルフォスフィド基などを挙げることができる。さらに、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。
【0028】
前記一般式(a)で表される遷移金属化合物としては、例えば、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(2-インデニル)チタンジクロリド、並びにこれらの化合物におけるチタンをジルコニウム又はハフニウムに置換した化合物が挙げられる。好ましくは、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(2-インデニル)チタンジクロリドである。この重合用触媒においては、上記(A)成分の遷移金属化合物は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
重合用触媒における(B)成分として用いられる該(A)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物は、(B-1)該(A)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成するイオン性化合物、(B-2)アルミノキサン、(B-3)ルイス酸を挙げることができる。(B-1)該(A)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成するイオン性化合物は、一般式(b)
〔T〕m+1〔Y〕m-1・・・(b)
で示されるものである。
【0030】
式中、Tはイオン性化合物のカチオン成分であり、例えば、カルボニウムカチオン、トリピリウムカチオン、アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられ、さらに、それ自身が還元されやすい金属の陽イオンや有機金属の陽イオン等も挙げられる。また、Yはイオン性化合物のアニオン成分であり、遷移金属化合物と反応して安定なアニオンとなる成分であって、有機ホウ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオン、有機ガリウム化合物アニオン、有機リン化合物アニオン、有機ヒ素化合物アニオン、有機アンチモン化合物アニオン等が挙げられる。
【0031】
イオン性化合物の具体例としては、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリ-n-ブチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸メチル(トリ-n-ブチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸ベンジル(トリ-n-ブチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸トリメチルアニリニウム、テトラフェニル硼酸メチルピリジニウム、テトラフェニル硼酸ベンジルピリジニウム、テトラフェニル硼酸メチル(2-シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ-n-ブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(トリ-n-ブチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルピリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルピリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(2-シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(2-シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(4-シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム、テトラキス〔ビス(3,5-ジトリフルオロメチル)フェニル〕硼酸ジメチルアニリニウム、テトラフェニル硼酸フェロセニウム、テトラフェニル硼酸銀、テトラフェニル硼酸トリチル、テトラフェニル硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(1,1’-ジメチルフェロセニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テオラフェニルポルフィリンマンガン、テトラフルオロ硼酸銀、ヘキサフルオロ燐酸銀、ヘキサフルオロ砒素酸銀、過塩素酸銀、トリフルオロ酢酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀などを挙げることができる。この(B-1)成分である、該(A)成分の遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成するイオン性化合物は一種用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
一方、(B-2)成分のアルミノキサンとしては、一般式(c)
【0033】
【化1】

【0034】
(式中、R5は炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基などの炭化水素基あるいはハロゲン原子を示し、wは重合度を示し、通常3〜50、好ましくは7〜40の整数である。なお、各R5は同じでも異なっていてもよい。)で示される鎖状アルミノキサン、及び一般式(d)
【0035】
【化2】

【0036】
