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審決分類 審判 全部無効 1項1号公知 無効としない B24B
審判 全部無効 1項2号公然実施 無効としない B24B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない B24B
管理番号 1115682
審判番号 無効2004-35064  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-05-14 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-02-04 
確定日 2005-02-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第3212813号発明「内面研削盤及びその研削方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯・本件発明
本件の特許第3212813号の請求項1乃至3に係る発明(以下「本件発明1」等という。)についての出願は、平成6年10月24日の特許出願であって、同13年7月19日に特許権の設定の登録がなされたものである。
本件発明1乃至3は、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 ワークに形成されたストレート孔の内周面と、該ストレート孔に対して所定の位置精度で形成された略円錐状のシート面とを研削する内面研削盤において、
前記ストレート孔の内周面を研削する円筒面と前記シート面を研削する円錐面とを有する研削砥石を前記ストレート孔の軸芯方向に往復移動させる直行テーブルと、
前記研削砥石を前記シート面の傾斜方向に移動させる斜行テーブルとを備え、
前記直行テーブルの駆動により研削砥石の円筒面でストレート孔を研削する場合には、前記斜行テーブルにより切込送りを与える一方、前記斜行テーブルにより研削砥石の円錐面でシート面を研削する場合には、前記直行テーブルにより切込送りを与えることを特徴とする内面研削盤。
【請求項2】 前記斜行テーブルは、研削砥石を、その円錐面が前記シート面の傾斜方向に合致するように回動可能であることを特徴とする請求項1に記載の内面研削盤。
【請求項3】 ワークに形成されたストレート孔の内周面と、該ストレート孔に対して所定の位置精度で形成された略円錐状のシート面とを研削する内面研削方法において、
前記ストレート孔の内周面を研削する円筒面と前記シート面を研削する円錐面とを有する研削砥石をシート面の傾斜方向に移動させて切込み送りを与えながらストレート孔の軸芯方向に往復移動させることにより、ストレート孔の内周面を研削する第1研削工程と、
前記研削砥石をストレート孔の軸芯方向に移動させて切込み送りを与えながらシート面の傾斜方向に往復移動させることにより、シート面を研削する第2研削工程と、
からなることを特徴とする内面研削方法。」

第2 請求人の主張の概要
これに対して、請求人は、証拠方法として、甲第1号証:応用機械工学,株式会社大河出版,平成4年11月1日,第33巻,第11号,p.143、甲第2号証:機械と工具,株式会社工業調査会,平成3年8月1日,第35巻,第8号,セイコー精機株式会社の広告頁(資料請求番号0051)、甲第3号証:セイコー精機株式会社のSIG-SCのカタログ、甲第4号証:セイコー精機株式会社のCNC同時2軸内面研削盤SIG-22SCのカタログ、甲第5号証:セイコー精機株式会社のCNC同時2軸内面研削盤SIG-22Sのカタログ、甲第6号証:第16回日本国際工作機械見本市(社)日本工作機械工業会会員出品機械,社団法人日本工作機械工業会,平成4年10月,p.42、甲第7号証:小林昭監修,「超精密生産技術大系 第2巻 実用技術」,株式会社フジ・テクノシステム,平成6年8月23日,p.308,309、甲第8号証:セイコー精機株式会社工作部中村幸正,“内面研削盤SIG-SCの研削例”、甲第9号証:証明書及び甲第10号証:証明書を提出する。
そして、セイコー精機株式会社のCNC全自動内面研削盤SIG-SCは、甲第1、2及び6号証により、本件の特許出願前に知られており、そのCNC全自動内面研削盤SIG-SCの具体的内容は、甲第3号証に記載されており、本件発明1乃至3と同一であるので、本件発明1乃至3は本件の特許出願前に公然知られた発明であり、本件の請求項1乃至3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、無効とすべきものである旨主張している。

