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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23K
管理番号 1115755
審判番号 不服2003-7681  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-11-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-02 
確定日 2005-04-25 
事件の表示 平成11年特許願第128294号「飼育動物用食物繊維性飼料及びその製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月21日出願公開、特開2000-316485〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年5月10日に特許出願されたものであって、その請求項1ないし3に係る発明は、平成14年12月9日付け、平成15年5月26日付け及び平成16年9月3日付けの手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に記載された発明はつぎのとおりである。
「グルコマンナンの水和物ゲルを混和した飼料原材料を加熱して、そのグルコマンナンの水和物ゲルを不可逆的ゲル化することを特徴とする犬猫などの各種ペット及び檻などの囲いの中で飼育する飼育動物用食物繊維性飼料の製造法。」(以下、「本願発明」という。)
2.当審の拒絶理由
一方、当審において平成16年12月1日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願の請求項1ないし3に係る発明は、下記の【参考資料】の項における、参考資料1ないし5を参酌し、
(I) 本願の出願前に頒布された、下記の刊行物1に記載された発明並びに刊行物3及び4に記載された発明に基いて、
(II) 本願の出願前に頒布された、下記の刊行物2に記載された発明並びに刊行物3及び4に記載された発明に基いて、
当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
また、当審において平成16年6月30日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願の請求項1ないし3に係る発明は、
(III)本願の出願前に頒布された特開平5-328910号公報(下記の刊行物4)、特開平10-286069号公報(下記の参考資料4)、特開昭60-47642号公報(下記の刊行物3)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

(1)刊行物1:特開昭49-26454号公報
(2)刊行物2:特開平1-256365号公報
(3)刊行物3:特開昭60-47642号公報
(4)刊行物4:特開平5-328910号公報

3.刊行物記載の発明
(1)刊行物1(特開昭49-26454号公報)には、以下の記載が認められる。
1-a.「味つけ肉入りコンニャク」(発明の名称)
1-b.「従来のコンニャク原料とミンチ食肉とから製造することを特徴とするコンニャクの製造法」(特許請求の範囲)
1-c.「従来コンニャクの製造は古くより食用コンニャクの原料となる「コンニャク粉」天南星科の植物の塊根,即ち生玉と通称される「コンニャクいも」を切り干しにして乾燥し,これを粗砕して得られる荒粉を更に精製し,製粉し,ここに得られる白色粉末を原料とするものであるが粉を精製する時に,多量のグルコマンナを含有した微粉となって飛散する。」(第1頁左下欄第8-15行)
1-d.「本発明の製造方法について詳細に説明する。かたくり粉に一定量の水を加え糊状にし,牛肉,豚肉,とり肉の三種類の肉を入れて混和し100℃に加熱するとともに攪拌器により攪拌する。つぎにコンニャク粉に一定量の水を加え,これを上記の原料に投入しじゅうぶんに混和したのち,約1時間30分放置して,消石灰を添加し一定の型に装入し切断する。この切断した未完成品を90℃の温水に入れ約30分間加温する。」(第1頁右下欄第13行-第2頁左上欄第4行)
上記の摘記事項より、刊行物1にはつぎの発明(以下、「刊行物1の発明」という)が記載されていると認められる。
「コンニャク粉に一定量の水を加え,これを,かたくり粉に一定量の水を加え糊状にし牛肉,豚肉,とり肉の三種類の肉を入れて混和し加熱・攪拌した原料に投入して,じゅうぶんに混和したのち,約1時間30分放置して,消石灰を添加し一定の型に装入して切断し,90℃の温水に入れ約30分間加温して製造する味つけ肉入りコンニャク。」

(2)刊行物2(特開平1-256365号公報)には、以下の記載が認められる。
2-a.「肉入りのコンニャク」(発明の名称)
