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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1115728 |
審判番号 | 不服2004-985 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-01-15 |
確定日 | 2005-04-25 |
事件の表示 | 平成10年特許願第320065号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月27日出願公開、特開平11-197329〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成2年5月11日に出願した特許出願(特願平2-1210907号)の一部を、平成8年4月22日に新たな特許出願(特願平8-126436号)とし、さらに該特許出願の一部を新たな特許出願としたものであって、平成15年12月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年2月16日付けで手続補正がなされたところ、当審において、平成16年12月9日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、平成17年2月14日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年2月14日付け手続補正書で全文補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 【請求項1】 パチンコ球の発射球情報と入賞球情報等を受けて遊技者の持球数を演算する演算手段と、 該演算手段の演算結果を記録する磁気カード或はICカード等の情報記録媒体を処理する媒体処理関連装置を有するパチンコ機において、 外枠の縦の枠部材の内側に片持ち梁状の支台を取り付け、その支台に前記媒体処理関連装置を固定し、前枠には該媒体処理関連装置の前面の全部または一部に対応させて開口を設け、さらに前記開口を媒体処理関連装置の突出部分より大きく形成すると共に開口と媒体処理関連装置の隙間に針金等の不正挿入を防止するシールド部を設けたことを特徴とするパチンコ機。 2.当審の拒絶理由 一方、当審において平成16年12月9日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である下記の刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 刊行物1:特開平1-293893号公報 刊行物2:実願昭60-43676号(実開昭61-159974号)のマイクロフィルム 刊行物3:特開昭60-171058号公報 3.刊行物に記載された発明 (1)刊行物1 刊行物1〔特開平1-293893号公報〕には、 (1-1) 第2頁左上欄第11-15行に、 「本発明は、パチンコ遊技機,アレンジボール,雀球,スロットマシーンあるいはおもちゃ等で代表される遊技機に関し、詳しくは、遊技結果の精算を行なうための精算操作手段を備えた遊技機に関する。」と、 (1-2) 第2頁左上欄第17行-同頁右上欄第6行に、 「この種の遊技機において従来から一般的に知られているものに、たとえば、記録媒体またはコインあるいはそれらの両方で遊技可能な遊技機があり、精算操作手段が遊技者の操作可能な場所に設けられ、遊技者がその精算操作手段を操作することにより現在までに獲得した得点を精算し、その精算結果を記録した記録媒体を排出するように構成されていた。そして、その排出された記録媒体に記録されている精算結果に基づいて遊技者が景品交換できるように構成されていた。」と、 (1-3) 第3頁右下欄第20行-第4頁左上欄第4行に、 「第1図は、本発明に係る遊技機の一例であるパチンコ遊技機10を示す全体正面図である。 パチンコ遊技機10の前面枠12には、遊技盤40が配設され、その遊技盤40によって遊技領域42が形成されている。」と、 (1-4) 第4頁左下欄第19行-同頁右下欄第14行に、 「パチンコ遊技機10の下方に設けられている前面装飾板20には、その左隅に記録媒体挿入口の一例であるカード挿入・排出口26が形成されており、記録媒体の一例である磁気カード102(第4図参照)が挿入・排出可能に構成されている。