ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01M 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01M |
---|---|
管理番号 | 1115184 |
審判番号 | 不服2004-3458 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-10-03 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-20 |
確定日 | 2005-04-04 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 64918号「リチウム二次電池の製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月 3日出願公開、特開平 9-259869〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成8年3月21日の出願であって、平成16年1月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月20日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 そして、本願請求項1、2に係る発明は、平成16年7月21日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりの「リチウム二次電池の製造法」である(以下、「本願発明1」という。)。 「【請求項1】 導電性支持体の両面に、リチウムをインターカレート、デインターカレートする正極活物質、導電材及びポリフッ化ビニリデンからなる結着剤を含む正極合剤ペーストを塗布、乾燥し、ローラープレスで圧延してシート状の正極板を作製する工程と、前記正極板およびシート状の負極板を、両者の間にセパレータを介して対向させ、前記正極板の圧延方向に捲回して渦巻き状極板群を作製する工程、および前記極板群を電池ケース内に収納する工程を含むリチウム二次電池の製造法。」 2.引用刊行物とその記載事項 これに対して、当審が平成16年5月25日付けで通知した拒絶の理由に引用した本願の出願前に頒布された刊行物には、以下の事項が記載されている。 引用例:特開平7-94171号公報 (摘示1)「実施例1 正極活物質としてLiCoO2 を88重量部、導電剤としてアセチレンブラック9重量部の割合で混合し、さらに結着剤としてポリ弗化ビニリデンを3重量部加え、溶媒としてN-メチルピロリドンを添加し調製した電極合剤を・・・アルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥後図4に示すような装置を使い、ローラープレス・・・掛けを行った。・・・正極シートを作成した。」(【0009】) (摘示2)「正極シート、・・・セパレータ、負極シート及びセパレータの順で積層し、これを渦巻状に巻回した。」(【0017】) (摘示3)「本発明により製造された電極シートは非水電解質電池に用いられるが、好ましくは、非水電解質二次電池である。」(【0008】) (摘示4)図4には、シート状電極1がローラープレス部5を経て、巻き取り7により巻き取られることが図示されており、ローラープレス部5のプレス方向と同一方向に巻き取られることが看取できる。 3.当審の判断 引用例の摘示1の「正極活物質としてLiCoO2 を88重量部、導電剤としてアセチレンブラック9重量部の割合で混合し、さらに結着剤としてポリ弗化ビニリデンを3重量部加え、溶媒としてN-メチルピロリドンを添加し調製した電極合剤を・・・アルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥後図4に示すような装置を使い、ローラープレス・・・掛けを行った。・・・正極シートを作成した。」という記載によると、正極シートは、アルミニウム箔の両面に、正極活物質としてのLiCoO2、導電剤、結着剤としてのポリ弗化ビニリデン、及び溶媒を含む電極合剤を塗布し、乾燥後、ローラープレス掛けして作成されるものである。また、作成された正極シートは、摘示2、3によると、正極シート、セパレータ、負極シート、セパレータの順で積層し、渦巻状に巻回されて(摘示2)、非水電解質二次電池に用いられるものである(摘示3)。ここで、正極シート、セパレータ、負極シート、セパレータの順で積層し、渦巻状に巻回するとは、正極シートおよび負極シートを、両者の間にセパレータを介して対向させ、巻回して渦巻状極板群を作製することであり、そして、非水電解質二次電池に用いるためには、この渦巻状極板群を電池ケース内に収納することは技術常識である。 