• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02M
管理番号 1115765
審判番号 不服2003-7633  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-01 
確定日 2005-04-25 
事件の表示 特願2001-179988「イオン発生装置用回路モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月26日出願公開、特開2002-374670〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年6月14日の出願であって、平成15年3月31日付けで拒絶査定がなされ、その後、同年5月1日に前記拒絶査定に対する審判の請求がなされ、同年5月30日に手続補正がなされた。その後、平成16年12月8日付けで拒絶理由が通知され、平成17年2月3日に意見書とともに手続補正がなされたものである。

2.本願発明について
本願請求項1に係る発明は、平成15年5月30日付けの手続補正書及び平成17年2月3日付け手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる(以下「本願発明」という)。

「イオン発生電極を取り付けるための電極接続部と、
前記電極接続部に対しイオン発生用の高電圧を供給するためのものであって、昇圧用の圧電トランスと、その圧電トランスの一次側駆動交流を、予め定められた電圧の直流(以下、駆動源直流という)からの変換により生成する駆動用直流-交流変換回路とを含んで構成された高電圧電源回路と、
それら電極接続部と高電圧電源回路とが一体に取り付けられる基板と、
前記基板上において、前記圧電トランスが有する圧電セラミック素子を、前記高電圧電源回路の構成部品とともにコーティングする高分子材料コーティング部とを備え、
その高分子材料コーティング部がアクリルウレタン樹脂からなり、かつ前記圧電セラミック素子に対する被覆厚さが1mm以下であることを特徴とするイオン発生装置用回路モジュール。」

3.引用文献
(1)当審における平成16年12月8日付けの拒絶の理由に引用した特開2001-46486号公報(平成13年2月20日公開。以下「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。

a.「図1は、本発明の一実施例たるイオン発生装置の外観を示すものであり、プラスチック成形体にて構成された中空のケース2を有する。」(段落【0010】)
b.「一方、主回路ユニット5は、高圧ケーブル8を介してイオン発生電極7にイオン発生のための高電圧を印加するユニットであり、絶縁性基板たるベース6(ここでは、絶縁製のプラスチックにて構成される)の板面幅方向における一方の側に寄せて配置されている。」(段落【0012】)
c.「図3は、イオン発生装置1の全体回路構成を示すもので、電源ユニット30に送風機9とイオン発生ユニット6とが、それぞれコネクタ18,20及び接続ケーブル19,21を介して接続された構成を有する。一方、電源ユニット30には、電源プラグ26及び電源コード25がコネクタ24を介して接続されており、これらを介して図示しない外部交流電源(例えばAC100V)から受電するようになっている。電源ユニット30においては、電源スイッチ3及びヒューズ23を介して受電した交流入力が、トランス16にて所定電圧(例えば、peak to peakにて24V)に降圧され、さらにダイオードブリッジ17により全波整流された後、コンデンサ11〜13と三端子レギュレータ14とを含んで構成された安定化部15により電圧が安定化されて、送風機9とイオン発生ユニット6とそれぞれ分配される。
次に、主回路ユニット5は、イオン発生電極に高電圧を印加する高電圧発生部として機能するものであり、図4に示すように、入力部36,発振部37、スイッチング部38、昇圧部39及び変換部(変換手段)40とを含む。図5は、具体的な回路構成の一例を示すものである。昇圧部39は、圧電トランス70を含んで構成される。これは、圧電セラミック素子71に入力側端子72a,73aと出力側端子74aとを形成し、その入力側端子72a,73aからの一次側交流入力電圧を、圧電セラミック素子71の機械振動を介して一次側交流電圧よりも高圧の二次側交流電圧に変換し、出力側端子74aからイオン放出電極に向けて出力するものである。一方、変換部40は、イオン発生電
極7への電圧印加極性が負の側に優位となるように、圧電トランスの二次側交流出力を変換するものである。これにより、イオン発生電極7は主に負イオン発生源として機能することとなる。」(段落【0013】【0014】)
d.「次に、変換部40は、整流手段としてのダイオード76を含んでいる。このダイオード76は、イオン発生電極7を負極性にチャージアップさせる向きの電荷移動は許容し、これと逆向きの電荷移動を阻止するように、圧電トランス70の二次側交流出力を整流する役割を果たす。この実施例では、圧電トランス70の出力側端子74aからの出力線74bの末端が接地され、その中間からイオン発生電極7が分岐して接続されるとともに、ダイオード76はイオン発生電極7の分岐点よりも下流側に接続されている。」(段落【0025】)
e.「なお、本実施例では、図6に示すように、一次側交流入力波形生成回路として機能する入力部36、発振部37及びスイッチング部38と、昇圧部39とが絶縁性基板たる回路基板5aに組み付けられて主回路ユニット5を形成している。また、該主回路ユニット5は、ベース6d上において圧電トランス7の実装側が表側となるように配置され、当該圧電トランス7の実装側がモールドされる形で絶縁性樹脂6b(例えば、シリコン樹脂等である)にてベース6d上に一体化される。一方、イオン発生電極7は、その主回路ユニット5からのリード線たる高圧ケーブル8を介して、モールドされた圧電トランス7の出力側端子74a(図5)に接続されている。本実施例では、ベース6dの板面から凸設されるモールド枠6a内に主回路ユニット5が配置され、該モールド枠6a内を絶縁性樹脂6bにて充填する形でモールドを行っている。
主回路ユニット5は、高圧が発生する圧電トランス7の実装側が絶縁性樹脂6bでモールドされることで、放電あるいは漏電による回路(特に発振部37やスイッチング部38)の誤動作や損傷が効果的に防止される。また、主回路ユニット5が、イオン発生電極7とともにベース6dと一体化されてイオン発生ユニット6を形成することから、イオン発生装置1の組立が大幅に簡略化され、イオン発生装置の種々の応用製品の設計も簡単に行うことができる。そして、この実施例では、モールド用の絶縁性樹脂6bを主回路ユニット5をベース6dと一体化するための結合材としても利用しているので、イオン発生ユニット6の構造のさらなる簡略化、ひいては組立工数の削減が達成されている。」(段落【0027】【0028】)

