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審決分類 |
審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:11 H04M |
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管理番号 | 1115338 |
審判番号 | 補正2004-50022 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-03-15 |
種別 | 補正却下不服の審決 |
審判請求日 | 2004-06-07 |
確定日 | 2005-04-07 |
事件の表示 | 特願2001-171512「端末とカメラと送受話器とを含む視聴覚遠距離通信システム」において、平成15年8月15日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は平成4年3月26日(優先権主張 1991年3月26日 フランス)に出願した特願平4-68741号の一部を同13年6月6日に特願2001-171512号として新たな特許出願としたものであって、同15年8月15日付けで手続補正がなされたところ、同16年3月4日付けで補正の却下の決定をしたものである。 2.原決定の理由 上記補正の却下の決定(以下、「原決定」という。)の理由は次のとおりのものである。 「特許請求の範囲請求項1の「前記遠隔制御手段は、前記受話口が使用者の耳で〜最小となるように操作することができ」の記載は、出願当初の明細書又は図面に記載されておらず、自明な事項でもない。 したがって、この補正によって発明の構成に関する技術的事項は当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものとなり、この補正は要旨変更となる。 よって、この補正は、明細書の要旨を変更するものと認められ、特許法第53条第1項の規定により、上記結論の通り決定する。」 3.当審の判断 そこで、原審において原決定の対象となった平成15年8月15日付け手続補正の補正事項である特許請求の範囲請求項1の「前記遠隔制御手段は、前記受話口が使用者の耳で塞がれているとき又は前記送受話器が使用者の顔から離れているときに容易に使用されるように、該送受話器(200)の内側部分に配置されたコントロールキーからなる操作手段を含んでおり、該コントロールキーは、これを見ることなく送受話器を保持する手の指で容易に操作されるように少なくとも四つ存在すると共に、カメラの前に位置する使用者の動き又はしぐさが最小となるように操作することができ 」の記載について、該記載が特願2001-171512号の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内であるか否かについて以下検討する。 (A)前記補正事項の記載における「前記遠隔制御手段は、前記受話口が使用者の耳で塞がれているとき又は前記送受話器が使用者の顔から離れているときに容易に使用されるように、該送受話器(200)の内側部分に配置されたコントロールキーからなる操作手段を含んでおり」について、 前記(A)の記載に関連して、当初明細書には、 ア.「【0019】 本発明の1つの特徴によれば、送受話器が、キーボードのキーから成り得る操作手段を含む。 【0020】 操作手段は、コントロールボール、「ジョイスティック」、または「トラックボール」から成り得る。 【0021】 変形例によれば、送受話器のキーボードが、数字キーを含む。 【0022】 キーボードが数字キーを含まない場合の本発明の1つの特徴によれば、番号付けが、スクリーン上に現れるキーボードのキーを指定する遠隔制御のキーによって行なわれる。 【0023】 1つの実施態様によれば、送受話器が符号器に接続されたキーボードマトリックスを含み、該符号器は信号変調器または1つもしくは複数の赤外線送出器または超音波送出器を制御する直列化装置に接続されている。 【0024】 【発明の実施の形態】 添付図面に示す非限定実施例に基づく以下の詳細な記載より本発明がより十分に理解されよう。 【0025】 記載の実施例から明らかなように、送受話器は、高速バイナリビットレートで遠隔制御用の符号化信号を発生し得、従って多くの遠隔制御機能を果たし得る。 例えば、20個のキーを高速で打込むことが可能である。」