2-b.「この発明はコンニャクの原料(コンニャク粉)に動物(牛、豚、羊等)、トリ、魚などの肉を混ぜ入れて造ってあるコンニャクについてである。・・・コンニャクの製法は、一般的にはコンニャク粉に水を加えながら混ぜ、更に水を加えた後加熱し、石灰水等の凝固剤を加えて、かき混ぜた後、取り出し、型に、流し込み、固まったら水に漬けアクを抜く。その後適当な大きさに切って製品とする。」(第1頁左下欄第6-15行)
2-c.「コンニャク粉と肉と水とを混ぜ合わせてから、又は混ぜ合わせながら加熱し、それから凝固剤を入れる。その後は従来通りの方法で造る。」(第1頁左下欄第16-18行)
上記の摘記事項より、刊行物2にはつぎの発明(以下、「刊行物2の発明」という)が記載されていると認められる。
「コンニャクの原料(コンニャク粉)に動物(牛、豚、羊等)、トリ、魚などの肉を混ぜ入れて造ってある肉入りのコンニャクであって、コンニャク粉と肉と水とを混ぜ合わせてから、又は混ぜ合わせながら加熱し、凝固剤を加えて、かき混ぜた後、取り出し、型に流し込み、固まったら水に漬けアクを抜く、肉入りのコンニャク。」

(3)刊行物3(特開昭60-47642号公報)には、以下の記載が認められる。
3-a.「動物蛋白類と野菜類を、それと識別できる程度に形状が残るように含有させ、かつ食物繊維含有量0.5%以上、水分78%以上としたペットフード。」(特許請求の範囲)
3-b.「犬、猫などのペット動物にとって極めて嗜好性がよく、・・・副食あるいは総菜となるペットフード」(第1頁右下欄第15-18行)
3-c.「食物繊維の含有量を0.5%以上とするのが、ペット動物の健康上から望ましい。・・・その際、・・・ペットフード中の食物繊維含有量を適当量にするため、・・・コンニャクマンナン・・・等食物繊維を高含有する原料を添加するのが望ましい。」(第2頁右上欄第2-11行)
3-d「本発明のペットフードの製造は、製品になるまでに加熱処理することができれば任意の製造方法を選ぶことができるが、通常次のようにして行われる。・・・動物蛋白類および野菜類の一定量と、水分が78%以上となるように調味液等を耐熱性容器、例えばアルミ使用のスタンディングパウチに秤量、充填する。この際、・・・食物繊維を高含有する原料・・・等・・・を加えることができ・・・真空シールしたのち、加熱処理を行うが、特にレトルト処理が望ましい。」(第2頁右上欄第19行-右下欄第3行)
上記の摘記事項より、刊行物3にはつぎの発明が記載されていると認められる。
「動物蛋白類と野菜類を、それと識別できる程度に形状が残るように含有させ、かつ食物繊維含有量0.5%以上、水分78%以上とした、犬、猫などのペット動物にとって極めて嗜好性がよく、副食あるいは総菜となるペットフードであって、動物蛋白類および野菜類の一定量と調味液等を、例えばアルミ使用のスタンディングパウチ等の耐熱性容器に秤量、充填するもので、この際、コンニャクマンナン等食物繊維を高含有する原料を添加するのが望ましく、真空シールしたのち、レトルト処理等の加熱処理を行う、ペットフード。」

(4)刊行物4(特開平5-328910号公報)には、以下の記載が認められる。
4-a.「肉類と乾燥したのり状の炭水化物とを含む犬の補助食。」(特許請求の範囲の請求項1)
4-b.「本発明の目的は、・・・従来の補助食による栄養バランスの偏りやカロリー過多を改善して、犬の肥満や病気を防止することができる新規な犬の補助食を提供することにある。」(第2頁第1欄第27-30行)
4-c.「『のり状の炭水化物』としては、澱粉を主成分とするタピオカ、マンナンC5H10O6を主成分とするこんにゃく・・・等を例示できる。」(第2頁第1欄第36-39行)
4-d.「この補助食1は、次のような手順・・・で製造される。・・・粉状のタピオカを水で煮てのり状にする。・・・牛皮とタピオカと・・・を、ミキサーの中に入れて混合する。・・・前記牛皮等の混合物を適当な大きさの粒状に分けて、形を整える。・・・前記粒状の混合物を100℃に調節したオーブンで約24時間焼き、乾燥させてタピオカを固化させれば、補助食1が完成する。」(第2頁第2欄第35行-第3頁第3欄第15行)
上記の摘記事項より、刊行物4にはつぎの発明(以下、「刊行物4の発明」という)が記載されていると認められる。
「従来の補助食による栄養バランスの偏りやカロリー過多を改善して、犬の肥満や病気を防止することを目的とし、肉類と乾燥したのり状の炭水化物とを含み、『のり状の炭水化物』としては、澱粉を主成分とするタピオカ、マンナンC5H10O6を主成分とするこんにゃく等を例示でき、タピオカを使用する場合は、粉状のタピオカを水で煮てのり状にし、牛皮とタピオカとを、ミキサーの中に入れて混合し、前記牛皮等の混合物を適当な大きさの粒状に分けて形を整え、100℃に調節したオーブンで約24時間焼き、乾燥させてタピオカを固化させることにより製造される、犬の補助食。」

4. 対比・判断
4-1 理由(I) (刊行物1の発明との対比・判断)
刊行物1の発明について、以下の(i)ないし(iv)のことがいえる。