(2)以上の記載及び図面の記載、並びに技術常識を参酌すると、引用文献において以下のことがいえる。
ア.上記(1)c、eより、入力部36、発振部37及びスイッチング部38からなる一次側交流入力波形生成回路に入力される電圧は、安定化された電圧の直流であり、該一次側交流入力波形生成回路において直流-交流変換されていることは明らかである。
イ.圧電トランス70を含む昇圧部39と、一次側交流入力波形生成回路は、イオン発生用の高電圧を供給するためのものであるから、高電圧部といえる。

(3)以上から、引用文献には次の発明が記載されていると認められる。

「イオン発生電極7が接続される出力線74bと、
前記出力線74bに対しイオン発生用の高電圧を供給するためのものであって、昇圧用の圧電トランス70と、その圧電トランス70の一次側駆動交流を、安定化された電圧の直流からの変換により生成する直流-交流変換機能を備えた一次側交流入力波形生成回路とを含んで構成された高電圧部と、
それら出力線74bと高電圧部とが一体に取り付けられる回路基板5aと、
前記回路基板上において、前記圧電トランス70が有する圧電セラミック素子71を、前記高電圧部の構成部品とともにモールドする絶縁性樹脂部とを備えたイオン発生装置用主回路ユニット。」(以下「引用発明」という)

4.対比

本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「直流-交流変換機能を備えた一次側交流入力波形生成回路」「高電圧部」「回路基板5a」「イオン発生装置用主回路ユニット」は、それぞれ前者の「駆動用直流-交流変換回路」「高電圧電源回路」「基板」「イオン発生装置用回路モジュール」に相当する。また後者の「安定化された電圧の直流」の電圧値は予め規定されているものであるから、前者の「予め定められた電圧の直流」に相当する。また、後者の「イオン発生電極7が接続される出力線74b」も前者の「イオン発生電極を取り付けるための電極接続部」もイオン発生電極が接続する部分である点で共通する。また、後者も前者も、基板上の圧電セラミック素子を含む回路構成部品が、基板周辺空間において、樹脂で覆われている点で共通する。
したがって、両者は
[一致点]
「イオン発生電極が接続する部分と、
前記部分に対しイオン発生用の高電圧を供給するためのものであって、昇圧用の圧電トランスと、その圧電トランスの一次側駆動交流を、予め定められた電圧の直流(以下、駆動源直流という)からの変換により生成する駆動用直流-交流変換回路とを含んで構成された高電圧電源回路と、
それらイオン発生電極が接続する部分と高電圧電源回路とが一体に取り付けられる基板と、
前記基板上において、前記圧電トランスが有する圧電セラミック素子と、前記高電圧電源回路の構成部品とが、基板周辺空間において樹脂で覆われているイオン発生装置用回路モジュール。」
で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
前者のイオン発生電極が接続する部分が、「イオン発生電極を取り付けるための電極接続部」であるのに対し、後者はそのような電極接続部を備えているかどうか不明な点。
[相違点2]
前者の基板周辺空間において樹脂で覆われている構成が、「前記基板上において、前記圧電トランスが有する圧電セラミック素子を、前記高電圧電源回路の構成部品とともにコーティングする高分子材料コーティング部とを備え、
その高分子材料コーティング部がアクリルウレタン樹脂からなり、かつ前記圧電セラミック素子に対する被覆厚さが1mm以下である」のに対し、後者は「前記回路基板上において、前記圧電トランス70が有する圧電セラミック素子71を、前記高電圧部の構成部品とともにモールドする絶縁性樹脂部」である点。

