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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02C
管理番号 1115518
審判番号 不服2003-2790  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-10-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-20 
確定日 2005-04-18 
事件の表示 特願2000-108153「メガネのフロント部構造」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月19日出願公開、特開2001-290107〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、出願日が平成12年4月10日である特願2000-108153号であって、平成14年12月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成15年2月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成15年3月24日付けで手続補正がなされた。

2.平成15年3月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年3月24日付けの手続補正を却下する。
[理由]独立特許要件違反
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成14年10月28日付け手続補正書の請求項1の、「レンズを保持するメガネのフロント部であって、該フロント部は連結部の両側に上リム片を有す上フレームと、連結部の両側に下リム片を有す下フレームから成り、上下フレームは中央部にて互いに係止すると共に、外側に設けているヨロイ片を互いに連結することで組合わされ、上記上フレーム又は下フレームに鼻当てパットを取付ける脚をリム片と連結部の間に連続して形成したことを特徴とするメガネのフロント部構造。」から
「レンズを保持するメガネのフロント部であって、1本の細い線材を曲げ成形することで連結部の両側に上リム片とリングを備えた上ヨロイ片を有す上フレームを形成し、同じく1本の細い線材を曲げ成形することで連結部の両側に脚、下リム片、及びリングを備えた下ヨロイ片を有す下フレームを形成し、上下フレームは下フレームに形成している脚の基部を上フレームの連結部と上リム片のコーナーに係止すると共に、外側に設けている上下ヨロイ片のリングにネジを挿通して互いに連結することで組み合わされ、上記下フレームに形成した脚の穴に鼻当てパットの止着部を嵌めて取付けたことを特徴とするメガネのフロント部構造。」と補正された。

この補正は、上フレームに関し、「1本の細い線材を曲げ成形する」点、「リングを備えた上ヨロイ片を有す」点を限定し、下フレームに関し、「1本の細い線材を曲げ成形する」点、「連結部の両側に脚」及び「リングを備えた下ヨロイ片を有す」点を限定し、上下フレームの係止に関し、「下フレームに形成している脚の基部を上フレームの連結部と上リム片のコーナーに係止する」点を限定し、上下ヨロイ片の連結に関し、「上下ヨロイ片のリングにネジを挿通して互いに連結する」点を限定し、脚の形成を下フレームに限定し、鼻当てパットの取付けに関し、「脚の穴に鼻当てパットの止着部を嵌めて取付けた」点を限定したものである。

これらの補正は、特許法第17条の2第4項第2号の限定的減縮に該当するものである。そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特表2000-502197号公報(以下、引用例1という。)には、以下の点が記載されている。

ア.「図3aに示されるめがねは、全体的に参照符号30を付して示され、前述した縁無し又は一部縁付きめがねと異なり、縁付きめがね、即ち、めがねの前部材を構成するワイヤフレームにレンズを包囲して保持するようにしためがねを構成する。更に、図3aは、図3aに示されるめがねフレームにより縁を囲まれたレンズ12’を示す。レンズ12’を取り付けるとともに縁を取り囲むためにレンズに、ワイヤ部分32及び34/36との相互作用により該レンズを保持するようにした研削溝が設けられる。めがね又はめがねフレーム30は前述したワイヤ部分、即ち、前記された部材16に対応する第1ワイヤ部分32、及び、当該めがねの2つのレンズをそれぞれ保持する2つのワイヤ部分により構成される。これらワイヤ部分34及び36は、それぞれ、ターミナルアイレット34b及び36bを形成するワイヤ端部34a及び36aを有し、これらターミナルアイレット34b及び36bは、前述した接合部用鼻パッドに対応するするとともに装用者の鼻側面部で支持するようにした鼻パッドを備えている。ワイヤ部分32は中央ブリッジ32aを有し、該中央ブリッジ32aを取り巻いてワイヤ部分34及び36が折り曲げられ、このようにして上記各ワイヤ端部34a及び36aが設けられる。各ワイヤ部分32aの端部に閉じたアイレット32c及び32dが設けられ、したがって、閉ループ34b及び36bに対向するワイヤ部分34b及び36bの端部が閉じたループ又はアイレット34c及び36dを形成している。アイレット32c及び34c並びに対応するアイレット32d及び36dが並置されるとともに同一の、好ましくは、軸受け軸となる垂直軸と同心状とされる。」(公報第20頁2〜22行)

