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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1115418
審判番号 不服2002-2225  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-04-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-12 
確定日 2005-04-14 
事件の表示 平成9年特許願第273344号「ルウの製造方法およびハーブソース」拒絶査定不服審判事件〔平成11年4月6日出願公開、特開平11-89545〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明

本件出願は、平成9年9月22日の特許出願であって、その請求項1乃至9に係る発明は、平成14年3月11日受付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。(以下、「本件発明1」という。)
「【請求項1】小麦粉、油脂、香辛料および調味料を主たる原料として固形ルウを製造するに当たり、香菜、ターメリックを除くハーブを油脂と共に焙煎、磨砕して製造したハーブソースを添加含有させることを特徴とする固形ルウの製造方法。」

2.原審の拒絶理由

原審の平成13年10月9日付け拒絶理由通知書の概要は、本件発明1は、本願出願日前に頒布された下記刊行物1及び3(以下、「引用例1及び3という。」)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
刊行物1:特開昭60-172267号公報
刊行物3:特開平4-121174号公報

3.引用例記載事項

刊行物1:特開昭60-172267号公報
(1-1)食用油中で所定時間加熱しかつ磨砕状態としてある加工野菜。(特許請求の範囲第1項)
(1-2)従来より、いろいろな料理に炒めた野菜の香味を添えるための風味油として、野菜を食用油中で所定時間加熱し、その後野菜を除去した処理油が知られている。このようにして得られる風味油は、各種の料理以外にドレッシング、たれ等のソースを作るときにそれに添加しソース類に野菜を炒めたときに生じる香味を添えるものとしても用いられる。本発明の目的は、上記の香味以外に、こく味も添えることのできる調味素材を提供することであって、・・・(公報第1頁左下欄20行〜右下欄10行)
(1-3)本発明において野菜は、具体的には、キャベツ・ホウレン草・レタス、春菊・クレソン・セロリ・タマネギ・長ネギ・フキなどの葉菜、ミョウガなどの茎菜、ニンジン・ショウガ・ゴボウ・ワサビなどの根菜、ローレルリーフ・タイム・タラゴン・オレガノ・ディルなどの香菜(香草)が挙げられる。(公報第1頁右下欄18行〜第2頁左上欄4行)
(1-4)加熱の温度と時間は通常約100〜120℃、80〜100分間位である。あまり温度が低かったり、時間が短かったりすると、野菜の炒めたときの香味・こく味が仲々出にくいからであり、また、あまり温度が高かったり、時間が長かったりすると、焦げ臭がつくことがあるからである。(公報第2頁左上欄8〜14行)
(1-5)なお、加工野菜の用途により、油がかなり多く入っても差し支えないときは、上澄み油の傾斜除去はする必要はなく、全ての食用油を含んだまま磨砕すればよい。・・・例えばドレッシング、たれなどに添加し、それに独特の刺激的なくせを伴わないこく味を付与し、さらにスープその他の料理に少量添加して独特の味わいを与えることができる。(公報第2頁左下欄16行〜右下欄5行)
(1-6)実施例3 コーンサラダ油10.0kgの中にローレルリーフ0.1kg、タイムリーフ0.1kg、タラゴンリーフ0.08kg、ミントリーフ0.02kg、オレガノリーフ0.1kg、ディルリーフ0.08kg、セージリーフ0.07kg(各リーフは乾燥品)を浸漬し、120℃で90分間加熱した。放冷後上部の油相部は除去しないで全体をミルにかけて香菜が磨砕状となった本発明の加工野菜を得た。(公報第3頁右上欄9〜17行)

