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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1115716
審判番号 審判1999-10111  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-12-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-06-22 
確定日 2005-05-09 
事件の表示 平成10年特許願第144181号「CDMAシステムのハンドオフ方法」拒絶査定に対する審判事件[平成10年12月18日出願公開、特開平10-336723]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年5月26日(パリ条約による優先権主張1997年5月29日、大韓民国)に出願したものであって、平成11年3月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成11年6月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成11年7月22日付けで手続補正がなされたものである。
2.平成11年7月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
請求人は、平成11年7月22日付けで手続補正書(以下、本件手続補正書という。)を提出し、特許請求の範囲を次のとおりに補正している。
「【請求項1】許容可能な最大個数の活性化状態にあるBTSからパイロット信号を受ける移動局をもったCDMAシステムのハンドオフ方法において、
パイロット信号が所定値より大きくかつ活性化されてないBTSのパイロット信号が、活性化状態にあるBTSの中でパイロット信号が最も弱いBTSのパイロット信号の強さに特定値を加えた値より大きければ、該パイロット信号が最も弱いBTSをドロップする段階と、前記活性化されてないBTSとドロップしたBTSからパイロット信号が最も大きいBTSを活性化する段階と、を行うことを特徴とするハンドオフ方法。
【請求項2】活性化されてないBTSとドロップしたBTSは最大6である請求項1記載のハンドオフ方法。
【請求項3】活性化するBTSは最大3である請求項1又は請求項2に記載のハンドオフ方法。
【請求項4】BSCから移動局にパイロット測定要求指示メッセージを送信する段階をさらに備える請求項1〜3のいずれか1項に記載のハンドオフ方法。
【請求項5】移動局からBSCにパイロットの強さ測定メッセージを送信する段階をさらに備える請求項1〜4のいずれか1項に記載のハンドオフ方法。
【請求項6】移動局がBTSのパイロット信号の強さを報告する請求項1〜5のいずれか1項に記載のハンドオフ方法。」
上記補正は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1(以下、補正前の請求項1という。)に「CDMAシステムのハンドオフ方法」とあるのを、「許容可能な最大個数の活性化状態にあるBTSからパイロット信号を受ける移動局をもったCDMAシステムのハンドオフ方法」とするものであるところ、補正前の請求項1のように、単に、CDMAのハンドオフ方法とした場合には、活性化状態にあるBTSがいくつあるかは任意ということになるが、上記補正は、この点に関し、活性化状態にあるBTSが許容可能な最大個数であると限定するものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号の規定を満たしている。
次に、この補正が、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定を満たすかどうかについて検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-172390号公報(以下、刊行物1という。)には、CDMAシステムのハンドオフ方法に関する発明が記載されており、「【0009】【実施例】図1は、本発明の移動無線通信方式の実施例を説明する図である。図において、1-1〜1-5は基地局であり、それぞれ無線ゾーンA,B,C,D,Eを形成する。2は各無線ゾーンを移動する移動局である。3は各基地局と図外のネットワークとを接続する制御局である。」、「【0010】本実施例は、移動局が移動しながら2つの基地局の一方を順次切り替える場合について説明する。地点〈1〉では、移動局2は基地局1-1,1-2と通信する。すなわち、移動局2から送信された信号は基地局1-1,1-2に受信され、制御局3でダイバーシチ合成される。また、基地局1-1,1-2から送信された信号は移動局2に受信されてダイバーシチ合成される。」(なお、数字に○で囲ったものが使えないので、〈数字〉で代用している。以下の段落においても同様である。)、「【0013】 ここで、基地局の切り替え方法について説明する。〈1〉移動局が定期的に通信していない他の基地局からの受信電力を測定し、通信している各基地局からの受信電力の最小値よりも大きくなったときにその基地局に切り替える。」、「【0014】〈3〉移動局と通信していない基地局における受信電力を測定し、通信している各基地局における受信電力の最小値よりも大きくなったときにその基地局に切り替える。」、「【0015】制御局3では、各基地局で受信された信号について、受信レベルが最大となる基地局を選択する選択合成法、各基地局からの信号の位相を合わせて合成する等利得合成法、合成後の信号電力対雑音電力が最大となるように合成する最大比合成法のいずれかを用いることにより、容易にダイバーシチ効果を得ることができる。」「【0017】また、請求項3に示すように、各基地局からCDMA方式でそれぞれ同一周波数帯で同時に送信する構成では、移動局2のRAKE受信機で受信してダイバーシチ合成する。」と説明されている。
補正後の請求項1に係る発明(以下、本件補正発明という。)と上記刊行物1記載の発明とを対比すると
(i)上記刊行物1記載の発明は、移動局が複数個の基地局と通信を行っている状態において、移動局がハンドオフ前と同じ数の基地局との通信を維持するよう、新たな基地局との通信の開始と、それに伴い、通信を行っていた基地局のいずれかとの通信をやめるとしたCDMAシステムのハンドオフ方法に関するものであり、本件補正発明が、許容可能な最大個数の活性化状態にあるBTSから(パイロット)信号を受ける移動局をもったCDMAシステムのハンドオフ方法であるとする点と一致する。
ただし、上記刊行物1には、パイロット信号についての記載がないので、前記括弧内の点は、本件補正発明と上記刊行物1記載の発明との相違点である。
(ii)上記刊行物1記載の発明において、移動局は、通信していない基地局からの受信電力を測定し、その受信電力が通信している各基地局からの受信電力の最小値よりも大きくなったときには、通信している基地局の内で最小の受信電力で通信している基地局との通信をやめ、その一方で、前記通信していた基地局に代えて、通信している各基地局からの受信電力の最小値よりも大きい受信電力の通信していない基地局との通信を開始するとしており、基地局との通信をやめるということは、その基地局をドロップするということであり、前記通信していない基地局と通信をするということは、その通信していない基地局が選ばれてその通信していない基地局が活性化されるということである。