イ.「図3cに示されるように、各ワイヤ部分32及びワイヤ部分36の上部のアイレット32d及び36dは、それぞれ、当該めがねの前部材の対向端部に並置された、アイレット32d及び36d並びに対応するアイレット32c及び34cを支持するとともに固定するブシュ38に取り付けられる。」(公報第20頁下から4行〜末行)

上記記載事項、及び図3a、図3c等から、引用例1には、「レンズ12’を保持するめがねの前部材であって、1本のワイヤを曲げて形成され、中央ブリッジ32aの両側に上縁部とアイレット32c及び32dが設けられた第1ワイヤ部分32を形成し、ワイヤを曲げて形成され、中央ブリッジ32aに対応する部分の両側にワイヤ端部34a及び36aを形成し、下縁部とアイレット34c及び36dが設けられた2つのワイヤ部分34及び36を形成し、第1ワイヤ部分32と2つのワイヤ部分34及び36とは、ワイヤ部分34及び36のワイヤ端部34a及び36aを第1ワイヤ部分32の中央ブリッジ32aの両側で折り曲げられ係止されると共に、前部材の対向端部に並置された、アイレット32c及び32dと、それぞれ対応するアイレット34c及び36dがブシュ38で連結して取り付けられ、ワイヤ端部34a及び36aには、装用者の鼻側面部で支持するようにした鼻パッドを備えているターミナルアイレット34b及び36bが形成されためがねの前部材」(以下「引用発明」という。)が記載されている。

また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-288758号公報(以下、引用例2という。)には、以下の点が記載されている。
ウ.【0031】
図9に示すフレーム部3に図10に示すレンズ部4を取り付ける。レンズ部4の第2のブリッジ42の凹部42dにフレーム部3の第1のブリッジ34が当接するよう、第2のブリッジ42を第1のブリッジ34に上方から係合させる。次いで、第2のリム41、41’、第2のブリッジ42は可撓性を有しているので、第2のブリッジ42が第1のブリッジ34に係合した状態で第2のリム41をやや撓ませ、鉤型の接続部43をフレーム部3のヨロイ部32に係合させる。同様に、第2のリム41’をやや撓ませ、接続部43’を受部32’に係合させる。さらに、レンズ部4の第2のリム41、41’に設けられたつめ44、44’をフレーム部3のノーズパッド支持部35、35’(図9参照)の側面に係合させる。
【0032】
以上により、レンズ部4がフレーム部3に取り付けられた眼鏡200の正面図を図12に示す。

また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-94977号公報(以下、引用例3という。)には、以下の点が記載されている。
エ.【0021】
リムバーAは、挿入部21に確りと嵌まり込み、矢印方向の揺れによっても外れることがない。パット係止部3にはパットPが取り付けられるが、両者は、パットPに設けられた溝P1にパット係止部3が嵌まり込んで確実に固定される。パットPは、例えばシリコンゴム等の比較的弾性力のあるものを素材としているため、パット係止部3からパットPを取り外して新しいものと交換することが可能である。パットPの形状は、ここでは円形のものが示されているが、楕円、ナス型等他の形状のものでもよい。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「めがねの前部材」は本願補正発明の「メガネのフロント部」に相当し、以下同様に、「1本のワイヤを曲げて形成され」は「1本の細い線材を曲げ成形する」に、「中央ブリッジ32a」は「連結部」に、「上縁部」は「上リム片」に、「アイレット32c及び32d」は「リングを備えた上ヨロイ片」に、「第1ワイヤ部分32」は「上フレーム」に、「中央ブリッジ32aに対応する部分の両側」は「連結部の両側」に、「ワイヤ端部34a及び36a」は「脚」に、「下縁部」は「下リム片」に、「アイレット34c及び36d」は「リングを備えた下ヨロイ片」に、「前部材の対向端部に並置された、アイレット32c及び32dと、それぞれ対応するアイレット34c及び36dが連結して取り付けられ」は「外側に設けている上下ヨロイ片のリングを互いに連結することで組み合わされ」に、「装用者の鼻側面部で支持するようにした鼻パッドを備えているターミナルアイレット34b及び36b」は「脚の穴に鼻当てパットを取付けた」に、「めがねの前部材構造」は「メガネのフロント部構造」に、それぞれ相当する。