刊行物3:特開平4-121174号公報
(3-1)小麦粉、カレー粉、調味料、油脂及びハーブ原料を含むカレールーであって、ハーブ原料として生ハーブを用い、かつカレールーにハーブが目開き4800μmパス〜目開き350μmオンの範囲の大きさで存在することを特徴とする、カレールー。(特許請求の範囲第1項)
(3-2)本発明は、生ハーブ原料を使用することにより、生ハーブの旨味、生ハーブによる高い香り、快い食感等の優れた嗜好性を有し、さらに、ハーブの植物性繊維を多く含む、健康に良いカレールー及びカレーソースを提供することを目的とする。また、乾燥ハーブを含むカレールーを、肉類の具材とともに煮込み食したときに感じられた具材の臭みが無い、具材含有のカレーソースを提供することを目的とする。(公報第2頁右上欄5〜13行)
(3-3)本発明において、カレールーとはペースト状のものであって・・・(公報第2頁左下欄6〜7行)
(3-4)本発明の生ハーブを例示すると、香菜、ターメリック、タイム、タラゴン、セージ、バジル、マジョラム、ディル、オレガノ、チャービル、フェンネル等を挙げることができる。特に、下線を引いた生ハーブは熱に弱く、乾燥等の加熱処理を施すと香味が失われてしまう。したがって、これらの熱に弱いハーブは生の状態で使用する。(公報第3頁左上欄12〜18行)
(3-5)まず、粗砕した香菜、ターメリック等の生ハーブ原料10〜20部、焙煎処理を施したオニオン50〜60部を90〜105℃で歩留り60〜70%になるまで焙煎処理をする。(公報第4頁右上欄12〜15行)
(3-6)・・・目開き4800μmパス〜目開き500μmオンの範囲の大きさに粗砕した生のターメリック10重量部と生の香菜6重量部を添加し、更に約93℃で歩留り30%になるまで20分間焙煎処理し、焙煎処理した粗砕ハーブ含有ペーストを得た。(公報第3頁右下欄11〜16行)

4.対比・判断

本件発明1は、タイム、バジル、ローレル、タラゴン等のハーブを油脂と共に焙煎、磨砕して得られるハーブソースを含有させると、ハーブの調和のとれた強い香味を添え、えぐ味の発生が解消された高品質のルウ製品が得られ、同時に、ルウを調理した場合は、深いコク味を有し、魚介類等の臭みを消すし、肉類の香味を改善することができるものである。
これに対して、上記刊行物1の記載事項によると、(1-1)の食用油中で所定時間加熱しかつ磨砕状態としてある加工野菜について、(1-3)により、加工野菜としてローレルリーフ・タイム・タラゴン・オレガノ・ディルなどの香菜(香草)即ちハーブが挙げられ、(1-4)により、加工野菜はスープその他の料理に少量添加して独特の味わいを与えることができるものであり、(1-5)(1-6)により、加工野菜は油脂とともにも使用されてもよいものであるから、上記刊行物1には、「ハーブを油脂と共に焙煎、磨砕して製造したハーブを料理に少量添加して独特の味わいを与えること」が記載されているといえる。
本件発明1と上記刊行物1に記載された発明(以下、「引用例発明」という。)とを対比すると、両者は、「ハーブを油脂と共に焙煎、磨砕して製造したハーブソースを添加する食品の製造方法」である点で一致し、相違する点は、(1)食品に関して、前者が、「小麦粉、油脂、香辛料および調味料を主たる原料とする固形ルウ」という限定を付しているのに対して、後者はこれらの限定がない点、(2)ハーブに関して、前者が、「香菜、ターメリックを除く」という限定を付しているのに対して、後者はこれらの限定がない点のみである。
そこで、相違点(1)、(2)について検討する。
相違点(1)
上記刊行物3には、具材の臭みを消すために、小麦粉、油脂、香辛料および調味料を主たる原料とするカレールーにハーブを添加することが記載されている。
ここで、カレールーにハーブを配合して香味を付与することは周知のことであり、上記刊行物3記載の技術は、ハーブの旨味、香りを利用して、カレールーの具材の臭みを消すものであり、引用例発明もハーブの香味、こく味を利用して、食品に香味と共にこく味を添えるものであるから、同様の目的で、引用例発明に上記刊行物3記載の技術を適用して、引用例発明のハーブソースを、小麦粉、油脂、香辛料および調味料を主たる原料とするルーに添加することは当業者が直ちに想到するところである。
その際に、ルーを固形とするか液状とするかは当業者が適宜選択しうる事項であり、油系のハーブソースが油系の固形ルーになじむことは自明のことであるから、固形ルーとすることに何ら困難性もない。
そして、本件発明1は、ルーを固形ルーとすることにより予想外の効果を奏するものでもない。
相違点(2)
上記刊行物1には、ハーブとして、香菜、ターメリック以外のハーブも記載されており、香菜、ターメリック以外のハーブを使用することにより、予想外の効果を奏するものでもないから、この点は実質的な相違点とはならない。
そして、本件発明の、ハーブの調和のとれた強い香味を添え、えぐ味の発生が解消された高品質のルウ製品が得られ、同時に、ルウを調理した場合は、深いコク味を有し、魚介類等の臭みを消すし、肉類の香味を改善することができるという効果も、上記記載事項(1-2)、(1-5)、(3-2)により、上記刊行物1及び3から、当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。
したがって、本件発明1は、上記刊行物1及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