(i)刊行物1(特開昭49-26454号公報)の摘記事項1-c.によれば、刊行物1の発明に用いる「コンニャク粉」は「天南星科の植物の塊根,即ち生玉と通称される「コンニャクいも」を切り干しにして乾燥し,これを粗砕して得られる荒粉を更に精製し,製粉し,ここに得られる白色粉末を原料とするもの」であり、上記「白色粉末」を「精粉」と呼ぶことはよく知られている(例えば、下記の参考資料2(段落【0013】)、参考資料4(段落【0002】)参考資料6(参考6-aないし参考6-d)があげられる。)。さらに、下記の参考資料1、参考資料2(段落【0013】)、参考資料3(段落【0010】)、参考資料4(段落【0002】)を参酌すると、刊行物1の発明における上記「コンニャク粉」は実質上、グルコマンナンであるということができる。なお審判請求人は、平成17年2月3日付け、及び同2月4日付けの意見書において、「刊行物1の発明の味つけ肉入りコンニャクの、ミンチ食肉以外の原料である従来のコンニャク原料というのは、精粉ではなく、飛粉であると解さざるを得ない。」と主張しているが、コンニャク原料として使用可能なものは飛粉ではなく、精粉であることは当業者が熟知するところであり(例えば、下記の参考資料6(参考6-bないし参考6-d)があげられる。)、刊行物1に接した当業者は「コンニャク粉」が実質的に精粉を表すことを認識するものである。
(ii)刊行物1の発明は、グルコマンナンである「コンニャク粉」(上記(i)に記載)に、「一定量の水を加え,これを」、「かたくり粉に一定量の水を加え糊状にし牛肉,豚肉,とり肉の三種類の肉を入れて混和し加熱・攪拌した原料に投入して,じゅうぶんに混和したのち,約1時間30分放置して,消石灰を添加」するものであり、さらに下記の参考資料2(段落【0014】)、参考資料3(段落【0009】ないし【0011】)、参考資料4(段落【0002】)を参酌すると、刊行物1の発明における、「コンニャク粉」に「一定量の水を加え」たものは、「約1時間30分放置して,消石灰を添加」されることによって水和物ゲルになるものである。そうすると、同刊行物1の発明において、上記した、「コンニャク粉」に「一定量の水を加え,これを」、「三種類の肉」より成る「原料」に投入し、「じゅうぶんに混和したのち,約1時間30分放置して,消石灰を添加」したものは、グルコマンナンの水和物ゲルと「三種類の肉」より成る「原料」との「混和物」、すなわちグルコマンナンの水和物ゲルを含む「混和物」であるということができる。
一方、本願発明において、「グルコマンナンの水和物ゲルを混和した飼料原材料」もグルコマンナンの水和物ゲルを含む「混和物」であるということができるから、本願発明と刊行物1の発明とは、「グルコマンナンの水和物ゲルを含む混和物」を生成する工程を含む点で共通している。
(iii)刊行物1の発明は、「(グルコマンナンの水和物ゲルを含む混和物を)90℃の温水に入れ約30分間加温して製造する」ものであり、さらに下記の参考資料2(段落【0014】)、参考資料3(段落【0011】)、参考資料4(段落【0002】)を参酌すると、刊行物1の発明における「グルコマンナンの水和物ゲルを含む混和物」は、「90℃の温水に入れ約30分間加温」されることにより、「グルコマンナンの水和物ゲル」が不可逆的ゲル化されるものであるといえる。
(iv)刊行物1の発明において、「コンニャク」は食物繊維を含む「加工品」であるといえるから、「味つけ肉入りコンニャク」を包括して、「食物繊維性加工品」ということができ、また同刊行物1の発明は、「味つけ肉入りコンニャク」の製造法を実質的に開示しているから、「食物繊維性加工品の製造法」という技術的概念に包含されるものである。
一方、本願発明は「犬猫などの各種ペット及び檻などの囲いの中で飼育する飼育動物用食物繊維性飼料の製造法」であり、「犬猫などの各種ペット及び檻などの囲いの中で飼育する飼育動物用食物繊維性飼料」を包括して「食物繊維性加工品」ということができるから、本願発明は「食物繊維性加工品の製造法」という技術的概念に包含されるものである。
以上(i)ないし(iv)の事項より、本願発明と刊行物1の発明とは以下の点で一致し、また相違していると認められる。
一致点;
グルコマンナンの水和物ゲルを含む混和物を加熱して、そのグルコマンナンの水和物ゲルを不可逆的ゲル化する食物繊維性加工品の製造法、である点。
相違点;
本願発明では、グルコマンナンの水和物ゲルを含む混和物が飼料原材料であり、食物繊維性加工品が犬猫などの各種ペット及び檻などの囲いの中で飼育する飼育動物用飼料であるのに対して、刊行物1の発明では、グルコマンナンの水和物ゲルを含む混和物が飼料原材料であるか否か明らかではなく、食物繊維性加工品が犬猫などの各種ペット及び檻などの囲いの中で飼育する飼育動物用飼料であるか否か明らかではない点。
上記の相違点について検討する。
