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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1115288
審判番号 不服2001-20234  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-11-12 
確定日 2005-04-07 
事件の表示 平成11年特許願第168885号「メッシュ型無線アクセスシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月26日出願公開、特開2000-358036〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は、平成11年6月15日の出願であって、平成13年11月12日付けで審判請求がなされ、特許法第17条の2第1項第3号の規定により、平成13年12月12日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成13年12月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について

[補正却下の決定の結論]
平成13年12月12日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正は、補正前特許請求の範囲の
(1)「【請求項1】 各インターネットノード間あるいはインターネットサービス事業者間においてデータ信号の双方向伝送を行うノードを、マイクロ波無線により双方向伝送する無線アクセスノードによって構成するとともに、前記無線アクセスノード間の接続を、マイクロ波無線を利用したポイント・ツー・ポイントベースのメッシュ型トポロジー構成としたことを特徴とするメッシュ型無線アクセスシステム。
【請求項2】 前記無線アクセスノードは、配下にIPデータの発信元あるいは受信先であるPC、サーバー、LAN等が接続され、IPデータを伝送するルーターと、該ルーターから入力されるデータ信号をマイクロ波無線信号に変換して隣接ルーターに向けて出力するとともに隣接ルータから入力されたマイクロ波無線信号をデータ信号に変換して前記ルータに出力する複数の無線機を備えていることを特徴とする請求項1記載のメッシュ型無線アクセスシステム。
【請求項3】 前記無線アクセスノードは、その隣接する全ての無線アクセスノードと同数の前記無線機を備えていることを特徴とする請求項2記載のメッシュ型無線アクセスシステム。
【請求項4】 前記無線機は、前記ルーターから入力されるデータ信号を無線伝送に適したベースバンド信号に変換して変復調器に出力するとともに、前記変復調器から入力されたベースバンド信号をデータ信号に変換して前記ルーターに出力するベースバンド処理部と、前記ベースバンド信号により無線信号を変調して指向性を有するアンテナに送出するとともに、前記アンテナで受信した無線信号を復調して前記ベースバンド処理部へ出力する変復調器と、前記無線信号を前記隣接無線アクセスノードの内の特定の一つの無線アクセスノードにのみ送信するとともに、前記特定の一つの無線アクセスノードから送信された無線信号を受信して前記変復調器へ出力する指向性を有するアンテナとを備えていることを特徴とする請求項2または3記載のメッシュ型無線アクセスシステム。」を、
(2)「【請求項1】 各インターネットノード間あるいはインターネットサービス事業者間においてデータ信号の双方向伝送を行うノードを、マイクロ波無線により双方向伝送する無線アクセスノードによって構成するとともに、前記無線アクセスノード間の接続を、マイクロ波無線を利用したポイント・ツー・ポイントベースのメッシュ型トポロジー構成としたことを特徴とするメッシュ型無線アクセスシステムであって、
前記無線アクセスノードは、配下にIPデータの発信元あるいは受信先であるPC、サーバー、LAN等が接続され、IPデータを伝送するルーターと、該ルーターから入力されるデータ信号をマイクロ波無線信号に変換して隣接ルーターに向けて出力するとともに隣接ルータから入力されたマイクロ波無線信号をデータ信号に変換して前記ルータに出力する複数の指向性を有するアンテナを有する無線機を備えていることを特徴とするメッシュ型無線アクセスシステム。
【請求項2】 前記無線アクセスノードは、その隣接する全ての無線アクセスノードと同数の前記無線機を備えていることを特徴とする請求項1記載のメッシュ型無線アクセスシステム。
【請求項3】 前記無線機は、前記ルーターから入力されるデータ信号を無線伝送に適したベースバンド信号に変換して変復調器に出力するとともに、前記変復調器から入力されたベースバンド信号をデータ信号に変換して前記ルーターに出力するベースバンド処理部と、前記ベースバンド信号により無線信号を変調して指向性を有するアンテナに送出するとともに、前記アンテナで受信した無線信号を復調して前記ベースバンド処理部へ出力する変復調器と、前記無線信号を前記隣接無線アクセスノードの内の特定の一つの無線アクセスノードにのみ送信するとともに、前記特定の一つの無線アクセスノードから送信された無線信号を受信して前記変復調器へ出力する指向性を有するアンテナとを備えていることを特徴とする請求項1または2記載のメッシュ型無線アクセスシステム。」、
と補正することを含むものである。
該補正は、補正前特許請求の範囲の請求項1を削除するとともに、該請求項2の無線機の構成について「指向性を有するアンテナを有する」点について限定することを含むものであり、該補正は、補正前請求項2について、明らかに特許請求の範囲の減縮するものである。 本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明が独立して特許を受けることができるのか否かについて以下、検討する。

