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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1115236
審判番号 不服2002-3294  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-26 
確定日 2005-04-06 
事件の表示 平成11年特許願第228760号「ケーブル用バンド」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月23日出願公開、特開2001- 53466〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年 8月12日の出願であって、原審で通知された拒絶理由に対して、平成13年 7月 9日付で手続補正がなされた後、平成14年 1月22日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年 2月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年 3月 6日付で手続補正がなされたものである。

第2.平成14年 3月 6日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年 3月 6日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】ケーブルを集約、束線するケーブル用バンドであって、
前記ケーブル用バンドの一部を切り欠いた切り欠き部、複数本のケーブルを巻回可能な腹部、この腹部より短尺な頭部及び前記腹部に設けられた開口部を備え、
前記頭部は、ケーブルを巻回して前記開口部に挿入可能であり、
前記開口部により設けられた開口長は、前記切り欠き部により設けられた切り欠き長とほぼ同一か、もしくは長めに設け、
上記バンドの一面は、フック状とし、他面は、パイル状としたことにより、上記バンドの一面と他面が着脱可能であることを特徴とするケーブル用バンド。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「バンドの一面と他面が着脱可能である」ことの具体的な態様について、「バンドの一面は、フック状とし、他面は、パイル状とした」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
(1)原審の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である昭和43年 5月25日に頒布された「実公昭43-12195号公報」(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
(a)「本案はコードバンドの改良に関するものである
コードバンドの使用目的は無論コードを結束することにあるが、コードの結束を解いた際コードからコードバンドが外れたのではこれの保管が必要となって具合がわるい。」(公報第1頁左欄20行〜24行)
(b)「本案は上記の欠点を除去するもので以下図を参照して説明すると1は合成樹脂よりなる帯状のバンド本体、2は舌片でバンド本体1の一端両側に相対向する切欠き5,5′を設けてなる。3,4はバンド本体1に設けた孔で孔4はバンド本体1の切欠き5,5′とは反対側の端部a寄りに設けられる。孔3は切欠き5,5′に対し1本のコード6の外周長にほぼ相当する間隔をとってバンド本体1に設けられる。」(公報第1頁左欄36行〜右欄7行)
(c)「コードバンドをコード6に取付けるには1本のコード6に巻回するようにして舌片2を孔3に圧入し、この孔3と切欠き5,5′を係合させる。」(公報第1頁右欄8行〜右欄10行)
(d)「次に多数のコード6を結束するには多数のコード6を巻回するようにして切欠き5,5′と孔4を係合させる。結束を解くにはバンド本体1の端部aを引いて孔4と切欠き5,5′との係合を外せばよいが結束を解いた後もコードバンドは1本のコード6に取り付けられた状態にあり、これと分離することはない。」(公報第1頁右欄11行〜17行)
(e)「以上のように本案はコードバンドの切欠きに対し1本のコードの外周長にほぼ相当する間隔をとった位置に切欠きと係合するための孔を設けたもので、1本のコードに巻回係合するだけの簡単な作業で該コードにコードバンドを取付けし得る。またコードバンドの取換えに際してはいちいちコードとプラグ等の接続を外す必要がない等の効果がある。」 (公報第1頁右欄18行〜25行)
(f)「合成樹脂よりなる帯状のバンド本体1の一端両側に相対向する切欠き5,5′を設けて舌片2を形成し、かつ他端a寄りに該切欠き5,5′と係合し多数のコードを結束するための孔4を設けたコードバンドにおいて前記切欠き5,5′に対し1本のコードのほぼ外周長に相当する間隔をとったバンド本体1の端部a側寄りの位置に該切欠き5,5′と係合する孔3を設けたコードバンド。」(公報第1頁右欄27行〜34行,実用新案登録請求の範囲)

以上の記載事項によれば、前記引用例には、少なくとも、
「コード6を結束するコードバンドであって、
前記コードバンドの一部を切り欠いた切欠き5,5′、複数本のコード6を巻回可能なバンド本体1、このバンド本体1より短尺な舌片2及び前記バンド本体1に設けられた孔3を備え、
前記舌片2は、コード6を巻回して前記孔3に挿入可能であり、
上記バンドの切欠き5,5′とは反対側の端部a寄りに孔4を設けたことにより、上記舌片2と孔4とが係合可能であるコードバンド」の発明
が記載されていると認められる。

