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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1115820
審判番号 不服2003-14261  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-24 
確定日 2005-04-28 
事件の表示 平成11年特許願第338921号「ATM制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月 8日出願公開、特開2001-156799〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年11月30日の出願であって、平成15年6月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年7月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年7月24日付けの手続補正について
(2-1)補正後の本願に記載された発明
本件補正により、請求項1-7が削除され、請求項8および9がそれぞれ新たな請求項1および2となっており、これは請求項の削除にあたるので、上記補正は、特許法第17条の2第4項第1号に適合する。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年7月24日付けの手続補正は請求項の削除であり、特許法第17条の2第4項第1号に適合するので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年7月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】非同期転送モードによるデータ転送を制御するための制御信号を授受するためのATM外部インタフェ-ス端子を複数個持ちかつ上位装置からの指示に応じて装置全体を制御する制御部と、前記非同期転送モードによるデータ転送を行う伝送路に接続するためのATMインタフェ-スとの間で授受されるデータを記憶する送受信デ-タ記憶手段とを含むATM制御装置であって、
前記データを暗号化するための暗号用データを記憶する暗号用デ-タ記憶手段と、
前記データ48バイトを前記暗号用デ-タ記憶手段に記憶された暗号用デ-タを用いて暗号化する暗号化処理手段と、
前記暗号化処理手段で暗号化された48バイトのデータを格納したATMセルのヘッダ部内PTI(Packet Type Identifier)部に暗号化済フラグを付加する暗号化済フラグ処理機能を含むATMインタフェース制御手段とを有し、
前記暗号用デ-タ記憶手段は、前記上位装置から送られてくる暗号用複数バイトのデ-タを格納する格納手段と、前記格納手段に格納されたデ-タを予め設定された一定規則に基づいて48バイトに展開された暗号用デ-タを記憶する記憶手段とを含み、
前記一定規則は、前記制御部の指示に応じて正順の読出し及び逆順の読出しを含む種々の組合わせからなることを特徴とするATM制御装置。」

(2)引用例に記載された発明

原審の拒絶の理由に引用された特開平11-41245号公報(以下、「引用例」という。)には、次のような記載がある。

イ)「【0024】【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の秘匿通信方式が適用されたネットワークの一例の構成図である。ここでは、固定長パケットを転送する通信方式としてATM を採り上げている。また、秘匿方式としては、疑似乱数を使用した暗号化を採用している。
【0025】端末11および12は、それぞれATM 端末であり、転送すべきデータをセルに格納して送出する機能、及び受信したセルからデータを再生する機能を有している。端末13および14は、非ATM 端末であり、それぞれCLAD(セル組立・分解機能)15および16を介してATM ネットワーク17に収容される。ATM ネットワーク17は、1台以上のATM 交換機が互いに接続された構成であり、各セルのヘッダに設定されているルーティング情報に従ってそのセルを転送先に転送する。
【0026】秘匿装置21〜24は、それぞれ接続する端末から送出されたセルを必要に応じて暗号化してATM ネットワーク17に送出し、また、暗号化されたセルをATM ネットワーク17から受信すると、そのセルを復号して接続する端末に渡す。秘匿装置21〜24は、それぞれ乱数発生器25および乱数加算器26を有する。乱数発生器は、指定された規約(または、鍵あるいはシード)に従って疑似乱数を生成する。乱数加算器26は、接続する端末またはATM ネットワーク17から受信したセルに格納されているデータと乱数発生器25により生成された疑似乱数との排他論理和をビット毎に求めて順番に出力する。
【0027】図2(a) は、疑似乱数を用いた暗号方式の概念を説明する図である。この暗号方式では、送信側および受信側に互いに同じ乱数発生器を設け、それぞれ同じ規約に従って動作するように設定する。即ち、送信側および受信側において互いに同じ疑似乱数を発生させる。そして、送信側では、ビット毎に平文(暗号化されていないデータ)と疑似乱数との排他論理和を演算してその結果を暗号文(暗号化されたデータ)として出力する。一方、受信側では、ビット毎に暗号文と疑似乱数との排他論理和を演算することにより平文を得る。」(第5頁第7欄第36行〜第8欄第23行)

