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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C22C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C22C
管理番号 1115193
審判番号 不服2002-19297  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-03 
確定日 2005-04-04 
事件の表示 平成7年特許願第236937号「継手部材」拒絶査定不服審判事件〔平成9年3月25日出願公開、特開平9-78161〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年9月14日の出願であって、平成14年8月26日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年10月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成14年11月1日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年11月1日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年11月1日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)手続補正の内容
本件手続補正の内容の一つは、特許請求の範囲を限定的減縮を目的として次の請求項1のとおりに補正するものである。
「【請求項1】所定機能を有する機器相互の間または所定機能を有する機器と外部機器との間または所定機能を有する機器と部品との間に挿入して連結する継手部材において、この継手部材の材質は、0.02〜1重量%のCと残部がAgとで構成したことを特徴とする継手部材。」
(2)当審の判断
本件手続補正の上記内容は、次の理由により、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものである。
(独立特許要件違反について)
(i)引用刊行物と記載事項
原査定の理由で引用された引用例(特開昭63-160304号公報)には、次の事項が記載されている。
引用例:特開昭63-160304号公報
(a)「本発明の摺動接点装置に於いて、すり接点の接点材をAg-炭素0.5〜5wt%とした理由は、Ag中の炭素が0.5wt%未満だと潤滑効果が薄く、そのすり接点がセラミックス基板上のAg-樹脂系の厚膜導体パターンとの接触に於いて凝着、剥離が生じ、5wt%を超えると、ノイズの発生原因となるからである。」(第2頁右上欄第5行〜同欄第11行)
(b)「(作用)
上記の如く構成された摺動接点装置は、すり接点とセラミックス基板上の厚膜導体パターンとの接触作用において、すり接点のAg-炭素0.5〜5wt%接点材の硬さ(Hv80〜110)が軟らかく滑りやすいので、接触抵抗が低く安定していて、Ag-樹脂系の厚膜導体パターンを損耗することが無く、又凝着、剥離が殆ど無くなり、摩耗が減少するので、良好な接触が得られる。」(第2頁右上欄第12行〜同欄第20行)
(c)第2頁右下欄には、「Ag-C 1wt%」の組成の接点材が実施例1として記載されている。
(ii)対比・判断
引用例の上記(a)には、セラミックス基板上のAg-樹脂系の厚膜導体パターンに対抗して摺動する摺動接点装置のすり接点の接点材を「すり接点の接点材をAg-炭素0.5〜5wt%とした」と記載され、この記載の「Ag-炭素0.5〜5wt%」とは、炭素0.5〜5wt%以外の残部がAgであることは明らかであり、そして、このAg-0.5〜5wt%の具体例として引用例の上記(c)には、「Ag-C 1wt%」も記載されているから、これら記載を本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、「すり接点の接点部材において、このすり接点の接点部材の材質は、0.5〜5重量%のCと残部がAgとで構成したすり接点の接点部材」という発明(以下「引用発明」という))が記載されているといえる。
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、両者は、「部材の材質は、0.5〜1重量%のCと残部Agとで構成した部材」という点で一致し、次の点で相違しているといえる。
相違点:本願補正発明は、その部材が「所定機能を有する機器相互の間または所定機能を有する機器と外部機器との間または所定機能を有する機器と部品との間に挿入して連結する継手部材」であるのに対して、引用発明は、「すり接点の接点部材」である点