(式中、R5及びwは前記一般式(c)におけるものと同じである。)で示される環状アルミノキサンを挙げることができる。前記アルミノキサンの製造法としては、アルキルアルミニウムと水などの縮合剤とを接触させる方法が挙げられるが、その手段については特に限定はなく、公知の方法に準じて反応させればよい。例えば、▲1▼有機アルミニウム化合物を有機溶剤に溶解しておき、これを水と接触させる方法、▲2▼重合時に当初有機アルミニウム化合物を加えておき、後に水を添加する方法、▲3▼金属塩などに含有されている結晶水、無機物や有機物への吸着水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法、▲4▼テトラアルキルジアルミノキサンにトリアルキルアルミニウムを反応させ、さらに水を反応させる方法などがある。なお、アルミノキサンとしては、トルエン不溶性のものであってもよい。これらのアルミノキサンは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
また一方、(B-2)成分のアルミノキサンの好ましい態様として、(B-2)成分のアルミノキサンに(D)成分としてフェノール性化合物及び/又は水を添加するものである。この(D)成分としては、フェノール性化合物が好適であり、炭素数1〜20の炭化水素基で置換されたフェノール性化合物が好ましく、特に水酸基のα,α’-位が炭素数1〜20の炭化水素基で置換されたフェノール性化合物が好適である。
【0038】
該フェノール性化合物の具体例としては、フェノール、2-メチルフェノール、2-エチルフェノール、2-n-プロピルフェノール、2-イソプロピルフェノール、2-n-ブチルフェノール、2-sec-ブチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、3-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、4-tert-オクチルフェノール、2-n-ドデシルフェノール、2-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、2-n-ドデシル-4-メチルフェノール、4-n-ドデシル-2-メチルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、α-ナフトール、β-ナフトール、2-フルオロフェノール、3-フルオロフェノール、4-フルオロフェノール、2,4-ジフルオロフェノール、2,5-ジフルオロフェノール、2,6-ジフルオロフェノール、2-メトキシフェノール、3-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、N,N-ジメチル-3-アミノフェノール、N,N-ジエチル-3-アミノフェノール、N,N-ジ-n-ブチル-3-アミノフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ジメチルアミノフェノール、2-ニトロフェノール、3-ニトロフェノール、4-ニトロフェノール、2-ニトロ-4-メチルフェノール、3-ニトロ-4-メチルフェノール、4-ニトロ-3-メチルフェノール、5-ニトロ-2-メチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、3-メチルカテコール、4-メチルカテコール、4-tert-ブチルカテコール、2-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、メチルヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、ピロガロール、フロログルシノール、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、ヘキサヒドロキシベンゼン、4,4’-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルクロリドなどが挙げられる。これらのフェノール性化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(B-3)成分のルイス酸については特に制限はなく、有機化合物でも固体状無機化合物でもよい。有機化合物としては、硼素化合物やアルミニウム化合物などが、無機化合物としてはマグネシウム化合物、アルミニウム化合物などが効率的に活性点を形成できる点から好ましく用いられる。該アルミニウム化合物としては例えばビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウムメチル、(1,1-ビ-2-ナフトキシ)アルミニウムメチルなどが、マグネシウム化合物としては例えば塩化マグネシウム、ジエトキシマグネシウムなどが、アルミニウム化合物としては酸化アルミニウム、塩化アルミニウムなどが、硼素化合物としては例えばトリフェニル硼素、トリス(ペンタフルオロフェニル)硼素、トリス〔3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕硼素、トリス〔(4-フルオロメチル)フェニル〕硼素、トリメチル硼素、トリエチル硼素、トリ-n-ブチル硼素、トリス(フルオロメチル)硼素、トリス(ペンタフルオロエチル)硼素、トリス(ノナフルオロブチル)硼素、トリス(2,4,6-トリフルオロフェニル)硼素、トリス(3,5-ジフルオロ)硼素、トリス〔3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕硼素、ビス(ペンタフルオロフェニル)フルオロ硼素、ジフェニルフルオロ硼素、ビス(ペンタフルオロフェニル)クロロ硼素、ジメチルフルオロ硼素、ジエチルフルオロ硼素、ジ-n-ブチルフルオロ硼素、ペンタフルオロフェニルジフルオロ硼素、フェニルジフルオロ硼素、ペンタフルオロフェニルジクロロ硼素、メチルジフルオロ硼素、エチルジフルオロ硼素、n-ブチルジフルオロ硼素などが挙げられる。これらのルイス酸は一種用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(C)成分として用いられる有機アルミニウム化合物としては、一般式(e)R6vAlJ3-v・・・(e)〔式中、R6は炭素数1〜20の炭化水素基、好ましくは1〜10のアルキル基、Jは水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン原子を示し、vは1〜3の整数である。〕で示される化合物が用いられる。
