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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C02F
管理番号 1115424
審判番号 不服2000-17356  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-06-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-27 
確定日 2005-04-13 
事件の表示 平成10年特許願第346669号「ドレン処理方法および処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月 6日出願公開、特開2000-153271〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
出願日:平成10年11月20日
拒絶理由通知:平成11年7月30日
意見書及び手続補正書:平成11年9月22日
拒絶査定:平成12年8月15日
審判請求:平成12年9月27日
手続補正書:平成12年9月27日
前置報告書:平成13年2月22日
補正却下の決定:平成16年7月14日
拒絶理由通知:平成16年7月26日
意見書及び手続補正書:平成16年9月30日

2.当審の拒絶理由の概要
当審の平成16年7月26日付け拒絶理由の概要は、審判請求時の平成12年9月27日付け手続補正は、別途却下の決定がなされたから、請求項1乃至6に係る発明は、平成11年9月22日付け手続補正書によって補正された事項により特定されるとおりのものであるところ、補正された請求項1乃至6に係る発明は、引用例1に記載された発明と引用例2乃至5に記載された周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.本願補正発明
本願請求項1及び2に係る発明は、平成16年9月30日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(以下、「本願補正発明1」という)。
「【請求項1】エアーコンプレッサ(60)に接続したドレン排出機器(70、80、90)から発生したドレンが、ドレントラップ(72、82、92)を通過し、水面に水より比重の軽い油(208)を残し底面の水を送るドレン処理装置(40)を経由した後、中空のフィルターエレメント(11、11A、11B、11C)を構成したフィルター(10、10B、10C)で分離の処理をし、その後、処理した後の水(201)をドレン処理装置(30)で分離や吸着や分解の処理を行ない、清水の状態にまでする過程で前記ドレンが前記ドレントラップ(72、82、92)を通過して前記清水にするまでの移動をするのに前記ドレントラップ(72、82、92)で加わった排出圧力だけによるものであり、前記清水は高さの点で自由な位置で排出可能であることを特徴とするドレン処理方法。」

4.当審の判断
(1)引用例1の記載事項
当審の平成16年7月26日付け拒絶理由通知において引用された引用例1(実公平7-55336号公報)には、次の事項が記載されている。
(a)「そこで図4に示されるようなドレン溜とポンプの存在しないドレン排出装置が考え出されている。図4において、空気圧縮機1からドレン集合管14までの構成は図3と同一である。ドレン集合管14の端末は立上げ部14aとなっており、その先端を地上に配設したドレン処理装置23の油水分離槽24の上方に開口している。」(段落【0007】)
(b)「【0018】「実施例1」
図1はフローシートで示し、従来例の図4で示したと同機能部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0019】アフタークーラ3のドレン配管6、即ち、ドレン集合管14の流れに関し、上流側のドレン配管6には電気式ドレントラップ26が介装されている。この電気式ドレントラップ26はサイクルタイマーにより、予め定められた間隔でもって、タイマーを動作させ一定時間開弁してドレンを通過させて後更に若干時間圧縮空気を送り出し閉弁するようにしてある。或はドレン検知センサを設けてドレンが検知されると開弁してドレンを送り出した後更に若干時間圧縮空気を送り出して閉弁するようになっている。
【0020】ドレン集合管14の出口は油水分離槽24の上方に開口している。油水分離槽24は油と水の比重差でドレン中の浮上油を分離して液面に集め、図示されない油出口より流出させ回収し、下層の浮上油はないが微小な油滴が混合したエマルジョンは油水分離管27で取り出し、油吸着槽28へ送る。
【0021】油水分離管27は、上下方向に配され貫通し、上端が大気中に開口し、下端が油水分離槽24の底部近くに開口する立管27aの途中に横管27bを連通させて横管27bの出口を油吸着槽28上方に開口している。従って油水分離槽24中のドレンは横管27bと同じ位置が開液面となる。油水分離槽24に図の状態においてドレンが流入すると槽底のエマルジョンは立管27aの下端から立管27aに入り立管27aを上昇して横管27bをとおり、油吸着槽28内に充填した油吸着材29上へ落下し、油吸着材29中を通過する間にエマルジョン中の油滴は粗大化されて油吸着材29に吸着され、清水Wは排水管31から放流される。」(段落【0018】乃至段落【0021】)