この磁気カード102には、後述するように、遊技者の持玉数が特定できる持玉数特定情報が記録されており、その持玉数特定情報から直接あるいは間接的に導き出される(本実施例では直接導き出される)持玉数データに対応する数だけのパチンコ玉によりパチンコ遊技が可能となる。さらに、前面枠12の左下方部分には、遊技結果を精算させるための操作部材の一例の精算ボタン28および遊技を中断させるための遊技中断操作手段の一例である遊技中断ボタン29を含む操作スイッチ機構27が設けられている。」と、 (1-5) 第5頁左下欄第6-7行に、 「パチンコ遊技機10の機枠11には、前面枠12が開閉自在および着脱自在に取付けられている。」と、 (1-6) 第6頁右下欄第7-8行に、 「前面枠12の裏面側には記録媒体処理装置の一例であるカード処理装置100が設けられている。」と、 (1-7) 第7頁左下欄第2行-右下欄第18行に、 「図中、100はカード処理装置であり、磁気カードを搬送するための第1の搬送用モータ110や第2の搬送用モータ115さらには取手136aが設けられたカード収納箱136やカードストッカー120等を含む。 図中、80は遊技盤取付枠、71は機構板、78は大当り制御等を行なう制御基板ボックス、11は機枠である。 第4図はカード処理装置100の働きを説明するための作用説明図である。 カード処理装置100には、磁気カード102が挿入・排出されるカード挿入・排出口26が形成されている。この磁気カード102は、ほぼ長方形の扁平なプレート状の形状をしているが、棒状等のものであってもよく形状は問わない。また磁気カード102には、持玉数特定情報の一例である遊技者の持玉数データが記録されており、この持玉数データは、たとえば、遊技者が遊技の前に支払った料金に相当する貸玉の数だけ磁気カード102に記録させたものである。なお、また、持玉数特定情報としては、前記遊技者の持玉数データに限らず、たとえば、遊技者を特定できる情報であってもよく、磁気カードを通じて遊技者が特定され、遊技場におけるホストコンピュータに予め登録されている遊技者の持玉数データを前記磁気カードからの遊技者特定情報に基づいて割出し、その割出された持玉数データに基づいて遊技ができるよう構成してもよい。なお、この磁気カード102には、他に、他店の磁気カードの使用を防止するための遊技場特定情報やカードの真偽を判別するための暗号情報等が記録されている。また、カードの種類としては、ICカードや光ディスクメモリを利用したカード、さらにはバーコードを印刷したものあるいはパンチ孔を形成したもの等、種々のものが考えられる。カード処理装置100は前述したカードの種類や形状等に合わせて適宜変更可能である。」と、 (1-8) 第9頁右下欄第17-20行に、 「第6図は、遊技制御手段の一例である制御部(マイクロコンピュータ)138およびその制御部138に接続される各種機器から成る制御回路を示すブロック図である。」と、 (1-9) 第10頁左上欄第4-10行に、 「制御部138は、たとえば数チップのLSIで構成されており、その中には、制御動作を所定の手順で実行することのできるMPU151とMPU151の動作プログラムを格納するROM152と、必要なデータの書込み、読出しができるRAM153とが含まれている。」と、 (1-10) 第10頁左下欄第15行-同頁右下欄第3行に、 「制御部138には、第1ないし第4のカード検出器103(SW1)〜106(SW4)からの検出信号がカード検出回路159を介して与えられる。データ読取器107からの読取データ信号がデータ読取書込回路162を介して制御部138に与えられる。遊技者の精算ボタン28(第1図参照)の押圧操作により、精算スイッチ146がON操作され、その信号が精算スイッチ回路163を介して制御部138に与えられる。」と、 (1-11) 第11頁左上欄第3-13行に、 「次に、制御部138は以下の機器に制御信号を与える。………また、データ読取書込回路162を介してデータ書込器108にデータ書込用信号を与えるとともに、データ消去器109にデータ消去のための制御信号を与える。」と、 (1-12) 第11頁右上欄第8-10行に、 「第7A図ないし第7D図は、第6図に示した制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。」と、 (1-13) 第14頁左下欄第8-20行に、 「次に、パチンコ玉が弾発発射されて発射玉検出器がONになれば、ステップS31によりYESの判断がなされてステップS35に進み、持玉数データを1デクリメントするとともにステップS36により発射玉カウンタを1インクリメントする処理がなされてステップS41に進む。 