【0041】
前記一般式(e)で示される化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0042】
これらの有機アルミニウム化合物は一種用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。この重合用触媒における(A)成分と(B)成分との使用割合は、アルミノキサン化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは1:1〜1:1000000、より好ましくは1:10〜1:10000の範囲が望ましい。また、(D)成分のフェノール性化合物及び/又は水は、(B)成分としてアルミノキサンを用いた場合、(D)成分中の水酸基/(B)成分のアルミノキサン(アルミニウム換算)モル比が0.001〜0.8の範囲になるように用いるのが好ましい。このモル比が0.001未満では活性の向上効果が不充分であり、また0.8を超えると逆に活性が低下する傾向がみられる。活性向上の面から、より好ましいモル比は0.01〜0.6の範囲であり、特に0.05〜0.5の範囲が好適である。なお、ここで水1モルの水酸基は2モルとして計算した。
【0043】
これらの各触媒成分の接触順序については特に制限はないが、(B)成分と(D)成分を接触させた後、(A)成分を接触させるか、あるいは(B)成分と(A)成分を接触させた後、(D)成分を接触させるのが、触媒活性の面から好ましい。また、この重合用触媒における(A)成分と(C)成分との使用割合は、触媒活性などの面から、モル比で好ましくは1:1〜1:10000、好ましくは1:5〜1:2000、さらに好ましくは1:10〜1:1000の範囲が望ましい。
【0044】
この重合用触媒においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望に応じ、前記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分及び前記の(A)成分、(B)成分及び(D)成分以外に、他の触媒成分を含有させてもよい。また、所望により、前記重合用触媒を適当な担体に接触させて、該担体に担持させてもよい。この重合用触媒においては、触媒成分の少なくとも一種を適当な担体に担持して用いることができる。該担体の種類については特に制限はなく、無機酸化物担体、それ以外の無機担体及び有機担体のいずれも用いることができるが、特に無機酸化物担体あるいはそれ以外の無機担体が好ましい。
【0045】
無機酸化物担体としては、具体的には、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、Fe2O3、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2やこれらの混合物、例えばシリカアルミナ、ゼオライト、フェライト、グラスファイバーなどが挙げられる。これらの中では、特にSiO2、Al2O3が好ましい。なお、上記無機酸化物担体は、少量の炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩などを含有してもよい。
【0046】
一方、上記以外の担体として、MgCl2、Mg(OC2H5)2などのマグネシウム化合物などで代表される一般式MgR’XX’yで表されるマグネシウム化合物やその錯塩などを挙げることができる。ここで、R’は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基、X2はハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、xは0〜2、yは0〜2でり、かつx+y=2である。各R’及び各X’はそれぞれ同一でもよく、また異なってもいてもよい。
【0047】
また、有機担体としては、ポリスチレン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、置換ポリスチレン、ポリアリレートなどの重合体やスターチ、カーボンなどを挙げることができる。本発明のエチレン・スチレン共重合体は、上述した重合用触媒の存在下、(イ)エチレンと、(ロ)スチレンを共重合させることにより、製造することができる。スチレンには、少量のp-メチルスチレン、イソプロピルスチレン、t-ブチルスチレンなどを含むものであってもよい。
【0048】
本発明において、重合方法は特に制限されず、スラリー重合法、気相重合法、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法などのいずれの方法を用いてもよいが、溶液重合法、気相重合法が特に好ましい。重合条件については、重合温度は通常-100〜250℃、好ましくは-50〜200℃、より好ましくは0〜130℃である。また、反応原料に対する触媒の使用割合は、原料モノマー/遷移金属化合物(モル比)が好ましくは1〜108、特に100〜105となることが好ましい。さらに、重合時間は通常5分〜10時間、反応圧力は好ましくは常圧〜200kg/cm2G、特に好ましくは常圧〜100kg/cm2Gである。