刊行物3には、「犬、猫などのペット動物」のための「ペットフード」に「コンニャクマンナン等の食物繊維を高含有する原料を添加するのが望まし」いことが記載されており、下記の参考資料1ないし3を参酌すると、上記「コンニャクマンナン」は、コンニャク芋の根茎に含まれるグルコマンナンを原料とし、凝固によって得られた「コンニャク」を実質的に意味しているということができ、同刊行物3は、「コンニャク」を「犬、猫などのペット動物」のための「ペットフード」に用いるという技術思想を開示している。また刊行物4には、「従来の補助食による栄養バランスの偏りやカロリー過多を改善して、犬の肥満や病気を防止することを目的とし、肉類と乾燥したのり状の炭水化物とを含み、『のり状の炭水化物』としては、澱粉を主成分とするタピオカ、マンナンC5H10O6を主成分とするこんにゃく等を例示できる、犬の補助食。」が記載されており、下記の参考資料5に記載されているように、「マンナン」は「(C6H10O5)n」で表わされ、C6H10O5をその構成単位とするものであるから、刊行物4の上記記載中、「マンナン」を「C5H10O6」とした記載は正確な記載とはいえないが、少なくとも同刊行物4は、「こんにゃく」を「犬の補助食」に用いるという技術思想を開示している。また、本願の明細書には「凝固剤の嫌忌臭」が「残留」していない、「微粉グルコマンナン組成物」(明細書の段落【0020】ないし【0023】)についての記載はあるものの、本願発明において「グルコマンナン」が「微粉グルコマンナン組成物」に限定されているわけではなく、しかも食物繊維性加工品は、食物繊維を含有する低カロリーの加工品であるという、その技術的意義、構造等からすると、いわゆる「ヒト」のための加工食品としてだけではなく、飼育動物用飼料として用いることも十分に可能なものである。
そうすると、刊行物1の発明において、グルコマンナンの水和物ゲルを含む混和物を飼料原材料とし、該飼料原材料より得られる食物繊維性加工品を、犬猫などの各種ペット及び檻などの囲いの中で飼育する飼育動物用飼料とすることは当業者であれば容易に想到することができたものであり、本願発明の効果も、刊行物1の発明並びに刊行物3及び4に記載された技術事項から当業者が予測しうる範囲内のものであって格別なものとはいえない。
したがって、本願発明は、下記の各参考資料を参酌し、刊行物1の発明並びに刊行物3及び4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4-2 理由(II) (刊行物2の発明との対比・判断)
刊行物2の発明について、以下の(i)ないし(iv)のことがいえる。
(i)刊行物2(特開平1-256365号公報)の摘記事項2-b.によれば、刊行物2の発明は「原料」として「コンニャク粉」を用いるものであり、さらに下記の参考資料1、参考資料2(段落【0013】)、参考資料3(段落【0010】)、参考資料4(段落【0002】)を参酌すると、刊行物2の発明における「肉入りのコンニャク」の原料の一部である「コンニャク粉」は実質上、グルコマンナンであるということができる。
(ii)刊行物2の発明は、グルコマンナンである「コンニャク粉」(上記(i)に記載)と、「動物(牛、豚、羊等)、トリ、魚などの肉」と、「水とを混ぜ合わせてから、又は混ぜ合わせながら加熱し、凝固剤を加え」るものであり、さらに下記の参考資料2(段落【0014】)、参考資料3(段落【0009】ないし【0011】)、参考資料4(段落【0002】)を参酌すると、刊行物2の発明において、「コンニャク粉」と「肉」と「水」を「混ぜ合わせてから、又は混ぜ合わせながら加熱し、凝固剤を加え」ると、上記の「コンニャク粉」は水和物ゲルになり、全体としてグルコマンナンの水和物ゲルと「肉」との「混和物」、すなわちグルコマンナンの水和物ゲルを含む「混和物」を生成するものといえる。
一方、本願発明において、「グルコマンナンの水和物ゲルを混和した飼料原材料」もグルコマンナンの水和物ゲルを含む「混和物」であるということができるから、本願発明と刊行物2の発明とは、「グルコマンナンの水和物ゲルを含む混和物」を生成する工程を含む点で共通している。
(iii)刊行物2の発明は、グルコマンナンである「コンニャク粉」と「肉」と「水」を「混ぜ合わせてから、又は混ぜ合わせながら加熱し、凝固剤を加えて、かき混ぜ」るものであり、さらに下記の参考資料2(段落【0014】)、参考資料3(段落【0011】)、参考資料4(段落【0002】)を参酌すると、刊行物2の発明における「グルコマンナンの水和物ゲルを含む混和物」は、「加熱」されることにより、「グルコマンナンの水和物ゲル」が不可逆的ゲル化されるものであるといえる。
(iv)刊行物2の発明において、「コンニャク」は食物繊維を含む「加工品」であるといえるから、「肉入りのコンニャク」を包括して、「食物繊維性加工品」ということができ、また同刊行物2の発明は、「肉入りのコンニャク」の製造法を実質的に開示しているから、「食物繊維性加工品の製造法」という技術的概念に包含されるものである。
一方、上記したとおり、本願発明も「食物繊維性加工品の製造法」という技術的概念に包含されるものである。