次に、この相違点について検討するに、本願補正発明の「所定機能を有する機器相互の間または所定機能を有する機器と外部機器との間または所定機能を有する機器と部品との間に挿入して連結する継手部材」という特定事項は、その記載内容が抽象的かつ包括的であり具体性に欠けるものであるが、その「機器と部品との間に挿入して連結する継手部材」という記載に着目すれば、本願補正発明の「継手部材」は、機器相互又は機器と部品に摺動接触しつつその挿入・脱着(連結一体化・連結解除)が繰り返し行われる部材であるが故に、本願明細書の「300回の[連結一体化・連結解除]作業を繰返した後の表面粗さの特に最大値Rmaxが15.7〜22.2の範囲を示している如く低く安定しているのみならず、300回の[連結一体化・連結解除]作業を繰返した後の摩擦係数も0.18〜0.29の範囲を示している如く低く安定している(実施例1〜4)。」(段落【0027】)という記載に徴すれば、その部材の性質として繰返し使用してもその部材表面が荒れず(表面粗さに大きな変化がなく)低い摩擦係数を安定的に維持することができる性質を有するものであると認められるから、この継手部材に使用されている本願補正発明の「0.02〜1重量%のCと残部がAg」とで構成されるAg合金は、上記性質を満足するものであると云える。
一方、引用発明のAg合金の性質についてみるに、引用例の上記(b)の「すり接点のAg-炭素0.5〜5wt%接点材の硬さ(Hv80〜110)が軟らかく滑りやすいので、接触抵抗が低く安定していて」という記載に徴すれば、引用発明の「軟らかく滑りやすい」という作用効果は、すなわち接点部材のすり(摺動)がスムーズであるためにその接点部材が「その表面が荒れない」という性質を有することと云えるし、また、「接触抵抗が低く安定していて」という作用効果も、「低い摩擦係数を安定的に維持することができる」という性質を有することであると云えるから、引用発明の接点部材に使用されている「0.5〜1重量%のCと残部Ag」のAg合金も、本願補正発明のAg合金と同様の性質を有するものであると云うべきである。そして、引用発明の「すり接点の接点材」も、Ag-樹脂系の硬化された厚膜導体パターンという一方の部品に対して摺動接触しつつ繰返し使用されるものであるから、本願補正発明のような「機器と部品との間に挿入して」使用する環境に適した「0.02〜1重量%のCと残部がAg」というAg合金は、例えば上記引用例によって既に公知であると云うべきである。
してみると、本願補正発明の上記相違点は、引用発明のAg合金材料をその性質を考慮して摺動接触という使用環境が類似する上記継手部材の材料として選択しただけのものであり、この程度の材料の選択は当業者が容易に設計することができたと云うべきである。
してみると、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(iii)むすび
したがって、本件手続補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明についての審決
(1)本願発明
平成14年11月1日付け手続補正は、上記のとおり却下すべきものであるから、本願の請求項1に係る発明は、平成14年7月4日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】所定機能を有する機器相互の間または所定機能を有する機器と外部機器との間または所定機能を有する機器と部品との間を連結する継手部材において、この継手部材の材質は、0.02〜1重量%のCと残部がAgとで構成したことを特徴とする継手部材。」(以下、「本願発明」という。)
(2)引用刊行物と引用発明
原査定の拒絶理由に引用された引用例とその記載事項は、上記「2.(2)」に記載されたとおりのものであり、引用発明も、前示のとおり、「すり接点の接点部材の材質は、0.5〜5重量%のCと残部がAgとで構成したすり接点の接点部材」である。
(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明の内容と対比すると、本願補正発明の「機器と部品との間に挿入して連結する継手部材」という特定事項が「機器と部品との間を連結する継手部材」というものであるから、本願補正発明の「に挿入して」という特定事項がない内容のものである。
そうすると、本願発明も、上記引用発明と対比すると、その相違点は、本願補正発明との相違点から「に挿入して」という特定事項がないだけのものであるところ、この「に挿入して」の有無が上記「2.(3)」で言及した判断に影響を及ぼす程のものではないから、本願発明も、本願補正発明と同様に、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-04 
結審通知日 2005-02-08 
審決日 2005-02-21 
出願番号 特願平7-236937
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C22C)
P 1 8・ 121- Z (C22C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 武  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 平塚 義三
原 賢一
発明の名称 継手部材  
代理人 外川 英明  
代理人 外川 英明  

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