【0049】
重合体の分子量の調節方法としては、各触媒成分の種類、使用量、重合温度の選択、さらには水素存在下での重合などがある。重合溶媒を用いる場合、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素などを用いることができる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上のものを組み合わせてもよい。なお、重合方法によっては無溶媒で行うことができる。
【0050】
本発明においては、前記重合用触媒を用いて予備重合を行うことができる。予備重合は、固体触媒成分に、例えば、少量のオレフィンを接触させることにより行うことができるが、その方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
【実施例】以下に本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例1〜4及び比較例1〜4のデータは、第1表及び第2表にまとめる。
【0051】
〔実施例1〕加熱乾燥した内容積1リットルのオートクーブに窒素気流下、室温でトルエン380ml、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)2mmol、スチレンモノマー20ml、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(2-インデニル)チタンジクロリド10μmolを順次加えた。これを昇温し、70℃となった時点でエチレン圧を7.5kg/cm2とし、さらに80℃となるまで昇温した。
【0052】
この状態で5分間重合を行った。反応終了後、反応物をメタノール中に投入し、得られたポリマーを濾別した後、メタノールで洗浄した。それを加熱乾燥し、35gのエチレン・スチレン共重合体を得た。このポリマーのH-NMRから求めたスチレン含有量=10.5mol%、密度=0.9455g/cm3、固有粘度〔η〕=1.68であった。示差走査型熱量計(DSC)により観測したガラス転移温度(Tg)=-22.0℃、弾性率E=2.23×108、また、フィルムの弾性回復性は82.5%、ヘイズ=2.9%であった。
【0053】
〔実施例2〕加熱乾燥した内容積1リットルのオートクーブに窒素気流下、室温でヘキサン370ml、2,4-ジ-t-ブチルフェノールで変成したメチルアルミノキサン(変成MAO)1mmol、スチレンモノマー30ml、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(2-インデニル)チタンジクロリド10μmolを順次加えた。これを昇温し、70℃となった時点でエチレン圧を6.0kg/cm2とした。
【0054】
この状態で30分間重合を行った。反応終了後、反応物をメタノール中に投入し、得られたポリマーを濾別した後、メタノールで洗浄した。それを加熱乾燥し、51gのエチレン・スチレン共重合体を得た。このポリマーのH-NMRから求めたスチレン含有量=18.4mol%、密度=0.9565g/cm3、固有粘度〔η〕=2.16であった。DSCにより観測したTg=-14.4℃、E=1.13×108、また、フィルムの弾性回復性は93.8%、ヘイズ=2.4%であった。
【0055】
〔実施例3〕加熱乾燥した内容積1リットルのオートクーブに窒素気流下、室温でトルエン300ml、TIBA2mmol、スチレンモノマー100ml、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(2-インデニル)チタンジクロリド0.8μmolを順次加えた。これを昇温し、70℃となった時点でエチレン圧を7.5kg/cm2とし、さらに80℃となるまで昇温した。
【0056】
この状態で5分間重合を行った。反応終了後、反応物をメタノール中に投入し、得られたポリマーを濾別した後、メタノールで洗浄した。それを加熱乾燥し、14gのエチレン・スチレン共重合体を得た。このポリマーのH-NMRから求めたスチレン含有量=24.9mol%、密度=0.9750g/cm3、固有粘度〔η〕=1.46であった。DSCにより観測したTg=-8.2℃、E=5.02×107、また、フィルムの弾性回復性は94.0%、ヘイズ=2.5%であった。
【0057】
熱刺激電流法(TSC)によるグローバル曲線には第1表に示すようなTg及びTmに対応した電流ピークが2つ観測された。これらの各ピークの温度は低温側より、Tp1=-8.0℃、Tp3=46.1℃であった。なお、TSC測定の分極温度(Tp)は70℃、分極時間は5分、電界強度は2kV/mmであった。
【0058】
〔比較例1〕加熱乾燥した内容積1リットルのオートクーブに窒素気流下、室温でヘキサン350ml、2,4-ジ-t-ブチルフェノールで変成したメチルアルミノキサン(変成MAO)1mmol、スチレンモノマー50ml、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド10μmolを順次加えた。これを昇温し、70℃となった時点でエチレン圧を7.5kg/cm2とし、さらに80℃となるまで昇温した。
【0059】
この状態で10分間重合を行った。反応終了後、反応物をメタノール中に投入し、得られたポリマーを濾別した後、メタノールで洗浄した。それを加熱乾燥し、24gのエチレン・スチレン共重合体を得た。このポリマーのH-NMRから求めたスチレン含有量=6.5mol%、密度=0.9345g/cm3、固有粘度〔η〕=3.43であった。DSCにより観測したTg=-18.9℃、E=5.01×108、また、フィルムの弾性回復性は69.3%、ヘイズ=11.2%であった。
【0060】
