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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1115284
審判番号 不服2002-11335  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-20 
確定日 2005-04-07 
事件の表示 平成5年特許願第40123号「マグネットコンセント及びアダプタ」拒絶査定不服審判事件〔平成6年9月16日出願公開、特開平6-260244号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年3月1日の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成14年7月22日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。

「ハウジングが既製の埋込型の配線器具のモジュール寸法に形成されると共に、電源プラグの給電ピンを挿入するピン挿入孔がハウジングの前面側に形成され、電源プラグの吸着板を吸引する磁極板の先端がハウジングから前方に突設され、上記既製の埋込型の配線器具を埋設する場合に用いられる取付枠を着脱自在に取り付ける取付部がハウジングに設けられ、電源プラグの非装着時に給電ピンが挿入される方向に交差する方向におけるピン挿入孔の両側から夫々コイルスプリングにより付勢された一対の扉体でピン挿入孔が閉塞され、かつ電源プラグの装着時に給電ピンの挿入によりばね力に抗して夫々の扉体がスライドされて給電ピンがピン挿入孔に挿入可能となる扉部をピン挿入孔の背面側に備え、各扉体には互いに対向配置される当接部にV字状の凹部を形成するテーパ面が夫々形成され、上記V字状の凹部とピン挿入孔の位置とが合致し、扉体及びコイルスプリングをハウジング内に収納する基体としての押さえ板に扉体の一部を収めて位置決めする凹所が形成され、押さえ板の両端面に形成した嵌合凸部がハウジングの内側面に形成した嵌合凹部に嵌まって押さえ板がハウジング内に圧入固定されて成ることを特徴とするマグネットコンセント。」(以下、「本願発明」という)

【2】引用例及びその記載事項の概要
原審の拒絶の理由において引用された、特開昭61-78078号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。
イ)「次に、マグネット式のコンセントアダプタ本体Zやアダプタ本体Yが装着されている2個口用のコンセント本体Qについて説明する。第10図は2個口用のコンセント本体Qの分解斜視図を示し、このコンセント本体Qはほぼ対称な一対の側面カバー1a,1bと、この側面カバー1a,1bの間に位置する中央カバー2と、側面カバー1a,1b及び中央カバー2の下方に位置するボディ3とで外殻を構成し、これら側面カバー1a,1bと、中央カバー2及びボディ3とで囲まれる内部に各種部材が挟持乃至収納配置されている。」(第5頁左上欄第18行〜右上欄第8行)
ロ)「側面カバー1aと中央カバー2の中央には内側が開口した収納凹所8が形成してあり、この収納凹所8内に永久磁石9と、永久磁石9の両側面に吸着される磁性体からなる吸引板10とが収納配置されるものである。永久磁石9は収納凹所8内に収納されるが、吸引板10の上端部(第10図において)は側面カバー1aと中央カバー2の上面の開口した溝11より、上方に突出させている。また、収納凹所8の斜め上方には扉収納部13が形成されていて、逆S字型の扉体14が収納される。扉収納部13の上方の側面カバー1aと中央カバー2の上面にはアダプタの接点棒が挿通される挿入口12が一対穿孔されている。」(第5頁左下欄第18行〜右下欄第10行)
ハ)「上記扉体14の中央部の上面には前軸16が、下面には後軸17がそれぞれ突設してあり、扉体14の前軸16は側面カバー1aと中央カバー2の天板下面に形成されている前軸受け部18に軸支され、後軸17にはコイル状スプリング15aが挿着されて、後軸受け部19を介して永久磁石9の上面に載置される。従って、扉体14はスプリング15aにより上方に付勢されて回動自在に挿着される。そして、扉体14に回転復帰力を与えるために、スプリング15bは扉収納部13の内側端部内に収納配置され、このスプリング15bにて扉体14は反時計方向に付勢される。このように、扉体14は前軸16を軸としてスプリング15bにより反時計方向に回動付勢され、扉体14の先端側部が側面カバー1a,1bまたは中央カバー2の側壁20に弾接している。従って、この状態において扉体14の先端部によって挿入口12を閉塞している。扉体14の先端部にはアダプタの接点棒の挿入と共に扉体14に時計方向の回転力を加えて挿入口12を開口するための傾斜面14bを形成するとともに、第12図に示すように側面カバー1a,1bの挿入口12に対応して先端部を挿入口12内に挿着すべく段部14cを形成している。」(第5頁右下欄第10行〜第6頁左上欄第14行)
ニ)「側面カバー1a,1bと中央カバー2と、ボディ3及び取付枠36が一体に組み付け固定される。」(第6頁左下欄第14〜16行)
ホ)「取付枠36にはそれぞれボックスに取り付けるための取付穴42,43やねじ孔44が形成されている。」(第6頁右下欄第2〜4行)
ヘ)「配線器具の永久磁石とコンセントアダプタ本体の吸着板とにより配線器具のコンセントアダプタ本体へのワンタッチの着脱が可能となる効果を奏し」(第7頁左下欄第14〜17行)