(c)図4には、エアーコンプレッサ1に接続したアフタークーラ3、エアタンク4、エアドライヤ5から発生したドレンを、ドレントラップ(11、12、13)を経てドレン集合管14に集めて、直接、油水分離槽24に供給し、その後油吸着槽28へ送って清水として排出するドレン処理方法が図示されている。
(2)対比・判断
引用例1の上記(a)には、「そこで図4に示されるようなドレン溜とポンプの存在しないドレン排出装置が考え出されている。図4において、空気圧縮機1からドレン集合管14までの構成は図3と同一である。ドレン集合管14の端末は立上げ部14aとなっており、その先端を地上に配設したドレン処理装置23の油水分離槽24の上方に開口している。」(段落【0007】)と記載され、そして、この図4から明らかなように、ドレンの流れる過程にはポンプ等の駆動手段が設けられていないから、図4に図示されたドレン処理法は、本願補正発明1と同様に、「清水の状態にまでする過程でドレンがドレントラップを通過して清水にするまでの移動をするのにドレントラップで加わった排出圧力だけによるもの」であると云える。また、図4には、エアーコンプレッサ1に接続したアフタークーラ3、エアタンク4、エアドライヤ5から発生したドレンを、ドレントラップ(11、12、13)を経てドレン集合管14に集めて、直接、油水分離槽24に供給し、その後油吸着槽28へ送って清水として排出するドレン処理方法が図示されていると云える。そして、この「油水分離槽24」は、上記(b)の「油水分離槽24は油と水の比重差でドレン中の浮上油を分離して液面に集め、図示されない油出口より流出させ回収し、下層の浮上油はないが微小な油滴が混合したエマルジョンは油水分離管27で取り出し、油吸着槽28へ送る。」という記載から明らかなように、「水面に水より比重の軽い油を残し底面の水を送る」作用を行うものであり、「油吸着槽28」は、上記(b)の「油吸着槽28内に充填した油吸着材29上へ落下し、油吸着材29中を通過する間にエマルジョン中の油滴は粗大化されて油吸着材29に吸着され、清水Wは排水管31から放流される。」という記載から明らかなように、「分離や吸着の処理」作用を行うものであるから、これら記載を本願補正発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、「エアーコンプレッサ1に接続したドレン排出機器(3、4、5)から発生したドレンが、ドレントラップ(11、12、13)を通過し、水面に水より比重の軽い油を残し底面の水を送る油水分離槽24を経由した後、その後、処理した後の水を油吸着槽28で分離や吸着の処理を行ない、清水の状態にまでする過程で前記ドレンが前記ドレントラップ(11、12、13)を通過して前記清水にするまでの移動をするのにドレントラップ(11、12、13)で加わった排出圧力だけによるものであるドレン処理方法」という発明(以下、「引用例1発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本願補正発明1と引用例1発明とを対比すると、本願補正発明1の「ドレン処理装置(40)」は、本願明細書では具体的には「油水分離槽40」と記載されているから、引用例1発明の「油水分離槽24」に相当し、また本願補正発明1の「ドレン処理装置(30)」は、本願明細書では具体的には「油吸着槽30」と記載されているから、引用例1発明の「油吸着槽28」に相当する。そうすると、両者は、「エアーコンプレッサに接続したドレン排出機器から発生したドレンが、ドレントラップを通過し、水面に水より比重の軽い油を残し底面の水を送るドレン処理装置を経由した後、その後、処理した後の水をドレン処理装置で分離や吸着の処理を行ない、清水の状態にまでする過程で前記ドレンが前記ドレントラップを通過して前記清水にするまでの移動をするのに前記ドレントラップで加わった排出圧力だけによるものであることを特徴とするドレン処理方法」という点で一致し、次の点で相違していると云える。
相違点:
(イ)本願補正発明1は、ドレン処理装置(40)を経由した後、「中空のフィルターエレメント(11、11A、11B、11C)を構成したフィルター(10、10B、10C)で分離の処理をする」のに対し、引用例1発明は、「中空のフィルターエレメント」を具備しない点。
(ロ)本願補正発明1は、そのドレン処理装置(30)で「分離や吸着や分解の処理を行なう」とされているのに対し、引用例1発明は、油吸着槽28で「分離や吸着の処理」を行なうものの、「分解の処理」を行なうのか明らかでない点。
(ハ)本願補正発明1は、「前記清水は高さの点で自由な位置で排出可能である」のに対し、引用例1発明は、この点が明らかでない点。
次に、これら相違点について検討する。
(i)上記相違点(イ)について
油水分離技術において、中空のフィルタを使って油水中のエマルジョン、油分やスラッジ等を分離処理することは、例えば先の拒絶理由で引用された引用例2(特開平1-139107号公報)、引用例3(特開昭63-294915号公報)及び引用例(特開昭62-227412号公報)にみられるように周知・慣用手段である。そして、油水の分離においてその分離処理手段を複数個設けた方が浄化にとってより効果的であることも、例えば上記引用例4を挙げるまでもなく当業者に自明の事項であるから、ドレン処理装置30(油吸着槽)での最終処理に先立って、事前に油水中に含まれる異物や夾雑物等をさらに分離処理するために周知の中空フィルタを追加する程度のことは当業者が容易に想到することができたと云うべきである。