以上(i)ないし(iv)の事項より、本願発明と刊行物2の発明とは以下の点で一致し、また相違していると認められる。
一致点;
グルコマンナンの水和物ゲルを含む混和物を加熱して、そのグルコマンナンの水和物ゲルを不可逆的ゲル化する食物繊維性加工品の製造法、である点。
相違点;
本願発明では、グルコマンナンの水和物ゲルを含む混和物が飼料原材料であり、食物繊維性加工品が犬猫などの各種ペット及び檻などの囲いの中で飼育する飼育動物用飼料であるのに対して、刊行物2の発明では、グルコマンナンの水和物ゲルを含む混和物が飼料原材料であるか否か明らかではなく、食物繊維性加工品が犬猫などの各種ペット及び檻などの囲いの中で飼育する飼育動物用飼料であるか否か明らかではない点。
上記の相違点について検討する。
「4-1 理由(I)(刊行物1の発明との対比・判断)」において記載したとおり、上記刊行物3は、「コンニャク」を「犬、猫などのペット動物」のための「ペットフード」に用いるという技術思想を開示しているとともに、上記刊行物4は、「こんにゃく」を「犬の補助食」に用いるという技術思想を開示している。また上記したように、本願発明において「グルコマンナン」が「微粉グルコマンナン組成物」に限定されているわけではなく、しかも食物繊維性加工品は、食物繊維を含有する低カロリーの加工品であるという、その技術的意義、構造等からすると、いわゆる「ヒト」のための加工食品としてだけではなく、飼育動物用飼料として用いることも十分に可能なものである。
そうすると、刊行物2の発明において、グルコマンナンの水和物ゲルを含む混和物を飼料原材料とし、該飼料原材料より得られる食物繊維性加工品を、犬猫などの各種ペット及び檻などの囲いの中で飼育する飼育動物用飼料とすることは当業者であれば容易に想到することができたものであり、本願発明の効果も、刊行物2の発明並びに刊行物3及び4に記載された技術事項から当業者が予測しうる範囲内のものであって格別なものとはいえない。
したがって、本願発明は、下記の各参考資料を参酌し、刊行物2の発明並びに刊行物3及び4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4-3 理由(III) (刊行物4の発明との対比・判断)
刊行物4の発明について、以下の(i)及び(ii)のことがいえる。
(i)刊行物4の発明は、「肉類と乾燥したのり状の炭水化物とを含む犬の補助食」であり、「のり状の炭水化物」として「マンナンC5H10O6を主成分とするこんにゃく」を「例示できる」ことが刊行物4に記載されている。
そこで、刊行物4における、「マンナンC5H10O6を主成分とするこんにゃく」の記載をさらにみると、「4-1 理由(I)(刊行物1の発明との対比・判断)」に記載したように、「マンナン」は「(C6H10O5)n」で表わされ、C6H10O5をその構成単位とするものであるから、刊行物4の上記記載中、「マンナン」を「C5H10O6」とした記載は正確な記載とはいえず、また「市販の食用こんにゃくの原料に使用される」のはグルコマンナン(下記の参考資料4の段落【0002】)であって(C6H10O5)n で表わされる「マンナン」であるとはいえないが、「グルコマンナン」を、単に「マンナン」と略称することがある(本願の明細書の段落【0014】及び下記の参考資料4の段落【0003】)こと、「グルコマンナン」は「コンニャクマンナン」とよばれることがある(下記の参考資料1)ことを考慮すると、刊行物4の発明において、「のり状の炭水化物」として「例示」されている「マンナンC5H10O6を主成分とするこんにゃく」は、実質的に「こんにゃく」を意味しているということができる。
(ii)「犬の補助食」である刊行物4の発明は「犬」の「飼料」であるということができ、「犬」は、「ペット」であるとともに、「檻などの囲いの中で飼育する飼育動物」に含まれるものである。また同刊行物4の発明において、「こんにゃく」は食物繊維を含むから、刊行物4の発明は犬などのペット及び檻などの囲いの中で飼育する飼育動物用食物繊維性飼料に包含されるものである。
一方、本願発明は、「グルコマンナンの水和物ゲルを混和した飼料原材料を加熱して、そのグルコマンナンの水和物ゲルを不可逆的ゲル化する」ことを特徴とする「犬猫などの各種ペット及び檻などの囲いの中で飼育する飼育動物用食物繊維性飼料」の「製造法」である。
そうすると、本願発明と刊行物4の発明は共に、「犬などのペット及び檻などの囲いの中で飼育する飼育動物用食物繊維性飼料」である点において共通しており、以下の点で相違していると認められる。
a.犬などのペット及び檻などの囲いの中で飼育する飼育動物用食物繊維性飼料が、本願発明においてはグルコマンナンの水和物ゲルを混和した飼料原材料を加熱して、そのグルコマンナンの水和物ゲルを不可逆的ゲル化する製造法により得られるものであるのに対して、刊行物4の発明においては肉類とこんにゃくを含むものであり、製造法は明らかでない点。
b.犬などのペット及び檻などの囲いの中で飼育する飼育動物として、本願発明は猫を含むものであるのに対して、刊行物4の発明は猫を含まない点。