審判請求人は、審判請求書において、「刊行物1の加工野菜の使用に関する前記の記載においては、ドレッシング、たれ、スープを具体的に示し、「その他の料理」には全く具体性がなく、また、引用例3に記載の発明は、ハーブを未加熱で添加するとして、加熱したものを排除しており、ハーブの使用手段が本願発明と全く相違するものであるから、引用例1に「その他の料理」と記載されていても、固形ルウを選択することが容易であるとするのは妥当ではない。」旨主張している。
しかしながら、そもそも、カレールウにハーブを配合して香味を付与することは周知のことであり、また、上記記載事項(1-2)のとおり、野菜を食用油中で処理した風味油により料理を香味付けすることも周知のことであり、ルウは油脂含量が多いものであることからして、ルウに風味油を添加することは、当業者が容易に想到しうるところである。また、上記記載事項(3-4)のとおり、生ハーブが加熱に弱いと記載されているからといって、生ハーブの加熱条件は当業者がハーブに応じて適宜設定し得るものであるから、上記記載事項(3-4)が、上記刊行物1と上記刊行物3を結びつける阻害要因になるとは到底いえない。

5. むすび

以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、原審で通知した上記拒絶理由通知に引用したその出願前日本国内において頒布された上記の引用刊行物1及び3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、その他の請求項2乃至9係る発明については判断するまでもなく、本件出願は特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (付記)
請求人は、「小麦粉、油脂、香辛料および調味料を主たる原料として固形カレールウを製造するに当たり、香菜、ターメリックを除くハーブを油脂と共に原料の品温を75〜90℃にまで至らしめるか、原料を75〜90℃で1〜20分間焙煎、するかの何れかの条件で焙煎し、これと同時あるいはその後に磨砕して製造したハーブソースを添加含有させることを特徴とするカレールウの製造方法。」とする補正案を提示している。
しかしながら、上記刊行物1には、(1-4)に「加熱の温度と時間は通常約100〜120℃、80〜100分間位である。あまり温度が低かったり、時間が短かったりすると、野菜の炒めたときの香味・こく味が仲々出にくいからであり、また、あまり温度が高かったり、時間が長かったりすると、焦げ臭がつくことがあるからである。」と記載されているものの、これは例示にすぎず、野菜の加熱温度と加熱時間は、野菜に応じて香味・こく味を考慮して当業者が、適宜設定し得るものであり、例えば、上記記載事項(3-5)、(3-6)のとおりカレールーに配合する香菜、ターメリック等生ハーブの焙煎条件として、90〜105℃或いは93℃で20分間焙煎が採用されるている。
そして、「原料の品温を75〜90℃にまで至らしめるか、原料を75〜90℃で1〜20分間焙煎、するかの何れかの条件で焙煎」することにより当業者が予期し得ない格別の効果を奏するものでもないから、補正案の発明も、本件発明1と同様の理由で、上記刊行物1及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
 
審理終結日 2005-02-02 
結審通知日 2005-02-08 
審決日 2005-02-21 
出願番号 特願平9-273344
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 恵理子  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 鵜飼 健
柿沢 恵子
発明の名称 ルウの製造方法およびハーブソース  
代理人 清水 猛  

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