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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1115666
審判番号 不服2003-6415  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-16 
確定日 2005-04-22 
事件の表示 平成 6年特許願第283576号「プリンタ」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 6月 4日出願公開、特開平 8-142459〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成6年11月17日の出願であって、平成15年3月12日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年4月16日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正(特許法(平成6年改正前。以下特に断らないで単に特許法ということがある。)17条の2第1項5号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成15年4月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項
本件補正は、補正前【請求項1】及び段落【0007】記載の「前記プリント出力部情報保持手段に保持された第1の情報および前記プリントジョブ情報保持手段に保持された第2の情報を管理する管理手段」を、「前記プリント出力部情報保持手段に保持された第1の情報および前記プリントジョブ情報保持手段に保持された第2の情報を動的に管理する管理手段」(下線部が補正による追加記載)と補正するものである。

2.補正目的違反又は新規事項追加の判断
本件補正前後を通じて、【請求項1】及び段落【0007】には「前記管理手段は前記プリント出力部でプリントジョブを処理している際に、前記プリント出力部の現在の状態または前記プリントジョブに変更が生じた場合、前記変更に基づいて前記第1の情報または前記第2の情報を変更し、該変更した第1の情報または第2の情報を前記表示制御手段に通知する」(以下「本件管理構成」という。)との記載がある。
他方、発明の詳細な説明には、出願当初から一貫して「この管理テーブル18では、上述したプリンタ11の現在の状態に関する情報とプリントジョブに関する情報を動的に管理している。すなわち、管理テーブル18は、プリンタ11の状態またはプリントジョブに変化があったときは、これに従って内容を適宜変更するとともに、内容の変更があったことを表示制御部19に通知するようにしている。」(段落【0020】)との記載があり、この記載によると、「動的に管理する」構成とは本件管理構成にほかならない。
「動的に管理する」ことの意味が、本件管理構成にあるのならば、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものでないことは明らかであり、本件補正前の【請求項1】及び段落【0007】には本件管理構成が記載されているのだから、その記載が明りようでないということもできない。かえって、本件管理構成とは別に、「動的に管理」する旨限定するのであるから、その意味が本件管理構成と同義なのか別の意味なのか不明りようになってしまう。すなわち、本件補正の目的を明りょうでない記載の釈明と解することはできない(さらにいうと、補正前の記載が不明りようである旨の拒絶理由は通知されていないから、明りょうでない記載の釈明であるとしても、特許法17条の2第3項3号には該当しない。)。そして、本件補正が請求項削除や誤記の訂正を目的とするものでないことも明らかである。すなわち、本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反している。