、 イ.当初明細書の図面の図1に送受話器の内側にキーボードを備えた送受話器200が記載され、 ウ.「【0028】テレビ電話100のユーザーは、1つ(または複数の)カメラとキーボードと送受話器200とを備えた端末を有している。カメラは実際、1つまたは複数のローカル使用者の画像、並びに、表示すべき文書または図表または物体の画像を1つまたは複数の遠隔使用者100′に送出し得る。 【0029】 本発明によれば、送受話器は、メニュー上で実行すべき作業を指示するためにスクリーンのカーソルを遠隔から移動させ、例えばマウスによって1つのゾーンで「クリック」するための遠隔制御手段を備えている。 【0030】 遠隔制御手段は例えば、 -ズーム制御、または色温度、余白のバランスの手動調整、シークレットイメージなどに関する光学素子もしくはカメラのその他の操作制御、 -カメラの前の使用者の位置を制御するため、または遠隔カメラ及び対面通話者の符号化を遠隔制御するための符号化制御、 -異なる局への転送及びディジタルネットワークによって提供されるすべてのサービスのような呼管理に関する操作制御、 -音の制御、例えば、「フリーハンド」で機能できるように端末に配置されたレシーバの使用または音の遮断、 などを実行し得る。」、 が記載されている。 (A-1)これらア.〜ウ.記載からみて、当初明細書には、 「遠隔制御手段が、該送受話器(200)の内側部分に配置されたコントロールキーからなる操作手段を含んでいること」が記載されている、 また、該記載(A)に関連して、当初明細書には、 エ.「【0010】 【課題を解決するための手段】 本発明の目的は、レシーバ及びマイクロフォンを含む送受話器と、端末と、カメラとを含み、前記送受話器が更に、端末を遠隔制御し且つ端末を介してカメラを遠隔制御する手段を含み、前記遠隔制御手段が、送受話器の使用者が端末のスクリーン上のカーソルを遠隔からx方向及びy方向に移動させ1つのゾーンで「クリック」し得る操作手段を含み、前記遠隔制御手段はまた、遠隔制御用符号化信号を送出し、端末が該信号を受信及び復号する手段を含むことを特徴とする視聴覚遠距離通信システムを提供することである。」、 オ.「【0016】 送受話器は、1つまたは好ましくは複数の赤外線発生器を含み、その結果として使用者は、送受話器を耳に近付けた状態で遠隔制御を使用し得る。」、 が記載されている。 (A-2)エ.の記載からみて、当初明細書には、 「送受話器が遠隔制御手段を含み、該遠隔制御手段が、送受話器の使用者が端末のスクリーン上のカーソルを遠隔からx方向及びy方向に移動させ1つのゾーンで「クリック」し得る操作手段を含む」ことが記載されている。 また、オ.の記載には、赤外線発生器の使用により、使用者は、送受話器を耳に近付けた状態で遠隔制御を使用し得る、ことが記載されている。 (A-3)前記(A-1)、(A-2)の記載を考慮すると、 当初明細書には「前記遠隔制御手段は、送受話器の使用者が操作し得る、該送受話器(200)の内側部分に配置されたコントロールキーからなる操作手段を含んでおり」ことが記載されているが、 該記載から、 送受話器の使用時の遠隔制御で普通に考えられる送受話器の状態を考慮すると、前記(A)に記載した補正事項の記載のうち、「前記遠隔制御手段は、前記送受話器が使用者の顔から離れているときに容易に使用されるように、該送受話器(200)の内側部分に配置されたコントロールキーからなる操作手段を含んでおり」の点は自明としても、 前記(A)に記載した補正事項の記載のうち、「前記遠隔制御手段は、前記受話口が使用者の耳で塞がれているときに容易に使用されるように、該送受話器(200)の内側部分に配置されたコントロールキーからなる操作手段を含んでおり」は、当初明細書に記載されたものでなく、該記載から自明なものでもない。 また、前記オ.には、赤外線発生器の使用により、使用者は、送受話器を耳に近付けた状態で遠隔制御を使用し得る、ことが記載されているが、該記載は送受器の使用時の送受話器の位置の状態と赤外線の使用の関係を述べたものであり、前記(A)に記載した補正事項のような、送受話器の使用時の送受話器の位置の状態と遠隔制御手段の操作手段の配置に関係するものではなく、前記(A)に記載した補正事項の記載のうち、「前記遠隔制御手段は、前記受話口が使用者の耳で塞がれているときに容易に使用されるように、該送受話器(200)の内側部分に配置されたコントロールキーからなる操作手段を含んでおり」は該記載から自明でもない。 (B)前記補正事項の記載における「該コントロールキーは、これを見ることなく送受話器を保持する手の指で容易に操作されるように少なくとも四つ存在すると共に、カメラの前に位置する使用者の動き又はしぐさが最小となるように操作することができ」について、 前記(B)の記載に関連して、 ア.「【0010】 【課題を解決するための手段】 本発明の目的は、レシーバ及びマイクロフォンを含む送受話器と、端末と、カメラとを含み、前記送受話器が更に、端末を遠隔制御し且つ端末を介してカメラを遠隔制御する手段を含み、前記遠隔制御手段が、送受話器の使用者が端末のスクリーン上のカーソルを遠隔からx方向及びy方向に移動させ1つのゾーンで「クリック」し得る操作手段を含み、前記遠隔制御手段はまた、遠隔制御用符号化信号を送出し、端末が該信号を受信及び復号する手段を含むことを特徴とする視聴覚遠距離通信システムを提供することである。」、 イ.「【0029】 本発明によれば、送受話器は、メニュー上で実行すべき作業を指示するためにスクリーンのカーソルを遠隔から移動させ、例えばマウスによって1つのゾーンで「クリック」するための遠隔制御手段を備えている。」、 ウ.当初明細書の図面の図1に送受話器の内側にキーボードを備えた送受話器200が記載され、 エ.「【0030】 遠隔制御手段は例えば、 -ズーム制御、または色温度、余白のバランスの手動調整、シークレットイメージなどに関する光学素子もしくはカメラのその他の操作制御、 -カメラの前の使用者の位置を制御するため、または遠隔カメラ及び対面通話者の符号化を遠隔制御するための符号化制御、 -異なる局への転送及びディジタルネットワークによって提供されるすべてのサービスのような呼管理に関する操作制御、 -音の制御、例えば、「フリーハンド」で機能できるように端末に配置されたレシーバの使用または音の遮断、 などを実行し得る。」、 オ.「【0003】 【発明が解決しようとする課題】 テレビ電話通信の場合、特に遠隔の対面通話者が疲労や苦痛を伴うことなく最適条件で凝視できる適正品質の画像が与えられるように、被写体がテレビ電話のカメラに対して比較的静止していることが重要である。このことは、ビットレートを低減させるため及びディジタルネットワークのアクセスのビットレートに適応させるために、送出画像を符号化する場合にはいっそう重要である。この場合には、画像をゆっくりと形成させる必要がある。」、 カ.「【0004】 しかしながら、テレビ電話で通信中に、対面通話者が、例えばテレビ電話の可動部またはキーを操作することによって命令を実行させる必要が生じる場合がある。 【0005】 例えば、端末によって制御される画面構成システムを備えたテレビ電話の場合には、カメラの向きを制御しその結果として適正な画面構成に変更するために、端末のキーボードを打込む必要が生じたり、またはディスプレイスクリーンもしくはテレビ電話の明るさもしくはコントラストの調整の変更及びスクリーンの位置の操作(観測コーン(cone d’observation)の小さい液晶の場合)などが必要になったり、または端末の適当なキーの打込みによって装置を所謂「フリーハンド」位置に配置することが望まれたりする。」、 キ.「【0006】 使用者によるこのような介入は、他端の対面通話者の快適な視聴を妨げることになり、従って好ましくない。 【0007】 特に、使用者の顔が過度にカメラに近付いてカメラの映像が損なわれてしまうほど使用者が端末に接近しなければならない場合もある。また、操作を行なう使用者の手がカメラに極めて接近しカメラの視野を通る可能性もある。これらの場合、その結果として、遠隔の対面通話者に与えられる画像の全部または一部が一時的に遮蔽される。これは勿論好ましくない。 【0008】 最後に、操作を行なう使用者自身がカメラの視野の外に出てしまうこともあり得る。 【0009】 本発明は、これらの問題を解決し得る。」、 との記載がなされている。 (B-1)ア.、イ.、ウ.、エ.、カ.