第3 甲各号証記載事項
1 甲第1号証
CNC全自動内面研削盤SIG-SCの特徴の項に、
「量産型ノズル加工において,その実績を高く評価されているSIG-22SCシリーズの1つであり,シート面のオシレーション研削により,高精度,高能率加工を可能にしたCNC研削盤である.・・・アッパテーブルの角度調整により,シート面だけではなく,内径,端面の研削にも対応できるフレキシビリティを兼ね備えている.」と記載されている。
2 甲第2号証
「CNC全自動内面研削盤SIG-SC
本機はテーブルの取付角度を変えることによりボア、シート、フェイス等様々の研削加工に対応できるフレキシビリティーに富んだ内面研削盤であります。
従来より定評のある高精度に加え高いフレキシビリティーを持った機械であり、より広いユーザーニーズに対応できます。」と記載されている。
3 甲第3号証
「全自動内面研削盤SIG-SCは、世界における高精度内面研削加工のリーディングカンパニーを目指して開発したマシンです。
特徴
・主軸・砥石軸の回転精度を限りなく向上させ、高速回転によって高い加工精度が得られます。
・シンプルな構造で、優れた動剛性を有するマシンです。
・テーブルの取付角度を変えることにより、ボア・シートまたはフェイスの加工ができます。
・永年のノズル加工で培った長穴研削、シート研削のノウハウを随所に盛り込んでおります。」と記載されている。
また、Xテーブル及びZテーブルの最大移動量、最小設定単位、速度範囲、駆動についての仕様、機械重量が2,500kgであること、従業機械レイアウト及び研削レイアウトが記載されている。
4 甲第6号証
出品会社名、製品名、形式、機械質量(kg)の欄にそれぞれ「セイコー精機(株)」、「CNC全自動内面研削盤」、「SIG-SC」、「3,000」と記載されている。
5 甲第7号証
第308頁2.1本体構造の項に、
「図5には,工作物主軸1軸砥石軸2軸,工作物主軸1軸砥石軸3軸の構成をもつ内面研削盤の例を示してある。これらの例では,移動量が少ない低速の切込み運動を,重量が大きな工作物主軸台で行わせ,移動量が大きい高速な砥石軸に平行な進退運動や研削中のトラバース運動を,比較的軽量な砥石軸台側で行わせようとする基本的な考えがある。そこに工作物の特殊形状に対応した砥石軸側の運動が付加されており,複数の工程がシリース(時間的に直列に)研削される。これに対比して同図に示す工作物主軸を2基と砥石軸2〜3軸を備える構成は,異なる工程を同時に研削する能率の高い装置である。」と記載されている。
また、図5(a)に工作物主軸1軸砥石軸2軸の内面研削盤が記載されている。

第4 判断
前記第2のとおり、請求人の主張する無効理由は、本件発明1乃至3は本件の特許出願前に公然知られた発明であり、本件の請求項1乃至3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、無効とすべきものということであるので、本件発明1乃至3は本件の特許出願前に公然知られた発明であるか否かについて、以下検討する。
甲第1及び6号証より、CNC全自動内面研削盤SIG-SCは第16回日本国際工作機械見本市に展示されたものと解されるが、どのような状態でCNC全自動内面研削盤SIG-SCが展示されたのかは甲第1乃至10号証をみても明らかにされておらず、仮に、展示されたCNC全自動内面研削盤SIG-SCが本件発明1乃至3の構成要件の全てを具備しているとしても、展示されたCNC全自動内面研削盤SIG-SCを見た来訪者が、CNC全自動内面研削盤SIG-SCが本件発明1乃至3の構成要件を全て具備していることを知り得たと判断するに足る立証がされていない。
したがって、CNC全自動内面研削盤SIG-SCが第16回日本国際工作機械見本市に展示されたということからのみで、本件発明1乃至3は本件の特許出願前に公然知られた発明であるとすることはできない。
また、甲第3号証は、CNC全自動内面研削盤SIG-SCのカタログであるが、その機械重量は、前記第3の3のとおり、2,500kgであるのに対して、第16回日本国際工作機械見本市に展示されたCNC全自動内面研削盤SIG-SCの機械質量は、前記第3の4のとおり、3,000kgであって、食い違いがみられるので、甲第3号証が上記展示されたCNC全自動内面研削盤SIG-SCのカタログであることについては、疑わしいところ、このことについては何ら立証がされていない。
そして、仮に、甲第3号証が上記展示されたCNC全自動内面研削盤SIG-SCのカタログであるとしても、甲第3号証を、例えば、第16回日本国際工作機械見本市において来訪者に配布する等により、本件の特許出願前に不特定の者に配布したことについては、何ら立証がされていないので、甲第3号証は本件の特許出願前に頒布されたものであるのとすることはできない。
したがって、甲第3号証が上記展示されたCNC全自動内面研削盤SIG-SCのカタログであり、本件発明1乃至3の構成要件の全てを具備しているものであるとしても、上記のとおり甲第3号証が本件の特許出願前に頒布されたとすることができない以上、本件発明1乃至3は本件の特許出願前に公然知られた発明であるとすることはできない。
なお、口頭審理において、請求人は、甲第3号証に記載の全自動内面研削盤SIG-SCは、そのXテーブル及びZテーブルは移動し、主軸台は移動しないものであるので、本件発明1乃至3と同一のものである旨主張しているが、甲第3号証記載事項からは、主軸台が移動しないものであるのか明らかでなく、前記第3の5のとおり、「移動量が少ない低速の切込み運動を,重量が大きな工作物主軸台で行わせ,移動量が大きい高速な砥石軸に平行な進退運動や研削中のトラバース運動を,比較的軽量な砥石軸台側で行わせようとする基本的な考えがある。」と主軸台が移動することの例が甲第7号証に記載されていることから、甲第3号証に記載の全自動内面研削盤SIG-SCの主軸台は移動しないもの、すなわち主軸台は固定されているものと必ず解さなければならないことはない。また、甲第3号証に記載の全自動内面研削盤SIG-SCは、そのXテーブル及びZテーブルが移動するものであり、仮に、上記請求人の主張のとおり主軸台が固定のものであって、本件発明1乃至3の構成要件を全て具備しているとしても、上記のとおり甲第3号証が本件の特許出願前に頒布されたとすることができない以上、上記請求人の主張を採用し、本件発明1乃至3は本件の特許出願前に公然知られた発明であるとすることはできない。
同じくカタログである甲第4及び5号証についても、甲第3号証と同様であって、本件発明1乃至3は本件の特許出願前に公然知られた発明であるとすることはできない。
また、甲各号証のうち、甲第8号証については、本件の特許出願前に頒布されたものであるか不明であるので、甲第8号証より、本件発明1乃至3は本件の特許出願前に公然知られた発明であるとすることはできず、また、本件の特許出願前に頒布されたことが明らかである甲第1、2、6及び7号証について、記載された事項を検討してみても、本件発明1乃至3の構成要件の全てが記載されていない。
以上のとおりであるので、甲各号証より、本件発明1乃至3は本件の特許出願前に公然知られた発明であるとすることはできない。