2.特許法第29条第2項についての検討
(1)補正後の発明
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「補正後の発明」という。)は、前記1.(2)【請求項1】に記載のとおりのものである。

(2)引用例
ア.原審拒絶理由において引用されたフランス特許公開2770713号(以下、「引用例1」という。)には、概ね、下記(ア)〜(オ)の事項が記載されている。
(ア)「本発明は分散タイプのネットワークの局間の通信のルーティングに関するものである。」(引用例1、1頁10〜11行の和訳 なお、行は頁左端の数字による。以下、2.(2)引用例 ア.において同様)、
(イ)「図1に示されている選択された実施の形態に応じて、一つのローカル無線ネットワークは幾つかの局を有する。そのうちの五つ、SMaからSMeまでが示されている。ここでは局は可動局である。可動局の接続性は局の移動やその環境の変化に応じて常に変化している。さらに、ネットワークに実際に接続される可動局の数もまた変化することがある。局はラジオ通信によって、または変形例では赤外線通信によって、相互に通信する。ネットワークのそれぞれの局またはノードは、一意的なアドレスによって位置づけられる。ここでは、ポイントツーポイント・モードでの通信が特に関心の対象となる。
ネットワークは分散タイプ、つまり局間通信を管理する基地局を備えていないタイプである。局間の通信はルーティング機能によって可能となっている。二つの局、たとえばSMaおよびSMbがメッセージの直接確認を行う場合、すなわちこの二つの局が相互に十分に近い距離にあり、その間に無線通信の障害物がない場合、両者はセグメント"ab"を介して直接に通信できる。局SMaは局SMbに対して、後ほど詳述するメッセージを送信することができる。局SMaは最初の送信局、局SMbは最後の着信局と呼ばれる。
これに対して、二つの局、仮に局SMaと局SMdとする、が直接通信できない場合には、たとえば通信は二つの局、局SMaと局SMdの間の中間局として動作する局、ここでは局SMbと局SMcとする、を介して行われる。メッセージは、セグメント"ab"、次に"bc"、最後に"cd"を順に介して送信される。これらの三つのセグメントが局SMaと局SMdとの間の経路を形成する。」(引用例1、5頁27行〜6頁20行の和訳)、
(ウ)「いずれか一つの局、たとえば局SMcの構成例が図2に示されている。本発明を実現する手段は、ここには記載されていない従来のユーザーインターフェイスを備えたコンピュータに組み込まれている。変形例では、本発明を実現する手段は、移動局自体には組み込まれていないが、これらの手段と移動局とが相互に通信し、協働するように適合されている。
移動局SMcには、バスによって、一方ではプロセッサによって実行されたプログラムが記憶された読み出し専用メモリ(ROM)30に接続され、他方では作業領域、データ・レジスタ、および受信した、または送信待ちのメッセージの記憶のために予約された領域を備えたランダム・アクセス・メモリ(RAM)20に接続された、プロセッサ10の形の中央処理ユニットが組み込まれている。ランダム・アクセス・メモリ(RAM)20は、特に、移動局SMcが受信し傍聴した最新メッセージのテーブルに対応する後述のログを記憶する。
移動局SMcは、移動局SMcが他の移動局との間でデータを送受信できるようにする、それ自体は周知の無線周波数通信モジュール50を含む。
無線周波数通信とプロセッサ10の間のインターフェイスは以下によって達成される。
-そのバイナリ値が所定の瞬間での無線伝送媒体の占有状態を表わす制御ポート15
-プロセッサ10が移動局SMcによって受信されたデータを読み出す読出ポート16
-移動局SMcが無線周波数伝送媒体を介して送信したいデータを書き込むことができる書込ポート17
プロセッサ10に接続されたクロック40を使って、プロセッサは、たとえばポート15、16、17への読み出し/書き込み処理などの動作を一定の間隔で実行できる。
移動局SMcによって、ローカル無線ネットワークのユーザーは、時間と共に変化し、多くの中間局を使用する複数の経路に沿ってデータ交換を行うことができる。これらの経路はネットワークの移動局のルーティング・テーブルから確立される。
