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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A01N
管理番号 1115390
審判番号 不服2003-16520  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-11-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-28 
確定日 2005-04-14 
事件の表示 特願2000-131670「植物活力剤」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月13日出願公開、特開2001-316204〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成12年4月28日の出願であって、その請求項1〜4に係る発明は、平成15年7月7日付け及び平成15年9月29日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1は以下のとおりである。
「【請求項1】 下記に示す(1)多価アルコール及びその誘導体、(2)アミン類又はその誘導体、(3)アミノ酸又はその誘導体、(4)蛋白質又はその誘導体、(5)核酸又はその誘導体、(6)テルペン類又はその誘導体、(7)天然抽出物、(8)発酵生成物、(9)発酵残渣、並びに(10)ビタミン類から選ばれ、下記式により算出される緑色細胞増殖向上度が5%以上である物質の1種以上からなる植物活力剤。
緑色細胞増殖向上度(%)=〔(P1-P0)/P0〕×100
P0:植物活力剤となる物質を用いない場合の緑色細胞の増殖量
P1:植物活力剤となる物質を用いた場合の緑色細胞の増殖量
<(1)多価アルコール及びその誘導体>
(1a):エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールから選ばれるグリコール類
(1b):ソルビトール、マンニトール、グルコースから選ばれる糖アルコール
(1c):エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、グリセリンから選ばれる多価アルコール
(1d):前記(1a)〜(1c)から選ばれる多価アルコールの縮合物
(1e):1価アルコールと前記(1a)〜(1c)から選ばれる多価アルコールの縮合物
(1f):N-ラウロイル-N-メチルグルカミド、N-ステアロイル-N-メチルグルカミドから選ばれる多価アルコール脂肪酸アミド
(1g):前記(1a)〜(1c)から選ばれる多価アルコール又は前記(1d)〜(1f)から選ばれる多価アルコール誘導体のアルキレンオキサイド付加物
<(2)アミン類又はその誘導体>
(2a):炭素数1〜7の炭化水素基を有する1、2又は3級の低級アミン
(2b):炭素数8〜30の炭化水素基を有する1、2又は3級の長鎖アミン
(2c):ポリアミン
(2d):前記(2a)〜(2c)から選ばれるアミン類の塩
(2e):前記(2a)〜(2c)から選ばれるアミン類の4級アンモニウム塩
(2f):コリン又はその塩
<(3)アミノ酸又はその誘導体>
(3a):アスパラギン酸、トレオニン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、システイン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リシン、ヒスチジン、トリプトファン、アルギニンから選ばれるD型又はL型アミノ酸
(3b)オルニチン、クレアチン、ヒドロキシプロリン、アシル化グルタミンから選ばれるアミノ酸の誘導体
<(4)蛋白質又はその誘導体>
(4a):アミノ酸がつながったペプチド又はポリペプチド類
(4b):カゼイン、ケラチン、ヘモグロビン、アルブミン、コラーゲンから選ばれるタンパク質
(4c):糖タンパク
(4d):生体反応を触媒する酵素
<(5)核酸又はその誘導体>
(5a):リボ核酸、デオキシリボ核酸、これらの分解物、ヌクレオシドリン酸、その構成単位のヌクレオチドから選ばれる核酸又はその誘導体
<(6)テルペン類又はその誘導体>
(6a):オレンジ油、テレピン油、ハッカ油、ユーカリ油、樟脳(d-カンフル)、dl-カンフル、l-メントール、dl-メントール、チモールから選ばれるテルペン類又はその誘導体
<(7)天然抽出物>
(7a):ヒノキチオール、キチン、キトサン、クロレラ分解物、木酢液から選ばれる天然抽出物
<(8)発酵生成物>
(8a):アミノ酸発酵、混合有機酸発酵、グリセロール発酵、ペニシリン発酵で得られる発酵生成物
<(9)発酵残渣>
(9a):上記(8)の発酵残渣
(9b):微生物培養における残渣
<(10)ビタミン類>
(10a):チアミン、リボフラビン、ニコチン酸、パントテン酸、ピリドキシン、ビオチン、葉酸、ビタミンB12、アスコルビン酸から選ばれる水溶性ビタミン又はこれらの補酵素類
(10b):ビタミンA、D、E、Kから選ばれる脂溶性ビタミン」
(以下、「本願発明」という。)