仮に、「動的に管理する」ことの意味が本件管理構成と異なるのであれば、特許請求の範囲の減縮(特許法17条の2第3項2号該当)と認めることができるが、その場合には本件補正後の【請求項1】及び段落【0007】に記載された事項は、願書に最初に添付した明細書・図面に記載されておらず、自明の事項と認めることもできないので、本件補正は特許法17条の2第2項で準用する同法17条2項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおり、本件補正は特許法17条の2第3項又は同法17条の2第2項で準用する同法17条2項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての当審の判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年6月14日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】に記載されたとおりの次のものと認める。
「ネットワークに接続されたデータ処理装置からプリントジョブを入力する複数の入力インターフェースと、該入力インターフェースを通じて入力されたプリントジョブを格納するプリントジョブ格納部と、該プリントジョブ格納部に格納されたプリントジョブの画像を用紙に出力するプリント出力部とを少なくとも有するプリンタにおいて、
前記プリント出力部の現在の状態に関する第1の情報を保持するプリント出力部情報保持手段と、
前記プリントジョブ格納部に格納されたプリントジョブに関する第2の情報を保持するプリントジョブ情報保持手段と、
前記プリント出力部情報保持手段に保持された第1の情報および前記プリントジョブ情報保持手段に保持された第2の情報を管理する管理手段と、
文字によりユーザに情報を伝える表示手段と、
前記第1の情報と前記第2の情報とを表示手段に表示させる表示制御手段と
を具備し、
前記管理手段は前記プリント出力部でプリントジョブを処理している際に、前記プリント出力部の現在の状態または前記プリントジョブに変更が生じた場合、前記変更に基づいて前記第1の情報または前記第2の情報を変更し、該変更した第1の情報または第2の情報を前記表示制御手段に通知する
ことを特徴とするプリンタ。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-61620号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア〜テの記載又は図示がある。摘記に当たっては、改行及び空白を省略する。
ア.「〔従来の技術〕1台の出力装置(プリンタ)を複数の入力装置(情報処理装置)で共用するシエアードプリンタシステムにおいては、出力装置は入力装置から離れた場所に設置される場合が多く、従つて、各入力装置から画像情報の印刷出力を指令した場合には、該指令者は、時間を見計らつて出力装置のところまで出向いて、印刷物を入手しなければならない。」(2欄1〜9行)
イ.「第1図は本発明の一実施例によるシエアードプリンタシステムの構成を示す。複数の入力装置2-1,入力装置2-2,……入力装置2-Nが主コントローラ1と双方向に通信可能なネツトワーク17で接続される。入力装置2-1〜入力装置2-Nには各々対で表示装置3-1〜表示装置3-Nがインターフエイスケーブル6-1〜6-Nで接続される。主コントローラ1と出力装置4とはインターフエイス18で接続される。」(3欄29〜37行)
ウ.「主コントローラ1はCPU6,I/F回路7,プログラムROM8,大容量メモリ12,メモリI/F13,バツフアメモリ9,キヤラクタジエネレータ10,出力データ展開処理回路14,ビツトマツプメモリ15,出力I/F11,内部バス16を備えている。CPU6はプログラムROM8に格納されている論理に基づきI/F回路7を経由してネツトワーク17より入力したデータを処理する。」(3欄43行〜4欄3行)
