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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1115381
審判番号 不服2003-1632  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-01-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-30 
確定日 2005-04-14 
事件の表示 平成 6年特許願第156197号「展示物説明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 1月23日出願公開、特開平 8- 21972〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年7月7日の出願であって、平成14年12月3日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年1月30日付で拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成15年2月21日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。

2.平成15年2月21日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成15年2月21日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を下記のように補正することを含むものである。
「展示物に関する情報の表示信号を出力する表示信号出力装置と、この表示信号出力装置から出力される表示信号に応じた情報が表示される表示面を有する光学的情報表示手段および前記表示面に表示された表示情報から出射した表示情報光を所定の方向に向かわせる光学部材を有する情報投光装置と、
前方の展示物からの光線を後方の観察位置に透過させるとともに前記情報投光装置からの表示情報光を前記観察位置に向かわせるコンバイナとを備え、前記コンバイナを通して前方の展示物および前記表示情報を観察できるようにした展示物説明装置において、前記表示信号出力装置が下記の要件を備えたことを特徴とする展示物説明装置、
(Y01)前記光学的情報表示手段に表示する表示情報メニューおよび前記表示情報メニューのメニュー項目に関連する情報を記憶した情報記憶メモリ、
(Y02)前記情報記憶メモリに記憶された表示情報メニューおよびメニュー項目関連情報を前記情報記憶メモリから読出して前記光学的情報表示手段に表示する表示回路、
(Y03)前記光学的情報表示手段に表示された表示情報メニューまたはメニュー項目関連情報の中から見学者が自分の知りたい情報を選択する表示情報選択用操作部材。」

上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められるので、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(2)刊行物記載の発明
原査定の拒絶理由に引用した刊行物:実願昭62-199607号(実開平1-103881号のマイクロフィルム)には、図面とともに下記の記載が認められる。
「この考案にあっては、水槽の透明板前方にブラウン管からなる情報送り込み器を設け、この情報送り込み器の設置箇所と、その前記透明板を対称面とする水槽内の対称位置との明暗度を前者を後者より明るく設定したのである。
[作用]
このように構成される情報表示装置は、透明板を境にしての明暗度の差により、透明板がハーフミラーの作用をなし、情報送り込み器の表示が透明板を介しての対称位置に虚像として映り込まれ、その虚像を観賞者が見る。虚像による表示は情報送り込み器の表示を変えることにより変化する。」(2頁19行〜3頁11行)、
「従って、情報送り込み器2の表示3はその対称位置に虚像4として送り込まれ、観賞者Bは、図示鎖線のごとく、この虚像4とともに水槽A内の魚等の生態を見ることになる。上記情報としては、魚等の生物の説明、例えば成長過程、産地等を文字、絵等によって表わしたもの等とする。」(4頁2〜7行)

(3)対比
上記刊行物記載のもの(以下、「引用発明」という。)と本願補正発明とを対比する。
(イ)引用発明の「魚等の生物の説明」は、本願補正発明の「展示物に関する情報」に相当する。
(ロ)引用発明の「ブラウン管からなる情報送り込み器」は、本願補正発明の「光学的情報表示手段」に相当し、また該「ブラウン管からなる情報送り込み器」がビデオ等の表示信号出力装置から出力される表示信号に応じた情報を表示するものであることは当業者に明らかである。
(ハ)引用発明において、観賞者は情報送り込み器の表示である虚像とともに水槽内の魚等を見るのであるから、「ハーフミラーの作用をなす透明板」は、本願補正発明の「前方の展示物からの光線を後方の観察位置に透過させるとともに前記情報投光装置からの表示情報光を前記観察位置に向かわせるコンバイナ」の作用をしていることは明らかである。
よって、両者は、
「展示物に関する情報の表示信号を出力する表示信号出力装置と、この表示信号出力装置から出力される表示信号に応じた情報が表示される表示面を有する光学的情報表示手段と、前方の展示物からの光線を後方の観察位置に透過させるとともに前記情報投光装置からの表示情報光を前記観察位置に向かわせるコンバイナとを備え、前記コンバイナを通して前方の展示物および前記表示情報を観察できるようにした展示物説明装置」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本願補正発明は、前記表示面に表示された表示情報から出射した表示情報光を所定の方向に向かわせる光学部材を備えているのに対して、引用発明はこの構成を有しない点、
相違点2:
本願補正発明は、
(Y01)前記光学的情報表示手段に表示する表示情報メニューおよび前記表示情報メニューのメニュー項目に関連する情報を記憶した情報記憶メモリ、
(Y02)前記情報記憶メモリに記憶された表示情報メニューおよびメニュー項目関連情報を前記情報記憶メモリから読出して前記光学的情報表示手段に表示する表示回路、
(Y03)前記光学的情報表示手段に表示された表示情報メニューまたはメニュー項目関連情報の中から見学者が自分の知りたい情報を選択する表示情報選択用操作部材
を備えているのに対して、引用発明では、情報送り込み器の表示を変えるものとはいえるが、具体的な構成を備えたものとはいえない点。

