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審決分類 |
審判 補正却下不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) G06F |
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管理番号 | 1115754 |
審判番号 | 補正2004-50001 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-05-29 |
種別 | 補正却下不服の審決 |
審判請求日 | 2004-01-09 |
確定日 | 2005-04-27 |
事件の表示 | 特願2000-309449「データベース管理システムおよび問合せ処理方法」において、平成12年11月9日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成5年1月20日に出願した特願平5-7804号の一部を平成12年1月20日に新たな特許出願とした特願2000-12280号の一部を平成12年10月10日に新たな特許出願としたものであって、平成12年11月9日付け手続補正により願書に添付した明細書についての補正(以下、「本補正」という)がなされたところ、本補正について平成15年12月9日付けで補正の却下の決定(以下、「原決定」という)がなされたものである。 2.原決定の理由 原決定の理由は次のとおりである。 「補正後の請求項1及び5に記載された「入力した問い合わせ要求を解析し、データベース演算キーに割り付けておいたハッシュ関数から得られたハッシュコードのキーレンジに基づいて複数の前記データベース演算装置にデータベース演算を指示」する構成は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず、かつ、同明細書又は図面の記載からみて自明のこととも認められない。 すなわち、同明細書又は図面には、ハッシュ関数の利用に関し、「前記決定管理ノードは、前記決定手段において前記結合ノードに取り出し情報を均等に割当てるためにあらかじめ定められたハッシュ関数を利用する。」(【0016】の記載)、「前記第3のノードは、前記決定された第2のノードに取り出しデータを均等に割当てるためにあらかじめ定められたハッシュ関数を利用する。」(【0027】の記載)、「上記最適化情報が存在しない場合、適当なハッシュ関数を設定してデータ分配を行なえばよい。」(【0056】の記載)、「最適化情報がなければ、ハッシュ関数の結合カラム評価値に従い、データ分配情報を作成する。」(【0076】の記載)、「さらに、データ取り出し処理においては、複数ディスク装置からなる並列入出力アクセス方法の適用と、一括入出力方法/先読み入出力方法の適用と、データ分配処理に最適化情報あるいはハッシュ関数によるデータ分配方法の適用と、Nウェイマージ処理に並列ソート方法の適用と、突き合わせ処理にノード間での突き合わせ処理方法の適用と、要求データ出力処理に複数のノードを割当て並列受け取り処理方法の適用等も考えられる。」(【0086】の記載)と記載されていたのであり、 入力した問い合わせ要求を解析し、データベース演算キーに割り付けておいたハッシュ関数から得られたハッシュコードのキーレンジに基づいて複数のデータベース演算装置にデータベース演算を指示することは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていない。 したがって、この補正は、明細書の要旨を変更するものと認める。よって、この補正は、特許法第53条第1項の規定により、上記結論の通り決定する。」 3.請求人の主張 請求人は、原決定が取り消されるべきであるとして、概ね、次のような主張をしている。すなわち、 「入力した問い合わせ要求を解析し、複数の前記データベース演算装置にデータベース演算を指示」する構成は、図1のノード12の処理内容として、願書に最初に添付した明細書の段落0052、0054に明確に記載されている。例えば、段落0052の「ノード12(97)は、問い合わせを受け付け、該問い合わせを解析し、問い合わせに対する処理を実行する分配ノードおよび結合ノードの数を決定する決定ノードである。」、 また、段落0054の「問合せがノード12において受付けられると、ノード12において、最適な分配処理方法が選択され、各ノードに対してネットワークを介して指示される。」などの記載である。