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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L |
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管理番号 | 1115757 |
審判番号 | 不服2002-19912 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-10-10 |
確定日 | 2005-04-25 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第126822号「そばの葉チップを添加した麺類の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年11月28日出願公開、特開平 7-308162〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年5月16日の出願であって、平成14年9月6日付で拒絶査定がなされ、これに対して、審判請求がなされるとともに、同年10月10日付で手続補正がなされたものである。 2.平成14年10月10日付の手続補正(以下、「本件補正」という)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年10月10日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「緑色のそばの葉を摘み取り、または全草を刈り取って水洗いをした後、水分10〜6%となるまで乾燥し、その後気流式粉砕機で粉砕して8〜20メッシュ程度のそばの葉チップを得る工程と、上記そばの葉チップを小麦粉、そば粉、その他の穀粉を用いて麺類を製造する際に、それらに添加して麺類を製造することを特徴とするそばの葉チップを添加した麺類の製造方法。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「水分10%以下」を、「水分10〜6%」と限定し、同じく「8〜30メッシュ程度」を、「8〜20メッシュ程度」と限定するものであるから、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭58-56656号公報(以下、「引用例1」という)には、 (1-1)「緑色のそばの葉を摘取り、または、緑色のそばの茎を地表面より5cm乃至15cmの位置から刈取り、上記葉または茎あるいは葉及び茎を水洗、裁断し、葉の摘取りまたは茎の刈取り後24時間以内に水分が7%以下になるように乾燥し、しかる後、常法により粉砕する…そばの葉、茎を成分とする緑色粉末の製造方法。」(特許請求の範囲)、 (1-2)「本発明…の目的とするところは、そば粉や小麦粉、もち米等に添加すると、色調の高い緑色に着色され、多量の栄養分を有すると共にそば特有の血管強化作用のある飲食品、例えば、そばめん、そばまんじゅう、そばもち、うどんめん、菓子、パン、そば湯等が得られる緑色粉末の製造方法を提供するにある。」(第1頁左下欄13行〜同右下欄2行)、 (1-3)「葉や茎が新鮮さを保ち、緑色を保持するためには、摘取りや刈取り後直に乾燥工程に移すことが好ましい。……また、乾燥後の葉や茎の水分が7%以下になるようにする。水分が7%以下になるように乾燥するのは、保存性や後述する粉砕工程の便宜のためである。…このように乾燥した後、葉や茎を粉砕して緑色粉末を得る。粉砕するにはロール式製粉機、高速度粉砕機等を使用する。また、粒度は、そば粉、小麦粉、米粉等通常の穀粉と略同じ粒度、即ち、90乃至120メッシュ程度であることが好ましい。しかし、飲食品の用途によっては数十メッシュの荒い粉末としてもよく、特にその粒度は限定されない。」(第2頁左下欄6行〜同右下欄9行)、との記載があり、また、 (1-4)実施例1においては、「この緑色粉末0.6g…を、…生そば用そば粉300gに混入し、さらに、…めん用小麦粉に、水200mlを加えて、木鉢で混練し、麺棒で圧延した後、裁断して手打そばめんを製造した。」(第3頁右上欄14〜18行)と記載され、他の実施例においては、同様にしてそばの葉や茎を乾燥させた緑色粉末をそば粉、小麦粉を用いて乾そば、餅、そば湯、蒸しパン等種々の食品を製造している。 これらの記載によれば、引用例1には、「緑色のそばの葉を摘取り、または、緑色のそばの茎を刈取り、水洗、裁断し、水分が7%以下になるように乾燥し、しかる後、常法により粉砕して緑色粉末を製造し、該そばの葉の緑色粉末を、そば粉、小麦粉に混入して、そばめん、乾そば等の麺類を製造する方法」に係る発明(以下、「引用例1発明」という)が、開示されていると認めることができる。 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-14673号公報(以下、「引用例2」という)には、 (2-1)「(1)ウーロン茶粉末を混入した練り液を食品の原料粉末に加えて練り生地となし、該練り生地を加工して食品となす…ウーロン茶入り食品の製造方法。 (2)上記ウーロン茶粉末は、茶葉を冷凍粉砕し、粒度分布を20〜300メッシュフィルタ95%以上パスとなして…混入する…ウーロン茶入り食品の製造方法。……中略…… (4)上記原料粉末はそば粉、うどん粉ないし小麦粉等である…ウーロン茶入り食品の製造方法。」(特許請求の範囲)、 (2-2)「このようにして得たウーロン茶粉末を…準備して、これを約3倍量の水に溶解せしめ、…練り液を得る。この練り液を食品の原料粉末に混ぜ合わせる。上記原料粉末はそば粉であり、そば粉に上記練り液を加えて混練し、練り生地とする。…その後は通常の手順でそば麺に加工する。かくしてウーロン茶入りそば麺となる。上記練り液をうどん粉、小麦粉あるいはとうもろこし粉等に加えて練り生地とし、これらを通常の手順で加工してうどん麺や菓子類を製作することもできる。」(第2頁右上欄20行〜同左下欄15行)との記載がある。 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-336934号公報(以下、「引用例3」という)には、 (3-1)「【請求項3】 中華麺、和菓子、豆腐その他の食品の原料中に、乾燥させた緑藻青のり原料を粉砕機で30〜60メッシュの粉末状に粉砕してなる粉末青のりを5〜15%の割合で混合し、当該食品の通常の製造工程に従って食品を製造する…青のり入り食品の製造法。」