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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47J
管理番号 1115206
審判番号 不服2003-20398  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-01-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-20 
確定日 2005-04-08 
事件の表示 特願2001-201213「蒸し器」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月14日出願公開、特開2003- 10045〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成13年7月2日の出願であって、平成15年9月24日付け(発送:同年10月1日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年10月20日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年10月20日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)により特許請求の範囲請求項1は、次のように補正された。

【請求項1】 上面側開放の外容器と、
前記外容器底面と内容器底面との間に空隙が構成されるように該外容器内に配置された上面側開放の内容器と、
前記外容器と内容器との間の空隙に配置された所定量の液を蓄える蓄液体とを具備し、
前記内容器の底面部は、断面がV形状の錐形状部の繰り返しを持つよう構成され、かつ、この錐形状部の最下位置に気孔が構成されたものであり、
前記外容器内に配された内容器の開放面側の縁部と外容器の開放面側の縁部とは接合され、前記外容器と前記内容器との間から蒸気が逃げ出せないように外容器と内容器とが一体化されてなり、
マイクロ波により加熱された際には、前記蓄液体に蓄えられていた液が蒸気となり、この蒸気が、前記気孔を経て、前記内容器底面部の上方空間に供給されるよう構成されてなることを特徴とする蒸し器。

(2)補正内容の検討
上記補正は、補正前の「上面側が開放された外容器と、物品が載置される底面を兼ねた物品載置面部には気孔が形成され、かつ、前記外容器内に位置させた状態では、前記外容器の底面と前記物品載置面部との間に空隙が形成されるよう構成された、前記外容器内に位置する、上面側が開放された内容器と、前記外容器と内容器との間における、前記物品載置面部の下方に形成される空隙に配置された、所定量の液を蓄える蓄液体とを具備し、」の記載を、「上面側開放の外容器と、前記外容器底面と内容器底面との間に空隙が構成されるように該外容器内に配置された上面側開放の内容器と、前記外容器と内容器との間の空隙に配置された所定量の液を蓄える蓄液体とを具備し、」と補正する内容を含むものである。
この部分の補正は、補正前においては、蓄液体が、外容器と内容器との間における、内容器の底面を兼ねた物品載置面部の下方に形成される空隙に配置される、としていたものを、外容器と内容器との間の空隙に配置される、としたものであり、補正後においては、「空隙」の位置について、内容器の底面を兼ねた物品載置面の下方という限定が省略されている。
このことは、補正後の発明が、内容器の底面を兼ねた物品載置面の下方以外の場所に、蓄液体を配置する構成(たとえば、内容器の、物品載置面である底面を外容器の底面より十分に小さく構成して、内容器の縁部が外容器の底面とも対面するように構成し、当該内容器の縁部の外容器の底面と対面する下方部分に、蓄液体を配置するような構成)も包含することを意味するから、当該補正は実質的に特許請求の範囲を拡張するものである。
したがって、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものとは認められず、また、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明を目的としたものとも認められないから、特許法第17条の2第4項のいずれの要件も満たすものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものであり、特許法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明

平成15年10月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1にかかる発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年8月28日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された、次のとおりのものである。

【請求項1】 上面側が開放された外容器と、
物品が載置される底面を兼ねた物品載置面部には気孔が形成され、かつ、前記外容器内に位置させた状態では、前記外容器の底面と前記物品載置面部との間に空隙が形成されるよう構成された、前記外容器内に位置する、上面側が開放された内容器と、
前記外容器と内容器との間における、前記物品載置面部の下方に形成される空隙に配置された、所定量の液を蓄える蓄液体とを具備し、
前記外容器内に配された内容器の開放面側の縁部と外容器の開放面側の縁部とは接合され、前記外容器と前記内容器との間から蒸気が逃げ出せないように外容器と内容器とが一体化されてなり、
マイクロ波により加熱された際には、前記蓄液体に蓄えられていた液が蒸気となり、この蒸気が、前記気孔を経て、前記物品載置面部の上方空間に供給されるよう構成されてなることを特徴とする蒸し器。

4.引用例

原査定の拒絶の理由で引用した刊行物である、特開2001-161562号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。

ア)「本発明は、簡便な操作で、程良い加減に蒸し調理を行うことができる電子レンジ等の誘導加熱用の蒸し器に関する。本発明で蒸し調理する食品としては、シュウマイ、餃子、中華饅頭等の蒸し調理可能な食品であれば何でも良い。」(段落【0001】)

