• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06T
管理番号 1115220
審判番号 不服2002-21085  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-02-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-31 
確定日 2005-04-12 
事件の表示 平成 6年特許願第175031号「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 2月16日出願公開、特開平 8- 44885〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年7月27日の出願であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「【請求項1】表示データを実画面に表示する表示倍率を算出する手段と、
上記表示倍率に従った表示すべきドット位置の算出について、計算で求まる表示位置を算出する表示位置算出手段と、
複数のドット位置の候補のうち選択される1つのドット位置との関係を方向としてオペレータに入力させ、該入力された方向に基づいてx座標とy座標とのそれぞれについて行う計算処理を切り上げと切り捨てとのいずれかに決定し、上記表示位置算出手段により端数が出た表示位置の端数処理を行う端数処理手段と、
上記端数処理手段の結果に基づいて、表示データを実画面上に表示する表示手段と
を備えたことを特徴とする表示装置。」

2.引用刊行物
(1)これに対して、当審において平成16年11月1日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開昭59-214944号公報(刊行物1)には、次の事項が記載されている。
ア 「特許請求の範囲
ホストコンピユ-タから送信されるアプリケ-ションプログラムで定義した仮想画面上の座標デ-タを受付ける手段と、仮想画面上の座標デ-タを、端末の実画面上の座標デ-タに変換する手段とからなることを特徴とする図形出力端末装置。」(1頁左欄3〜8行)
イ 「〔発明の利用分野〕
本発明は、ホストコンピユ-タ内の図形出力プログラムで作成した仮想画面上の座標デ-タを、実画面上の座標デ-タに変換し、実画面上に図形を出力する図形出力端末装置に関する。」(1頁左欄10〜14行)
ウ 「〔発明の目的〕
本発明は、アプリケ-シヨンプログラムが任意のサイズで記述した作画情報を端末の画面サイズに変換し、表示することによつて、(1)端末の画面サイズを意識することなく、ユ-ザがアプリケ-ションプログラムを作成できるようにする、(2)既存のアプリケ-シヨンプログラムを修正することなく、画面サイズの異なる端末で利用できるようにする、ことを目的とした図形出力端末装置を提供することにある。」(1頁右欄10〜19行)
エ 「座標変換装置5は、仮想画面サイズ(左下端・右上端座標)、実画面サイズ(左下端・右上端座標)及び、デ-タ判別装置4から送られてきた座標デ-タをもとに、次式で実画面座標に変換する。なお、“実画面の左下端座標、右上端座標は本端末製造時に記憶されている″とし、仮想画面の左下端座標と実画面の左下端座標、仮想画面の右上端座標と実画面の右上端座標とをそれぞれ対応付けることとする。
<変換式>
xR=xi×(XRmax-XRmin)/(Ximax-Ximin)
yR=yi×(YRmax-YRmin)/(Yimax-Yimin)
但し、xR,yR・・・実画面上の座標
xi,yi・・・仮想画面上の座標
XRmax,YRmax・・・実画面の右上端座標
XRmin,YRmin・・・実画面の左下端座標
Yimax,Yimax・・・仮想画面の右上端座標
Yimin,Yimin・・・仮想画面の左下端座標
座標変換装置は、変換後座標デ-タを図形出力装置1に送信する。」(2頁右上欄20行〜同右下欄5行)
これら記載事項及び図1によると、刊行物1には、
「アプリケーションが任意のサイズで記述した作画情報を端末の画面サイズに変換し、実画面上に表示する際に、仮想画面上のx座標、y座標それぞれに、実画面サイズ/仮想画面サイズを乗じて実画面上の座標を求める図形出力端末装置」の発明が記載されている。