そして、遊技領域に打込まれたパチンコ玉が入賞すれば入賞玉検出器がONになり、ステップS32によりYESの判断がなされてステップS37に進み、持玉数データにn加算される処理がなされる。このnはパチンコ玉の入賞に伴なって付与される商品玉数に相当する数でありたとえば13等の予め定められている数である。」と、 (1-14) 第16頁右下欄第17行-第17頁左上欄第3行に、 「次に、ステップS66に進み、第1,第2の搬送用モータM1,M2を逆転させてカードを第4図における図示右方向に搬送し、データ消去器109で従前の記録データを消去するとともにデータ書込器108(第4図参照)により遊技者が獲得した持玉数データを書込み、ステップS68に進む。」と、 (1-15) 第1乃至3図には、その特に第3図に、機枠11を構成する下方の水平枠部材の内側にカード処理装置100が設置され、前面枠12にはカード処理装置100の一部に対応して開口が設けられ、前記開口をカード処理装置100の突出部分より大きく形成し、前記開口よりカード処理装置100の一部が突出し、前記開口の前面側(遊技機の表側)にカード挿入・排出口26が形成されている前面装飾板20を配置していることが、 それぞれ記載されている。 以上の記載によれば、刊行物1には、 「パチンコ玉が弾発発射されて発射玉検出器がONとなれば持玉数データを1デクリメントし、パチンコ玉が入賞して入賞玉検出器がONとなれば持玉数データにn加算する処理を実行する制御部138と、 該制御部138により処理された持玉数データをカードに書き込むデータ書込器108を備えるカード処理装置100を有するパチンコ遊技機において、 機枠11を構成する下方の水平枠部材の内側に前記カード処理装置100を設置し、前面枠12にはカード処理装置100の一部に対応して開口が設けられ、さらに前記開口をカード処理装置100の突出部分より大きく形成し、前記開口の前面側にカード挿入・排出口26が形成されている前面装飾板20が配置されているパチンコ遊技機。」 との発明(以下、「刊行物1の発明」という。)が開示されているものと認められる。 (2)刊行物2 刊行物2〔実願昭60-43676号(実開昭61-159974号)のマイクロフィルム〕には、 (2-1) 第4頁第20行-第5頁第1行に、 「また内壁9の裏面に設けられた支台13上には、リミットスイッチSが横に寝かせて固定され、」と、 (2-2) 第3,4,6図に、内壁9に設けられ、リミットスイッチSを固定した支台13が、片持ち状であることが、記載されている。 (3)刊行物3 刊行物3〔特開昭60-171058号公報〕には、 (3-1) 第4頁右下欄第8-12行に、 「例えば第7図に示す遊技中断手続の他の実施例は、遊技盤2の裏面にソレノイド46を設けるとともに、該ソレノイド46にガイドレール3上の球通路3’を遮る遮断杆47を接続したものであり、」と、 (3-2) 第7図に、遊技盤の裏面に設けられたソレノイド46を支えるL字状の取付金具が、片持ち状であることが、記載されている。 4.本願発明と刊行物1の発明との対比検討 (1)本願発明と刊行物1の発明との対比 本願発明と刊行物1の発明とを対比すると、 刊行物1の発明の「パチンコ玉」が本願発明の「パチンコ球」に、同様に、「パチンコ玉が弾発発射されて発射玉検出器がONとなれば持玉数データを1デクリメントし、パチンコ玉が入賞して入賞玉検出器がONとなれば持玉数データにn加算する処理を実行する制御部138」が「パチンコ球の発射球情報と入賞球情報等を受けて遊技者の持球数を演算する演算手段」に、「制御部138により処理された持玉数データをカードに書き込むデータ書込器108を備えるカード処理装置100」が「演算手段の演算結果を記録する磁気カード或はICカード等の情報記録媒体を処理する媒体処理関連装置」に、「パチンコ遊技機」が「パチンコ機」に、「前面枠12にはカード処理装置100の一部に対応して開口が設けられ、さらに前記開口をカード処理装置100の突出部分より大きく形成」が「前枠には該媒体処理関連装置の前面の全部または一部に対応させて開口を設け、さらに前記開口を媒体処理関連装置の突出部分より大きく形成」に、それぞれ相当する。 そうすると、本願発明と刊行物1の発明の両者は「パチンコ球の発射球情報と入賞球情報等を受けて遊技者の持球数を演算する演算手段と、該演算手段の演算結果を記録する磁気カード或はICカード等の情報記録媒体を処理する媒体処理関連装置を有するパチンコ機において、外枠に前記媒体処理関連装置を固定し、前枠には該媒体処理関連装置の前面の一部に対応させて開口を設け、さらに前記開口を媒体処理関連装置の突出部分より大きく形成したパチンコ機。」