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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない E04F
管理番号 1115688
審判番号 訂正2004-39094  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-05-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-05-14 
確定日 2005-04-18 
事件の表示 特許第2961502号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
平成 6年11月 7日 出願(特願平6-272534号)
平成11年 8月 6日 設定登録(特許第2961502号)
平成15年 6月 3日 サンウェーブ工業株式会社より本件請求項2に係る発明について無効審判請求(2003-35233号)
平成15年 8月25日 特許権者より訂正請求
平成15年11月27日 弁駁
平成16年 1月 9日 審決(訂正を認め請求項2に係る発明についての特許を無効とする旨)
平成16年 2月17日 上記審決に対する訴え(東京高等裁判所平成16年(行ケ)第62号)
平成16年 5月14日 本件訂正審判請求
平成16年 6月21日 訂正拒絶理由通知
平成16年 8月19日 意見書

2.訂正事項
本件訂正審判において、請求人は特許請求の範囲の請求項2について、特許請求の範囲の減縮を目的として次のように訂正することを求めている。
「【請求項2】基板の表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片と掛支片が突設された断面ほぼS字形のもので、挟持片は基板とほぼ同寸であり、掛支片は該挟持片より短く形成され、点検口の周端縁を挟持片と基板との間に差し込み挟持した状態で、蓋の端縁を掛支片と基板との間に差し込み掛支することができるようになされたものであることを特徴とする点検口の蓋の取付方法に使用される取付具。」を、
「【請求項2】点検口を閉じる蓋を取外し可能に取り付ける取付具であって、基板の表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片と掛支片が突設された断面ほぼS字形のもので、
基板と挟持片との間で点検口の周端縁を挟持するように、この取付具を点検口の上下に取り付け、蓋の下端縁を下方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付具を下方に押し下げることにより、蓋の上端縁を上方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、点検口の周端縁を挟持した状態で蓋の上下端縁を上下の掛支片で掛支し、蓋を点検口の前面に保持することができるよう、挟持片は基板とほぼ同寸に、掛支片は該挟持片よりも短く形成されていることを特徴とする点検口の蓋の取付方法に使用される取付具。」
と訂正する。
(以下、訂正後の請求項2に係る発明を「本件訂正発明」という。)

3.いわゆる独立特許要件について
3-1 本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された事項
(1)刊行物1:Eaton Corporation (Engineered Fasteners Division 所在地:Cleveland, Ohio 44101) 発行の製品カタログ、「General Parts Catalog Tinnerman」中の「Self-Sufficient One-Piece Tinnerman Brand Fasteners」表紙、中表紙、36頁、37頁、中裏表紙、裏表紙(Copyright Eaton Corporation 1985)
(上記した無効審判2003-35233号事件で請求人が提出した甲第1号証参照のこと)
刊行物1には、「Copyright Eaton Corporation 1985」と記載されているから、1985年に発行され、本件出願前に米国において頒布されたと認められる。そして、その36頁左上上段にはSクリップの図と、SクリップがパネルP、P1に取り付けられた状態の図が記載されており、当該Sクリップは留め具(fastener)であり、その各片の間でパネルを弾性的に挟持することは明らかであるから、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「パネルを取外し可能に取り付けるクリップであって、クリップは、基板の表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する長い挟持片と短い挟持片が突設された断面ほぼS字形のもので、長い挟持片は基板とほぼ同寸であり、短い挟持片は該長い挟持片より短く形成され、一方のパネル端縁を長い挟持片と基板との間に差し込んで挟持し、他方のパネル端縁を短い挟持片と基板との間に差し込んで挟持することができるようになされた、パネルの取り付けに使用されるクリップ。」
(2)刊行物2:サンウエーブ工業株式会社発行の商品マニュアル、「販売店様用 Sunwave System Kitchen & Dining SUNVARIE サンヴァリエ 商品マニュアル 昭和60年7月現在改訂版」表紙、18頁、裏表紙
(同じく甲第3号証参照のこと)
刊行物2は、昭和60年7月に改訂されたサンウェーブの販売店用の商品マニュアルであって、本件出願前に頒布された刊行物と認められ、その18頁右下図の記載から、刊行物2には、点検口の蓋(点検口板)を取り付けるために、基板の表面側と裏面側にそれぞれL字状の片が突設されたエッジが使用されることが記載されていると認められる。
なお、一般に商品マニュアルは、多数の販売店に公開することを目的として作成されるものであり、販売店に対し守秘義務を負わせるものではなく、他の者も見得る状態にあったものと認められるから、刊行物2は、本件出願前に頒布された刊行物といえる。

