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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1115313
審判番号 不服2002-14625  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-01-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-01 
確定日 2005-04-07 
事件の表示 平成10年特許願第170990号「通信装置および通信ネットワーク管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月14日出願公開、特開2000- 10904〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明

本願は、平成10年6月18日の出願であって、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年5月17日付け、及び平成16年10月29日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものと認める。

「【請求項1】
ネットワーク管理システムによって管理され、パッケージが挿入される複数のスロットを有し、スロットに装着されたパッケージに対してコンフィグレーションデータを設定する通信装置であって、
前記スロットは、任意のパッケージを装着することができ、装着されたパッケージに対しコンフィグレーションデータを設定し、コンフィグレーションデータ未設定のパッケージが物理未実装論理未実装状態のスロットに装着された場合、前記パッケージのタイプに該当するデフォルトのコンフィグレーションデータを設定するデータ処理手段を備え、前記データ処理手段は、前記デフォルトのコンフィグレーションデータに含まれる通信パスの設定パラメータに基づき、通信パスを確立することを特徴とする通信装置。」

2.刊行物記載の発明

これに対して、当審における拒絶の理由で引用された、本願出願前に頒布された特開平09-074417号公報(平成9年3月18日出願公開、以下、「刊行物」という。)には、次のような記載がある。

イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、装置の冗長構成への初期立ち上げ時の冗長構成におけるプロビジョニングデータの不一致を生じさせる要因を判定してその不一致を回避し、冗長構成の変更、又は冗長構成を利用した高機能へのアップグレード時にデータ共通部分の非継承性を生じさせる要因を判定して冗長構成におけるプロビジョニングデータの正常性をインサービスで確保するプロビジョニングデータ管理理方式に関する。近年、SDH方式で用いられる伝送装置においては、その機能が多機能化されつつある。そして、その伝送装置は、1つのシェルフに装置を構成する各構成要素をユニット交換可能に構成して装置を効率良く運用するようにしている。このような装置構成は、汎用化されつつあり、そのような装置における機能には、インサービスでの構成変更や、機能のアップグレードも要求されるに至っている。 しかし、前述のような複数のユニットから構成される伝送装置では、各ユニット毎に当該ユニットの機能を生ぜしめるユニット固有の設定データ(プロビジョニングデータ)(以下、IOデータという。)を有しているので、IOデータの管理は、装置の運用上重要な事項となっている。とりわけ、装置の機能をインサービスで変更したり、アップグレードをする際には、重要な事項となって来る。
【0002】
【従来の技術】従来のSDH方式で用いられる伝送装置は、図7に示すように、STMユニット100,102、クロスコネクトユニット104、及びPDHユニット106を有して構成されている。…
【0003】これらのユニットのうちSTMユニット100,102は、図8に示すように、シェルフのスロットS2,S3に主信号ユニット1,2として挿入され、PDHユニット106は、シェルフのスロットS4乃至S10に主信号ユニット3乃至主信号ユニット10として挿入され、クロスコネクトユニット104は、シェルフのスロットS11,S12に主信号ユニット9,10として挿入されている。以下、説明の都合上、主信号ユニット1乃至主信号ユニット10であって、実装態様が決定されたユニットをそれぞれCONF1乃至CONF10として参照する。又、CONF1乃至CONF10の全体を参照するときには、単にCONFとして参照する。これらCONF1乃至CONF10は、それぞれIOデータを記憶するIOデータ格納領域を有する。
【0004】これらの主信号ユニットは、シェルフのスロットS2に挿入されている主信号ユニット制御部(以下、MPLという。)110によって制御される。例えば、前述のIOデータは、MPL110によって管理される。MPL110は、図9に示すように、CPU112、ROM114、RAM116、及びEEPROM118から成る。CPU112は、図示しないキーボードから保守者が投入するコマンドに応答するように構成されている。ROM114は、主信号ユニット1乃至主信号ユニット10のデホルトデータを予め記憶している。デホルトデータは、IOデータの一部を構成し、そのユニットが最小限度の機能を営むのに必要なデータである。
【0005】このように構成される従来の伝送装置におけるIOデータの生成及び展開は、次のように為されている。即ち、伝送装置の立ち上げ時の各ユニットへのデホルトデータの設定は、先ずROM114からRAM116へデホルトデータを各ユニット対応に展開する。そして、シェルフのそれぞれスロットに対応するユニットが挿入されたとき、RAM116上のデホルトデータが前記対応するユニットに設定されてそのユニットの機能を生ぜしめる。
【0006】そして、このようにデホルトデータの設定が為された後に、保守者によりデホルトデータ以上の機能を生じさせるためのデータがキーボードから投入されると、そのデータは、前記デホルトデータと一体となって当該ユニットに前記両者のデータによる機能を生じさせる。このようなIOデータのユニット対応の設定が、各ユニットに対して行われることにより、そのようなIOデータの設定が行われた後の伝送装置は、設定されたIOデータに対応する機能の動作を営む。
【0007】前述のようにRAM116上に設定されたIOデータは、EEPROM118に保存され、その後の装置の立ち上げ時にEEPROM118にバックアップされていたIOデータがRAM116のユニット対応のIOデータ格納領域に展開(コピー)される。」
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、伝送装置を構成する各ユニット毎にIOデータの設定が行われるので、ユニットが実際に実装されているCONFについては、RAM116の当該CONF対応のIOデータ格納領域にIOデータが展開されるが、未使用の(実装していない)CONFについてはRAM116の当該CONF対応のIOデータ格納領域にいずれのIOデータも記憶されていない。」(公報2欄43行〜4欄37行)