(ii)上記相違点(ロ)について
請求項1には、本願補正発明1の「ドレン処理装置(30)」で「分解の処理」をも行なうと記載されているが、発明の詳細な説明には、「分解の処理」について何ら記載されていない。すなわち、本願明細書には、「ドレン処理装置(30)」での処理について、次のとおり記載されている。
・「一方、中間処理水送水管145は、ドレン処理装置である油吸着槽30に接続している。ここで、油吸着槽30は、本体31と油吸着材32から構成されていて、図1には具体的には示していないが、本体30には、上部と底部には、各々隙間を確保するための支柱を持った油吸着材支持板が配設していて、底部に処理前水保持部と、上部に清水保持部の隙間を形成している。そして、上部と底部の油吸着材支持板の間にポリプロピレンの不織布を不定形のチップ状に切断した油吸着材32を収納している。 このようにして、最終的に上部の清水保持部に、清水放水管151が接続している。」(段落【0022】)
・「尚、ドレン処理装置としての油吸着槽30の代わりに、遠心力によって分離するものや、薬品によって分離するものや、電気分解によって分離するものや、イオン交換によって分離するもの・・・等、他の方法を使用してもかまわない。」(段落【0023】)
・「ここで、油吸着槽30には、ポリプロピレンの不織布を不定形のチップ状に切断した油吸着材32が収納されている。 従って、油吸着材32によって油や異物が取り除かれ、清水が清水放水管151より排出されるようになっている。」(段落【0028】)
以上の記載によれば、本願補正発明1の「ドレン処理装置(30)」は、分離や吸着の処理を行うだけのものであって、「分解の処理」まで行うとする根拠が全く見当たらないから、本願補正発明1の上記相違点(ロ)に係る「分解の処理」は、油吸着という作用が発揮される限りにおいて行われる程度の処理にすぎないと云うべきであり、したがって、引用例1発明の「油吸着槽28」においても同様の処理が行われると認められるから、本願補正発明1は、上記相違点(ロ)において引用例1発明と実質的な差異がないと云うべきである。
(iii)上記相違点(ハ)について
審判請求人は、上記相違点(ハ)に係る「前記清水は高さの点で自由な位置で排出可能である」という補正事項を追加する根拠として本願明細書の段落【0028】や図1乃至図3を引用しているが、段落【0028】には、「前記清水は高さの点で自由な位置で排出可能である」という記載は見当たらず、図1乃至図3にも、ドレン処理装置(30)の上方に清水の排出方向を示す矢印が図示されているだけであるから、「前記清水は高さの点で自由な位置で排出可能である」という補正事項が当初明細書の記載の範囲内でなされたものであるとは必ずしも云えない。
もっとも、上記補正が当初明細書の記載の範囲内でなされたものであるとした場合でも、この点に格別の新規性進歩性があるものでもない。すなわち、本願補正発明1の「前記清水は高さの点で自由な位置で排出可能である」という補正事項は、その意味するところが必ずしも明らかではないが、要するところ、本願補正発明1の清水を排出する態様が水201を油吸着槽30の底部から送水しその上部から清水として排出する態様の図3の具体例に限らず、油吸着槽30の上部途中の自由な位置からでも排出する態様も可能であることを意味すると認められるが、このような清水を排出する態様が本願明細書や図1乃至図3から云えるのであれば、油吸着槽28の上部から送水しその底部から清水として排出する引用例1発明においても、上部から送水するという違いがあるだけであるから、同様に油吸着槽28の底部途中の自由な位置からでも排出可能であると云って差し支えないと云うべきである。
仮に、引用例1発明について上記のとおり云えないとしても、引用例1発明の場合でも、その油吸着槽28から清水を排出する位置をその底部に限らず、途中から排出するように設計することも当業者が適宜容易に想到することができたと云うべきである。
してみると、本願補正発明1は、上記相違点(ハ)において引用例1発明と実質的な差異がないと云うべきであるし、仮に実質的な差異があったとしても、この程度のことは当業者が容易に設計することができたと云うべきである。
以上のとおり、本願補正発明1の上記相違点(イ)乃至(ハ)は、上記引用例2乃至5に記載された周知事項に基づいて当業者が容易に想到することができたことであるから、本願補正発明1は、上記刊行物1に記載された発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。
5.むすび
したがって、本願補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-01 
結審通知日 2005-02-08 
審決日 2005-02-22 
出願番号 特願平10-346669
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 幹山田 泰之中野 孝一増田 亮子  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 岡田 和加子
野田 直人
発明の名称 ドレン処理方法および処理装置  

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