上記の相違点について検討する。
a.の相違点について検討する。
刊行物4の摘記事項4-c.に関連して同刊行物4の図1を見ると、同図1には「牛皮2」及び「タピオカ3」より成る「補助食1」が記載されている。そして摘記事項4-d.によれば、該「補助食1」は「粉状のタピオカを水で煮てのり状にし、牛皮とタピオカとを、ミキサーの中に入れて混合し、前記牛皮等の混合物を適当な大きさの粒状に分けて形を整え」た後に「オーブンで約24時間焼き、乾燥させてタピオカを固化させ」て得られるものであり、「タピオカ」が「のり状」の状態のときに「牛皮」と混合することにより、「牛皮とタピオカ」は「混合物」とされ、「粒状」に「形を整え」ることが可能なものであり、完成品である図1における「補助食1」は、「タピオカ3」と「牛皮2」とが一体となり、全体として「粒状」の成形物とされている。また同刊行物4には「補助食1」を形成する「のり状の炭水化物」として「タピオカ」と並んで「マンナンC5H10O6を主成分とするこんにゃく」が例示されており、上記したとおり「マンナンC5H10O6を主成分とするこんにゃく」は実質的に「こんにゃく」を意味しているといえる。そうすると、刊行物4の図1において参照符合「3」が付されたものは、実質上「こんにゃく」とすることができるものであり、「タピオカ」に換えて「こんにゃく」とした場合においても「こんにゃく」と「牛皮」とが一体となり、全体として「粒状」の成形物である「補助食」を形成するものである。
ところで、コンニャクの根茎を用いて製造される「こんにゃく」は古くから食材としてよく知られており、コンニャクの根茎に含まれるグルコマンナンを原料とするものであることは周知の事項(例えば、下記の参考資料1、参考資料2(段落【0013】)、参考資料3(段落【0010】)、参考資料4(段落【0002】)があげられる。)であるとともに、「(a)グルコマンナンの水中撹拌による溶解、(b)静置膨潤、(c)凝固剤の添加混練、(d)成型、(e)加熱、(f)仕上げ等の工程」を経て得られた「不可逆的凝固」物であることもよく知られている(例えば、下記の参考資料2(段落【0014】)、参考資料3(段落【0011】)、参考資料4(段落【0002】)があげられる。)。なお、下記の参考資料2及び3に記載されているように、グルコマンナンに水を加えて得られる「水和物」は「水和ゲル」、すなわち「水和物ゲル」であり、該「水和物ゲル」が加熱により「不可逆的凝固」した状態は「不可逆的ゲル化」した状態である。
さらに下記の参考資料4には、「マンナン」、つまり「グルコマンナン」を、「水を使用し、最終的に加熱して製品の凝固を完成する」、「加工食品の副原料として使用するときにも」、「(a)」の工程である「グルコマンナンの水中撹拌による溶解」を行い、「その水和物である糊状物にした後、主原料に適量添加する」(段落【0004】)ことが記載されており、同参考資料4が開示する「主原料」と「こんにゃく」より成る「加工食品」は、「こんにゃく」の原料となる「グルコマンナン」が、その「水和物である糊状物」の状態のときに「主原料」に「添加」して混合物とし、「主原料」とともに「グルコマンナン」を「加熱」し、「不可逆的凝固」をさせて製品とする、食物繊維性加工品である。加えて、上記の「主原料」にあたるものとして肉を用いた「肉入りこんにゃく」も周知(例えば、上記の刊行物1及び2があげられる。)であり、「コンニャク粉」(グルコマンナン)に水を加え、これを主原料である肉に混和し、静置して凝固剤を加え、加温する工程により製造される食物繊維性加工品である。そして、下記の参考資料4並びに周知例である上記の刊行物1及び2が開示する、「主原料」(肉)と「こんにゃく」より成る食物繊維性加工品に関する上記技術的事項は、食物繊維を含有する低カロリーの加工品であるという、その技術的意義、構造等からすると、飼育動物用飼料にも十分に適用が可能なものである。
そうすると、刊行物4における上記した「『のり状の炭水化物』としては、澱粉を主成分とするタピオカ、マンナンC5H10O6を主成分とするこんにゃく等を例示でき」の記載及び図1に接した当業者は、「タピオカ」と「牛皮」とが一体となった成形物である「補助食」に換えて「こんにゃく」と「牛皮」とが一体となった成形物である「補助食」を得るためには、「タピオカ」が「のり状」の状態のときに「牛皮」に混合し、該混合物を加熱して「タピオカ」を「固化」させることによって「補助食」を製造する「タピオカ」を用いた製造法に対応させて、「こんにゃく」の原料である「グルコマンナン」が「水和物である糊状物」のときに「牛皮」に混合し、該混合物を加熱して、「水和物である糊状物」の状態にある「グルコマンナン」を凝固させることによって「こんにゃく」とし、該「こんにゃく」と「牛皮」とが一体となった「補助食」を製造することを、実体を伴った製造法として容易に認識し得るものである。