イ)「本実施形態の蒸し器1は、電子レンジ等の誘導加熱で蒸し調理を行うための蒸し器であって、容器本体20、食品載置部40及び蓋体50とからなる。容器本体20は、上面21を開口した中空箱体で、その底部に蒸気発生体30が載置される。食品載置部40は、前記容器本体20内に設けられ、底面が容器本体20の底面部22及び上面21間に位置して、底面に通気穴46が開口形成されている。蓋体50は、透明で、前記容器本体20の上面21を被覆し、且つ上面21を通気するための開口56を開口形成してなる。蒸気発生体30は、親水性高分子に水を吸収させて形成された蒸気発生剤を蒸気透過性のフィルム又は紙などからなる袋に封入したものである。
更に詳述すると、容器本体20は、上面21を開口した箱体であり、矩形状の底面部22と、底面部22の各辺から上方に向けて延出された4つの壁部23とからなる。そして、上面21には、壁部23の上端から外方に突出した上方縁部24が設けられている。
食品載置部40は、容器本体20よりも深さが浅く、上面を開口した箱体であり、矩形状の食品載置用底面部42と、食品載置用底面部42の各辺から上方に向けて延出された4つの保持用壁部43と、保持用壁部43の上端から外方に突出して形成された上方縁部44とからなる。上方縁部44が、容器本体20の上方端縁24に係止されることにより、食品載置部40を容器本体20に安定に収納することができる。
食品載置用底面部42には、図1及び図3に示すように、食品を載置するよう均等に配置された所定高さの載置台47が所定間隔で設けられ、通気穴46が形成されている。載置台47は、食品載置用底面部42の周囲にも、一定幅で形成されており、食品載置する際の支持部となる。
また、載置台47には、食品を載置したときに、通気穴46から通過してきた蒸気が連通する蒸気連通溝48が形成されている。通気穴46は、円形状であり、食品の蒸し調理をムラなく行うために、食品載置用底面部42のほぼ全面に亘って均一に設けられている。各通気穴46の大きさ及び開口密度は、調理する食品の大きさにより任意であるが、大きさを0.1〜1cm2とし、好ましくは、0.1〜0.5cm2とするのが、食品を安定に保持し且つムラなく蒸し調理を行うために好ましい。
蒸気連通溝48は、食品の真下に対応して食品の大きさよりも小さく下方に突出して形成されており、調理の際、シューマイ等の余分な油を受けることができる。
載置台47は、中空の四角柱形状で、高さは、1〜10mm程度とするのが好ましい。なお、載置台47の高さは、蓋体50で上面21を閉ざすのに支障がない高さであれば特に制限されない。なお、本実施の形態では、載置台47を12個設けているが、特に、これに限定されるものではなく、容器の大きさ、収容される食品の種類に合わせて設計すると良い。また、本実施の形態では、載置台47の形状は、矩形状のものが点在するようにしているが、これに限定されない。すなわち、蒸気連通溝48が通気穴46に連通されており、且つ食品が載置台47上に載置可能であればどのような形状であっても良い。」(段落【0023】〜【0028】)

ウ)「本実施形態の蒸し器は、次のようにして使用することができる。
即ち、先ず蒸気発生体30を容器本体20の底面部22に載置し、食品載置部40を容器本体20に装着して、食品載置用底面部42に食品を所定数載置し、蓋体50を装着して、電子レンジ等の誘導加熱で加熱することにより、蒸気発生体30から順次蒸気を発生させて、蒸し調理を行うことができる。
そして、本実施形態の蒸し器によれば、特に水を注入する等することなく、単に容器内の所定箇所に食品を載置して電子レンジ等の誘導加熱にて処理するだけで簡便に蒸し調理を行うことができ、しかも、蒸気発生体30として蒸気発生剤を用いているので、蒸気の発生開始時期や発生量等がコントロールし易く、蒸し調理に最適であり、良好な加減で蒸し調理ができる。
特に、本実施形態のような構成の容器本体20、食品載置部40及び蓋体50を採用した場合には、これらの効果が顕著である。具体的には、食品載置部40の開口面積が上述の範囲であり、上述のように載置台47が設けてあり、蓋体50に蒸気放出部となる開口56が設けてあるので、本実施形態においては、通気穴46から蒸気連通溝48内を蒸気が通過するため、効果的に蒸気を連通させることができ、良好な蒸し調理が可能である。このため、本実施の形態では、容器本体20の底面部22に蒸気発生体30を載置して使用しているが、蒸気連通溝48を設けることにより、効果的に蒸気を連通させることができるため、単に水を注入しても、簡便に蒸し調理を行うことができることは勿論である。」(段落【0056】〜【0058】)