ルーティング機能を実現するために、それぞれの移動局はメモリ内に図3に示すようなルーティング・テーブルを備えている。移動局SMcのルーティング・テーブルTRcは、考慮される局からアクセス可能なそれぞれの局、これらのそれぞれの局に接続するためにアクセスすべき次の局およびアクセス可能なそれぞれの局に接続するためのコストのリストを含んでいる。コストは、たとえば必要なジャンプ数、すなわちアクセス可能なそれぞれの局に接続するために使用するセグメント数である。変形例として、コストを、たとえばS/N比、メッセージ受信レベル、伝達回数もしくは考慮される局に隣接する局の数としてもよく、さらにはこれらのパラメータの組み合わせであってもよい。」(引用例1、6頁29行〜8頁11行の和訳)、
(エ)「図7は、メッセージ受信時に、メッセージを処理してより短い経路が存在するかを検出し、受け取りメッセージを送信するための、ネットワークの各移動局で実施されるアルゴリズムを示している。このアルゴリズムは、読み出し専用メモリ(ROM)30に記憶されるステップE200からE213までを含む。
ステップE200は、移動局によるメッセージの受信である。このためにプロセッサ10は、定期的に読出ポート16を読み出し、無線モジュール50がデータを受信したかどうかをチェックする。
メッセージ受信後、ステップE200に続いて、メッセージが局のログにすでに記憶されているメッセージに対応するかどうかをチェックするテストであるステップE201が実行される。このテストは、メッセージの識別子IDとメッセージの最初の送信局のアドレスSEIから形成されるペアと、考慮される局のログ内に記憶されたメッセージ識別子とメッセージの最初の送信局アドレスから構成されるペアとの比較を行うものである。
このテストの結果が否定的(negative)である場合は、ステップE201に続いて、処理中のメッセージに関連するデータが局のログに記憶されるステップE202が実行される。記憶されるデータは図5に示されたとおりである。ステップE202はコストCTの更新を含む。コストがジャンプ数または通過するセグメント数の場合は、記憶されるコストはメッセージのフィールド66から読み出したコストに1単位を加えた値に等しい。ステップE202に続いて後述するステップE208が実行される。」(引用例1、12頁3〜25行の和訳)、
(オ)「ステップE202および203に続いて、前述のステップE205と同様のステップE208が実行される。ステップE208は、考慮される局が処理中のメッセージの中間着信局であるかどうかを判定するテストである。このテストは、局のアドレスと処理中のメッセージの中間着信局のアドレスSDTとを比較するものである。
このテストの結果が否定的(negative)である場合は、アルゴリズムの実行が終了する。
このテストの結果が肯定的(positive)である場合は、ステップE208に続いて、従来の受取通知メッセージ80の、処理中のメッセージの中間送信局への送信であるステップE209が実行される。
ステップE209に続いて、考慮される局が処理中のメッセージの最後の着信局であるかどうかを判定するテストであるステップE210が実行される。このテストは、局のアドレスとメッセージの最後の着信局のアドレスSDFとを比較するものである。
このテストの結果が肯定的(positive)である場合は、メッセージの伝達は終了し、ステップE210に続いて受信した情報、すなわち、メッセージのデータ・フィールド67に含まれる情報を処理するために、メッセージの自局のアアプリケーション層へ伝送するステップE211が実行される。
ステップE210のテストの結果が否定的(negative)である場合は、このステップに続いて、メッセージの最後の着信局に応じて、伝達されるデータを含むメッセージを考慮される局が送るべき中間着信局はどれかを決定するために、考慮される局のルーティング・テーブルを参照するステップE212が実行される。
次のステップE213では、メッセージが形成され、アドレスがこの新しいメッセージのフィールド64に書き込まれたあらかじめ決定された中間着信局へ、このメッセージが送信される。この新しいメッセージの最初の送信局のアドレスSEI、最後の着信局のアドレスSDF、メッセージ識別子ID、およびデータ自体が、処理中のメッセージに対応するフィールドにコピーされる。コストCTは、考慮される局によって更新される。この新しいメッセージの中間送信局のアドレスSETは、考慮される局のアドレスである。」(引用例1、14頁30行〜15頁31行の和訳)。