また、段落0056に「最適化情報とは、データベースの情報を均等に分割するための情報であること」、「上記最適化情報が存在しない場合には、適当なハッシュ関数を設定してデータ分配を行えばよい」ことが記載され、本願において、最適化情報が無い場合の代替として、ハッシュ関数を用いることは明確に記載されている。 さらに、図5のディクショナリ50から矢印でデータ分割の説明として、結合キーの説明があり、分割範囲が、キーレンジ(キーの範囲)であることも明確に記載されている。 従って、上記構成は、願書に最初に添付した明細書・図面に記載された範囲のものと考える。すなわち、平成12年11月09日付け手続補正書でした明細書又は図面についての補正は、願書に最初に添付した明細書・図面に記載された範囲のものである。本願は、平成6年法施行以前の出願(平成5年1月20日出願)であり、要旨が変更であるか否かの判断基準は、出願時の特許法第41条に基づいて行われるべきものあり、ここには、「願書に最初に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少しまたは変更する補正は、明細書の要旨を変更しないものとみなす。」とある。 従って、上記補正は、要旨変更に該当しないものと考える。 4.当審の判断 本補正により、出願当初の請求項1及び請求項2の「入力された問い合わせ要求を解析し、複数のデータベース演算要求を生成して前記第2のノードにそれぞれ分配し、前記データベース演算要求にて対象となるデータの取り出し要求を複数生成し、当該生成した取り出し要求を前記第1のノードにそれぞれ送出し、前記データベース演算要求のデータベース演算処理結果を、前記第2のノードからそれぞれ受け取り、前記問い合わせ要求の処理結果を出力」する構成が、補正後の請求項1及び請求項5の「入力した問い合わせ要求を解析し、データベース演算キーに割り付けておいたハッシュ関数から得られたハッシュコードのキーレンジに基づいて複数の前記データベース演算装置にデータベース演算を指示」する構成に補正され、 また、段落【0091】の【発明の効果】も、出願当初の「各ノードで実行するデータベース演算に対応して各ノード数を決定し、各ノードへデータを均等に分割させ、各ノードで実行する処理時間均等化させるので、各ノード間で処理時間の偏りがなく、高速化な問合せ処理を実現することができる。」から、補正後の「本発明によれば、問い合わせ要求から得たデータベース演算キーに割り付けておいたハッシュ関数から得られたハッシュコードのキーレンジに基づいて複数のデータベース演算要求を複数のデータベース演算装置にそれぞれに指示することができ、複数のデータベース演算装置における処理負荷の不均衡を軽減することができる。」と補正された。 しかし、出願当初の明細書や図面には、「データベース演算キー」や「ハッシュコード」や「キーレンジ」の文言の記載はないものであり、また、「データベース演算キーに割り付けておいたハッシュ関数から得られたハッシュコードのキーレンジに基づいて複数の前記データベース演算装置にデータベース演算を指示する」との記載もないものである。 そこで、出願当初の明細書と図面の記載をさらに検討すると、 請求人の主張のように、「入力した問い合わせ要求を解析し、複数の前記データベース演算装置にデータベース演算を指示」する構成、及び、「最適化情報が無い場合の代替として、ハッシュ関数を用いる」構成は、出願当初の明細書に記載されていると認められる。 また、図5及び段落【0056】の記載を参照すると、「結合カラム」、「結合キー」、「分割範囲」といった記載があって、当業者の技術常識を参酌すれば、「結合キー」をデータベース演算キーの一種とし、「分割範囲」を、「結合カラム」あるいは「結合キー」の「範囲」、即ち「キーレンジ」と推測することが可能であると認められる。 しかしながら、図5は、データ分配処理における各ノード群への振り分け方法を示す説明図であり、段落【0056】には、「最適化情報51は、データベースのデータを均等に分割するための情報」であると記載され、「最適化情報が存在しない場合、適当なハッシュ関数を設定してデータ分配を行えば良い」と記載されており、 上記の最適化情報もハッシュ関数の設定も、いずれも、データを均等に分配するために用いられているのであって、 出願当初の明細書又は図面には、最適化情報51に基づいて、複数のデータベース演算装置にデータベース演算を指示すること、あるいは、ハッシュ関数の設定に基づいて、複数の前記データベース演算装置にデータベース演算を指示することが記載されておらず、また、示唆もされていない。 