ここで、「タピオカ」を使用する場合は、「形を整え」た後に「100℃に調節したオーブンで約24時間焼き、乾燥させてタピオカを固化させる」ものであり、「のり状」の状態の「タピオカ」は、「牛皮」とともに「形を整え」られ、その形状を保ちつつ「乾燥」し、さらに「固化」するものである。これに対して、「水和物である糊状物」の状態にある「グルコマンナン」は、「牛皮」とともに「形を整え」られた後、その形状を保つためには加熱されて凝固し、「こんにゃく」となる工程を必須とすることは、下記の参考資料2ないし4に照らして当業者が熟知していることである。そうすると当業者は、上記「グルコマンナン」の「形を整え」た後に、該「グルコマンナン」が凝固(すなわち、不可逆的凝固)するに必要かつ十分な時間これを加熱し「こんにゃく」として完成させることを、当然のこととして行うものである。そして、「グルコマンナン」が凝固(すなわち、不可逆的凝固)して「牛皮」と一体となった「こんにゃく」が得られれば、これをさらに「オーブンで焼」いて「乾燥」させ、「固化」させるか、「こんにゃく」が得られた段階で加熱を停止するかは、ペットフードの固化をどの程度とするかにより、当業者が適宜に選択し実施することのできる設計事項にすぎない。
b.の相違点について検討するに、刊行物3には、「コンニャクマンナン等の食物繊維を高含有する原料を添加」(摘記事項3-c.)してなるペットフードが、犬に加えて猫をも対象とする(摘記事項3-b.)旨が記載されており、刊行物4の発明における「補助食」を、猫をも対象としたものとすることに格別な困難性はない。
そして上記a.及びb.の各相違点を備えた本願発明の効果も、刊行物4の発明並びに下記の各参考資料(参考資料1ないし5)に記載された技術事項及び周知技術(刊行物1及び2)から当業者が予測しうる範囲内のものであって格別なものとはいえない。
したがって、本願発明は、下記の各参考資料(参考資料1ないし5)を参酌し、刊行物4の発明並びに周知技術(刊行物1及び2)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【参考資料】
参考資料1:株式会社東京科学同人発行 化学大辞典 第1版
第5刷(1998-6-1)第649頁
「グルコマンナン」の項には、「D-グルコース(Glc)とD-マンノース(Man)の2種に糖残基を含む多糖で,代表的な原料はコンニャク(Amorphophallus konjak)の根茎である.これはコンニャクマンナンとよばれ,Glc:Manは1:2〜2:3で,β-D-1,4-結合の主鎖に1,3-結合の側鎖がある.・・・また2Glcや4Manが存在する箇所があるとされている.細部の分子構造はまだ明らかではない.」と記載されている。

参考資料2:特開平8-56619号公報
参考資料2には、「日本の伝統的な食品であるコンニャク」に関してつぎの記載が認められる。
「【0012】
先ず、本発明に従い、主原材料として新たに採用されたグルコマンナンの水和物のゲルについて説明する。
【0013】
サトイモ科の植物であるコンニャク芋は、その球茎中に多糖類のグルコマンナン(狭義)その他のマンナン類を多量に含有しており、これらは総括してグルコマンナン(広義)と称されており、また市販のこんにゃく原料であるところからコンニャクマンナン(こんにゃく精粉)とも呼ばれている。本発明の製造法において使用すべきグルコマンナンは、必ずしも純品(狭義のグルコマンナン)である必要はなく、コンニャクマンナン(広義のグルコマンナン)を使用することのできることはもちろんである。そこで、以下の説明では、特に必要のない限り、狭義および広義のグルコマンナンを一括して単に「マンナン」と略記する。
【0014】
さて、マンナンの水溶液は、Ca(OH)2 などのアルカリ性化合物(凝固剤)に接触するとゲル化し、その生成した水和ゲルを加温すると不可逆的弾性ゲルとなり、日本の伝統的な食品であるコンニャクができることは周知の通りである。より詳しくは、コンニャクは、例えば、マンナンを水中撹拌の後、マンナン粒子を完全に溶解させる(膨潤または粒子の目開きともいう)ために凡そ60〜120 分間程度放置し、次に凝固剤を添加して十分に混練してマンナン水和物のゲルとし、その後成形し、加熱して不可逆的ゲルを得るという一連の必須工程を経て製造される。
【0015】
マンナンの特性は、このようにして、例えばコンニャクを通して食材に活用されている。」

参考資料3:特開平8-70796号公報
参考資料3には、「通常」の「こんにゃく」の「製造」に関してつぎの記載が認められる。
「【0009】
先ず、グルコマンナン水和ゲルの作成について述べる。
【0010】
グルコマンナン(以下、マンナンと略記することがある)の代表例は、周知のごとく、コンニャクマンナンである。本発明においても、マンナンは、コンニャク芋から製造されるものとすることのできることはもちろんで、その種類、製造法、品質等級、その他の区別なく使用することができる。
【0011】