前記記載事項及び図面の記載並びに技術常識からみて、
引用例1には、
「各局間においてデータ信号の双方向伝送を行う局を、無線により双方向伝送する無線アクセス局によって構成するとともに、前記無線アクセス局間の接続を、無線を利用したポイント・ツー・ポイントベースの網接続構成とした無線ネットワークシステムであって、
前記無線アクセス局は、データを伝送するルーティングテーブルを有する中央処理ユニットと、該中央処理ユニットから入力されるデータ信号を無線信号に変換して隣接中央処理ユニットに向けて出力するとともに隣接中央処理ユニットから入力された無線信号をデータ信号に変換して前記中央処理ユニットに出力する無線機を備えている無線ネットワークシステム。」を構成とする発明(以下、「引用例1に記載された発明」という。)が記載されている。

イ.周知例1として示す、国際公開パンフレットWO98/27694号には、概ね、下記(ア)〜(キ)の事項が記載されている。

(ア)「本発明の好ましい実施態様では、ノードは、相互接続されたメッシュの中でポイントトウポイントリンクを用いて、ピアトウピア方法で接続される」(周知例1、5頁16〜19行の和訳、なお、行は頁左端の数字による。以下、2.(2)引用例 イ.において同様)、
(イ)「本発明に従ったネットワークまたはウェブシステム1の簡略で実用的な実施例は、図5に図示される。図示される実施例では、16人の加入者またはユーザがおり、そのそれぞれがネットワークノード2と結び付けられている。システム1は、指定されたノード2をトランクネットワーク5に接続する相互接続トランク4を介して接続される。各ノード2には、例えば、少なくとも1ギガヘルツ(GHz)または2.4GHzまたは4GHz、あるいは最高40GHz、または40GHzを上回る高い無線周波数信号を送受することができる無線トランシーバ装置がある。各ノード2のトランシーバ装置は、直接見通しリンク3により、他のそれぞれのノード2で4つの他の類似した装置と直接見通し接触している。再び、図5でノード2間のリンク3を表す線路が概略にすぎず、無線伝送を介して、ポイントトゥポイント方法でどのノード2がどの他のノード2と接続されているのかを示すことが理解されるだろう。」(周知例1、25頁6〜22行の和訳)、
(ウ)「前述されたように、および以下にさらに説明されるように、任意の1つの特定のノード2から、任意の他の特定ノード2に対するメッセージは、通常、システム1全体で一連の「ホップ」で複数のノード間2の複数のリンク3を横断するだろう。」(周知例1、25頁34行〜26頁2行の和訳)、
(エ)「ここでは、転送プロトコルの単純な実施例が説明される。システム1は、接続指向(回線交換)またはコネクションレス(パケット交換)トラフィックモードを53バイトの情報「セル」の転送によりサポートすることができる非同期転送モード(ATM)の使用によく適している。」(周知例1、37頁32行〜38頁2行の和訳)、
(オ)「一般的には、情報パケットは、2つの構成要素を持つメッセージ型であると定義することができる。
・情報セルペイロード(セル)および
・経路選択アドレス(L)
経路選択アドレスは、ネットワークシステム1のノード2の絶対アドレスである。」(周知例1、38頁11〜17行の和訳)、
(カ)「システム1の各ノード2に繰り返される、図16に示さされる経路選択アルゴリズムは、原則的に、正しいセル経路選択を保証するだろう。」(周知例1、39頁1〜3行の和訳)、
(キ)「この多重路問題を克服するためには、それが本発明のシステム1で発生するのであれば、各ノード2の送信機および受信機のアンテナが大いに指向性であることが好まれる。大いに指向性の送信機/受信機を使用すると、無指向性アンテナを使用する場合より、優れた利得、したがって優れた信号強度となる傾向がある。従って、大いに指向性の送信機/受信機が、当然、見通しリンク3に沿ってノード2まで来る主要信号だけを検出し、主要な信号への角度でノードに近づく反射済み信号を検出しない傾向があり、大いに指向性の送信機/受信機は、使用可能なより高い利得のおかげで運用特性を改善した。」(周知例1、42頁30行〜43頁6行の和訳)。
前記記載事項でノードが無線アクセスノードであることは自明である。