3-2 対比、判断
本件訂正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「長い挟持片」、「短い挟持片」及び「クリップ」は、それぞれ本件訂正発明の「挟持片」、「掛支片」及び「取付具」に相当し、本件訂正発明の点検口はパネルに開口を設けたものであって、「蓋」は板体つまりパネルで形成されているから、両発明は、
「パネルを取外し可能に取り付ける取付具であって、基板の表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片と掛支片が突設された断面ほぼS字形のもので、
挟持片は基板とほぼ同寸に、掛支片は該挟持片よりも短く形成されているパネルの取付に使用される取付具。」
で一致し、次の点で相違する。
相違点:本件訂正発明の取付具は、点検口を閉じる蓋を取外し可能に取り付ける取付具であって、この取付具の基板と挟持片との間で点検口の周端縁を挟持するように、この取付具を点検口の上下に取り付け、蓋の下端縁を下方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付具を下方に押し下げることにより、蓋の上端縁を上方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、点検口の周端縁を挟持した状態で蓋の上下端縁を上下の掛支片で掛支し、蓋を点検口の前面に保持することができるようにした点検口の蓋の取付方法に使用されるのに対し、刊行物1記載のクリップは、点検口の蓋の取付方法に使用される旨の記載はない点。

上記相違点に関し検討する。
本件訂正発明は、取付方法の発明ではなく、物の発明であることは、上記特許請求の範囲の記載から明らかであるから、本件訂正発明の上記特許請求の範囲の記載には、物に係る発明でありながら、その中に当該物に関する使用方法に係る要件(以下、「使用方法要件」という。)を包含しているものである。
そして、本件訂正発明が物の発明である以上、本件訂正発明の特許要件を考えるに当たって、使用方法要件についても、果たしてそれが本件訂正発明の対象である物の構成を特定する要件としてどのような意味を有するかを検討する必要はあるものの、物の使用方法自体としての特許性を検討する必要はない。
そこで、本件訂正発明の使用方法要件が物の構成をどのように特定しているかを検討すると、取付具の構成としては、基板の表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片と掛支片が突設された断面ほぼS字形のもので、挟持片は基板とほぼ同寸であり、掛支片は該挟持片より短く形成されたものであれば足り、上記使用方法要件は、本件訂正発明の対象である取付具の構造ないし性質、性状その他構成自体を特定する要件としての特段の意味を有するものであると解することはできない。
したがって、上記した使用方法要件は、本件訂正発明の対象である取付具の構成を特定する要件ではないといえ、発明の構成は、物の客観的な構成を記載した部分によって特定されるものである。
そのように考えると、本件訂正発明における取付具自体の構成は、基板の表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片と掛支片が突設された断面ほぼS字形のもので、挟持片は基板とほぼ同寸に、掛支片は該挟持片よりも短く形成されている構成であって、当該構成は刊行物1に記載されており、また、基板の表面側と裏面側にそれぞれL字状の片が突設されたエッジ(本件訂正発明の「取付具」に相当する。)が点検口の蓋の取り付けに使用されることは、刊行物2に記載されているから、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を適用することにより、本件訂正発明に係る構成とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。
そして、本件訂正発明の構成によってもたらされる効果も刊行物1及び同2記載の発明から当業者が容易に予測しうる程度のものである。

3-3 意見書に対して
請求人は、平成16年8月19日付け意見書12頁において、「刊行物1に記載されたクリップは、点検口の蓋の取付方法に使用される取付具にかかる記載または示唆する記載がなく、特殊な場所および特殊な状態における作業の場合に、明らかに異なる取付方法となる刊行物2の取付け方法を適用しても、本件特許発明と目的、構成、効果の点で明らかな相違がある。したがって、本件特許発明は、前記刊行物1および刊行物2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができるものではない。」と主張する。
しかしながら、刊行物1記載のクリップは、対象を限定されないクリップであるから、どのような物にも適用されることは明らかであり、点検口の蓋の取付けに適用できないものではない。そして、刊行物2には、上記したように、点検口の蓋(点検口板)を取り付けるために、基板の表面側と裏面側にそれぞれL字状の片が突設されたエッジが使用されることが記載されており、このエッジを用いることによって、請求人主張の「特殊な場所および特殊な状態における作業」にも対応できるようになっているといえるから、請求人の主張は採用できない。

3-4 まとめ
以上のように、本件訂正発明は、刊行物1及び同2記載の発明から当業者が容易に発明できたものであって、特許法第29条第2項の規定に該当し、その出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-21 
結審通知日 2005-02-23 
審決日 2005-03-08 
出願番号 特願平6-272534
審決分類 P 1 41・ 121- Z (E04F)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 木原 裕
▲高▼橋 祐介
登録日 1999-08-06 
登録番号 特許第2961502号(P2961502)
発明の名称 点検口の蓋の取付方法とその方法に使用される取付具  
代理人 福田 武通  
代理人 福田 賢三  
代理人 加藤 恭介  
代理人 福田 伸一  
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