これらの記載によれば、刊行物には、次の発明(以下、「刊行物記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「STMユニット(150MHzの信号を多重化、又は分離する際のインタフェイスを取る装置)100,102は、シェルフのスロットS2,S3に主信号ユニット1,2として挿入され、PDHユニット106は、シェルフのスロットS4乃至S10に主信号ユニット3乃至主信号ユニット8として挿入され、クロスコネクトユニット104は、シェルフのスロットS11,S12に主信号ユニット9,10として挿入され、主信号ユニット1乃至主信号ユニット10であって実装態様が決定されたユニットであるCONF1乃至CONF10は、それぞれIOデータを記憶するIOデータ格納領域を有し、RAM116の当該CONF対応のIOデータ格納領域に各ユニット毎に当該ユニットの機能を生ぜしめるユニット固有の設定データ(プロビジョニングデータ)(以下、IOデータという。)が展開されるが、未使用の(実装していない)CONFについてはRAM116の当該CONF対応のIOデータ格納領域にいずれのIOデータも記憶されていないSDH方式で用いられる伝送装置であって、
CPU112、主信号ユニット1乃至主信号ユニット10のデホルトデータ(IOデータの一部を構成し、そのユニットが最小限度の機能を営むのに必要なデータ)を予め記憶しているROM114、RAM116、及びEEPROM118から成り、デホルトデータを対応するユニットに設定する主信号ユニット制御部(以下、MPLという)110を備え、
MPL110は、IOデータを管理し、立ち上げ時、先ずROM114からRAM116へデホルトデータを各ユニット対応に展開し、シェルフのそれぞれのスロットに対応するユニットが挿入されたとき、RAM116上のデホルトデータを前記対応するユニットに設定して、そのユニットの機能を生ぜしめるインサービスでの構成変更を行う伝送装置。」