である点で一致し、 以下の点で相違しているものと認められる。 ・相違点1 媒体処理関連装置が、本願発明では、外枠の縦の枠部材の内側に取り付けられた片持ち梁状の支台に取り付けられているのに対し、刊行物1の発明では、外枠の下方の枠部材の内側に設置されている点。 ・相違点2 本願発明は、開口と媒体処理関連装置の隙間に針金等の不正挿入を防止するシールド部を設けたのに対し、刊行物1の発明は、開口の前面側にカード挿入・排出口26が形成されている前面装飾板20を配置した点。 5.当審の判断 上記相違点について検討する。 i. 相違点1について 一般的に、片持ち状に装置や部材等を支持することは、刊行物2あるいは刊行物3等に記載されているように周知技術であり、刊行物1の発明において、カード挿入・排出口26と機枠11の下横枠との距離が大きい場合、カード処理装置100の縦方向寸法が小さい場合、もしくは、カード処理装置の下方にスペースを設ける等の、カード処理装置100を外枠の下方の横枠部材の内側に載置固定できない事情に応じて機枠11の縦枠を利用してカード処理装置100を片持ち状に支持することは、前記周知技術を考慮すれば、当業者にとって格別困難なことではなく、支台が「梁状」であることも、カード処理装置100の水平方向の寸法に応じて当業者が適宜決定し得る単なる設計的事項にすぎない。 ii. 相違点2について 本願発明の「開口と媒体処理関連装置の隙間に針金等の不正挿入を防止するシールド部を設けた」ことは、本願の図面及び明細書(【図3】、段落【0022】)を参酌すると、隙間自体あるいは隙間内にシールド部を設けるというより、該隙間からの針金等の不正挿入を防止するためのシールド部を設けたものであると解することができる。 そこで、刊行物1の発明についてみると、刊行物1には、前枠12に設けられた開口の前面側に前面装飾板20を配置したことが記載され、前枠12と開口から突出するカード処理装置100との接合部分を前面装飾板20で覆っているものと認められるが、該前面装飾板20により前記隙間からの針金等の不正挿入を防止することについては明示されていない。 しかしながら、パチンコ機において、前枠等の前面側に生じた隙間から針金等の不正挿入を防止することは周知の技術的課題(例えば、後記した周知例1乃至3を参照)であるので、刊行物1の発明のようにパチンコ機の前面側に隙間が生じた際に周知例1乃至3のような針金等の不正挿入防止措置を施すことは、当業者が格別困難なく想起し得る事項である。 また、刊行物1に針金等の不正挿入防止に関して明示されてはいないが、前枠12と開口から突出するカード処理装置100との接合部分を覆っている前面装飾板20が該防止に寄与することは当業者であれば自明なことと認識することができるともいうことができる。 よって、刊行物1の発明における隙間にシールド部を設け、相違点2に係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得たものであるというべきである。 そして、本願発明に係る作用効果は、刊行物1の発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得るものであり格別顕著なものではない。 したがって、本願発明は、刊行物1の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 【周知例】 周知例1:実願昭54-151526号(実開昭56-68574号)のマイクロフィルム(特に、第1頁第12-16行、第3頁第10-14行、第3図参照) 周知例2:実願昭58-17740号(実開昭59-124581号)のマイクロフィルム(特に、第3頁第4-14行、第3,4図参照) 周知例3:実公昭44-18530号公報(特に、第2欄第16-20行、第3図参照) 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-02-28 |
結審通知日 | 2005-03-01 |
審決日 | 2005-03-14 |
出願番号 | 特願平10-320065 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 神 悦彦、瀬津 太朗、小林 英司 |
特許庁審判長 |
村山 隆 |
特許庁審判官 |
川島 陵司 鉄 豊郎 |
発明の名称 | パチンコ機 |
代理人 | 武蔵 武 |