ロ)「【0042】図6(a) は、第1の実施形態の秘匿装置のブロック図である。ここでは、図1に示す秘匿装置21〜24の中の秘匿装置21および22を採り上げて各秘匿装置の構成および動作を説明する。尚、図6(a) では、秘匿装置21においては暗号化機能のみを、秘匿装置22においては復号化機能のみを描いているが、秘匿装置21〜24は、それぞれ暗号化機能および復号化機能を備えている。また、以下では、端末11から端末12へ順番にセル1,セル2,セル3,...を暗号化して転送するものとする。
【0043】第1の実施形態では、暗号化処理に際して、図6(b) に示すように、各セルのペイロードにカウンタ情報を挿入する。カウンタ情報は、例えば、2バイトであり、送出されるセルの順番(1,2,3,...)を示す。すなわち、セル1,セル2,セル3,...には、それぞれカウンタ情報として1,2,3,...が設定される。このため、各セルのペイロードには、46バイトの暗号文が格納されることになる。そして、この暗号文およびカウンタ情報が格納されたセルがATM ネットワーク17に送出される。以下、暗号化処理を行う秘匿装置21の構成および動作を図7を参照しながら説明する。」(第7頁第11欄第9行〜第30行)

以上の記載を総合し、技術常識を勘案すると、引用例には、
「ATMによるデータ転送を行うATM装置で、送信側と受信側で互いに同じ疑似乱数を発生させ、送信側では、ビット毎に46バイトの平文と疑似乱数との排他論理和を演算して暗号化し、セルの順番を示す2バイトのカウンタ情報を付加して、その結果を出力し、受信側では、ビット毎に暗号文と疑似乱数との排他論理和を演算して平文を得るATM装置」の発明(以下、「引用例に記載された発明」という。)

例えば、原審拒絶の理由に引用された特開平7-170280号公報(以下、「周知例1」という。)には、次のような記載がある。

イ)「【0020】図2は、IPネットワークNET-1のノードAからIPネットワークNET-3のノードCへ暗号化通信を行なうときのデータの流れを示すフローチャートである。ここでは、暗号化サーバS1とS2の暗号化キー(キーコード)は固定されている場合について説明する。
【0021】まず、初期化時、ノードAはローカルエリアネットワークの暗号化サーバS1のアドレスを登録し、ノードCはローカルエリアネットワークの暗号化サーバS2のアドレスを登録する。
【0022】ノードAは、1パケットの送信要求が発生すると、暗号化サーバS1へ「暗号化要求フラグ」を立てて生データを送信する。暗号化サーバS1は、ノードAから受信した生データを暗号化キーを用いて予め設定されている暗号化方式によって暗号化し、「暗号化済フラグ」を立ててノードAへ返送する。
【0023】そして、ノードAは暗号化サーバS1から受信した暗号化データを暗号化データを示す情報を付加してIPネットワークNET-3のノードCへ送信(転送)する。その暗号化データであることを示す情報は、暗号化データのパケットのヘッダ部に格納すると良い。
【0024】一方、ノードCは、ノードAから受信したパケットのヘッダ部を調べて、暗号化データであることを示す情報が格納されていれば、そのパケットが暗号化データであると判断し、その暗号化データに「解読要求フラグ」を立てて暗号化サーバS2へ転送する。暗号化サーバS2は、ノードCから受信した暗号化データを暗号化キーを用いて解読して復元し、「解読済フラグ」をセットしてノードCへ返送する。ノードCは、暗号化サーバS2から復元されたデータを得る。
【0025】このようにして、ネットワーク毎にデータの暗号化及びその解読を行なう暗号化サーバを設け、その暗号化サーバがネットワーク上の各端末装置に送受信されるデータの暗号化及びその解読を一括して処理するので、各端末装置がデータの暗号化及びその解読に係る処理を行なわずに済む。」(第3頁第4欄第17行〜第4頁第5欄第2行)