即ち、図5の「結合」が、データベース演算に該当するものであるとしても、結合処理はデータベース演算の一部に過ぎないものであり、 出願当初の明細書又は図面を参照すると、データベース演算には、データ取り出し処理、データ分配処理、スロットソート処理、Nウェイマージ処理、突き合わせ処理、要求ソートデータ出力処理などの種々の演算処理が含まれると認められるが、 図5に示された「最適化情報」、「ハッシュ関数の設定」は、データベース演算の一部であるデータ分配処理における各ノード群へのデータの均等分配において適用されているものに過ぎない。 また、出願当初の明細書又は図面には、他の例として、図7〜図9を参照すると、データ取り出し/データ分配処理ノード群、あるいは、結合処理ノード群といった複数のデータベース演算装置に、スロットソート処理を結合処理ノード群から分配処理ノード群へ移す、あるいは、Nウェイマージ処理をスロット処理へ移す、あるいは、Nウェイマージ処理の最終段のマージ処理を突き合わせ処理に移すといった調整が行われており、 これらの調整は、複数のデータベース演算装置にデータベース演算を指示して、複数のデータベース演算装置における処理負荷の不均衡を軽減する例を示していると認められるが、 このデータベース演算の指示は、各データベース演算をパラメータ化して、期待する処理時間に基づいて調整されているのであって、ハッシュ関数の設定に基づいてデータベース演算を指示しているわけではない。 しかるに、本補正により、特許請求の範囲の請求項1及び請求項5を上記のように補正し、発明の効果についても、「問い合わせ要求から得たデータベース演算キーに割り付けておいたハッシュ関数から得られたハッシュコードのキーレンジに基づいて複数のデータベース演算要求を複数のデータベース演算装置にそれぞれに指示することができ、複数のデータベース演算装置における処理負荷の不均衡を軽減することができる。」と補正することは、 「複数のデータベース演算装置にデータベース演算を指示」する構成が、上記のような、スロットソート処理、Nウェイマージ処理、突き合わせ処理を含む各種のデータベース演算を、複数のデータベース演算装置に指示する場合をも含むものであり、 また、「データベース演算キーに割り付けておいたハッシュ関数から得られたハッシュコードのキーレンジに基づいて複数の前記データベース演算装置にデータベース演算を指示」する構成は、ハッシュ関数の設定をデータ分配方法におけるデータの均等分配に係るものに限らないとするものであって、上記のような、スロットソート処理、Nウェイマージ処理、突き合わせ処理を含む各種のデータベース演算を、複数のデータベース演算装置に指示する場合に、データベース演算キーに割り付けておいたハッシュ関数から得られたハッシュコードのキーレンジに基づいて、データベース演算を直接、指示して調整する場合をも含むものである。 しかしながら、出願当初の明細書又は図面の上記の各記載及びその他の記載を参照しても、ハッシュ関数をデータ分配処理においてデータを均等分割するために用いる以外に、各種のデータベース演算に対してハッシュ関数を設定して、キーレンジに基づいて複数のデータベース演算装置にそれぞれデータベース演算を指示する構成は記載もされておらず、また、示唆もされていない。 そうすると、「データベース演算キー」や「ハッシュコード」や「キーレンジ」といった技術用語が、それ自体周知のものであって、出願当初の明細書や図面の記載からみて、結合演算キーに割り付けておいたハッシュ関数から得られたハッシュコードのキーレンジを設定することについては、当業者が容易に想起できるものであるとしても、 上記のデータベース演算キーに割り付けておいたハッシュコードのキーレンジに基づいて、複数のデータベース装置にデータベース演算を指示することは、出願当初の明細書や図面の記載からみて自明のものであったとはいえず、発明の構成に関する技術的事項は、出願当初の明細書や図面に記載された範囲内でないものとなるから、本補正は明細書の要旨を変更するものと認められる。 5.むすび したがって、本補正は、明細書の要旨を変更するものと認められ、特許法第53条第1項の規定により補正の却下の決定をすべきものであり、原決定は妥当なものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-02-14 |
結審通知日 | 2005-02-22 |
審決日 | 2005-03-08 |
出願番号 | 特願2000-309449(P2000-309449) |
審決分類 |
P
1
7・
56-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 廣瀬 文雄 |
特許庁審判長 |
西川 正俊 |
特許庁審判官 |
山中 実 橋本 正弘 |
発明の名称 | データベース管理システムおよび問合せ処理方法 |
代理人 | 三品 岩男 |