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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02B
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 E02B
管理番号 1115813
審判番号 不服2004-19352  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-12-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-16 
確定日 2005-04-28 
事件の表示 特願2000-163348「透過型砂防ダム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月14日出願公開、特開2001-342618〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年5月31日の出願であって、平成16年8月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月15日受付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年10月15日受付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年10月15日受付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「山間部に設けた、山地からの土砂流を透過させつつ転石を受け止める透過型砂防ダムであって、前記山間部にブロックを積み上げ、前記ブロックにロープ材製のネットを張設し、前記ネットは、横ロープ材と縦ロープ材とからなり、前記ロープ材の交点には、交点用緩衝具を取付け、前記ネットを構成する前記ロープ材と前記ブロックとの間に端部用緩衝具を取付け、前記ネットを構成する上下の横ロープ材間に傾斜ロープ材を取付けたことを特徴とする、透過型砂防ダム。」
と補正された。
上記補正は、請求項2を技術的に限定したものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願の補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
(ア)原査定の拒絶の理由2に引用された刊行物である、実願平1-93828号(実開平3-36021号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、1頁19行〜2頁2行に「この考案は、山間地に発生する土石流の減勢または土石流によって流下する土石を貯留することを目的としたケーブルネットを用いた透過式砂防ダムに関するものである。」、8頁17行〜9頁9行に「第1図はこの考案の第1実施例に係るケーブルネットを用いた透過式砂防ダムを示すものであって、前述のように構成された主ケーブル10からなる3本以上の横主ケーブル10Aと多数の縦主ケーブル10Bとが格子状に配置され、かつ横主ケーブル10Aと縦主ケーブル10Bとの交差部が結合されて、主ケーブル格子体6が構成され、その主ケーブル格子体6は土石流方向にほぼ直交する面上に位置するように配置され、さらに各横主ケーブル10Aの両端部は、コンクリートからなる砂防ダム本体1の左右両側に設けられた反力支持構造物5に対し取外し可能な連結装置13を介して連結されている。」、11頁15行〜12頁10行に「第7図は横主ケーブル10Aの端部と反力支持構造物5との取外し可能な連結装置13の他の例を示すものであって、金属製ボックス21の一端部が反力支持構造物5に対しボルト19により固定され、かつボックス21の他端部に摺動自在に嵌挿された支持杆9の基端部にフランジ11が設けられ、そのフランジ11とボックス21の他端部との間に緩衝用ばね22が介在され、さらに横主ケーブル10Aの端部に取付けられたソケット17と前記支持杆9の先端部に連設されたアイプレート12とは、取付ピン20により着脱自在に連結されている。第7図に示す取外し可能な連結装置13は緩衝機能を備えているので、横主ケーブル10Aに大きな撓み性を持たせて、土石流4の衝撃荷重の吸収性を向上させることができる。」と記載されており、第7図に示された、横主ケーブル10Aの端部と反力支持構造物5との間の連結装置13は、緩衝機能を備えているので、「端部用緩衝具」といえるから、これらの記載および、特に第1,7,8図を参照すると、引用例1には、「山間部に設けた、山地からの土砂流を透過させつつ転石を受け止める透過式砂防ダムであって、前記山間部のコンクリートからなる砂防ダム本体の左右両側に反力支持構造物を設け、前記反力支持構造物にケーブル製のネットを張設し、前記ネットは、横主ケーブルと縦主ケーブルとからなり、前記ケーブルの交差部は結合され、前記ネットを構成する前記横主ケーブルと前記反力支持構造物との間に端部用緩衝具を取付けた、透過式砂防ダム」という発明が記載されていると認めることができる。
(イ)同、特公昭47-51170号公報(以下、「引用例2」という。)には、透過式の砂防水制ダムに関し、1頁2欄10〜20行に「第1図はテンション式であり、図に於て1は緊張ワイヤー2のアンカーであって、地形、地質状況によって・・・コンクリートブロック等を使用し、・・・ワイヤーロープ2はダムの主体をなすものであり、アンカー1により多数条緊張し、・・・3はワイヤーロープ2に張った水制網で、・・・ワイヤーロープ群で構成する場合もある。」と、第1図とともに記載されている。

(3)対比
補正発明と引用例1記載の発明とを比較すると、引用例1記載の発明の「ケーブル(製)」、「横主ケーブル」、「縦主ケーブル」、「透過式砂防ダム」は、それぞれ、補正発明の「ロープ(製)」、「横ロープ材」、「縦ロープ材」、「透過型砂防ダム」に相当し、引用例1記載の発明の「反力支持構造物」と、補正発明の「積み上げたブロック」とは、ともに「アンカー部」として機能するものであるから、両者は、「山間部に設けた、山地からの土砂流を透過させつつ転石を受け止める透過型砂防ダムであって、前記山間部にアンカー部を設け、前記アンカー部にロープ材製のネットを張設し、前記ネットは、横ロープ材と縦ロープ材とからなり、前記ネットを構成する前記ロープ材と前記アンカー部との間に端部用緩衝具を取付けた、透過型砂防ダム」の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:アンカー部が、補正発明では、積み上げたブロックであるのに対して、引用例1記載の発明では、何で構築した反力支持構造物か不明である点。
相違点2:ロープ材の交点には、補正発明では、交点用緩衝具を取付けているのに対して、引用例1記載の発明では、そのような構成を有していない点。
相違点3:補正発明では、前記ネットを構成する上下の横ロープ材間に傾斜ロープ材を取付けたのに対して、引用例1記載の発明では、そのような構成を有していない点。