エ.「入力装置(2)2-2からの入力データ21を主コントローラ1が受信した時、主コントローラ1が既に受信したデータが無く、また出力装置4が印字可能であれば、該主コントローラ1はキヤラクタジエネレータ10と出力データ展開処理回路14を使用し印字データをビツトマツプメモリ15に展開し、出力装置I/F11を介して出力装置4へ出力データとして出力する。出力装置4は該出力データの出力(印刷)作業22を実行し、印刷完了時点で印刷完了寝具34を主コントローラ1へ出力する。入力装置(1)2-1側で該シエアードプリンタシステムの印刷作業処理状況を知りたい場合は、入力装置(1)2-1より主コントローラ1へ表示要求信号23を送信する。主コントローラ1は該信号23を受信すると表示データ24を入力装置(1)2-1へ送信する。入力装置(1)2-1は該表示データ24を表示装置(1)3-1へ出力する。入力装置(1)2-1の操作者は表示装置(1)3-1に表示された内容を確認した上で、入力データ25を主コントローラ1へ出力する。主コントローラ1は該入力データ25を受信するが、出力装置4が入力データ21の印刷作業22を実行中で該入力データ25を出力装置4へ出力できない為、該データをメモリI/F13を介して大容量メモリ12へ格納する。」(4欄8〜32行)
オ.「入力装置(N)2-Nの操作者は表示要求26で得た表示データ27の内容を見て、入力データ25が待期中であるがわかる。入力データ25より早く印刷したいデータが有る場合には、入力データ28に入力データ25より優先順位の高い指令を盛り込んで主コントローラ1へ送信する。主コントローラ1が指令通りの処理をしたかどうかは、表示要求29で得た表示データ30で確認できる。主コントローラ1は入力データ印刷作業22の印刷完了信号34を受信した後、入力データ25より優先度の高い入力データ35を印刷して出力する。そして、入力データ35の印刷作業36の印刷完了信号37を受信した後入力データ38を出力して該データ38の印刷作業39を実行させ、その出力完了信号40で次の作業に移る。参照符号31〜32は、入力装置(3)2-3の入力データ,表示要求及び表示データである。」(4欄32行〜5欄1行)
カ.「第3図(a)に入力装置2-1〜2-Nから主コントローラ1へ転送するデータの内容(項目)を示す。該転送データには入力装置No.項目41,出力者コード項目42,転送データの優先度項目43,文書名項目44,実行予定時間項目45,終了希望時刻項目46,出力枚数項目47,紙サイズ項目48,紙種項目49,カラー指定項目50,両面印字指定項目51,ソータビンNo.出力指定項目52,ソータビン取り出し禁止/解除指定項目53,上面スタツカ出力指定項目55,グラフイツク項目56および印字データ項目57のデータが含まれている。入力装置2-1〜2-Nへはキーボードでデータを入力する。」(5欄2〜14行)
キ.「第3図(b)に入力装置4(審決注;「出力装置4」の誤記と認める。)から該出力装置の状態を主コントローラ1へ転送するデータの内容(項目)を示す。該転送データには、重大障害発生項目58,第1カセツト紙サイズ項目59,第1カセツト紙種項目60,第1カセツト枚数項目61,第nカセツト紙サイズ項目62,第nカセツト紙種項目63,第nカセツト枚数項目64,第1ソータビン蓄積枚数項目65,第nソータビン蓄積枚数項目66、上面スタツカ蓄積枚数項目67,大容量ビン蓄積枚数項目68,紙ジヤム箇所項目69,感光体ドラム寿命項目70,現像剤寿命項目71,トナー切れ項目72,ピツクアツプローラ寿命項目73,定着ユニツト寿命項目74,帯電器寿命項目75,転写ユニツト寿命項目76,サービスマンコール:光学ユニツト項目77,サービスマンコール:メインモータ項目78およびサービスマンコール:定着ユニツト項目79のデータが含まれる。サービスマンコールデータは必要であれば他のユニツトのエラー情報を追加できる。」(5欄15〜35行)
ク.「第4図に表示装置3-1〜3-Nで表示する状態表示画面を示す。表示内容(欄)には主コントローラ1が処理するジヨブの順番欄80を含む。ここでジヨブとは主コントローラ1が入力装置3-1〜3-Nから受信した。第3図(a)に示すデータ一式を意味する。さらに表示内容には文書名欄81,出力者欄82,実行時間欄83,終了予定時間欄84,出力枚数欄85,累積枚数欄86,紙サイズ欄87,紙種欄88,カラー欄89,両面欄90,ソータビン欄91,上面スタツカ欄92,大容量ビン欄93,文字欄94,グラフイツク欄95,優先度欄96,受付文書合計欄97,出力者人数欄98,実行時間合計欄99,総累積枚数欄100がある。さらに給紙容量不足ジヨブの識別マーク欄101および排紙容量不足ジヨブの識別マーク欄102に説明を表示する。」(5欄36行〜6欄2行)