上記各記載及び図面の記載を参酌すれば引用例には、次の発明が記載されている。

「上面が解放された容器本体と、食品が載置される底面を兼ねた食品載置用底面部には通気穴が形成され、かつ、前記容器本体内に位置させた状態では、前記容器本体の底面と前記食品載置用底面部との間に空隙が形成されるよう構成された、前記容器本体内に位置する上面側が開放された食品載置部と、前記容器本体と食品載置部との間における、前記食品載置用底面の下方に形成される空隙に配置された、所定量の液を蓄える蒸気発生体とを具備し、前記容器本体内に配された食品載置部の上方縁部と容器本体の上方端縁とは係止されてなり、電子レンジ等の誘導加熱により加熱された際には、前記蒸気発生体に蓄えられていた液が蒸気となり、この蒸気が、前記通気穴を経て、前記食品載置用底面部の上方空間に供給されるよう構成されてなる蒸し器。」(以下、「引用例発明」という。)

5.対比・判断

本願発明と引用例発明を対比すると、後者の「容器本体」、「食品」、「食品載置用底面部」、「通気穴」、「食品載置部」、「蒸気発生体」、「食品載置部の上方縁部」及び「容器本体の上方端縁」は、それぞれ前者の「外容器」、「物品」、「物品載置面部」、「気孔」、「内容器」、「蓄液体」、「内容器の開放面側の縁部」及び「外容器に開放面側の縁部」に相当するものと認められ、「電子レンジ等の誘導加熱」は通常マイクロ波により行われるものであるから、後者の「電子レンジ等の誘導加熱により加熱された際」とは、「マイクロ波により加熱された際」を意味するものと認められる。

してみると、本願発明と引用例発明は、次の一致点及び相違点を有する。

【一致点】
上面側が開放された外容器と、
物品が載置される底面を兼ねた物品載置面部には気孔が形成され、かつ、前記外容器内に位置させた状態では、前記外容器の底面と前記物品載置面部との間に空隙が形成されるよう構成された、前記外容器内に位置する、上面側が開放された内容器と、
前記外容器と内容器との間における、前記物品載置面部の下方に形成される空隙に配置された、所定量の液を蓄える蓄液体とを具備し、
マイクロ波により加熱された際には、前記蓄液体に蓄えられていた液が蒸気となり、この蒸気が、前記気孔を経て、前記物品載置面部の上方空間に供給されるよう構成されてなることを特徴とする蒸し器。

【相違点】
本願発明は、外容器内に配された内容器の開放面側の縁部と外容器の開放面側の縁部とは接合され、前記外容器と前記内容器との間から蒸気が逃げ出せないように外容器と内容器とが一体化されているのに対し、引用例発明は、外容器(容器本体)内に配された内容器の開放面側の縁部(食品載置部の上方縁部)と外容器の開放面側の縁部(容器本体の上方端縁)とは係止されていると記載されているのみである点。

そこで、上記相違点について検討する。
引用例発明においても、上記イ)(段落【0025】)に記載されているように、内容器の開放面側の縁部と外容器の開放面の縁部は係止されている。
そして、蒸気が流通する部分の係止をするに際して、蒸気が漏れないように当該係止する部分を接合することは、たとえば、特開2000-289784号公報(段落【0020】〜【0022】)や特開平9-453号公報(段落【0042】)に記載されているように周知の手段にすぎないから、引用例発明の内容器の開放面側の縁部と外容器の開放面側の縁部を係止するに際して、当該係止する部分を周知の手段に基づいて、外容器と内容器の間から蒸気が逃げ出せないように接合して、両者を一体化するような構成を採用することに何ら困難性は認められない。

6.むすび

以上のとおりであるから、本願請求項1にかかる発明(本願発明)は、引用例の記載並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、請求項2ないし5については検討するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-26 
結審通知日 2005-02-02 
審決日 2005-02-22 
出願番号 特願2001-201213(P2001-201213)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47J)
P 1 8・ 575- Z (A47J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 3L案件管理書架D大屋 静男中川 真一  
特許庁審判長 岡 千代子
特許庁審判官 井上 哲男
今井 義男
発明の名称 蒸し器  
代理人 宇高 克己  
代理人 宇高 克己  

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