(4)判断
相違点1について検討するため、引用例2をみると、引用例2には、透過式の砂防水制ダム(補正発明の「透過型砂防ダム」に相当)において、ワイヤーロープ群で構成した水制網(補正発明の「ロープ材製のネット」に相当)を張った緊張ワイヤーのアンカーを、ブロックを使用して構築することが記載されており、この技術を、引用例1の反力支持構造物の構築に採用するに際し、ブロックを積み上げることにより、相違点1における補正発明のようにすることは、当業者が容易に想到できた事項にすぎない。
つぎに、相違点2について検討すると、衝撃吸収用ネットにおいて、ロープの交点に交点用緩衝具を取り付けることは、周知技術にすぎず(必要なら、特開平8-27735号公報、特開平7-252808号公報、特開平8-92918号公報等参照)、相違点2に係る構成は単なる周知技術の付加にすぎない。
最後に、相違点3について検討すると、一般的に、二部材間の変位防止のため二部材間に斜材を配することは、例をあげるまでもなく周知技術にすぎず(なお、ワイヤの例として、特開平10-212718号公報等もある)、横ロープ材の上下方向へ向けた変位防止が縦ロープ材のみでは不足である場合等に、必要に応じて傾斜ロープ材を配することは、適宜なしうることにすぎない。
そして、補正発明の作用効果も、引用例1記載の発明および周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、補正発明は、引用例1、2記載の発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年10月15日受付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】山間部に設けた、山地からの土砂流を透過させつつ転石を受け止める透過型砂防ダムであって、前記山間部にロープ材製のネットを張設し、前記ロープ材と地山との間に緩衡具を取付けることを特徴とする、透過型砂防ダム。
【請求項2】ないし【請求項5】(記載を省略)」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(1)引用先願発明
原査定の拒絶の理由1に引用され、本願の出願日前の特許出願(以下、「先願」という。)であって、その出願後に出願公開された、特願平11-66354号(特開2000-257049号参照)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、特許請求の範囲に「【請求項1】少なくとも一個所に伸縮材を連結した複数本の綱状の張力材を、渓岸や渓床等の接地部に固定支持した支持アンカーに連結することにより交差張設して網状体としたことを特徴とする流下物捕捉構造。・・・【請求項6】 請求項1において、予め編まれた網状体の端部を支持アンカーに連結したことを特徴とする流下物捕捉構造。」、段落【0008】に「上記綱状の張力材3は金属線、天然繊維、合成繊維もしくはそれらの組み合わせ等による綱や索等の微小の伸び能力を有する紐状体であり、例えば図3に示す如く、金属線、天然繊維もしくは合成繊維を捩ったロープ5であり、必要に応じて外周をゴム等の耐磨耗性、耐衝撃性の被覆材6で覆ったもの等である。また、上記伸縮材4は、張力材3にかかる衝撃力や静的荷重のエネルギー吸収力と伸び能力を有する構造であればよく、例えば図4に示すような、外筒7内にスプリングやゴム等の弾性材8を内蔵させ、連結材9に引張力を与えた構造のようなもの等弾性を発生する構造であればどのような構造でもよい。」、段落【0009】に「10は水平材2を渓岸や渓床等の接地部1に支持固定された支持アンカーであり、上記水平材2の端部に取り付けた伸縮材4が連結される。なお、支持アンカー10に伸縮材4を取り付け、その伸縮材4に張力材3を連結するようにしても全く同様であり、全体として水平材2が支持アンカー10と一体となるように連結されていればどのような構成でもよい。また、図示する如く、予め将来の嵩上げ用の支持アンカーを接地しておくとよい。」、段落【0023】に「【発明の効果】以上詳細に説明した本発明によると、綱状の張力材にって網状体を構成し、伸縮材を介して渓岸や渓床の接地部に固定配置した支持アンカーに連結して張設することにより川の断面を覆って土砂や流木等の流下物を捕捉するようにしたことにより、原則として網目より小さい流下物は透過流出され、大きな流下物の衝突エネルギーを網状体および伸縮材で吸収させて構造体に加わる荷重を大幅に減衰させることができ、ひいては、軽量で建設費が安く、短期間の施工期間とすることができる効果を有する。」、段落【0026】に「・・・山間部での建設が可能であり、・・・」と記載されており、これらの記載を含む明細書全体及び図面から、先願明細書には、「山間部に設けた、上流からの網目より小さい流下物を透過させつつ網目より大きい流下物を受け止める流下物捕捉構造であって、前記山間部にロープ材製の網状体を張設し、前記ロープ材と渓岸や渓床等の接地部に固定支持した支持アンカーとの間に衝突エネルギーを吸収する伸縮材を取付ける流下物捕捉構造」という発明(以下「先願発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(2)対比・判断
本願発明と、上記先願発明を比較すると、先願発明の「上流からの網目より小さい流下物」、「網目より大きい流下物」、「網状体」、「渓岸や渓床等の接地部」、「衝突エネルギーを吸収する伸縮材」、「流下物捕捉構造」は、それぞれ、本願発明の「山地からの土砂流」、「転石」、「ネット」、「地山」、「緩衡具」、「透過型砂防ダム」に相当し、先願発明のロープと、渓岸や渓床等の接地部(地山)に固定支持された支持アンカーとはの間には、衝撃エネルギーを吸収する伸縮材が取付けられているから、ロープは実質的に地山に取付けられているといえ、両者に相違する構成はない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一であり、しかも、本願の発明者が先願発明をした者と同一であるとも、また、本願の出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-28 
結審通知日 2005-03-01 
審決日 2005-03-14 
出願番号 特願2000-163348(P2000-163348)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (E02B)
P 1 8・ 121- Z (E02B)
P 1 8・ 575- Z (E02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菊岡 智代  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 南澤 弘明
▲高▼橋 祐介
発明の名称 透過型砂防ダム  
代理人 山口 朔生  
代理人 山口 朔生  
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