引用発明の「2つのワイヤ部分34及び36」、本願補正発明の「下フレーム」は、ともに下部フレームと言うことができる。

引用発明の「第1ワイヤ部分32と2つのワイヤ部分34及び36とは、ワイヤ部分34及び36のワイヤ端部34a及び36aを第1ワイヤ部分32の中央ブリッジ32aの両側で折り曲げられ係止される」、本願補正発明の「上下フレームは下フレームに形成している脚の基部を上フレームの連結部と上リム片のコーナーに係止する」は、ともに、「上フレームと下部フレームは下部フレームに形成している脚の基部を上フレームの連結部と上リム片のコーナーに係止する」と言うことができる。

したがって、両者は、「レンズを保持するメガネのフロント部であって、1本の細い線材を曲げ成形することで連結部の両側に上リム片とリングを備えた上ヨロイ片を有す上フレームを形成し、細い線材を曲げ成形することで連結部の両側に脚、下リム片、及びリングを備えた下ヨロイ片を有す下部フレームを形成し、上フレームと下部フレームとは下部フレームに形成している脚の基部を上フレームの連結部と上リム片のコーナーに係止すると共に、外側に設けている上下ヨロイ片のリングを互いに連結することで組み合わされ、上記下部フレームに形成した脚に鼻当てパットを取付けたことを特徴とするメガネのフロント部構造。」である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1;
下部フレームが、本願補正発明では、1本の細い線材を曲げ成形することで連結部を有す下フレームを形成しているのに対し、引用発明では、連結部のない2つのワイヤ部分34及び36からなっている点。

相違点2;
上下ヨロイ片のリングを互いに連結するのに、本願補正発明では、ネジを挿通して連結しているのに対し、引用発明では、ブシュ38で連結している点。

相違点3;
下部フレームに形成した脚に鼻当てパットを取付けるのに、本願補正発明では、脚の穴に鼻当てパットの止着部を嵌めて取付けているのに対し、引用発明では、取り付け方を特に限定していない点。

(4)判断
相違点1ついて
引用例2には、第2のリム41、41’、第2のブリッジ42からなるレンズ部4(本願補正発明の「下フレーム」に対応する。)を1本の部材で構成し、フレーム部3(本願補正発明の「上フレーム」に対応する。)の第1のブリッジ34が当接するよう、第2のブリッジ42を第1のブリッジ34に上方から係合させた点が記載されているので、引用発明の2つのワイヤ部分34及び36を、1本の細い線材を曲げ成形することで連結部を有す下フレームを形成したものとすることは、当業者にとって容易である。

相違点2ついて
ヒンジ部をネジで連結することは、普通に行われていることであり、引用発明のブシュに代えてネジとすることは、当業者が必要に応じてなし得る設計事項である。

相違点3ついて
引用例3には、「パット係止部3(本願補正発明の「脚」に対応する。)にはパットPが取り付けられるが、両者は、パットPに設けられた溝P1にパット係止部3が嵌まり込んで確実に固定される」点が記載されており、引用発明に適用して、相違点3の構成とすることは、当業者にとって容易である。

そして、本願補正発明の効果も、引用発明、引用例2,3に記載された発明、及び従来周知の技術事項から予測される範囲のもので格別のものとは言えない。

したがって、本願補正発明は、引用例1〜3に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年3月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年10月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである。(上記、「2.(1)補正後の本願発明」参照。)

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、2の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、上記「2.(1)補正後の本願発明」で述べた構成の限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1〜3、及び従来周知の技術事項に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1〜3に記載された発明、及び従来周知の技術事項にに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1〜3記載された発明、及び従来周知の技術事項にに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-28 
結審通知日 2005-01-25 
審決日 2005-02-08 
出願番号 特願2000-108153(P2000-108153)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 峰 祐治  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 瀬川 勝久
柏崎 正男
発明の名称 メガネのフロント部構造  
代理人 平崎 彦治  

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