前記記載事項、図面の記載並びに技術常識からみて、
周知例1には、
「各ノード間においてデータ信号の伝送を行うノードを、マイクロ波無線により双方向伝送する無線アクセスノードによって構成するとともに、前記無線アクセスノード間の接続を、マイクロ波無線を利用したポイント・ツー・ポイントベースのメッシュ型トポロジー構成としたメッシュ型無線アクセスシステムであって、
前記無線アクセスノードが指向性を有するアンテナを有する無線機を備えているメッシュ型無線アクセスシステム。」(以下、「周知例1に記載された事項」という。)が記載されている。
ウ.周知例2として示す、日刊工業新聞 1999年(平成11年)4月28日の9面には、「KDD高速FWAの安定運用 東大と伝送実験へ」と題し、
下記(ア)〜(エ)の事項が記載されている。
(ア)「KDDは東京大学と共同で、6月から高速無線アクセス回線のFWA(フィックスド・ワイヤレス・アクセス)を使って、インターネットアプリケーションの伝送実験を開始する。KDD大手町ビル(東京・大手町)と東大本郷キャンパスにそれぞれルータを設置し、毎秒156メガビットという国内最高速のFWAで接続。」(1段3行〜2段1行)、
(イ)「KDDは2005年をめどに国内網をIPネットワーク化する「KDDテラビットハイウェイ構想」を推進中、今回の共同研究はIPネットのアクセス同様にFWAを採用する大きな足がかりとなる。」(2段4〜11行)、
(ウ)「KDDでは22Gギガヘルツ帯の無線通信免許を取得し、大手町・本郷間約3キロをFWAで結んで共同研究に入る。」(2段12行〜3段4行)
(エ)「またIPプロトコルの上にATM(非同期転送モード)セルを乗せて、帯域制御を効率化する実験も行う。」(5段3〜7行)。

前記記載事項において、KDDと東京大学にFWAの「無線アクセスノード」を有することは自明のことであり、FWAの記載、22Gギガヘルツ帯の記載からみて、マイクロ波帯を通信に使用することは当業者に自明であり、また、マイクロ波帯の通信では指向性を有するアンテナを用いることは技術常識である。そして、ルータをIPデータの発信元あるいは受信先であるPC等へ接続することも技術常識であるので、該無線アクセスノードが「配下にIPデータの発信元あるいは受信先であるPC等が接続され、IPデータを伝送するルーターと、該ルーターから入力されるデータ信号をマイクロ波無線信号に変換して隣接ルーターに向けて出力するとともに隣接ルータから入力されたマイクロ波無線信号をデータ信号に変換して前記ルータに出力する指向性を有するアンテナを有する」ものであることは記載されているに等しい事項である。