の記載からみて、当初明細書には、「コントロールキーは、送受話器の使用者が端末のスクリーン上のカーソルを遠隔からx方向及びy方向に移動させ得る操作手段」であることは記載されているが、当初明細書の記載における、スクリーン上のカーソルのx方向及びy方向の移動の仕方には、1つのキーによりカーソルをスクリーンのx方向に移動し、カーソルが一方の端に至ったとき自動的に微少にy方向に移動したうえで他端からx方向に移動することによりカーソルをx方向及びy方向に移動する仕方、或いは、2つのキーを設け、x方向とy方向の各キーにより、カーソルがスクリーンの一方の端に行くと自動的に他端から一方の端の方向へ移動させるようにしてカーソルをx方向及びy方向に移動する仕方、或いは、キーを3つ設け、1つのキーでカーソルをx方向、他の1つのキーでy方向に移動し、もう一つのキーでx方向移動の際の左右方向、y方向の移動の際の上下方向を決めることにより、カーソルをx方向及びy方向に移動する仕方、等、カーソルのx方向及びy方向の移動には、キーの個数が3以下を含むいろいろなものが当業者に自明な範囲で考えられるのであり、前記(B)に記載した補正事項の記載のうちの、該コントロールキーが「少なくとも4つ存在する」ことは、当初明細書に記載されたものではなく、前記「コントロールキーは、送受話器の使用者が端末のスクリーン上のカーソルを遠隔からx方向及びy方向に移動させ得る操作手段」の記載から自明なものでもない。 また、送受話器の使用時における、コントロールキーの操作の仕方は、当初明細書には何ら記載されておらず、前記(B)に記載した補正事項の記載のうちの、「該コントロールキーは、これを見ることなく送受話器を保持する手の指で容易に操作される」ことは当初明細書に記載されていないし、当初明細書から自明でもない。まして、送受話器の使用時における、コントロールキーの操作の仕方とコントロールキーの関係を規定する、前記(B)に記載した補正事項の記載のうちの「該コントロールキーは、これを見ることなく送受話器を保持する手の指で容易に操作されるように少なくとも四つ存在する 」は、当初明細書に記載されていし、当初明細書から自明なものでもない。 また、 (B-2) オ.、カ.、キ.の記載からみて、当初明細書には、「他端の対面通話者の快適な視聴には被写体がテレビ電話のカメラに対して比較的静止していることが重要であり、本発明が、テレビ電話の通信中における端末のキー操作により生じる、他端の対面通話者の快適な視聴を妨げる問題を解決するものであること」が記載されているが、前記(B)に記載した補正事項の記載のうちの、「該コントロールキーは、カメラの前に位置する使用者の動き又はしぐさが最小となるように操作することができ」は、当初明細書に記載されておらず、該記載は当初明細書から自明なものでもない。 (B-3) 前記(B-1)、(B-2)を考慮すると、前記補正事項の記載である 「該コントロールキーは、これを見ることなく送受話器を保持する手の指で容易に操作されるように少なくとも四つ存在すると共に、カメラの前に位置する使用者の動き又はしぐさが最小となるように操作することができ」は当初明細書に記載されていないし、また、当初明細書から自明なものでもない。 よって 、上述したように、原決定の対象となった平成15年8月15日付け手続補正の補正事項である特許請求の範囲請求項1の「 前記遠隔制御手段は、前記受話口が使用者の耳で塞がれているとき又は前記送受話器が使用者の顔から離れているときに容易に使用されるように、該送受話器(200)の内側部分に配置されたコントロールキーからなる操作手段を含んでおり、該コントロールキーは、これを見ることなく送受話器を保持する手の指で容易に操作されるように少なくとも四つ存在すると共に、カメラの前に位置する使用者の動き又はしぐさが最小となるように操作することができ 」なる記載は、当初明細書に記載した事項の範囲内でない事項を含むものであり、この補正は明細書の要旨を変更するものである。 4.よって、前記日付けでした手続補正が、特許法第53条第1項の規定により却下べきものとした原決定は妥当である。 よって、結論の通り決定する。 |
審理終結日 | 2004-10-21 |
結審通知日 | 2004-11-02 |
審決日 | 2004-11-15 |
出願番号 | 特願2001-171512(P2001-171512) |
審決分類 |
P
1
7・
11-
Z
(H04M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大塚 良平 |
特許庁審判長 |
武井 袈裟彦 |
特許庁審判官 |
浜野 友茂 衣鳩 文彦 |
発明の名称 | 端末とカメラと送受話器とを含む視聴覚遠距離通信システム |
代理人 | 坪倉 道明 |
代理人 | 小野 誠 |
代理人 | 一入 章夫 |
代理人 | 川口 義雄 |
代理人 | 大崎 勝真 |