上記記載によれば、「パケットのヘッダ部に暗号化データであることを示す情報を付加する」ことは、周知である。

例えば、特開平11-154951号公報(以下、「周知例2」という。)には、次の事項が記載されている。

イ)「【請求項1】 上位装置とATMインタフェースとの間に介在し、この上位装置とこのATMインタフェース間のデータ送受信を制御するATM制御装置において、
前記上位装置との間で送受信するデータを一時記憶する第1の送受信データ記憶手段、
前記ATMインタフェースとの間で送受信するデータを一時記憶する第3の送受信データ記憶手段、
前記上位装置から前記ATMインタフェースへ送信するデータのうち、圧縮を指示されたデータはこれを圧縮し、前記ATMインタフェースから圧縮済みのデータを受信した場合はこの圧縮済みの受信データを伸張するデータ圧縮伸張手段、
前記第1の送受信データ記憶手段と前記第3の送受信データ記憶手段との間に介在し、前記第1の送受信データ記憶手段又は前記第3の送受信データ記憶手段からのデータ或は前記データ圧縮伸張手段により圧縮又は伸張された送受信データを一時記憶する第2の送受信データ記憶手段、
送信データの圧縮を行うか否かの決定により、前記第1の送受信データ記憶手段内のデータを前記データ圧縮伸張手段に送り、このデータ圧縮伸張手段で圧縮したデータを前記第2の送受信データ記憶手段に送るか、又は前記第1の送受信データ記憶手段内のデータを直接前記第2の送受信データ記憶手段に送るかを制御する制御部、
前記第2の送受信データ記憶手段内のデータにATMヘッダ部を付加して前記第3の送受信データ記憶手段に送り、前記ATMインタフェースから前記第3の送受信データ記憶手段が受信したデータのATMヘッダ部を検査し、当該データが圧縮済みのデータであるか否かを判定した上で該ATMヘッダ部を除去したデータを前記第2の送受信データ記憶手段に送り、前記判定結果に従って当該データを前記データ圧縮伸張手段で伸張して前記第1の送受信データ記憶手段に送るか、直接前記第1の送受信データ記憶手段に送るかを制御するATMインタフェース制御部、を備えたATM制御装置。」(第2頁第1欄第2行〜第37行)

ロ)「【0009】【課題を解決するための手段】
本発明のATM制御装置は、ATM制御装置内に3段のデータバッファ(第1,第2,第3の送受信データ記憶手段)を設けて送受信データ転送の揺らぎを充分に吸収し、また制御部,データ圧縮伸張手段,ATMインタフェース制御部を設けて、送受信データの転送処理の大部分はATM制御装置内で処理し、上位装置のCPUの負荷を軽減する構成とした。また数値データを転送するような場合、1桁の10進数、0〜9は4ビットの2進数で表され、これが数値データであることを表す4ビット「0011」(10進数の3)が前半部に付加されて1バイトの数値データを構成しているので、各バイトの前半部を除去し、連続する2バイトの後半部を連結して1バイトに圧縮して転送し、ATMヘッダ部に圧縮済みデータであることを示すフラグを設定しておけば、受信側で容易にこれを伸張することができる。
【0010】すなわち、上位装置とATMインタフェースとの間に介在し、この上位装置とこのATMインタフェース間のデータ送受信を制御する本発明のATM制御装置は、
前記上位装置との間で送受信するデータを一時記憶する第1の送受信データ記憶手段、
前記ATMインタフェースとの間で送受信するデータを一時記憶する第3の送受信データ記憶手段、
前記上位装置から前記ATMインタフェースへ送信するデータのうち、圧縮を指示されたデータはこれを圧縮し、前記ATMインタフェースから圧縮済みのデータを受信した場合はこの圧縮済みの受信データを伸張するデータ圧縮伸張手段、
前記第1の送受信データ記憶手段と前記第3の送受信データ記憶手段との間に介在し、前記第1の送受信データ記憶手段又は前記第3の送受信データ記憶手段からのデータ或は前記データ圧縮伸張手段により圧縮又は伸張された送受信データを一時記憶する第2の送受信データ記憶手段、
送信データの圧縮を行うか否かの決定により、前記第1の送受信データ記憶手段内のデータを前記データ圧縮伸張手段に送り、このデータ圧縮伸張手段で圧縮したデータを前記第2の送受信データ記憶手段に送るか、又は前記第1の送受信データ記憶手段内のデータを直接前記第2の送受信データ記憶手段に送るかを制御する制御部、
前記第2の送受信データ記憶手段内のデータにATMヘッダ部を付加して前記第3の送受信データ記憶手段に送り、前記ATMインタフェースから前記第3の送受信データ記憶手段が受信したデータのATMヘッダ部を検査し、当該データが圧縮済みのデータであるか否かを判定した上で該ATMヘッダ部を除去したデータを前記第2の送受信データ記憶手段に送り、前記判定結果に従って当該データを前記データ圧縮伸張手段で伸張して前記第1の送受信データ記憶手段に送るか、直接前記第1の送受信データ記憶手段に送るかを制御するATMインタフェース制御部を備えることとした。
【0011】また前記制御部での送信データの圧縮を行うか否かの決定は、前記上位装置からの指示によることを特徴とする。」(第3頁第4欄第10行〜第4頁第5欄第12行)