3.対 比
本願補正発明と引用例に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、後者の「コード6」,「切欠き5,5′」,「バンド本体1のうちの複数本のコード6を巻回する部分」,「舌片2」,「孔3」,「結束」,「コードバンド」は、前者の「ケーブル」,「切り欠き部」,「腹部」,「頭部」,「開口部」,「集約、束線」,「ケーブル用バンド」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は、
[一致点]
「ケーブルを集約、束線するケーブル用バンドであって、
前記ケーブル用バンドの一部を切り欠いた切り欠き部、複数本のケーブルを巻回可能な腹部、この腹部より短尺な頭部及び前記腹部に設けられた開口部を備え、
前記頭部は、ケーブルを巻回して前記開口部に挿入可能であるケーブル用バンド」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本件補正発明においては、開口部に関して、「開口部により設けられた開口長は、切り欠き部により設けられた切り欠き長とほぼ同一か、もしくは長めに設け」たのに対して、引用発明においては、当該構成について明確に特定されていない点。
[相違点2]
バンドでケーブルを集約、束線する態様において、本願補正発明は、「バンドの一面は、フック状とし、他面は、パイル状としたことにより、上記バンドの一面と他面が着脱可能」としているのに対し、引用発明は、当該構成を備えるものではなく、頭部(舌部2)と、切り欠き部とは反対側の端部に設けた開口(孔4)との係合によるものである点。

4.当審の判断
(1)相違点1について
相違点1について検討するに、そもそも、当該寸法関係については、実施例において、本願の出願当初の明細書以来一貫して、「開口部6により設けられた点CーC′間を開口長と称する。開口長は、切り欠き長とほぼ同一か、もしくはやや短めに設けることが好ましい。」(段落【0018】参照,但し、アンダーラインは当審で付加。)とされてきたものである。
そして、開口長と切り欠き長との寸法関係は、頭部がケーブルを巻回して前記開口部に挿入可能で、かつ、前記頭部が挿入された状態から簡単に抜けないように保持されるものであれば足りるものと解される。
以上のことから、開口長と切り欠き長との寸法関係は、ケーブル用バンドが前記所望の機能を有するように、当業者が通常なし得る設計事項に過ぎないと言えるものであって、引用発明において、上記相違点1に係る本件補正発明と同様の構成とすることは当業者であれば容易に想到できたことである。

(2)相違点2について
相違点2について検討するに、一般に、一面をフック状とし、他面をパイル状とすることによって、前記一面と他面とを着脱可能としたもの自体は、日常的に極めて有り触れたものである。加えて、引用発明と共通の技術分野に属する「束線クランパ」としても、前記一面と他面とが着脱可能な構成が周知な技術事項となっている(実願昭60-109983号(実開昭62-17188号)のマイクロフィルム参照)。そして、当該周知技術を引用発明におけるバンドの面と面との着脱手段に適用することを妨げる事由は見当たらない。
以上のことから、引用発明において、バンドの面同士の着脱手段として、一面をフック状とし、他面をパイル状とした周知技術を採用することによって、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者ならば必要に応じて容易に想到し得た事項と認められる。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成14年 3月 6日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成13年 7月 9日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】ケーブルを集約、束線するケーブル用バンドであって、
前記ケーブル用バンドの一部を切り欠いた切り欠き部と、
複数本のケーブルを巻回可能な腹部と、
この腹部より短尺な頭部と、
前記腹部に設けられた開口部と、
を備え、
前記頭部はケーブルを巻回して前記開口部に挿入可能であり、
前記開口部により設けられた開口長は、前記切り欠き部により設けられた切り欠き長とほぼ同一か、もしくは長めに設け、
上記バンドの一面と他面が着脱可能であることを特徴とするケーブル用バンド。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「第2.2.引用例」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.で検討した本願補正発明から「バンドの一面と他面が着脱可能である」ことについての限定事項である、「バンドの一面は、フック状とし、他面は、パイル状とした」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4.当審の判断」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-26 
結審通知日 2005-02-01 
審決日 2005-02-15 
出願番号 特願平11-228760
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 成就中島 成  
特許庁審判長 大野 覚美
特許庁審判官 鈴木 久雄
神崎 潔
発明の名称 ケーブル用バンド  

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