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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1115305
審判番号 不服2003-2210  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-07-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-12 
確定日 2005-04-07 
事件の表示 平成 7年特許願第333376号「半導体装置の製造システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 7月11日出願公開、特開平 9-180980〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.経緯
本願は、平成7年12月21日の出願であって、原審において、平成14年12月27日付けで拒絶査定され、審判請求された後、当審において拒絶の理由が通知され、その指定期間内に提出された平成16年12月7日付け手続補正書によって補正されたものである。
本願請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、請求項1に記載された次のとおりのものである。
請求項1
顧客の仕様要求によって露光パターンが変更される露光工程を含む複数の工程によって製造される半導体装置の製造システムであって、
各顧客のオフィス内またはその近くに設けられ、対応の顧客によって要求された前記半導体装置の仕様、数量などを含む情報を入力するための入力端末、
前記入力端末に入力された情報に基づいて、前記露光工程に必要なビーム描画用データと、前記半導体装置の生産および品質管理に必要なデータとを生成し伝送する演算処理装置、および
前記演算処理装置から伝送されたデータに従って前記半導体装置を製造する製造ラインを備え、
前記入力端末、前記演算処理装置および前記製造ラインの各間は通信回線によって接続され、
前記製造ラインは、
電子またはイオンビームを出射するビーム出射装置、および
前記演算処理装置から伝送された前記ビーム描画用データに従って、前記ビーム出射装置から出射されたビームを半導体ウェハ表面に走査し該半導体ウェハに前記露光パターンを描画するための走査装置を含む、半導体装置の製造システム。

2.当審の拒絶の理由に引用した引用例
引用例1 特開平5-36579号公報

2.1 引用例1の記載内容
引用例1の【0002】ないし【0024】段落には、
「【0002】
【従来の技術】
例えば、半導体装置の製造においては、細く絞ったイオンビ-ムを半導体ウェハに照射することにより、半導体ウェハのプロセス処理を行なう装置が用いられている。これがFIB…装置である。…。
【0003】
この文献に記載されているFIB装置は、主に、制御ファイル、入出力装置、中央処理装置、処理チャンバの夫々から構成されている。前記制御ファイル、入出力装置、中央処理装置および処理チャンバ制御インターフェイスは、制御部を構成する。…。
【0007】
一方、前記のFIB装置は、オペレータによって操作される。オペレータは、工務計画表に基づいて種々の操作を実行する。この工務計画表には、例えば、各半導体ウェハに対応した処理工程毎に描画すべきパターンデータの種別、処理チャンバ内へ搭載し、所定時刻に描画すべき半導体ウェハの種別などが記載されている。オペレータは送られてきた半導体ウェハの種別、完了した処理工程を判断し、工務計画表に基づいてその段階で必要な処理を入力装置から指定する。
【0008】