これら引用例に開示される事項を本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、「アルミニウム箔の両面に、正極活物質としてのLiCoO2、導電剤、結着剤としてのポリ弗化ビニリデン、及び溶媒を含む電極合剤を塗布し、乾燥後、ローラープレス掛けして正極シートを作成する工程と、前記正極シートおよび負極シートを、両者の間にセパレータを介して対向させ、巻回して渦巻状極板群を作製する工程、および前記電極群を電池ケース内に収納する工程を含む非水電解質二次電池の製造法」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 そこで、本願発明1と引用発明を対比すると、引用発明の「アルミニウム箔」、「正極活物質としてのLiCoO2」、「結着剤としてのポリ弗化ビニリデン」、「溶媒を含む電極合剤」、「正極シート」、「負極シート」、「非水電解質二次電池」は、それぞれ本願発明1の「導電性支持体」、「リチウムをインターカレート、デインターカレートする正極活物質」、「ポリフッ化ビニリデンからなる結着剤」、「正極合剤ペースト」、「シート状の正極板」、「シート状の負極板」、「リチウム二次電池」に相当し、また、引用発明の「ローラープレス掛けして」は、「ローラープレスで圧延して」と言い換えることができるから、両者は、「導電性支持体の両面に、リチウムをインターカレート、デインターカレートする正極活物質、導電材及びポリフッ化ビニリデンからなる結着剤を含む正極合剤ペーストを塗布、乾燥し、ローラープレスで圧延してシート状の正極板を作製する工程と、前記正極板およびシート状の負極板を、両者の間にセパレータを介して対向させ、捲回して渦巻き状極板群を作製する工程、および前記極板群を電池ケース内に収納する工程を含むリチウム二次電池の製造法」で一致し、以下の点で一応相違する。 相違点:本願発明では、正極板の圧延方向に捲回して渦巻き状極板群を作製するのに対し、引用発明では、正極板の圧延方向に捲回するとは規定されていない点。 次に、上記相違点について検討する。 引用発明では渦巻き状極板群の捲回方向は、正極板の圧延方向か、正極板の圧延方向に垂直な方向かの二者択一であるといえるが、どちらの方向も、渦巻き状極板群の捲回方向として周知である(必要ならば例えば、特開平1-26542号公報、特開平5-47376号公報参照)。そして、引用例の図4から、シート状の電極板(電極シート)1を、ローラープレス部5で圧延した後、圧延方向に捲回して巻き取ることが看取できるが(摘示4)、このように圧延方向に捲回して巻き取った電極シートを用いて渦巻き状極板群を作製する場合には、渦巻き状電極群の捲回方向を、電極板を巻き取ったと同じ方向、すなわち、電極板の圧延方向とすることは、捲回して渦巻き状極板群を作製する際に電極板にかかるストレス等を考慮すると、当業者が当然なすべき常套手段であるといえる。 してみると、引用発明は、前示の周知の二方向のうち、電極板を巻き取ったと同じ方向である正極板の圧延方向に捲回して渦巻き状極板群を作製していることが窺えるから、本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項を備えるものである。 よって、上記一応の相違点は、本願発明1と引用発明との実質的な相違点とはなり得ないものであり、本願発明1と引用発明は異なるところのないものであるから、本願発明1は、引用例に記載された発明である。 また仮に、上記一応の相違点が実質的な相違点であったとしても、前示のように、渦巻き状極板群の捲回方向として、正極板の圧延方向と、正極板の圧延方向に垂直な方向は、周知の二者択一の選択肢であるし、圧延方向に捲回して巻き取った電極シートを、電極板を巻き取ったと同じ方向である電極板の圧延方向に捲回して渦巻き状極板群を作製することは、当業者にとって常套手段であるから、引用発明において、渦巻き状極板群の捲回方向を、上記周知の二者択一の選択肢のうち正極板の圧延方向とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 よって、本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項は、周知の事項に基づいて当業者が容易になし得ることであるから、本願発明1は、引用例に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか、あるいは、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-01-26 |
結審通知日 | 2005-01-27 |
審決日 | 2005-02-15 |
出願番号 | 特願平8-64918 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(H01M)
P 1 8・ 121- WZ (H01M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 天野 斉 |
特許庁審判長 |
沼沢 幸雄 |
特許庁審判官 |
吉水 純子 酒井 美知子 |
発明の名称 | リチウム二次電池の製造法 |
代理人 | 石井 和郎 |
代理人 | 河崎 眞一 |