上記の摘記事項を纏めると、引用例には以下の発明が記載されているものと認める(以下、「引用発明」という。)。

(引用発明)
「アダプタの接点棒を挿入する挿入口12が側面カバー1a,1b及び中央カバー2の前面側に形成され、アダプタの吸着板を吸引する吸引板10の上端部が中央カバー2の上面の開口した溝11より上方に突出され、壁面のボックスに対して取付穴42、43やねじ孔44にて取り付けるための取付枠36が側面カバー1a,1b、中央カバー2及びボディ3と一体的に組み付け固定され、接点棒の非挿通時にコイルスプリングにより付勢された扉体の先端部によって挿入口12が反時計方向側から閉塞され、かつ接点棒の挿入により扉体14が時計方向に回転されて接点棒が挿入口に挿入可能となる扉体14を挿入口の背面側に備え、扉体14の先端部には接点棒の挿入と共に扉体14に時計方向の回転力を加えて挿入口12を開口するための傾斜面14bが形成され、側面カバー1a,1bの挿入口12に対応して先端部が挿入口12内に挿着されているコンセント本体Q。」

【3】対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「接点棒」は本願発明の「給電ピン」に相当し、以下同様に、「挿入口12」は「ピン挿入孔」に、「吸引板10」は「磁極板」に、「壁面のボックス」は「配線器具を埋設する場合に用いられる取付枠」に、「取付枠36」は「取付部」に、「扉体14の先端部」は「扉体」に、「スプリング15」は「ばね」に、「回転」は「スライド」に、「傾斜面14b」は「テーパ面」に、「コンセント本体Q」は「マグネットコンセント」にそれぞれ相当する。
更に、引用発明の「アダプタ」は、電源プラグの付属物として通常使用されるところから見て、本願発明の「電源プラグ」に包含されるものといえる。そうすると、引用発明の「アダプタの吸着板を吸引する」は、本願発明の「電源プラグの吸着板を吸引する」に、同じく「接点棒の非挿通時」は「電源プラグの非装着時」に、「接点棒の挿入」は「電源プラグの装着時」に各々等しいと言える。
加えて、引用発明の「吸引板10の上端部が中央カバー2の上面の開口した溝11より上方に突出され」る状況は、本願発明の「磁極板の先端がハウジングから前方に突設され」た状況と等しいものといえ、また引用発明の「壁面のボックスに対して取付穴42、43やねじ孔44にて取り付ける」態様は、着脱が可能といえるので、本願発明の「取付枠を着脱自在に取り付ける」態様に相当するといえるので、両者は、

「電源プラグの給電ピンを挿入するピン挿入孔がハウジングの前面側に形成され、電源プラグの吸着板を吸引する磁極板の先端がハウジングから前方に突設され、配線器具を埋設する場合に用いられる取付枠に着脱自在に取り付ける取付部がハウジングに設けられ、電源プラグの非装着時にコイルスプリングにより付勢された扉体でピン挿入孔が閉塞され、かつ電源プラグの装着時に給電ピンの挿入によりばね力に抗して扉体がスライドされて給電ピンがピン挿入孔に挿入可能となる扉部をピン挿入孔の背面側に備え、扉体にはテーパ面が形成されるマグネットコンセント。」
の点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。