〔比較例2〕加熱乾燥した内容積1リットルのオートクーブに窒素気流下、室温でヘキサン300ml、TIBA0.3mmol、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートジメチルアニリニウム16μmol、スチレンモノマー100ml、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド10μmolを順次加えた。これを昇温し、70℃となった時点でエチレン圧を7.5kg/cm2とし、さらに80℃となるまで昇温した。
【0061】
この状態で60分間重合を行った。反応終了後、反応物をメタノール中に投入し、得られたポリマーを濾別した後、メタノールで洗浄した。それを加熱乾燥し、73gのエチレン・スチレン共重合体を得た。このポリマーのH-NMRから求めたスチレン含有量=15.5mol%、密度=0.9560g/cm3、固有粘度〔η〕=1.69であった。DSCにより観測したTg=-11.7℃、E=2.43×108、また、フィルムの弾性回復性は92.8%、ヘイズ=8.0%であった。
【0062】
〔比較例3〕加熱乾燥した内容積1リットルのオートクーブに窒素気流下、室温でトレエン100ml、メチルアルミノキサン(MAO)10mmol、スチレンモノマー300ml、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド10μmolを順次加えた。これを昇温し、70℃となった時点でエチレン圧を7.5kg/cm2とし、さらに80℃となるまで昇温した。
【0063】
この状態で10分間重合を行った。反応終了後、反応物をメタノール中に投入し、得られたポリマーを濾別した後、メタノールで洗浄した。それを加熱乾燥し、45gのエチレン・スチレン共重合体を得た。このポリマーのH-NMRから求めたスチレン含有量=29.6mol%、密度=1.005g/cm3、固有粘度〔η〕=1.04であった。DSCにより観測したTg=-4.6℃、E=8.08×108、また、フィルムの弾性回復性は93.3%、ヘイズ=4.5%であった。
【0064】
熱刺激電流法(TSC)によるグローバル曲線には第1表に示すようなTg及びTmに対応した電流ピークが2つ観測された。これらの各ピークの温度は低温側より、Tp1=6.1℃、Tp3=67.0℃であった。なお、TSC測定の分極温度(Tp)は70℃、分極時間は5分、電界強度は2kV/mmであった。
【0065】
〔実施例4〕加熱乾燥した内容積5リットルのオートクーブに窒素気流下、室温でヘキサン1750ml、2,4-ジ-t-ブチルフェノールで変成したメチルアルミノキサン(変成MAO)50mmol、スチレンモノマー250ml、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(2-インデニル)チタンジクロリド50μmolを順次加えた。これを昇温し、70℃となった時点でエチレン圧を7.5kg/cm2とし、さらに80℃となるまで昇温した。
【0066】
この状態で30分間重合を行った。反応終了後、反応物をメタノール中に投入し、得られたポリマーを濾別した後、メタノールで洗浄した。それを加熱乾燥し、275gのエチレン・スチレン共重合体を得た。このポリマーのH-NMRから求めたスチレン含有量=18.4mol%、密度=0.9600g/cm3、固有粘度〔η〕=2.05であった。DSCにより観測したTg=-15.0℃、E=1.13×108、また、フィルムの弾性回復性は93.5%、ヘイズ=2.4%であった。
【0067】
このポリマーを図1に示すスキームで溶媒抽出分離して得られたクロロホルム可溶分及び不溶分は第2表に示すように各々71.3%、24.8%であり、ヘキサン可溶分は2.6%と少ないものであった。これらを分離前のポリマーと同様にしてスチレン含有率、密度、Tg、E等を測定したものを、第2表に示す。これらの結果からクロロホルム可溶分及び不溶分の挙動がほぼ一致し、両者の構造(組成)が類似していることが分かり、引いては分離前のポリマーのランダム性(均質)が高いことを示唆している。
【0068】
〔比較例4〕加熱乾燥した内容積5リットルのオートクーブに窒素気流下、室温でヘキサン1500ml、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートジメチルアニリニウム80mmol、スチレンモノマー500ml、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド50μmolを順次加えた。これを昇温し、70℃となった時点でエチレン圧を7.5kg/cm2とし、さらに80℃となるまで昇温した。
【0069】
この状態で60分間重合を行った。反応終了後、反応物をメタノール中に投入し、得られたポリマーを濾別した後、メタノールで洗浄した。それを加熱乾燥し、365gのエチレン・スチレン共重合体を得た。このポリマーのH-NMRから求めたスチレン含有量=15.5mol%、密度=0.9560g/cm3、固有粘度〔η〕=1.39であった。DSCにより観測したTg=-11.7℃、E=2.05×108、また、フィルムの弾性回復性は92.8%、ヘイズ=20.7%であった。
【0070】
このポリマーを図1に示すスキームで溶媒抽出分離して得られたクロロホルム可溶分及び不溶分は第2表に示すように各々65.3%、25.6%であり、ヘキサン可溶分は9.1%と多いものであった。これらを分離前のポリマーと同様にしてスチレン含有率、密度、Tg、E等を測定したものを、第2表に示す。これらの結果からクロロホルム可溶分と不溶分の挙動がかなり異なるものであることを示すものである。クロロホルム不溶分には、可溶分より分子量の高いものが含まれ、しかもスチレン含有量が少ないことから、エチレン鎖のユニットに相違があることを示唆するものである。また、ヘキサン可溶分の融解熱量及び結晶化度が高いことから、低分子量でエチレン成分の高いものが混在していると判断される。