3.本願発明と刊行物記載の発明との比較

刊行物記載の発明の「主信号ユニット1〜10」、「スロットS3〜S12」、「SDH方式で用いられる伝送装置」は、それぞれ、本願発明の「パッケージ」、「複数のスロット」、「通信装置」に相当している。
また、刊行物記載の発明において、主信号ユニット1乃至主信号ユニット10であって実装態様が決定されたユニットであるCONF1乃至CONF10は、それぞれIOデータを記憶するIOデータ格納領域を有し、「主信号ユニット1〜10」には、STMユニット、クロスコネクトユニット、PDHユニットの三つのタイプがあるから、各ユニット毎に当該ユニットの機能を生ぜしめるユニット固有の設定データ(プロビジョニングデータ)である「IOデータ」にも、ユニットタイプに対応する三つのタイプがあることは明らかである。一方、本願発明の「コンフィグレーションデータ」は、本願明細書に「通常、一括してパッケージ単位で、装置固有のプロビジョニングデータとして設定される」(【0002】参照)と説明されているから、刊行物記載の発明の「IOデータ」は、本願発明の「コンフィグレーションデータ」に相当することも、明らかである。そうすると、刊行物記載の発明の「デホルトデータ(IOデータの一部を構成し、そのユニットが最小限度の機能を営むのに必要なデータ)」、「デホルトデータを対応するユニットに設定するMPL110」は、それぞれ、本願発明の「デフォルトのコンフィグレーションデータ」、「パッケージのタイプに該当するデフォルトのコンフィグレーションデータを設定するデータ処理手段」に相当している。
さらに、本願発明の「物理未実装論理未実装状態」について、本願明細書に「物理未実装とは、パッケージ21が物理的にスロットに実装されていない状態」(【0046】参照)、「論理未実装とは、スロットに挿入されるパッケージ21の設定データがパッケージ設定データ記憶部28に記憶されていない状態」(【0047】参照)とそれぞれ定義されているから、刊行物記載の発明の「未使用の(実装していない)」、「RAM116の当該CONF対応のIOデータ格納領域にいずれのIOデータも記憶されていない」が、それぞれ、本願発明の「物理未実装」、「論理未実装」に相当している。
そして、刊行物記載の発明の「シェルフのそれぞれのスロットに対応するユニットが挿入されたとき」とは、空きのスロットに未使用の(実装していない)CONFが挿入されたときであり、挿入前の空きのスロットと未使用の(実装していない)CONFとが、それぞれ「物理未実装論理未実装状態のスロット」と「コンフィグレーションデータ未設定のパッケージ」であるから、本願発明の「コンフィグレーションデータ未設定のパッケージが物理未実装論理未実装状態のスロットに装着された場合」に相当している。

したがって、刊行物記載の発明と本願発明とは、以下の点で一致ないし、相違する。

(1)一致点

パッケージが挿入される複数のスロットを有し、スロットに装着されたパッケージに対してコンフィグレーションデータを設定する通信装置であって、
前記スロットは、パッケージを装着することができ、装着されたパッケージに対しコンフィグレーションデータを設定し、コンフィグレーションデータ未設定のパッケージが物理未実装論理未実装状態のスロットに装着された場合、前記パッケージのタイプに該当するデフォルトのコンフィグレーションデータを設定するデータ処理手段を備える通信装置である点。

(2)相違点

相違点1
本願発明は、ネットワーク管理システムによって管理されている通信装置であるのに対し、刊行物記載の発明は、ネットワーク管理システムによって管理されていることが明らかでない点。

相違点2
データ処理手段が、本願発明では、スロットは、任意のパッケージを装着することができ、装着されたパッケージに対しコンフィグレーションデータを設定し、コンフィグレーションデータ未設定のパッケージが物理未実装論理未実装状態のスロットに装着された場合、前記パッケージのタイプに該当するデフォルトのコンフィグレーションデータを設定するのに対し、刊行物記載の発明では、任意のパッケージが装着された場合のコンフィグレーションデータの設定について明らかでない点。

相違点3
データ処理手段が、本願発明では、デフォルトのコンフィグレーションデータに含まれる通信パスの設定パラメータに基づき、通信パスを確立するのに対し、刊行物記載の発明では、ユニットが挿入されたとき、デホルトデータを前記対応するユニットに設定して、その機能を生ぜしめるインサービスでの構成変更を行っているが、通信パスの確立について明らかでない点。