<相違点1> ハウジングの寸法に関して、本願発明では、「既製の埋込型の配線器具のモジュール寸法に形成」されているのに対し、引用発明では、寸法に関する定めがない点。
<相違点2> 扉体によるピン挿入孔閉塞機構に関して、本願発明では、「扉体」が「一対」であり、かつ、「ピン挿入孔の両側から」「閉塞」され、一対の「扉体」は「互いに対向配置」され「当接部」をなし「V字状の凹部」を形成するとしているのに対して、引用発明の扉体によるピン挿入孔閉塞機構は一の部材の使用であり、その閉塞方向にしても「反時計方向」、すなわち片側からであり、「テーパ面」を有するものの、一対の「扉体」は「互いに対向配置」され「当接部」をなし「V字状の凹部」を形成するものではない点。
<相違点3> 扉体によるピン挿入孔閉塞機構のハウジングへの組み立てに関して、本願発明では「上記V字状の凹部とピン挿入孔の位置とが合致し、扉体及びコイルスプリングをハウジング内に収納する基体としての押さえ板に扉体の一部を収めて位置決めする凹所が形成され、押さえ板の両端面に形成した嵌合凸部がハウジングの内側面に形成した嵌合凹部に嵌まって押さえ板がハウジング内に圧入固定されて成る」としているのに対して、引用発明ではかかる組み立てでない点。

上記の相違点について検討する。
<相違点1について>
ところで、本願で言う「既製の埋込型の配線器具のモジュール」については、本件出願前に当業者に周知(必要ならば、特開昭64-72479号公報等を参照。)と言え、コンセント自体の寸法を規格品の寸法にあわせることは全く自然な設計行為と言うべきである。とすれば当該相違点1については、当業者が容易になし得る設計的事項に相当し、格別の困難性は認められない。
<相違点2について>
扉体によるピン挿入孔閉塞機構に関し、一対の扉体がピン挿入口の両側から閉塞する構造であって、各扉体の対向配置で形成される当接部がV字状の凹部を形成するものは、本件特許出願前に当業者が周知の構成(例えば、実願昭54-106495号(実開昭56-24077号)のマイクロフィルムを参照。「一対の扉体」に当たるものは、第3図乃至第5図中の「扉体14,14」であり、第4図から明らかなように、各扉体14,14同士は当接し、断面がV字状になっている。)に他ならない。よって、引用発明の扉部分に、当該周知技術を単に置換して本願発明の構造の如くなす程度のことは、当業者が容易になし得た程度のものと認められる。
<相違点3について>
前記相違点2に示したピン挿入孔閉塞機構を見て分かるように、本願で言う「上記V字状の凹部とピン挿入孔の位置とが合致」する位置関係は、機構の動作上しごく当たり前の位置関係にすぎず、また、「扉体及びコイルスプリングをハウジング内に収納する基体としての押さえ板に扉体の一部を収めて位置決めする凹所が形成され、押さえ板の両端面に形成した嵌合凸部がハウジングの内側面に形成した嵌合凹部に嵌まって押さえ板がハウジング内に圧入固定されて成る」といった細部の組み立て乃至取付は、凹凸を用いた一体化と周知慣用な圧入による組み込みを利用したにすぎず、いずれも当業者が適宜なし得た設計的事項にとどまると言わざるを得ない。

なお、請求人は平成16年12月6日付け回答書にて、当審における審尋手続で提示した上記例示の刊行物(実願昭54-106495号(実開昭56-24077号)のマイクロフィルム)に対して、「ところで、本願発明では、扉体の一部を凹所に収めて位置決めする上記B構成を採用しているから、本願発明において扉体の開閉に伴う直進移動の際に扉体を案内する機能を持つ。つまり、本願発明において扉体の一部を押さえ板に設けた凹所に収めて位置決めすることは、扉体をハウジングに組み込む際の位置決めにとどまらず、扉体がピン挿入口を開閉する際の位置ずれを防止するための位置決めでもある。」(回答書第2頁第18〜23行)と主張しているが、かかる扉体の開閉時の位置ずれ防止、つまるところのガイド機能については、上記例示の刊行物にしても「カバー7」の外殻内壁面の内、扉体14の側面と接する部分にて同様の機能が達成されているものと理解でき、かかる構成により初めて達成された機能とは言えず、また、当初明細書にもかかる認定を覆すべき記載は見あたらない。

【4】むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-04 
結審通知日 2005-02-08 
審決日 2005-02-22 
出願番号 特願平5-40123
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男稲垣 浩司  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 一色 貞好
西村 泰英
発明の名称 マグネットコンセント及びアダプタ  
代理人 西川 惠清  
代理人 森 厚夫  

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