してみれば、本件補正発明が、パイロット信号が所定値より大きくかつ活性化されてないBTSのパイロット信号が、活性化状態にあるBTSの中で信号が最も弱いBTSの信号の強さに特定値を加えた値より大きければ、該パイロット信号が最も弱いBTSをドロップする段階と、前記活性化されてないBTSとドロップしたBTSからパイロット信号が最も大きいBTSを活性化する段階とを行う、とする点に関し、上記刊行物1記載の発明と本件補正発明とは、次の点で相違し、その余では一致する。
本件補正発明が、(a)パイロット信号により各段階を扱っており、また、(b)活性化状態にあるBTSの中で信号が最も弱いBTSの信号の強さに特定値を加えた値と活性化されていないBTSからの信号とを対比しており、さらに、(c)活性化されていないBTSからの信号と活性化状態にあるBTSからの信号との比較を各段階において行なう、としているのに対し、上記刊行物1には、そのことについての記載がない点
そこで、上記(i),(ii)で述べた相違点について検討すると、ハンドオフ制御のためにパイロット信号を用いるとすることは、本件出願前普通に知られていること(必要ならば、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-74378号公報を参照されたい。)であり、また、ハンドオフ制御に際し、受信信号レベルに特定値を加えた値と活性化されていない基地局からの受信信号レベルとを対比するとすることは、本件出願前普通に知られたこと(必要ならば、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-164477号公報を参照されたい。)である。
さらに、活性化されていないBTSからの信号と活性化状態にあるBTSからの信号との比較は、1度すれば十分であり、それを再度行なうとするか否かは当業者が適宜なすことにすぎない。
以上のとおりであるから、本件補正発明は、上記周知技術を上記刊行物1記載の発明に適用して当業者が容易になし得たものであって、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものである。
よって、本件手続補正書による補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下する。
3.本件発明
本件手続補正書による手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至13に係るそれぞれの発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至13に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりである。
「CDMAシステムのハンドオフ方法において、
パイロット信号が所定値より大きくかつ活性化されてないBTSのパイロット信号が、活性化状態にあるBTSの中でパイロット信号が最も弱いBTSのパイロット信号の強さに特定値を加えた値より大きければ、該パイロット信号が最も弱いBTSをドロップする段階と、前記活性化されてないBTSとドロップしたBTSからパイロット信号が最も大きいBTSを活性化する段階と、を行うことを特徴とするハンドオフ方法。」
4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開平8-172390公報。)、及び、その記載事項は、前記2.の中で記載したとおりである。
5.対比、判断
本件発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、
(i)本件発明も上記刊行物1記載の発明も、CDMAシステムのハンドオフ方法に関するものであり、この点で両者は一致する。
(ii)上記刊行物1記載の発明において、移動局は、通信していない基地局からの受信電力を測定し、その受信電力が通信している各基地局からの受信電力の最小値よりも大きくなったときには、通信している基地局の内で最小の受信電力で通信している基地局との通信をやめ、その一方で、前記通信していた基地局に代えて、通信している各基地局からの受信電力の最小値よりも大きい受信電力の通信していない基地局との通信を開始するとしており、基地局との通信をやめるということは、その基地局をドロップするということであり、前記通信していない基地局と通信をするということは、その通信していない基地局が選ばれてその通信していない基地局が活性化されるということである。
してみれば、本件発明が、パイロット信号が所定値より大きくかつ活性化されてないBTSのパイロット信号が、活性化状態にあるBTSの中で信号が最も弱いBTSの信号の強さに特定値を加えた値より大きければ、該パイロット信号が最も弱いBTSをドロップする段階と、前記活性化されてないBTSとドロップしたBTSからパイロット信号が最も大きいBTSを活性化する段階とを行う、とする点に関し、上記刊行物1記載の発明と本件発明とは、次の点で相違し、その余では一致する。
本件発明が、(a)パイロット信号により各段階を扱っており、また、(b)活性化状態にあるBTSの中で信号が最も弱いBTSの信号の強さに特定値を加えた値と活性化されていないBTSからの信号とを対比しており、さらに、(c)活性化されていないBTSからの信号と活性化状態にあるBTSからの信号との比較を各段階において行なう、としているのに対し、上記刊行物1には、そのことについての記載がない点
そこで、上記(ii)で述べた相違点について検討すると、ハンドオフ制御のためにパイロット信号を用いるとすることは、本件出願前普通に知られていること(必要ならば、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-74378号公報を参照されたい。)であり、また、ハンドオフ制御に際し、受信信号レベルに特定値を加えた値と活性化されていない基地局からの受信信号レベルとを対比するとすることは、本件出願前普通に知られたこと(必要ならば、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-164477号公報を参照されたい。)である。
さらに、活性化されていないBTSからの信号と活性化状態にあるBTSからの信号との比較は、1度すれば十分であり、それを再度行なうとするか否かは当業者が適宜なすことにすぎない。
したがって、本件発明は、上記周知技術を上記刊行物1記載の発明に適用して当業者が容易になし得たものである。
6.まとめ
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-01-07 
結審通知日 2003-01-17 
審決日 2003-01-29 
出願番号 特願平10-144181
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 川名 幹夫
特許庁審判官 新井 則和
大橋 隆夫
発明の名称 CDMAシステムのハンドオフ方法  
代理人 竹内 裕  

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