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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G05B |
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管理番号 | 1115762 |
審判番号 | 不服2002-22933 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-03-18 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-11-28 |
確定日 | 2005-04-25 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第226551号「プログラマブルコントローラの制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 3月18日出願公開、特開平 9- 73304〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 出願の経緯 本件出願は、平成7年9月4日の特許出願であって、平成14年10月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成14年11月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月11日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.平成14年12月11日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年12月11日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1) 補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 一方が実行系とされ他方が待機系とされる二重化された親局側プログラマブルコントローラと、該二重化された親局側プログラマブルコントローラにそれぞれ備えられた光信号によりシリアルに情報伝送を行う伝送装置と、該伝送装置を介してシリアルに伝送される情報に基づき制御される子局側接続機器とを備えてなるプログラマブルコントローラの制御システムであって、 一方の側の入出力端に前記二重化された親局側プログラマブルコントローラのそれぞれの伝送装置が接続されると共に、他方の側の入出力端に前記子局側接続機器が並列接続された光スイッチ手段と、 実行系の親局側プログラマブルコントローラの異常時に、前記光スイッチ手段を実行系の親局側プログラマブルコントローラから待機系の親局側プログラマブルコントローラに切り換える二重化制御手段とを備え、 前記二重化された親局側プログラマブルコントローラは、前記子局側接続機器への情報伝送の際のアドレスが同一であることを特徴とするプログラマブルコントローラの制御システム。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明に「前記二重化された親局側プログラマブルコントローラは、前記子局側接続機器への情報伝送の際のアドレスが同一である」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか。)について以下に検討する。 (2) 引用文献 文献1;特開平2-91703号公報 文献2;特開平5-204873号公報 (ア) 原査定の拒絶の理由に引用された、文献1(特開平2-91703号公報)には、産業上の利用分野として、 「本発明は、プログラマブルコントローラのデータ伝送を多重化してバックアップシステムを構成・・・」と記載があり、 2頁下段左欄2行-20行には、 「PC31では、伝送装置21に“制御中である”というステータス信号と“2重化システムである”というステータス信号が送られており・・・。一方PC32では伝送装置22に“制御中でない”というステータス信号と“2重化システムである”というステータス信号が送られており・・・。 ここで、PC31または伝送装置21に異常が発生し、制御または伝送が行えなくなると、PC31は異常を検出してバス切替スイッチ4に対して切替要求を出力する。バス切替スイッチ4はバス接続をPC32と入出力モジュール5が接続されるように切替えた後、PC31に“入出力モジュールが未接続で制御中でない”というステータス信号を送り、PC32には、“入出力モジュールが接続され制御中である”というステータス信号を送り、PC32と伝送装置22側に切替える。」と記載がある。 この記載から次のことが明らかである。 (a) PC31が「制御中である」という、実行が正常な状態においては、このPC31が「実行系のプログラマブルコントローラ」ということができ、もう一方のPC32が「待機系のプログラマブルコントローラ」ということができる。 (b) PC31,32からみると、入出力モジュールは制御対象であるから、PC31,32を「親局側」、入出力モジュールを「子局側」ということができる。 (c) バス切替スイッチ4は、特に第1図を参照すれば、一方の側の入出力端に二重化された親局側プログラマブルコントローラのそれぞれの伝送装置が接続されると共に、他方の側の入出力端に子局側入出力モジュールが並列接続されたスイッチ手段ということができる。 (d) PC31に異常が発生したときには、PC31はこれを検出してバス切替スイッチ4に対して切替要求を出力するのであるから、ここには、バス切替スイッチを実行系のプログラマブルコントローラから待機系のプログラマブルコントローラに切り換える手段である「二重化制御手段」というべきものが存在しているということができる。 そうすると、これら記載等及び図面の記載を参照すれば、文献1には、 「一方が実行系とされ他方が待機系とされる二重化された親局側プログラマブルコントローラと、該二重化された親局側プログラマブルコントローラにそれぞれ備えられた信号により情報伝送を行う伝送装置と、該伝送装置を介して伝送される情報に基づき制御される子局側入出力モジュールとを備えてなるプログラマブルコントローラの制御システムであって、 一方の側の入出力端に前記二重化された親局側プログラマブルコントローラのそれぞれの伝送装置が接続されると共に、他方の側の入出力端に前記子局側入出力モジュールが並列接続されたスイッチ手段と、 実行系の親局側プログラマブルコントローラの異常時に、前記スイッチ手段を実行系の親局側プログラマブルコントローラから待機系の親局側プログラマブルコントローラに切り換える二重化制御手段とを備えたプログラマブルコントローラの制御システム。」 との発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。 (イ) 同じく原査定の拒絶の理由に引用された、文献2(特開平5-204873号公報)には、「産業上の利用分野」の欄に、 「本発明は、ループ状通信路に複数の処理装置が接続された分散型処理システムであって、ループ上の処理装置はプロセッサが二重化されている、・・・。」とあり、さらに、 「【0009】 【課題を解決するための手段】 上記問題点の解決のため、本発明では、処理装置内の二重化された各プロセッサが通信路インタフェース部に持つそれぞれの固有アドレスの他に、 (1)ACT系プロセッサであることを示すアドレス(前述した共通アドレスの意、以後共通アドレスと称する)を設け、 (2)一つの処理装置内では、二重化したプロセッサのどちらがACT系であっても2つのプロセッサで同値な共通アドレスを示し、 (3)プロセッサからループインタフェース部のアドレス制御部へアドレス切り替え指示を行う事により、プロセッサ固有のアドレスと共通アドレスを切り替える機能を設け、 (4)今までACT系プロセッサであったものが、SBY系プロセッサに移行したときは共通アドレスから固有アドレスへ即座に切り替える機能を設ける。 