ケ.「上記内容を表示装置3-1〜3-Nに表示する為に主コントローラ1は第5図に示す項目のデータを入力装置2-1〜2-Nへ転送する。該転送データには、ジヨブ順番項目110,文書名項目111,出力者項目112,実行予定時間項目113,終了予定時刻項目114,出力枚数項目115,累積枚数項目116,紙サイズ項目117,紙種項目118,カラー指定項目119,両面印字指定項目120,ソータビンNo.出力指定項目121,上面スタツカ出力指定項目122,大容量ビン出力指定項目123,文字/グラフイツク項目124,優先度項目125,給紙容量不足項目126,排紙容量不足項目127およびジヤム箇所項目128のデータが含まれる。」(6欄3〜17行)
コ.「第6図は、出力装置に異常が発生した場合に表示装置3-1〜3-Nで表示する状態表示画面を示す。本例では出力装置4でジヤムが発生した場合の表示例で、ジヤム表示領域130内にジヤム表示記号131を表示し、更に、ジヤム発生が考えられる場所に対応させた表示マーク132〜137の中でジヤムが発生した箇所のマークを点滅させて、シエアードプリンタシステムの使用者に報知する。」(6欄18〜27行)
サ.「第7図に本発明になるシエアードプリンタシステムの他の実施例を示す。本実施例では共用の表示装置141を主コントローラ1Aと対で構成している。主コントローラ1Aに表示装置141へ表示データを出力する為の表示装置I/F140が設けられる。表示装置141は複数の使用者が共同で見えるように配置する。」(6欄28〜34行)
シ.「第8図に、該構成における入力装置2-1〜2-N,主コントローラ1A,出力装置4及び表示装置141の間のデータ及び信号の流れを示す。入力装置(2)2-1から入力データ151が主コントローラ1Aに入力されると、該主コントローラ1Aは該入力データの処理内容に応じた表示データ152を作成し、第4図に示す形態で、表示装置141に表示させる。また該データ中の印字データはビツトマツプメモリ15に展開した後に出力装置4へ出力し、該入力データの印刷作業153を出力装置4で実行させる。各入力装置2-1〜2-Nの操作者は、表示装置141に該シエアードプリンタシステムの処理状況が常時表示されているので、該表示内容を見てから入力データを作成して主コントローラ1Aへ送信することができる。」(6欄35行〜7欄1行)
ス.「入力データ151の印刷作業153中に入力装置(1)2-1から主コントローラ1Aに入力された入力データ154は大容量メモリ12に格納して待機させ、その旨を表示データ155で表示装置141に表示させる。入力装置(N)2-Nの操作者は、表示装置141に表示されたこの表示内容を見て、入力データ154が待機中であるのを知り、該データより優先度の高い指令を盛り込んだ入力データ156を作成し、これを主コントローラ1Aに送信するとき、主コントローラ1Aはこの優先順位に従い、入力データ156,入力データ154の順に出力装置4へ出力して印刷作業160,163を実行する。すなわち、主コントローラ1Aは、入力データ156も大容量メモリ12に格納待機させてこれを表示データ157で表示装置141に表示させ、印刷作業153の完了信号158を受信すると大容量メモリ12から入力データ156を読出して出力装置4に入力して印刷作業160を実行させ、その完了信号161を受信すると入力データ154を読出してその印刷作業163を実行させる。この間、入力装置(3)からの入力データ165は大容量メモリ12に格納し、これを表示データ166で表示装置141に表示させ、印刷作業163の完了信号164に基づいてこの入力データ165を印刷させる。」(7欄2〜27行)
セ.「第9図は主コントローラ1のCPU6が前述の制御を実行するために、プログラムROM8に格納されているプログラムのメイン処理ステツプを示す。・・・データ入力が有つた場合にはステツプ171に移つて出力装置4が実行するジヨブ順番を整列する。この結果は、第4図の順番欄80の列に表示する。次にステツプ172でジヨブ順番に従つて各ジヨブの終了予定時刻欄84の列に表示する。次に、ステツプ173で出力枚数計算を行なう。この結果は、第4図の欄86に表示する。ステツプ174では、文書名,出力者,実行時間,出力枚数などの入力データに含まれる情報を表示内容メモリに格納する。この表示内容メモリは主コントローラ1のバツフアメモリ9内に在り、第1図に示すシステム構成の場合は入力装置2-1〜2-Nから表示要求が主コントローラ1に入力される度に、該入力装置2-1〜2-Nに転送する。第7図に示すシステム構成の場合は、表示内容メモリの内容を更新する度に表示装置141に転送する。・・・印字出力処理完了後はステツプ171に戻り、ジヨブ順番整列,終了予定時刻計算,出力枚数計算,表示内容メモリ更新を再度実行する。」(7欄28行〜8欄12行)