また、これらのオペレータの操作、つまり工務計画表の内容を指定や半導体集積回路の専門知識を前提として、各半導体ウェハに対応した処理の条件の指定、イオンビーム装置の調整条件の指定に関しても入力装置から行なう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記文献に記載された従来技術には、以下の問題があることを本発明者は見出した。
【0010】
すなわち、前記のFIB装置の場合には、入力装置から入力すべき情報は、処理チャンバでの処理に関するものの他に工務計画表の内容を指定や半導体集積回路の専門知識を前提とした各半導体ウェハに対応した処理の条件の指定、イオンビーム装置の調整条件の指定などがある。つまり、装置のオペレータとしては、入力装置を用いて、半導体ウェハ処理のための一定の単純操作だけでなく、場合によっては、種々の専門知識が必要となる。
…。
【0012】
そこで、本発明の目的は、操作者の習熟度にかかわらず操作エラーを低減することのできる技術を提供することにある。
…。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本願に於いて開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
【0015】
すなわち、被制御装置を制御するための制御プログラムを格納する制御ファイルと、前記被制御装置の処理状態を出力する出力装置と、前記被制御装置の処理内容を指定する入力装置とを備え、前記制御プログラムに基づいて中央処理装置により前記被制御装置を制御可能な自動処理装置において、その処理状態に対応して異なる内容の表示画面を前記出力装置へ出力する表示手段と、前記各表示画面の内容に対応して設けられる複数種類の操作用入力スイッチと、前記出力装置へ出力される前記表示画面の内容に対応して前記操作用入力スイッチの一部または全部の切り替え或いは変更を行う制御手段とを設けるようにしている。
…。
【0020】
本実施例の電子線露光装置は、被制御装置(例えば、処理チャンバ)1、制御ファイル2(例えば、集積回路パターンなどのデータ)、中央処理装置(例えば、ワークステーションを用いるが、以下においてはCPUと表記する)3、入出力装置(例えば、入力関係ではキーボードやマウス、出力関係はCRTなどによる表示装置)4、記憶装置5、システムバス6(例えば、イーサバス)、汎用I/Oインターフェイス7、制御用I/Oインターフェイス8(例えば、真空機器、ウェハ台駆動機構などの駆動制御用)、及び通信用I/Oインターフェイス9(専用回線、電話線を通しての外部との通信用)の夫々から構成されている。
【0021】
なお、制御ファイル2、CPU3、入出力装置4、記憶装置5、システムバス6、複数の制御用I/Oインターフェイス8、通信用I/Oインターフェイス9の夫々によって制御部が構成される。制御ファイル2、記憶装置5、汎用I/Oインターフェイス7及び制御用I/Oインターフェイス8の各々と、CPU3とはシステムバス6を介して接続される。また、制御用I/Oインターフェイス8の各々には被制御装置1が接続される。
【0022】
制御ファイル2には、被制御装置1での処理内容を規定する描画データ(パターンデータ、露光位置データ、露光条件データなどを含むデータ)が、複数格納されている。CPU3には、汎用I/Oインターフェイス7、システムバス6を介して、入出力装置4からの入力が入力される。このCPU3は、入出力装置4からの入力に対応して、制御ファイル2からシステムバス6を介して描画データを読み込む。そして、この描画データに基づいて、システムバス6、制御用I/Oインターフェイス8を介して、被制御装置1を制御する。…。
【0024】
CPU3の制御プログラムは、被制御装置1の処理状態に対応して、記憶装置5に記憶されている情報をシステムバス6を介してCPU3へ読み込み、この読み込んだ情報を入出力装置4に出力する。また、記憶装置5に記憶されている情報に従って、入出力装置4から入力した情報は、システムバス6を介してCPU3に読み込まれ、被制御装置1の処理内容を規定する。…。」
と記載されている。