2.引用刊行物及びその記載内容
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に日本国内において頒布された刊行物のうち、以下の(ア)〜(シ)にあげた刊行物の記載内容の概略は以下のとおりである。
(ア)特開平2-97340号公報(拒絶理由における引用文献17)
コリン、コリン塩を用いて処理する植物体の増殖方法が記載されている(特許請求の範囲請求項1)。
実施例1として、ミニバラの側芽を培養し、塩化コリン水溶液で処理することにより、生体重が36%増加したことが示されている(第4頁右上欄13行〜左下欄6行、第4頁表)。
(イ)特開平1-305004号公報(同引用文献16)
植物の生長を促進する作用を有する糖アルコールを用いる植物の栽培方法において、糖アルコールとしてマンニトール、ペンタエリスリトール、ソルビトールを用いることが記載されている(特許請求の範囲請求項1、2)。
実施例2として、サニーレタスの水耕栽培において液肥にペンタエリスリトールを添加した場合、生重量が最大20%増加したことが示されている(第3頁左上欄下から6行〜右上欄6行、第2表)。
(ウ)特開平9-143013号公報(同引用文献26)
キチンオリゴ糖、キトサン、キトサンオリゴ糖を含有する植物活力剤が記載されている(特許請求の範囲請求項1)。
試験例1として、植物活力剤を加えた場合、カイワレ大根の平均茎葉長が最大36%増えたことが示されている(段落【0032】〜【0035】、第5頁表3)。
(エ)特開平2-97341号公報(同引用文献18)
コリン、コリン塩以外の4級アンモニウム塩を用いて処理する植物体の増殖方法が記載されている(特許請求の範囲請求項1)。
4級アンモニウム塩として、テトラメチルアンモニウム-ヨージド、ジエチルヘキシルメチルアンモニウム-クロリドが例示されている(第3頁左下欄2〜4行)。
(オ)特表平7-508978号公報(同引用文献15)
アミノ酸(グリシン、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩)を用いる植物の生長を促進する方法が記載されている(特許請求の範囲請求項19、23、24)。
(カ)国際公開第96/32410号パンフレット(同引用文献24)
特定の式で表されるポリペプチドを含有する植物成長剤が記載されている(請求の範囲第2項)。
(キ)特開昭63-45211号公報(同引用文献25)
リボ核酸とプロリンとを施用する禾穀類、果菜、根菜、花卉、果樹などの増収方法が記載されている(特許請求の範囲第1項)。
(ク)特開昭63-33310号公報(同引用文献28)
キチン、キトサン類を有効成分とする植物成長促進剤が記載されている(特許請求の範囲)。
(ケ)特開平8-143406号公報(同引用文献32)
チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、アスコルビン酸を有効成分として含有する植物成長促進剤が記載されている(特許請求の範囲請求項1)。
(コ)特開平6-340506号公報(同引用文献33)
チアミン、トリプトファン、ヒスチジン、ニコチン酸から選ばれる化合物とメナジオン亜硫酸水素付加塩からなる組成物を与える蔬菜の生長の刺激のための方法が記載されている(特許請求の範囲請求項1)。
(サ)特開平4-46103号公報(同引用文献34)
水溶性ビタミンK3誘導体を有効成分とする農園芸作物の生育活性化剤が記載されている(特許請求の範囲請求項1)。
(シ)特開昭61-215305号公報(同引用文献36)
メナジオン重亜硫酸付加物以外の水溶性ビタミンK誘導体を有効成分とする植物生長調節剤が記載されている(特許請求の範囲)。
発明の効果として、特に根群の発達と生体重量の増加が著しいと記載されている(第3頁左上欄1〜2行)。

3.対比・判断
本願発明の植物活力剤は、植物成長に対する改善効果を有するものであるが(段落【0070】)、上記刊行物(ア)〜(シ)において用いられているのも、いずれも植物成長に対する改善効果を有するものであるから、本願発明でいう植物活力剤に相当する。
そして、本願発明と上記刊行物(ア)〜(シ)に記載される発明(以下、まとめて「引用発明」という。)とを比較すると、両者は本願明細書特許請求の範囲請求項1において(1)〜(10)で特定される物質群(以下、「特定物質群」という。)から選ばれた物質からなる植物活力剤である点で一致し、本願発明では物質についてさらに特定式より算出される緑色細胞増殖向上度が5%以上であると限定されているのに対し、引用発明ではそのような限定がない点で相違している。

以下、上記相違点について検討する。
刊行物(ア)には、ミニバラの側芽を培養し、塩化コリン水溶液で処理することにより、生体重が36%増加したことが示されており、刊行物(イ)には、サニーレタスの水耕栽培において液肥にペンタエリスリトールを添加した場合、添加しない対照区のものと比べて生重量が最大20%増加したことが示されており、さらに、刊行物(ウ)には、カイワレ大根の平均茎葉長が最大36%増えたことが示されている。これらの重量増加等は、主として緑色細胞増殖向上度の増加によるものと考えられることから、「緑色細胞増殖向上度が5%以上」というのは、植物成長に対する改善効果を有するとされる植物活力剤において、通常達成されるべき数値であると推認される。
そうしてみると、上記刊行物(ア)〜(シ)には、「緑色細胞増殖向上度が5%以上」という限定が文言をもって記載されていなくても、特定物質群から選ばれ、緑色細胞増殖向上度が5%以上である物質からなる植物活力剤の発明が記載されているといえる。
また、本願発明において緑色細胞増殖向上度とは、「緑色細胞を同1条件で培養したときの細胞の増殖量、すなわち、細胞の数や重量で、増殖の向上度が測定される。・・・本発明では、単細胞の緑色細胞(藻類等)を用いることが好ましく、特にクロレラ・・・を用いるのが好ましい。クロレラを用いる場合、クロレラ用の無機塩培地に植物活力剤となる試験物質を添加し(試験区)、一定期間培養を行った場合の細胞数(cells/ml)を、同1条件で培養した無添加系(対照区)の細胞数(cells/ml)と対比することで算出できる。」(本願明細書段落【0008】)とあるように、クロレラ等の緑色細胞に物質を作用させ、その物質による緑色細胞の増殖向上度を測定することにより求められるものであるから、各物質に固有の数値であるといえるものであり、本願発明で特定物質群に含まれるものとして具体的にあげられている個々の物質は「緑色細胞増殖向上度が5%以上である物質」であるから、それらの物質を含有する引用発明の植物活力剤も「緑色細胞増殖向上度が5%以上である物質」を使用するものである。
このような観点からしても、上記刊行物(ア)〜(シ)には、特定物質群から選ばれ緑色細胞増殖向上度が5%以上である物質からなる植物活力剤の発明が記載されているということができる。

したがって、本願発明は、本願出願前に日本国内で頒布された刊行物に記載された発明である。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、本願は、請求項2〜4に係る発明について判断するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-09 
結審通知日 2005-02-15 
審決日 2005-03-01 
出願番号 特願2000-131670(P2000-131670)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤森 知郎  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 鈴木 紀子
後藤 圭次
発明の名称 植物活力剤  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 義経 和昌  
代理人 持田 信二  
代理人 古谷 聡  

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