ソ.「第19図に変更処理の内容を示す。一度、主コントローラ1が受付けたジヨブでも、該ジヨブが待機中であればその内容を変更することができる。ステツプ330でジヨブのデータを受信し、・・・ステツプ331で該当ジヨブが有れば、ステツプ332でジヨブ順番を整列し、さらにステツプ333で終了予定時刻の計算を実行し、ステツプ334で出力枚数累積計算を実行し、ステツプ335で表示内容が格納してあるメモリの内容を更新する。」(14欄19〜32行)
タ.「シエアードプリンタシステムの使用者にとつて、出力装置4の状態を詳細に把握することも重要である。この為に、出力装置4から主コントローラ1へ第3図(b)に示すデータが転送される。出力装置4で火炎及び人命、他の機器に対する障害が発生する恐れがある場合は、重大障害発生項目58のデータを出力装置4から主コントローラ1へ転送し、さらに表示装置3-1〜3-Nに表示する。出力装置4の電源が切れている場合に発生した重大障害については、主コントローラ1から出力装置4の装置内の異常高温,漏電を検知するセンサーを直接チエツクし、異常をモニターする。主コントローラ1が異常を検知すると、表示装置3-1〜3-Nに直ちに表示し、該システムの使用者が異常事態に対処できるようにする。また、通常使用状態では、紙の収納状態,紙の種類,サイズを第3図(b)の項目59〜64で主コントローラ1が出力装置4からデータを受信する。また、出力紙の蓄積箇所の状態を示すデータを第3図(b)の項目65〜68で出力装置4から受信する。出力装置4で使用している消耗品及び定期交換部品の寿命が来た場合は、主コントローラ1は出力装置4から第3図(b)の項目70〜76のデータを受信する。
出力装置4で、サービスマンコールが発生した場合は、主コントローラ1は出力装置4から第3図(b)の項目77〜79のデータを受信する。以上の出力装置4から主コントローラ1に入力した情報は、シエアードプリンタシステムの使用者にわかり易いフオーマツトで表示装置3-1〜3-Nに表示され、出力装置4の保守に利用される。」(20欄17行〜21欄2行)
チ.第4図(15頁)には、順番(符番80)欄の先頭に「処理中」との表示があるとともに、「給紙容量不足」の表示欄(符番101)が図示されており、第6図(同頁)には、第4図に重畳してジヤム表示領域(符番130)が表示される様子が図示されている。
ツ.第8図(18頁)には、主コントローラ1Aが入力データを受信する毎に、主コントローラ1Aから表示装置141へ表示データを送信する様子、出力装置4から出力完了信号が主コントローラ1Aに送信される様子が図示されているが、出力完了信号が主コントローラ1Aに送信されても、直ちには主コントローラ1Aから表示装置141へ表示データが送信されないように図示されている。
テ.第9図(19頁)には、印字出力処理(ステップ181)の後、ジョブ順番整列(ステップ171)、終了予定時刻計算(ステップ172)及び出力枚数計算(ステップ173)を経て、表示内容メモリ更新(ステップ174)がされる旨のフローチャートが図示されている。

2.引用例記載の発明の認定
引用例には2つの実施例(第1図実施例及び第7図実施例)が記載されており、記載イ〜コ,タ,チは第1図実施例についての記載であり、記載サ〜ス,ツ,テは第7図実施例についての記載であり、記載セは両実施例に共通する記載と個別記載を含んでおり、記載ソは両実施例に共通したものである。