前記記載事項、図面の記載並びに技術常識からみて、
周知例2には、
「インターネットノード間においてIPデータ信号の伝送を行うノードを、マイクロ波無線により伝送する無線アクセスノードによって構成するとともに、前記無線アクセスノード間の接続を、マイクロ波無線を利用したポイント・ツー・ポイントベースの網接続構成とする無線アクセスシステムであり、前記無線アクセスノードは、配下にIPデータの発信元あるいは受信先であるPC等が接続され、IPデータを伝送するルーターと、該ルーターから入力されるデータ信号をマイクロ波無線信号に変換して隣接ルーターに向けて出力するとともに隣接ルータから入力されたマイクロ波無線信号をデータ信号に変換して前記ルータに出力する指向性を有するアンテナを有する無線機を備えている無線アクセスシステム。」(以下、「周知例2に記載された事項」という)が記載されている。

(3)対比・判断
補正後の発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、

(a)補正後の発明の「インターネットノード」と、引用例1に記載された発明の「局」は、「ノード」で一致する。
(b)引用例1に記載された発明の「局」は、補正後の発明「ノード」に相当する。
(c)補正後の発明の「メッシュ型トポロジー構成」は「網接続構成」である。
(d)補正後の発明の「メッシュ型無線アクセスシステム」と引用例1に記載された発明の「無線ネットワークシステム」とは、「無線アクセスシステム」の点で一致する。
(e)補正後の発明の「配下にIPデータの発信元あるいは受信先であるPC、サーバー、LAN等が接続され、IPデータを伝送するルーター」と引用例1に記載された発明の「データを伝送するルーティングテーブルを有する中央処理ユニット」とは、引用例1に記載された発明の「中央処理ユニット」がデータを伝送するルーティング機能手段を有するので、補正後の発明の「データを伝送するルーター」で一致する。

そうしてみると、補正後の発明と引用例1に記載された発明とは、

「ノード間においてデータ信号の双方向伝送を行うノードを、無線により双方向伝送する無線アクセスノードによって構成するとともに、前記無線アクセスノード間の接続を、無線を利用したポイント・ツー・ポイントベースの網接続構成を有する無線アクセスシステムであって、
前記無線アクセスノードは、データを伝送するルーターと、該ルーターから入力されるデータ信号を無線信号に変換して隣接ルーターに向けて出力するとともに隣接ルータから入力された無線信号をデータ信号に変換して前記ルータに出力する無線機を備えている無線アクセスシステム。」、
である点において一致し、

(1)「ノード」について、補正後の発明が「インターネットノード」であるのに対し、引用例1に記載された発明においては、このような構成の記載がない点、
(2)「網接続構成」、「無線アクセスシステム」について、各々、補正後の発明では、「メッシュ型トポロジー構成」、「メッシュ型無線アクセスシステム」であるのに対して、引用例1に記載された発明にはこのような構成の記載がない点、
(3)「データを伝送するルーター」について、補正後の発明では「配下にIPデータの発信元あるいは受信先であるPC、サーバー、LAN等が接続され、IPデータを伝送するルーター」であるのに対し、引用例1に記載された発明では、このような構成の記載がない点、
(4)無線、無線信号、無線機について、補正後の発明が、各々、「マイクロ波無線」、「マイクロ波無線信号」、「複数の指向性を有するアンテナを有する無線機」であるのに対し、引用例1に記載された発明にはこのような構成が記載されていない点、
で相違する。
次に、前記相違点(1)〜(4)について検討する。
相違点(1)〜(4)について、
例えば、前記周知例1、2の記載事項にみられるように、「各ノード間においてデータ信号の伝送を行うノードを、マイクロ波無線により双方向伝送する無線アクセスノードによって構成するとともに、前記無線アクセスノード間の接続を、マイクロ波無線を利用したポイント・ツー・ポイントベースの網接続構成を有する無線アクセスシステムであって、
前記無線アクセスノードが指向性を有するアンテナを有する無線機を備えている無線アクセスシステム。」は本願出願前周知の技術であり(以下、「周知技術1」という。)、
また、前記周知例1の記載事項にみられるように、ポイント・ツー・ポイントベースのメッシュ型トポロジー構成を有するメッシュ型無線アクセスシステムは本願出願前周知の技術(以下、「周知技術2-1」という。)であり、さらに、インターネットにおいて、メッシュ型トポロジー構成を有するメッシュ型アクセスシステムは本願出願前周知の技術(以下、「周知技術2-2」という。必要ならば、例えば、特開平11-27321号公報 特に図4、特開平11-45204号公報 特に図6、特開平11-154981号公報 特に図4、特開平10-257093号公報参照)であるから、引用例1に記載された発明において、無線、無線信号、無線機について、各々、「マイクロ波無線」、「マイクロ波無線信号」、「複数の指向性を有するアンテナを有する無線機」を用い、「網接続構成」、「無線アクセスシステム」について、各々、「メッシュ型トポロジー構成」、「メッシュ型無線アクセスシステム」とすることは当業者が容易になし得たことである(相違点(2)、(4))。また、例えば、前記周知例2の記載事項にみられるように、無線アクセスシステムにおいて、ノードとしてインターネットノードを有し、該ノードである無線アクセスノードが、配下にIPデータの発信元あるいは受信先であるPC等が接続され、IPデータを伝送するルータを備える構成は本願出願前より周知の技術(以下、「周知技術3」という。)であり、また、インターネットにおいて、ノードが、配下にIPデータの発信元あるいは受信先であるPC、サーバー等が接続され、IPデータを伝送するルータを具備する構成は周知慣用技術であるから、引用例1に記載された発明において、「ノード」について、「インターネットノード」と成し、無線アクセスノードが「配下にIPデータの発信元あるいは受信先であるPC、サーバー等が接続され、IPデータを伝送するルータ」を備えるように構成することは当業者が容易になし得たことである(相違点(1)、(3))。
そして、補正後の発明の効果も、前記引用例1に記載された発明及び前記周知技術から当業者が予想しえる程度のものである。