【0071】
〔実施例5〕加熱乾燥した内容積1リットルのオートクーブに窒素気流下、室温でトルエン350ml、2,4-ジ-t-ブチルフェノールで変成したメチルアルミノキサン(変成MAO)10mmol、スチレンモノマー50ml、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド10μmolを順次加えた。これを昇温し、70℃となった時点でエチレン圧を7.5kg/cm2とし、さらに80℃となるまで昇温した。
【0072】
この状態で10分間重合を行った。反応終了後、反応物をメタノール中に投入し、得られたポリマーを濾別した後、メタノールで洗浄した。それを加熱乾燥し、54gのエチレン・スチレン共重合体を得た。このポリマーのH-NMRから求めたスチレン含有量=19.4mol%、密度=0.9625g/cm3、固有粘度〔η〕=1.0であった。DSCにより観測したTg=-12.5℃、フィルムのヘイズ=4.0%であった。
【0073】
〔比較例5〕加熱乾燥した内容積1リットルのオートクーブに窒素気流下、室温でトルエン350ml、2,4-ジ-t-ブチルフェノールで変成したメチルアルミノキサン(変成MAO)10mmol、スチレンモノマー50ml、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド10μmolを順次加えた。これを昇温し、70℃となった時点でエチレン圧を7.5kg/cm2とし、さらに80℃となるまで昇温した。
【0074】
この状態で10分間重合を行った。反応終了後、反応物をメタノール中に投入し、得られたポリマーを濾別した後、メタノールで洗浄した。それを加熱乾燥し、35gのエチレン・スチレン共重合体を得た。このポリマーのH-NMRから求めたスチレン含有量=5.0mol%、密度=0.9300g/cm3、固有粘度〔η〕=2.44であった。DSCにより観測したTg=-20.0℃、また、フィルムのヘイズ=14.0%であった。
【0075】
〔実施例6〕加熱乾燥した内容積1リットルのオートクーブに窒素気流下、室温でトルエン350ml、TIBA2mmol、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートジメチルアニリニウム16μmol、スチレンモノマー50ml、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(2-インデニル)チタンジクロリド10μmolを順次加えた。これを昇温し、70℃となった時点でエチレン圧を7.5kg/cm2とし、さらに80℃となるまで昇温した。
【0076】
この状態で10分間重合を行った。反応終了後、反応物をメタノール中に投入し、得られたポリマーを濾別した後、メタノールで洗浄した。それを加熱乾燥し、14gのエチレン・スチレン共重合体を得た。このポリマーのH-NMRから求めたスチレン含有量=15.7mol%、密度=0.9550g/cm3、固有粘度〔η〕=1.77であった。DSCにより観測したTg=-17.0℃、また、フィルムのヘイズ=5.0%であった。
【0077】
〔比較例6〕加熱乾燥した内容積1リットルのオートクーブに窒素気流下、室温でトルエン350ml、TIBA1mmol、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートジメチルアニリニウム16μmol、スチレンモノマー50ml、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド10μmolを順次加えた。これを昇温し、70℃となった時点でエチレン圧を7.5kg/cm2とし、さらに80℃となるまで昇温した。
【0078】
この状態で10分間重合を行った。反応終了後、反応物をメタノール中に投入し、得られたポリマーを濾別した後、メタノールで洗浄した。それを加熱乾燥し、46gのエチレン・スチレン共重合体を得た。このポリマーのH-NMRから求めたスチレン含有量=8.4mol%、密度=0.9380g/cm3、固有粘度〔η〕=2.07であった。DSCにより観測したTg=-17.0℃、また、フィルムのヘイズ=10.0%であった。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【発明の効果】本発明により柔軟性、弾性回復性に優れ、透明性が良好なエチレン・スチレン共重合体を提供できる。これは、包装資材(ストレッチフィルム)や緩衝材料として、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、溶媒抽出のスキームを示すものである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-01-27 
出願番号 特願平8-225050
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08F)
P 1 651・ 113- YA (C08F)
P 1 651・ 161- YA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小出 直也  
特許庁審判長 松井 佳章
特許庁審判官 佐野 整博
船岡 嘉彦
登録日 2003-02-28 
登録番号 特許第3402950号(P3402950)
権利者 出光興産株式会社
発明の名称 エチレン・スチレン共重合体  
代理人 大谷 保  
代理人 東平 正道  
代理人 大谷 保  
代理人 東平 正道  

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