【0010】 即ち、待機しているSBY系プロセッサは自身の固有アドレスを有しており、ACT系プロセッサは自身の固有アドレスから切り替わった共通アドレスを有している。このため常に他の処理装置との通信とは共通アドレスを用いて行うこととした。 【0011】 【作用】 本発明により、処理装置101と通信を行う他の処理装置102〜104は、処理装置101のプロセッサACT/SBY系状態に関わらず、処理装置101に対しては常に1つのアドレス、即ち共通アドレスを以て通信を行うことが可能となる。」と記載がある。 これらの記載とともに図面の記載を参照すれば、文献2には、 「二重化されたプロセッサに関し、これと通信を行う他の処理装置は、二重化された2つのプロセッサの内のいずれであっても、これらに対しては常に1つのアドレスをもって通信を行うことができる」との技術が開示されていると認められる。 (3) 対比 本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「子局側入出力モジュール」は、本願補正発明の「子局側接続機器」に相当するので、両者は、 「一方が実行系とされ他方が待機系とされる二重化された親局側プログラマブルコントローラと、該二重化された親局側プログラマブルコントローラにそれぞれ備えられた信号により情報伝送を行う伝送装置と、該伝送装置を介して伝送される情報に基づき制御される子局側接続機器とを備えてなるプログラマブルコントローラの制御システムであって、 一方の側の入出力端に前記二重化された親局側プログラマブルコントローラのそれぞれの伝送装置が接続されると共に、他方の側の入出力端に前記子局側接続機器が並列接続されたスイッチ手段と、 実行系の親局側プログラマブルコントローラの異常時に、前記スイッチ手段を実行系の親局側プログラマブルコントローラから待機系の親局側プログラマブルコントローラに切り換える二重化制御手段とを備えたプログラマブルコントローラの制御システム。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明においては、情報伝送が「光信号によりシルアルに」行われ、これに伴って、スイッチ手段が「光スイッチ手段」であるのに対して、引用発明は、そもそも光信号によっていない点。 [相違点2] 本願補正発明においては、「二重化された親局側プログラマブルコントローラは、子局側接続機器への情報伝送の際のアドレスが同一である」のに対して、引用発明は、アドレスが同一であるとはされていない点。 (4) 相違点についての判断 [相違点1]について 制御システムの分野における情報伝送に関して、信号伝送を光信号によりシルアルに行うことは周知慣用の技術である。そして、光伝送において、切替を要するときの切替手段として光スイッチ手段を使用することも周知慣用の技術である。 [相違点2]について 文献2に記載のものは、特にプログラマブルコントローラとされてはいない二重化されたプロセッサに関するものであるが、これと通信を行う他の処理装置が、2つのプロセッサの内のいずれであっても、これらに対しては常に1つのアドレスをもって通信を行うというものである。 ここで、引用発明のものにおいて、プログラマブルコントローラが切り換わる度に、アドレスが変更になるとすれば、煩雑であることは明らかである。この場合に、そのアドレスを、文献2の技術を参考にして、子局側への情報伝送の際のアドレスが同一となるようにすることは当業者に容易である。 なお、文献2のものは、共通アドレスの外に固有アドレスを有するが、これは2つプロセッサの内の一方を特に指定したい場合に使われるものであって、通常の使用状態においては、1つのアドレスとしての共通アドレスが使われるのであるから、この状態において、情報伝送の際のアドレスが同一であるということができる。 そして、本願補正発明の作用効果も、文献1,2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、文献1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5) むすび 以上のとおり、本願補正発明は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3. 本願発明について (1) 本願発明 平成14年12月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年9月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 一方が実行系とされ他方が待機系とされる二重化された親局側プログラマブルコントローラと、該二重化された親局側プログラマブルコントローラにそれぞれ備えられた光信号によりシリアルに情報伝送を行う伝送装置と、該伝送装置を介してシリアル伝送される情報に基づき制御される子局側接続機器とを備えてなるプログラマブルコントローラの制御システムであって、 一方の側の入出力端に前記二重化された親局側プログラマブルコントローラのそれぞれの伝送装置が接続されると共に、他方の側の入出力端に前記子局側接続機器が並列接続された光スイッチ手段と、 実行系の親局側プログラマブルコントローラの異常時に、前記光スイッチ手段を実行系の親局側プログラマブルコントローラから待機系の親局側プログラマブルコントローラに切り換える二重化制御手段と を備えたことを特徴とするプログラマブルコントローラの制御システム。」 (2) 引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された文献、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載されたとおりである。 (3) 対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、「前記二重化された親局側プログラマブルコントローラは、前記子局側接続機器への情報伝送の際のアドレスが同一である」との限定を省いたものである。 そして、この限定は、前記「2.(3)」における「相違点2」に該当するので、本願発明と引用発明とを比較したときの相違点は、前記「2.(3)」における「相違点1」のみとなる。これに対する判断は、前記「2.(4)」に記載されたとおりとなり、本願発明は、文献1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) むすび 以上のとおり、本願発明は、文献1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論とおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-03-01 |
結審通知日 | 2005-03-04 |
審決日 | 2005-03-15 |
出願番号 | 特願平7-226551 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G05B)
P 1 8・ 575- Z (G05B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森林 克郎 |
特許庁審判長 |
高木 進 |
特許庁審判官 |
佐々木 芳枝 三友 英二 |
発明の名称 | プログラマブルコントローラの制御システム |
代理人 | 外川 英明 |
代理人 | 外川 英明 |