なお、以上のとおり、本件発明1乃至3が本件の特許出願前に公然知られた発明であるか否かについて検討したが、公然実施をされた発明であるか否か、頒布された刊行物に記載された発明であるか否かについても、以下検討する。
先ず、甲各号証より、本件発明1乃至3が本件の特許出願前に公然実施をされた発明であるというには、第16回日本国際工作機械見本市に展示されたCNC全自動内面研削盤SIG-SCが本件発明1乃至3の構成要件の全てを具備しているものであり、そして、展示されたCNC全自動内面研削盤SIG-SCが本件発明1乃至3の構成要件の全てを具備していることを、来訪者が知ることができるような状況で展示がされたものでなければならない。
そこで、どのような状況で展示されたかについて甲各号証記載事項を検討すると、SIG-SC全自動内面研削盤が第16回日本国際工作機械見本市に展示されたことを証明しようとする甲第9号証及びCNC全自動内面研削盤SIG-SCが第16回日本国際工作機械見本市に展示されたことを証明しようとする甲第10号証をみても、どのような状況で展示されたかを証明するものではない。
展示されたCNC全自動内面研削盤SIG-SCが、仮に、本件発明1乃至3の構成要件の全てを具備しているものとしても、例えば、外部から見える状態での研削実演が行われ、研削動作説明が行われる等の本件発明1乃至3の構成要件の全てを来訪者が知ることができるような状況で展示されていなければ、公然実施をされた発明であるといえないところ、このような状況で展示されたということについては、何ら立証がされていない。
したがって、甲各号証より、本件発明1乃至3は本件の特許出願前に公然実施をされた発明であるとすることはできない。
次に、本件発明1乃至3が本件の特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明であるか否かについて、甲各号証をみると、上記のとおり、甲各号証のうち、本件の特許出願前に頒布されたことが明らかであるのは、甲第1、2、6及び7号証であり、そして、甲第1、2、6及び7号証のいずれにも本件発明1乃至3の構成要件の全てが記載されているとすることはできない。
したがって、甲各号証より、本件発明1乃至3は本件の特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明であるとすることもできない。

第5 むすび
以上のとおり、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件の請求項1乃至3に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-07 
結審通知日 2004-12-08 
審決日 2004-12-22 
出願番号 特願平6-257996
審決分類 P 1 112・ 111- Y (B24B)
P 1 112・ 112- Y (B24B)
P 1 112・ 113- Y (B24B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 耕作  
特許庁審判長 宮崎 侑久
特許庁審判官 岡野 卓也
上原 徹
登録日 2001-07-19 
登録番号 特許第3212813号(P3212813)
発明の名称 内面研削盤及びその研削方法  
代理人 青山 葆  
代理人 加野 博  
代理人 古川 泰通  
代理人 前田 厚司  

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