マンナンとしては、特に本発明者の発明に係る即溶解性グルコマンナン組成物(特開平5-38263 )を好ましいものとして挙げることができる。例えば、こんにゃくを製造するには、通常、、マンナンは水中攪拌の後、(1) マンナン粒子が完全に溶解(膨潤または目開きともいう)するための放置時間を凡そ60〜120分間程度必要とし、(2) 次に、凝固剤を添加して十分に混練し、(3) その後成形し、加熱して不可逆的ゲルを得る一連の必須工程が存在する。」

参考資料4:特開平10-286069号公報
参考資料4には、「こんにゃく」に関する「従来の技術」としてつぎの記載が認められる。
「【0002】
【従来の技術】
グルコマンナンは、別にコンニャク精粉とも呼ばれ、コンニャク芋を原料とし、これから乾燥粉末の形態に精製して市販の食用こんにゃくの原料に使用される。そのこんにゃくの製造では、(a)グルコマンナンの水中撹拌による溶解、(b)静置膨潤、(c)凝固剤の添加混練、(d)成型、(e)加熱、(f)仕上げ等の工程を主流とし、これはグルコマンナン特有の水分包括能及び不可逆的凝固、更には弾性の確保等が目的である。
【0003】
・・・
グルコマンナンは、特に断らない限り、単に「マンナン」と略称することがある。
【0004】
さらに、マンナンを水を使用し、最終的に加熱して製品の凝固を完成する上記加工食品の副原料(すなわち、即溶解性グルコマンナン組成物)として使用するときも、前記(a)を行い、その水和物である糊状物にした後、主原料に適量添加する。・・・」

参考資料5:岩波 理化学辞典 第4版 第9刷(1994-7-18)
第1261頁
「マンナン」の項には、「[mannan] (C6H10O5)n ヘミセルロースの一種.加水分解によってD-マンノースを生ずるヘキソサンをいう.」と記載されている。

参考資料6:若林重道著 「最新コンニャク栽培と加工」 再版(昭和32 年12月5日) 産業図書株式会社発行 第233-236頁
参考資料6にはつぎの記載が認められる。
参考6-a 「(1) マンナン粒子と精粉加工の関係
マンナンは0.05〜1.9ミリの大きな粒子状となって,芋の内部に無数に含まれている・・・切干乾燥されると粒子ごとに糊状に固結してきわめて堅く,粉砕機にかけても容易に粒子はこわすことができない。・・・切干を粉砕すると,細胞は破れて内部の澱粉粒子とともに飛散し,あとに堅くて重いマンナン粒子が残される。このマンナン粒子はまだ周囲に細胞膜をもっているので水の中にいれてもマンナンは溶け出さないから,さらに強い圧力で粒子同志を摩擦してみがきをかけ,細胞膜をきれいに削り取る。以上のように普通の製粉加工とは意味が違うので,特に精粉加工といわれる。」(第233頁下から第6行-第234頁第8行)
参考6-b 「精粉過程の概略
このような粉砕・研磨(ケンマ)のためには,昔から搗臼(ツキウス)が使われているが,マンナン粒子以外の細胞の破片や澱粉粒子などは,アオリや扇風機などで飛ばされて飛粉(タチコまたはトビコ)と呼ばれ,・・・最後に残ったマンナン粒子を集めて精粉と呼んでいる。飛粉は扇風機で吸引後,沈殿室を通過して戸外に排出される・・・。」(第234頁第9-16行)
参考6-c 「ミガキをかけるとは
1(丸数字)飛粉を完全に分離・除去すること。
2(丸数字)マンナン粒子の周囲の膜をきれいに削り取ること。精粉のミガキが悪くて周囲の細胞や澱粉粒子がこびりついていたり,飛粉の吸引が悪くて精粉中に混入していたりすると,次のような不都合がある。
1.このような飛粉成分も精粉の目方の中にはいるので,純粋な精粉が少なくて目方のわりに糊の粘力が出ない。
2.まじり物が多いので精粉にカビが生えやすく,マンナンが変質しやすくて貯蔵がきかない・・・。(第234頁下から第4行-第235頁第6行)
参考6-d 「膜が全面的にまんべんなく削られている精粉が最も理想的で,・・・飛粉はでき次第に除去しないと,粒子同志の摩擦の邪魔をするので,いくら時間をかけても粒子はみがかれない。」(第236頁第9行-下から第6行)

なお、審判請求人は審理再開の申立てを行っているが、申立ての理由を検討しても審理を再開する必要は認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願は、当審で通知した拒絶の理由(I)(II)(III)によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-29 
結審通知日 2004-11-09 
審決日 2005-03-11 
出願番号 特願平11-128294
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長井 啓子吉田 佳代子  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 渡部 葉子
白樫 泰子
発明の名称 飼育動物用食物繊維性飼料及びその製造法  
代理人 霜越 正夫  
代理人 佐伯 憲生  

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