引用例の第7図実施例では、「表示内容メモリの内容を更新する度に表示装置141に転送する。」(記載セ)であり、表示内容メモリ(記載セのとおり、第7図のバツフアメモリ9内に在る。)の内容が更新されるのは、ホストコンピュータ等から入力データを受信した場合(記載ス,ツ及び第19図参照。)や、印字処理出力が完了した場合(記載セ,テ及び第9図参照。)である。記載ツのとおり、第8図には出力完了(印字処理出力完了の意味であることは明らかである。)の際に、直ちには主コントローラ1Aから表示装置141へ表示データが送信されないように図示されているけれども、それは上記記載セに反するばかりか、第7図実施例においても「第4図に示す形態で、表示装置141に表示させ」(記載シ)ており、第4図順番欄の先頭には「処理中」との表示がされるのであるから、1つのジョブの出力完了時に主コントローラ1Aから表示装置141へ表示データを送信しないのであれば、誤った情報が表示されることになり、ユーザにとって不都合であることは明らかである。したがって、第8図があるものの、当業者であれば、第7図実施例が、1つのジョブの出力完了時に表示内容メモリの内容を更新し、更新後の内容を表示手段に転送するものと認識するであろうことに疑いの余地はない。
そうすると、引用例の第7図実施例における「主コントローラ1A」、「出力装置4」及び「表示装置141」をあわせた装置は次のようなものである。
「主コントローラ、出力装置及び表示装置からなる装置であって、
前記主コントローラは、ホストコンピュータ等の複数の入力装置とネットワーク接続するためのインターフェース、入力データを格納する大容量メモリ及び表示内容メモリを有し、前記大容量メモリに格納された前記入力データを読出して前記出力装置に入力して印刷作業を実行させるよう構成されており、
前記表示内容メモリは、ジョブの順番、文書名、出力者等を含む情報を記憶するものであり、その内容は入力データを受信した場合及び前記出力装置からの出力完了信号がある毎に更新され、更新後の前記表示内容メモリの内容が前記表示装置に表示されるように構成されている装置。」(以下「引用発明」という。)

3.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明の「入力装置」及び「入力データ」は、本願発明の「データ処理装置」及び「プリントジョブ」に相当し、本願発明と引用発明とはデータ処理装置とネットワーク接続され、データ処理装置から送信されるプリントジョブを印刷する装置である点で一致し、以下この一致点での限度で両者を「印刷関係装置」ということにする。引用発明の「入力データを格納する大容量メモリ」及び「出力装置」は、本願発明の「入力インターフェースを通じて入力されたプリントジョブ格納部」及び「プリントジョブ格納部に格納されたプリントジョブの画像を用紙に出力するプリント出力部」にそれぞれ相当する。
引用発明における「ジョブの順番、文書名、出力者等を含む情報」はプリントジョブに関する情報といえるから、引用発明の「表示内容メモリ」は本願発明の「前記プリントジョブ格納部に格納されたプリントジョブに関する第2の情報を保持するプリントジョブ情報保持手段」に相当する。
引用発明においては、「第2の情報」に相当する情報を、入力データの受信及び出力装置からの出力完了信号により更新し、更新後の内容を表示装置(本願発明の「文字によりユーザに情報を伝える表示手段」に相当する。)に表示する以上、引用発明の「主コントローラ」は、本願発明の「第2の情報」に相当する情報を管理する手段、及びその情報を表示手段に表示させる表示制御手段を具備すると認めることができる。そして、入力データの受信・出力装置からの出力完了信号発生が、本願発明の「前記プリント出力部でプリントジョブを処理している際に、前記プリント出力部の現在の状態または前記プリントジョブに変更が生じた場合」と異なると解することはできず、引用発明ではかかる変動が生じた場合に記憶更新した表示内容メモリの内容を表示装置に表示するのだから、変更した第2の情報を表示制御手段に通知していると認めることもできる。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「ネットワークに接続されたデータ処理装置からプリントジョブを入力する入力インターフェースと、該入力インターフェースを通じて入力されたプリントジョブを格納するプリントジョブ格納部と、該プリントジョブ格納部に格納されたプリントジョブの画像を用紙に出力するプリント出力部とを少なくとも有する印刷関係装置において、
前記プリントジョブ格納部に格納されたプリントジョブに関する第2の情報を保持するプリントジョブ情報保持手段と、