(4) よって、本件補正後の発明は、前記引用例1に記載された発明及び周知技術1、2-1、2-2、3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するので、同法159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下する。

第3.本願発明について

1.本願発明
平成13年12月12日付けの手続補正は前記第2.の記載のとおり却下されたので、
出願時明細書および図面の記載からみて、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 各インターネットノード間あるいはインターネットサービス事業者間においてデータ信号の双方向伝送を行うノードを、マイクロ波無線により双方向伝送する無線アクセスノードによって構成するとともに、前記無線アクセスノード間の接続を、マイクロ波無線を利用したポイント・ツー・ポイントベースのメッシュ型トポロジー構成としたことを特徴とするメッシュ型無線アクセスシステム。
【請求項2】 前記無線アクセスノードは、配下にIPデータの発信元あるいは受信先であるPC、サーバー、LAN等が接続され、IPデータを伝送するルーターと、該ルーターから入力されるデータ信号をマイクロ波無線信号に変換して隣接ルーターに向けて出力するとともに隣接ルータから入力されたマイクロ波無線信号をデータ信号に変換して前記ルータに出力する複数の無線機を備えていることを特徴とする請求項1記載のメッシュ型無線アクセスシステム。」

2.引用例
(1)原審拒絶査定で引用された引用例1、その記載事項及び「引用例1に記載された発明」は、前記「第2.2.(2)ア.」に記載したとおりである。

(2)周知例に記載された事項は、「第2.2.(2)イ.」、「第2.2.(2)ウ.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、
本願発明は、前記第2.で検討した補正後の発明の無線機についての「指向性を有するアンテナを有する」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を限定したものに相当する本件補正後の発明が、前記「第2.2.(3)」に記載したとおり、前記引用例1に記載された発明及び周知技術1、2-1、2-2、3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、前記引用例1に記載された発明及び周知技術1、2-1、2-2、3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4. むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、前記引用例1に記載された発明及び周知技術1、2-1、2-2、3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
 
審理終結日 2005-02-07 
結審通知日 2005-02-08 
審決日 2005-02-22 
出願番号 特願平11-168885
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 572- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 隆之  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 衣鳩 文彦
野元 久道
発明の名称 メッシュ型無線アクセスシステム  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 河合 信明  
代理人 机 昌彦  

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