(2)また、同じく当審における上記拒絶の理由に引用された特開平5-53559号公報(刊行物2)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 文字の輪郭座標に対し、拡大・縮小等の座標変換をした後、変換後座標データを用いて、輪郭内部を塗りつぶして、ラスター形式の文字データを発生する文字出力装置のうち、文字形状の水平・垂直線を構成する輪郭線ペアを抽出する手段を有し、座標変換時に、該水平・垂直線幅を一定の規則により調整する機能を持つ文字発生方式において、水平・垂直線を抽出する手段として、文字データ中に文字輪郭を表すデータの他に、水平垂直線の存在する座標と線幅を示す値を予め付加しておくことを特徴とする文字発生装置。」(2頁1欄2〜11行)
イ 「【請求項4】 水平垂直線幅を調整する機能を持つ文字発生方式において、ユーザの設定可能な内部レジスタ”端数処理レジスタ”を設け、出力線幅を、
出力線幅 = 線幅座標変換結果+端数処理レジスタ値
という計算方法で自動算出することを特徴とする文字発生方式。」(2頁1欄24〜29行)
ウ 「【0012】さらに、端数処理レジスタの採用により、算出された出力線幅の小数部の処理がユーザの任意となり、よりデザインに即した線幅の出力が可能になる。」(2頁2欄36〜38行)
エ 「【0023】次に、第2の方法について図5のフローチャートを用いて説明する。まず、出力基準座標と線幅データに拡大縮小率を乗算する(51、52、53、54)。第1の方法と同じく水平垂直線により乗算値は異なる場合があるので(50)で判定する。この座標変換結果は、固定小数点で表されるものとする。例えば、出力座標値が16ビットで表されており、そのうちの下位3ビットが小数部であるとする。この場合、乗算結果と端数処理レジスタの値とを加算し(55)、さらに下位3ビットを強制的に0とした値を出力線幅とする(56)。従って、ユーザによって変更可能な端数処理レジスタの値により、出力線幅が変わる可能性がある。すなわち、端数処理レジスタに4Hという値が設定したあった場合には、小数点以下第1位を四捨五入したと同様の結果が得られる。さらに、端数処理レジスタの値を変化させることにより、線幅の変換結果を量子化する際のバウンダリを変化させることができる。このようにして算出された出力線幅と基本座標と拡大縮小率の乗算結果との加算値を補正座標データとして(57)、補正座標格納RAM7に格納する(58)。格納場所は第1の方式と同様である。」(3頁4欄24〜44行)

3.対比
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された実画面サイズ/仮想画面サイズは本願発明の「表示倍率」に相当し、刊行物1に記載された発明が、この「表示倍率」を算出する手段を備えることは明らかであり、さらに刊行物1に記載された発明において、上記「表示倍率」を乗じて実画面上の座標を求めているからこのための算出手段を備えることは明らかであり、これは、本願発明の「表示倍率に従った表示すべきドット位置の算出について、計算で求まる表示位置を算出する表示位置算出手段」に相当し、また刊行物1記載の発明においても、最終的に実画面上に表示するから、表示データを実画面上に表示する表示手段を備えることも明らかである。
してみれば、両者は、
「表示データを実画面に表示する表示倍率を算出する手段と、
上記表示倍率に従った表示すべきドット位置の算出について、計算で求まる表示位置を算出する表示位置算出手段と、
上記表示位置に基づいて、表示データを実画面上に表示する表示手段と
を備えたことを特徴とする表示装置。」
である点で一致するが、以下の点で相違する。
(相違点)本願発明が、複数のドット位置の候補のうち選択される1つのドット位置との関係を方向としてオペレータに入力させ、該入力された方向に基づいてx座標とy座標とのそれぞれについて行う計算処理を切り上げと切り捨てとのいずれかに決定し、上記表示位置算出手段により端数が出た表示位置の端数処理を行う端数処理手段を備え、この端数処理手段の結果に基づいて、表示データを表示するのに対して、刊行物1記載の発明においては、端数処理については示されていない点。

4.当審の判断
そこで、上記(相違点)について検討すると、刊行物1記載の発明において、表示倍率に従い座標を計算すれば端数が生じることがあることは想像に難くない。そして、端数が生じたときに切り上げや切り捨て等の処理をすることは周知であり、しかも、刊行物2には、座標計算の際にユーザによって変更可能な端数処理レジスタの値に基づいて端数処理する(前記値を0Hとすれば切り捨てとなり、7Hとすれば切り上げになることは明らか)ことが記載されているから、刊行物1記載の発明にユーザによって変更可能な切り捨て、切り上げ処理を採用することは当業者が容易になし得ることである。この際に、ユーザインタフェースをわかりやすいものとすることは一般的な課題であり、しかも表示装置のユーザインタフェースにおいて方向を入力して表示装置の操作を行うことは慣用手段である(例えば、特開平5-159040号公報の図2のスクロールボタン208参照。)から、端数処理の変更を方向を入力することにより行うように設計することも当業者が容易になし得ることである。
なお、端数処理をX座標とY座標とのそれぞれについて行うことは、もともと刊行物1記載の発明が座標計算をx座標とy座標とのそれぞれについて行うものであること、一般に処理内容を指定する際にはより多くの事項について指定できる方が指定者の希望をより適切に反映できることを考慮すれば、当然に導出できることである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-28 
結審通知日 2005-02-08 
審決日 2005-02-21 
出願番号 特願平6-175031
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡本 俊威  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 深沢 正志
加藤 恵一
発明の名称 表示装置  
代理人 岡田 守弘  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