前記プリント出力部情報保持手段に保持された前記プリントジョブ情報保持手段に保持された第2の情報を管理する管理手段と、
文字によりユーザに情報を伝える表示手段と、
前記第2の情報とを表示手段に表示させる表示制御手段と
を具備し、
前記管理手段は前記プリント出力部でプリントジョブを処理している際に、前記プリント出力部の現在の状態または前記プリントジョブに変更が生じた場合、前記変更に基づいて前記第2の情報を変更し、該変更した第2の情報を前記表示制御手段に通知する
ことを特徴とする印刷関係装置。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉本願発明が「プリンタ」であるのに対し、引用発明は「主コントローラ、出力装置及び表示装置からなる装置」である点。
〈相違点2〉本願発明が「複数の入力インターフェース」を有するのに対し、引用発明(の主コントローラ)は「入力インターフェース」を有するものの、それが複数とはいえない点。
〈相違点3〉本願発明が「プリント出力部の現在の状態に関する第1の情報を保持するプリント出力部情報保持手段」を具備し、表示制御手段により表示手段に表示され、「前記管理手段は前記プリント出力部でプリントジョブを処理している際に、前記プリント出力部の現在の状態または前記プリントジョブに変更が生じた場合」に変更されかつ表示制御手段に通知される対象として、第2の情報だけでなく第1の情報を含んでいるのに対し、引用発明が、第1の情報をそれらの対象に含んでいるかどうか明らかでない点。

4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
引用発明は「主コントローラ」、「出力装置」及び「表示装置」という3つのコンポーネントからなる装置であるが、複数のコンポーネントからなる装置とそれらコンポーネント機能を単体の装置に備えたものとを区別することは適当でない。例えば、プレーヤ,アンプ,記録デッキ及びスピーカを個別コンポーネントとして有し、これらを接続した装置も、プレーヤ,アンプ,記録デッキ及びスピーカ機能を1つのケース等に収めて単体としたものも、等しくステレオ装置と呼ばれている。そうである以上、相違点1は実質的相違点とはいえない。
仮に、本願発明が3つのコンポーネントからなる装置を排除し、単体としてのプリンタに限定されるとしても、多くの単体としてのプリンタは、「プリントジョブを入力する入力インターフェースと、該入力インターフェースを通じて入力されたプリントジョブを格納するプリントジョブ格納部と、該プリントジョブ格納部に格納されたプリントジョブの画像を用紙に出力するプリント出力部」、プリントジョブの画像を用紙に出力するためのビットマップ形成手段等及び表示手段を有しているから、引用発明の3つのコンポーネントを単体としてのプリンタに集結させることは設計事項にすぎない。そのことは、コンピュータと接続されるプリンタであって、表示手段及び制御手段を有し、さらに表示手段にはプリントジョブに関する情報を表示するものが、本願出願の相当以前に頒布された特開昭61-36835号公報に記載されていることからも明らかである。

(2)相違点2について
相違点2に係る本願発明の構成について、本願明細書には「入力インターフェースとしてのジョブ受付部15が設けられており、記録の対象となる印字データを複数系統で入力することができる。このジョブ受付部15は複数の入力インターフェースから構成され、図1では印字データをシリアルI/F15a、パラレルI/F15b、lpd15cの3系統で入力できる場合について示している。」(段落【0016】)と記載があり、要するに複数系統で入力できることに技術的意義がある。
ところで、引用発明においても複数系統で入力できる方が汎用性が増すことは明らかである。そして、上記記載中の「シリアルI/F15a」、「パラレルI/F15b」及び「lpd15c」はすべて周知の入力インターフェースであるから、これらの2以上を引用発明(の主コントローラ)に設けておくことは設計事項といわなければならない。念のため、複数の入力インターフェースを有するプリンタの周知例として、特開平6-238971号公報、特開平6-195183号公報、特開平6-106793号公報及び特開平5-282110号公報をあげておく.