2.2 引用例1の記載の発明
引用例1の記載の発明は、被制御装置1、制御ファイル2、中央処理装置3、入出力装置4、記憶装置5、システムバス6、汎用I/Oインターフェイス7、制御用I/Oインターフェイス8及び通信用I/Oインターフェイス9から構成されるものであって、
制御ファイル2、記憶装置5、汎用I/Oインターフェイス7及び制御用I/Oインターフェイス8と、CPU3とはシステムバス6を介して接続され、また、制御用I/Oインターフェイス8の各々には被制御装置1が接続され、
制御ファイル2には、被制御装置1での処理内容を規定する描画データが複数格納され、
CPU3には、汎用I/Oインターフェイス7、システムバス6を介して、入出力装置4からの入力が入力され、このCPU3は、入出力装置4からの入力に対応して、制御ファイル2からシステムバス6を介して描画データを読み込み、この描画データに基づいて、システムバス6、制御用I/Oインターフェイス8を介して、被制御装置1を制御し、
記憶装置5に記憶されている情報に従って、入出力装置4から入力した情報は、システムバス6を介してCPU3に読み込まれ、被制御装置1の処理内容を規定する電子線露光装置である。

3.対比
本願第1発明と引用例1記載の発明を対比する。
引用例1記載の「パターン」、「被制御装置の処理」、「電子線露光装置」、「入出力装置」、「描画データ」、「CPU、制御ファイル及び記憶装置」及び「被制御装置」は、本願第1発明の、「露光パターン」、「露光」、「半導体装置の製造システム」、「入力端末」、「ビーム描画用データ」、「演算処理装置」及び「製造ライン」に相当する。
また、引用例1記載の発明は、描画データ(パターンデータなどを含むデータ)を複数有するから、当然、露光パターンが変更される露光工程を有している。
また、半導体装置の製造においては、当然、露光工程を含む複数の工程を有している。
さらに、引用例1記載の入出力装置、CPU、制御ファイル、記憶装置及び被制御装置は、インターフェースを介して他の装置と結びつけられているから、引用例1記載の発明においても、通信回線に相当するものを実質的に有している。
そうすると、本願第1発明と引用例1記載の発明は、
「露光パターンが変更される露光工程を含む複数の工程によって製造される半導体装置の製造システムであって、
情報を入力するための入力端末、
前記入力端末に入力された情報に基づいて、前記露光工程に必要なビーム描画用データを生成し伝送する演算処理装置、および
前記演算処理装置から伝送されたデータに従って前記半導体装置を製造する製造ラインを備え、
前記入力端末、前記演算処理装置および前記製造ラインの各間は通信回線によって接続され、
前記製造ラインは、
電子またはイオンビームを出射するビーム出射装置、を含む、半導体装置の製造システム。」
において一致し、以下の点で相違する。
相違点
本願第1発明は、「顧客の仕様要求によって露光パターンが変更される」構成であるのに対し、引用例1記載の発明では、上記構成の記載がない点で相違(以下、「相違点1」という。)する。
本願第1発明は、「各顧客のオフィス内またはその近くに設けられ、対応の顧客によって要求された前記半導体装置の仕様、数量などを含む情報を入力するための入力端末」を有する構成であるのに対し、引用例1記載の発明は、この構成の記載がない点で相違(以下、「相違点2」という。)する。
本願第1発明は、「前記半導体装置の生産および品質管理に必要なデータを生成し伝送する」構成であるのに対し、引用例1記載の発明は、この構成の記載がない点で相違(以下、「相違点3」という。)する。
本願第1発明は、「前記演算処理装置から伝送された前記ビーム描画用データに従って、前記ビーム出射装置から出射されたビームを半導体ウェハ表面に走査し該半導体ウェハに前記露光パターンを描画するための走査装置」を有する構成であるのに対し、引用例1記載の発明は、この構成の記載がない点で相違(以下、「相違点4」という。)する。

4.判断
相違点1についての検討
顧客の仕様要求によって露光パターンが変更されることは、半導体装置の製造において慣用手段(例えば、特開平7-50242号公報及び特開平2-62541号公報等参照)にすぎず、相違点1については、単に上記慣用手段を付加することにより当業者が容易に想到できたことにすぎない。

相違点2についての検討
入力端末を、各顧客に対応して各顧客のオフィス内またはその近くに設けることは、物品の発注手段として周知手段(例えば特開平7-282282号公報、特開平3-105496号公報及び特開平2-194467号公報等参照)にすぎず、また、対応の顧客によって要求された前記半導体装置の仕様、数量などを含む情報を入力することも、上記相違点1についての検討で挙げた慣用手段の範囲のものにすぎないので、相違点2については、上記周知・慣用手段を単に付加したものにすぎず、当業者が容易に想到できたことである。

相違点3についての検討
生産および品質管理に必要なデータを用いることは、生産技術における慣用手段であり、半導体装置の品質管理に必要なデータとを生成し伝送することは当業者が当然考慮する事項にすぎないから、相違点3については、当業者が容易に想到できたことである。

相違点4についての検討
引用例1には、「細く絞ったイオンビームを半導体ウェハに照射することにより、半導体ウェハのプロセス処理を行なう」(【0002】段落)と記載されているから、ビーム出射装置から出射されたビームを半導体ウェハ表面に走査し該半導体ウェハに前記露光パターンを描画するための走査装置を必然的に備えており、相違点4については、実質的な相違ではない。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1記載の発明及び周知・慣用手段の作用効果から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
そうすると、本願請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明及び周知・慣用手段に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-01 
結審通知日 2005-02-08 
審決日 2005-02-21 
出願番号 特願平7-333376
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 重雄南 宏輔  
特許庁審判長 上野 信
特許庁審判官 辻 徹二
青木 和夫
発明の名称 半導体装置の製造システム  
代理人 堀井 豊  
代理人 仲村 義平  
代理人 森田 俊雄  
代理人 酒井 將行  
代理人 深見 久郎  
代理人 野田 久登  

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