(特許請求の範囲)、 (3-2)「このように各種の面で優れている緑藻青のりが食品原料として利用されなかったのは、青のりの風味を残すことを第1の目的として粗めの粉末にしか加工しなかったからであり、この状態で各種の食品中に混入させると食品中に青のり片が残存して食品全体がまだらとなり、食品の体裁が悪化するためと思料される。」(第2頁1欄40〜45行)、 (3-3)「緑藻青のりは通常天日乾燥されるが、これを熱乾燥させた後に粉砕機で30〜60メッシュの粉末に粉砕する。種々実験の結果、30メッシュよりも粗いと食品原料に添加混合した際に食品中にまだらな青斑点として残存し、体裁が悪化すると共に異物混入感を与える。」(第2頁右欄20〜24行)、 (3-4)「例えば、中華麺の製造に際しては原料粉末に対して10%程度の割合で上記粉末青のりを混合して撹拌し、他の添加物を加えて混練して、通常の中華麺の製法11aに従って生麺又は乾燥麺21を製造する。」(第3頁左欄7〜11行)との記載がある。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、両者は、「緑色のそばの葉を摘み取り、水洗いをした後、水分7〜6%となるまで乾燥し、粉砕してそばの葉粉砕物を得る工程と、上記そばの葉粉砕物を小麦粉、そば粉、その他の穀粉を用いて麺類を製造する際に、それらに添加して麺類を製造することを特徴とするそばの葉粉砕物を添加した麺類の製造方法」の点で一致し、そばの葉粉砕物が、本願補正発明では、気流式粉砕機で粉砕して得られた8〜20メッシュ程度のそばの葉チップであるのに対して、引用例1発明では、常法により粉砕して得られたそばの葉の緑色粉末である点で相違している。 (4)判断 従来から、気流式粉砕機(ジェットミル)で食品を粉砕して粉末にすることは普通に行われていることにすぎない(必要ならば、特開昭60-105468号公報参照)から、この点に格別な差異もしくは特徴があるとはいえない。 また、粉砕機により粉砕するに際して、被粉砕物を微粉砕して粉末状にするかあるいは8〜20メッシュ程度の粗に粉砕した粗粉状、換言すれば「チップ状」にするかは、上記(1-3)に「飲食品の用途によっては数十メッシュの荒い粉末としてもよく、特にその粒度は限定されない」という記載があることからも明らかなように、被粉砕物の使用目的や好みに応じて、単に粉砕度合いを調節すればよいだけのことにすぎないから、当業者が適宜行い得る設計事項にすぎない。 さらに、引用例2〜3の記載事項からも明らかなように、従来から麺類に混入させる天然着色素材粉末の大きさとしては、20〜300メッシュの広い範囲の大きさが好みに応じて適宜選択して使用されているところから、本願補正発明において特定しているような8〜20メッシュ程度、即ち20メッシュ近辺あるいはそれ以上とする点に格別な特徴があるとすることはできない。 しかも、そうすることによる効果、即ち、8〜20メッシュ程度の粗に粉砕してチップ状にしたものを食品に用いると、均一な緑色の視覚的に単調な麺類ではなく、部分的に緑色が斑に飛んで葉としての存在が視覚的に認知できる、そばの葉チップを添加した非常に斬新な感覚の麺類を提供することができるという効果について検討してみても、引用例3の上記(3-2)や(3-3)には、食品分野にあっては、30メッシュより大きい粉末、即ち、本願補正発明において特定しているような8〜20メッシュ程度をも含む粗めの粉砕状態では、各種の食品中に混入させると食品中に粉砕片が残存して食品全体が斑となって食品の体裁が悪化すると共に異物混入感を与えるため、食品原料として利用されなくなった旨の記載があるところからみても明らかなように、視覚的に食品全体が斑となるような状態は、従来から周知のことであって、いわゆる斬新な感覚といった視覚的な効果を生じるかもしれない反面で、食品の体裁を悪化させるといった感覚も生じており、しかも異物混入感を与えて結果的には望ましくないと一般的に認識されてしまっているので、本願補正発明における上記効果は、顕著な効果とはいえない。 したがって、本願補正発明は、周知事項を勘案すると、引用例1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成14年10月10日付の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という)は、平成14年8月16日付の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、下記のとおりのものである。 「緑色のそばの葉を摘み取り、または全草を刈り取って水洗いをした後、水分10%以下となるまで乾燥し、その後気流式粉砕機で粉砕して8〜30メッシュ程度のそばの葉チップを得る工程と、上記そばの葉チップを小麦粉、そば粉、その他の穀粉を用いて麺類を製造する際に、それらに添加して麺類を製造することを特徴とするそばの葉チップを添加した麺類の製造方法。」 (1)引用例 原査定の拒絶理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明における「水分10〜6%」を、「水分10%以下」とし、「8〜20メッシュ程度」を、「8〜30メッシュ程度」として、それぞれ出願当初の広い範囲とするものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに該構成要件を減縮したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、周知事項を勘案すると、引用例1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、 特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-03-02 |
結審通知日 | 2005-03-04 |
審決日 | 2005-03-16 |
出願番号 | 特願平6-126822 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A23L)
P 1 8・ 575- Z (A23L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 恵理子 |
特許庁審判長 |
河野 直樹 |
特許庁審判官 |
柿澤 惠子 田中 久直 |
発明の名称 | そばの葉チップを添加した麺類の製造方法 |
代理人 | 土橋 博司 |