5.判断
(1)上記相違点1について検討する。
リード線やケーブルと、基板とを電気的に接続する際、基板上に該リード線やケーブルを電気的に接続するための接続部を設けることは、当業者が当然行う設計事項に過ぎない。したがって、引用発明において、基板上にイオン発生電極を取り付けるための電極接続部を設けることは、当業者が容易になし得たものである。

(2)上記相違点2について検討する。
電子回路の技術分野において、防湿や耐久性を向上させるために回路基板上の電子回路部品に、アクリル樹脂やウレタン樹脂などでコーテイングを施すことは、以下に示すように従来周知の技術である(以下、「周知技術1」という)。

ア.特開2000-59011号公報には、「1つは図11に示すように電子回路基板表面に薄い樹脂のコーティング11を行なう方法(従来技術1)で、主としてウレタンやアクリル樹脂が使用される。樹脂単体では流動性がないため溶剤に溶かして用いる。溶剤としてはトルエンやアルコール類が用いられている。コーティングの膜厚は10〜30μm程度である。」(段落【0003】あわせて図11も参照のこと)との記載がある。
イ.特開平11-68296号公報には、「また、実施例においては、封止樹脂10の樹脂母材20を構成する樹脂材料にシリコーン樹脂或いはエポキシ樹脂が用いられていたが、ウレタン樹脂やフェノール樹脂等の他の樹脂が用いられてもよい。・・・また、実施例においては、封止樹脂10で電子部品12を封止するに際して、マイラーで作った型枠内に液状樹脂を流し込み、或いはディスペンサで塗布していたが、液状樹脂は、ディッピング、スプレー、刷毛塗り等の種々の方法で塗布し得る。なお、液状樹脂の粘度は塗布方法に応じて溶剤の種類や量で適宜調節される。 また、実施例においては、封止樹脂10の厚みが電子部品12上において1(mm) 程度にされていたが、その厚みは電子部品12の保護に十分な機械的特性を有する例えば0.5 (mm)以上の範囲で適宜設定される。」(段落【0031】-【0034】、あわせて図1も参照のこと)との記載がある。
ウ.特開平10-335866号公報には、「図6は本発明の第6の実施例の回路基板の放熱構造を説明するための図で、(a)は上面図、(b)はA-A断面図である。以下、図に従って説明する。本例は電子回路部の耐湿性を向上させるために樹脂コーティングした場合の放熱構造である・・・尚、被覆用の熱伝導の良い樹脂層7aとしてエポキシ樹脂、熱伝導の悪い樹脂層7bとしウレタン樹脂等を使用する。」(段落【0029】-【0031】、あわせて図6も参照のこと)との記載がある。
エ.特開平11-340285号公報には、「さらに、回路基板3と入力用ケーブル8との接続部には、シリコン樹脂、アクリル樹脂又はウレタン樹脂等のモールド材をコーティングして、防湿、防塵及び機械的接触による損傷の防止等を行うことが望ましい。このようなモールド材は、回路基板3と後述する液晶パネルとの接続部、液晶駆動用IC6と回路基板3との接続部、電子部品2と回路基板3との接続部等に関しても同様に用いることができる。」(段落【0042】)との記載がある。

また、圧電素子にコーティングを施すことも従来周知の技術(例として、実願昭61-159610号(実開昭63-65316号)のマイクロフィルム、特開平4-356980号公報、特開平8-44957号公報、特開2001-88296号公報等を参照のこと)に過ぎないところ、引用発明に前記周知技術1のコーティングを適用できないとする特段の事由も見あたらない。
また、コーティングの厚さをどの程度にするかは、要求される性能、耐久性などを勘案しつつ、当業者が実験等により適宜決定すべき設計事項に過ぎず、さらに1mm程度又はそれ以下の数値範囲にすることは、前記ア及びイの公報に記載されているとおり、当業者が通常採用する範囲で格別なものでもない。そして、コーティング材や塗布材としてのアクリルウレンタン樹脂も慣用技術であるところ、引用発明に周知技術1を適用する際、アクリル樹脂やウレンタン樹脂のコーティング材をアクリルウレタン樹脂とし、厚さを1mm以下とすることに格別の困難性はない。

(3)また、本願発明を全体としてみても、引用発明及び前記周知慣用技術から予測される以上の格別の効果を奏するものでもない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-03 
結審通知日 2005-03-03 
審決日 2005-03-15 
出願番号 特願2001-179988(P2001-179988)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川端 修  
特許庁審判長 三友 英二
特許庁審判官 安池 一貴
岩本 正義
発明の名称 イオン発生装置用回路モジュール  
代理人 菅原 正倫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