4.相違点の検討

(1)相違点1について

特開平07-219806号公報(図2の「ネットワークを管理するNMS(ネットワークマネージメントシステム)21、管理対象ネットワークエレメントに実装されている各ボードの固有情報をボード実装位置対応に管理する管理手段64」参照)や特開平09-198157号公報(図2の「通信システム(交換機,伝送装置等)全体の管理・制御を行う制御ユニット(制御基板)に相当する親装置」、「回線対応の主信号処理を行う回線対応ユニットに相当する子装置a、回線又はパケット交換を行うスイッチユニットに相当する子装置b、各種通信サービスを実現するトランクユニットに相当する子装置c」参照)等にも記載されているように、
「ネットワーク管理システムによって管理されている通信装置」
は周知である。

したがって、刊行物記載の発明の伝送装置(本願発明の「通信装置」に相当)を、周知のネットワーク管理システムによって管理されるようにすることは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

(2)相違点2について

特開平07-049727号公報(1欄37〜42行の「交換システムや情報処理システム等において、新たに通信装置等の機能ボードを増設する場合に、増設するボードを任意のスロットに収容することができ、かつボード交換やボード増設時の保守者稼働を軽減できる…ボード組み込み制御方法」参照)や特開平08-213994号公報(図1の「ラック2に設けられた複数のスロット3に対して、回線あるいは端末と接続される複数のインタフェースパッケージ4、セルを論理的なチャネル識別子に従って交換する複数のスイッチパッケージ5、電子交換機システム全体を制御する機能を有する複数の制御パッケージ6をそれぞれ挿入することにより構成されているATM電子交換機」、図3の「実装位置が任意位置となるpP241」、図7の「インタフェースパッケージ24,25の制御プロセッサまたはスイッチパッケージ23の制御プロセッサ(pPと略す。)へのデータ設定を行うことにより運用開始の状態となるシステムの立ち上げ手順」、9欄45行〜49行の「各インタフェースパッケージ、スイッチパッケージが回線速度などの処理能力に応じて複数種類により構成されるようなシステムにあっては、同一スロットに異種のパッケージを挿入することが可能」参照)等にも記載されているように、
「通信装置において、任意のパッケージがスロットに装着された場合、前記パッケージのタイプに該当する設定をすること」
は周知である。

したがって、刊行物記載の発明において、物理未実装論理未実装状態のスロットに任意のパッケージを装着できるようにすることは、当業者が容易になし得ることであり、その際にインサービスでの構成変更を行うために、前記パッケージのタイプに該当するデフォルトのコンフィグレーションデータを設定することは、当然のことである。

(3)相違点3について

本願発明の「デフォルトのコンフィグレーションデータに含まれる通信パスの設定パラメータに基づき、通信パスを確立する」について、本願明細書に「被管理装置12のスロットに実装されるパッケージの設定データを、ネットワーク管理システム11から設定しなくても、物理未実装論理未実装の状態のスロットに新規パッケージが挿入されると、該当パッケージタイプの設定データがパッケージに対して設定され、通信パスが確立されて通信サービスが提供可能になる。」(【0171】参照)と説明されている。
一方、刊行物記載の発明の伝送装置(本願発明の「通信装置」に相当)は、ユニットが挿入されたとき、デホルトデータが前記対応するユニットに設定されて、その機能を生ぜしめるインサービスでの構成変更を行っており、通信装置において、通信パスの設定パラメータに基づき通信パスが確立されて通信サービスが提供可能になることが技術常識である。

したがって、刊行物記載の発明の伝送装置がインサービスでの構成変更を行うためには、当然に、デホルトデータが前記対応するユニットに設定されるだけでなく、通信パスを確立する必要があり、そのための通信パスの設定パラメータを、デフォルトのコンフィグレーションデータに含ませておくことは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

5.むすび

本願発明は、刊行物記載の発明及び上記技術常識や各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-25 
結審通知日 2005-02-01 
審決日 2005-02-21 
出願番号 特願平10-170990
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菊地 聖子山田 正文後藤 和茂  
特許庁審判長 大日方 和幸
特許庁審判官 東森 秀朋
治田 義孝
発明の名称 通信装置および通信ネットワーク管理システム  
代理人 机 昌彦  
代理人 河合 信明  
代理人 谷澤 靖久  

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