すなわち、相違点2は設計事項程度の軽微な相違でしかない。

(3)相違点3について
引用例の第1図実施例では、「重大障害発生項目58,第1カセツト紙サイズ項目59,第1カセツト紙種項目60,第1カセツト枚数項目61,第nカセツト紙サイズ項目62,第nカセツト紙種項目63,第nカセツト枚数項目64,第1ソータビン蓄積枚数項目65,第nソータビン蓄積枚数項目66、上面スタツカ蓄積枚数項目67,大容量ビン蓄積枚数項目68,紙ジヤム箇所項目69,感光体ドラム寿命項目70,現像剤寿命項目71,トナー切れ項目72,ピツクアツプローラ寿命項目73,定着ユニツト寿命項目74,帯電器寿命項目75,転写ユニツト寿命項目76,サービスマンコール:光学ユニツト項目77,サービスマンコール:メインモータ項目78およびサービスマンコール:定着ユニツト項目79のデータ」が出力装置から主コントローラへ転送される(記載キ参照。)とされており、表示装置3-1〜3-Nに表示させるために主コントローラから入力装置2-1〜2-Nに転送するデータに「ジヨブ順番項目110,文書名項目111,出力者項目112,実行予定時間項目113,終了予定時刻項目114,出力枚数項目115,累積枚数項目116,紙サイズ項目117,紙種項目118,カラー指定項目119,両面印字指定項目120,ソータビンNo.出力指定項目121,上面スタツカ出力指定項目122,大容量ビン出力指定項目123,文字/グラフイツク項目124,優先度項目125,給紙容量不足項目126,排紙容量不足項目127およびジヤム箇所項目128のデータ」(記載ケ参照。)が含まれるのであって、これらデータのうち、「ジヤム箇所項目128のデータ」は、明らかに、ジヤム発生時に出力装置から主コントローラに転送されたデータであり、当然主コントローラに記憶されていると解するべきである(障害発生時に、出力装置から主コントローラにデータが転送される点については、記載タを参照。)。
そうすると、第1図実施例では、主コントローラには、本願発明の「第2の情報」に相当する情報だけでなく、「ジヤム箇所項目128のデータ」を含む出力装置(本願発明の「プリント出力部」に相当する。)の現在の状態に関する情報をも記憶(保持)しておく手段(本願発明の「前記プリント出力部の現在の状態に関する第1の情報を保持するプリント出力部情報保持手段」に相当する。)が存在し、同手段の記憶内容は出力装置の現在の状態に関する情報が変更が生じた場合に更新されると解さなければならない。
引用例には「シエアードプリンタシステムの使用者にとつて、出力装置4の状態を詳細に把握することも重要である。この為に、出力装置4から主コントローラ1へ第3図(b)に示すデータが転送される。」(記載タ)との記載がある。この記載は第1図実施例に関する記載ではあるが、それが第1図実施例には当てはまるが、第7図実施例(引用発明)には当てはまらないと解すべき理由はない。むしろ、第7図実施例(引用発明)においても、シエアードプリンタシステムの使用者が出力装置の状態を詳細に把握できれば好都合なことは自明であり、出力装置と主コントローラの関係だけを見ると、第1図及び第7図の対比からも、2つの実施例には格別の相違がなく、第1図実施例で採用されている出力装置と主コントローラの通信関係は、そのまま第7図実施例にも採用されており、煩雑さを避けるため第7図実施例においての記載を省略したと解するのが自然である。仮にそのように解することができないとしても、出力装置と主コントローラの通信関係において第1図実施例で採用されていることを、第7図実施例で採用することを躊躇させる理由はないから、設計事項というべきである。
そして、第1図実施例で採用されている上記構成を第7図実施例で採用するということは、相違点3に係る本願発明の構成を採用することにほかならない。
したがって、相違点3は実質的相違でないか、せいぜい設計事項にすぎない。

請求人は「引用文献において、「主コントローラ」が管理しているのは「出力装置自体」であり、本願発明において、「管理テーブル」が管理しているものは「プリンタの状態を示す情報およびプリントジョブに関する情報」であるので、この点において本願発明は、引用文献のものと明らかに相違する。」(審判請求書5頁5〜9行)と主張するが、引用例記載の2つの実施例の「主コントローラ」は出力装置自体だけでなく表示装置をも管理しており、そのために第1図実施例では「プリンタの状態を示す情報およびプリントジョブに関する情報」を管理していることは明らかである。したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(4)本願発明の進歩性の判断
相違点1〜3は、いずれも実質的相違でないか、設計事項程度の相違であり、これら相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができないから、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-21 
結審通知日 2005-02-22 
審決日 2005-03-09 
出願番号 特願平6-283576
審決分類 P 1 8・ 574- Z (B41J)
P 1 8・ 572- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 湯本 照基上田 正樹  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤井 靖子
小沢 和英
発明の名称 プリンタ  
代理人 木村 高久  

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