(4)判断
上記相違点につき検討する。
相違点1については、観察対象物とそれに関する情報がコンバイナを通して同一視野内でみられるようにされた情報表示装置において、表示情報から出射した表示情報光を所定の方向に向かわせる光学部材を有する情報投光装置を備えることは、原査定の拒絶理由に引用した特開平2-72317号公報(第3図を参照)及び特開平4-166884号公報(第4図を参照)に記載されているように周知の技術(以下、「周知技術A」という。)である。

また、相違点2については、パソコン等を利用した表示装置において、メニュー選択画面で利用者が知りたい情報を選択して表示することは従来周知の技術(例えば、原査定において周知例として引用した実願昭61-46258号(実開昭62-158557号のマイクロフィルム)の従来技術及び特開平4-321093号公報参照。以下、「周知技術B」という。)であり、「見学者」が「利用者」といえることは明らかである。
そして、本願補正発明のような展示物説明装置において、見学者(利用者)が操作する表示用のスイッチ等を設けることも従来周知(例えば、特開平3-221008号公報参照。)であるばかりでなく、メニュー選択画面で情報を選択した場合に、表示情報メニューのメニュー項目に関連する情報を記憶した情報記憶メモリを備えること及び該情報記憶メモリから読出して表示することは、パソコン等で慣用されている技術にすぎず、上記(Y01)の点はこのような慣用技術を構成要件として単に記載したにすぎないものである。(因みに、上記特開平4-321093号公報には、パーソナルコンピュータ9が記載されており、情報記憶メモリ等は当然にこの中に含まれているものである。)

してみると、本願補正発明は、引用発明において、「情報送り込み器」と「透明板」との間に前記周知技術Aを適用して光学部材を設けるとともに、「情報送り込み器の表示を変える」手段として、前記周知技術Bを採用するしたものであって、いずれも周知慣用手段といえるものであることから、本願補正発明は、引用発明及び周知技術から当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から予想し得る程度のものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年2月21日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの次ものである。
「展示物に関する情報の表示信号を出力する表示信号出力装置と、この表示信号出力装置から出力される表示信号に応じた情報が表示される表示面を有する光学的情報表示手段および前記表示面に表示された表示情報から出射した表示情報光を所定の方向に向かわせる光学部材を有する情報投光装置と、
前方の展示物からの光線を後方の観察位置に透過させるとともに前記情報投光装置からの表示情報光を前記観察位置に向かわせるコンバイナとを備え、前記コンバイナを通して前方の展示物および前記表示情報を観察できるようにした展示物説明装置において、前記表示信号出力装置が下記の要件を備えたことを特徴とする展示物説明装置、
(Y01)前記光学的情報表示手段に表示する表示情報メニューおよび前記表示情報メニューのメニュー項目に関連する情報を記憶した情報記憶メモリ、
(Y02)前記情報記憶メモリに記憶された表示情報メニューおよびメニュー項目関連情報を前記情報記憶メモリから読出して前記光学的情報表示手段に表示する表示回路、
(Y03)前記光学的情報表示手段に表示された表示情報メニューまたはメニュー項目関連情報の中から次に表示する情報を選択する表示情報選択用操作部材。」(以下、「本願発明」という。)

(2)引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用した、この出願前公知の刊行物:実願昭62-199607号(実開平1-103881号のマイクロフィルム)(以下、「引用例」という。)には、上記2.(2)刊行物記載の発明に摘記した事項が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明の「見学者が自分の知りたい情報」を「次に表示する情報」としたものであるが、「次に表示する情報」には「見学者が自分の知りたい情報」を含むことは明らかである。
したがって、本願発明は、上記本願補正発明に対するとほぼ同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-08 
結審通知日 2005-02-15 
審決日 2005-03-03 
出願番号 特願平6-156197
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三橋 健二  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 町田 光信
吉田 禎治
発明の名称 展示物説明装置  
代理人 喜多 俊文  
代理人 江口 裕之  

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