ハ)「【0033】図3において、制御線51、53(52)上の信号論理は″1″であり、FIFO3には1〜96の番号が付けられている96バイトのデータが格納されている。各バイト内の数字は16進2桁で表した0〜9の数値である。数値データは、それが数値データであることを示すため16進数の最初の桁に3(ビットパターン「0011」)を付加してある。従ってこの最初の桁の3は省略して(圧縮して)伝送し、ATMヘッダ部に圧縮済みフラグを入れておくだけで、データ受信後、容易にこれを再生(伸張)することができる。
【0034】FIFO3の第1〜第4バイトに30、31、32、33があった場合、最初の桁の3を省略し、省略後の第1、第2バイトの0と1を連結してセレクタ付き送受信データバッファ5の第1バイトの内容01とし、省略後の第3、第4バイトの2と3を連結してセレクタ付き送受信データバッファ5の第2バイトの内容23とする。
【0035】以上のようにして圧縮された送信データがセレクタ付き送受信データバッファ5に保持され1セル分のデータが揃った後、ATMインタフェース制御部6は通常のATMヘッダを作成すると共に、圧縮済みデータを示す圧縮済みフラグを該ヘッダ部のPTI部にセットし、FIFO7に格納し、順次ドライバ/レシーバ8を介し、ATM規格に従ってデータの送信を繰り返す。
【0036】上位装置から送られたデータが非圧縮データの場合、制御部2は制御線50を介して上位装置から送られた指示を解析し、データ線10を経由してATMインタフェースに送信するデータが非圧縮データ(数値データ以外のデータ)と解釈した後、制御線51及び53上の信号を非圧縮モード(論理値″0″)に設定する。これによりデータ圧縮伸張手段4及びATMインタフェース制御部6は圧縮動作をしないように制御される。この場合図4に示すように、FIFO3内の96バイト単位の送信データは、データ線11-aを介してセレクタ付き送受信データバッファ5に48バイト単位に分割されて記憶され、ATMインタフェース制御部6によりATMヘッダ5バイトが付加され、FIFO7に記憶され、ATM規格に基づいて順次ドライバ/レシーバ8を介してATMインタフェースに送信される。
【0037】次にATMインタフェースから受信したデータが圧縮データである場合の動作について図6を参照して説明する。ATMインタフェースから受信したデータはFIFO7を介してATMインタフェース制御部6に送られ、データ内ヘッダ部の解析が行われる。この結果、圧縮済みデータと判定した場合、ATMインタフェース制御部6は信号線100上の信号の論理を″1″とし、セレクタ付き送受信データバッファ5のセレクタをデータ線12が有効になるように制御する。これと同時にデータ圧縮伸張手段4にも信号線100上の制御信号を介してデータの伸張を指示する。ATMヘッダ部の5バイトを除かれた受信データは、データ線13を介してセレクタ付き送受信データバッファ5に送られ、更にデータ線12を介してデータ圧縮伸張手段4に送られる。
【0038】データ圧縮伸張手段4は、送られたこのデータを圧縮時とは逆に、4ビットごとにその前に16進数の3を表す4ビット「0011」を付加して1バイトのデータに伸張し、FIFO3へ格納し、これを受信データ1セル単位に繰り返し行う。図6の例で言えば、セレクタ付きデータバッファ5内の第1バイトの「01」は「0」と「1」とに分解され「0」、「1」の前にそれぞれ「3」が付加されて「30」、「31」の2バイトとなり、FIFO3の第1及び第2バイトになる。同様に、セレクタ付きデータバッファ5内の第2バイトの「23」は「2」と「3」とに分解され「2」、「3」の前にそれぞれ「3」が付加されて「32」、「33」の2バイトとなり、FIFO3の第3及び第4バイトになる。
【0039】以上のようにして、53バイトの受信データはATMヘッダ部の5バイトが除去され48バイトのデータとなり、この48バイトのデータは96バイトに伸張されFIFO3に格納され、上位装置へ送出される。以上の説明から明らかなようにデータの圧縮,伸張には、上位装置のCPUが使用されることがないので、CPUに大きな負荷がかかることがない。また、FIFO7を設けたことにより、ATMインタフェースへのデータ転送の揺らぎを充分に吸収することが出来る。更に、転送すべきデータが数値データである場合は、96バイトのデータを48バイトのデータに圧縮し、これに5バイトのATMヘッダを付加するだけで伝送することができるので、ATMインタフェースの見掛けの転送能力を著しく向上させることができる。」(第6頁第9欄第8行〜第10欄第38行)

以上の記載及び技術常識によれば、「ATMによるデータ転送を行うためのヘッダを授受するためのATM外部インタフェース端子を持ちかつ上位装置からの指示に応じて装置全体を制御する制御部と、前記ATMによるデータ転送を行う伝送路に接続するためのATMインタフェースとの間で授受データを記憶する送受信データ記憶手段とを含むATM制御装置」は、周知である。

また、「ATMインタフェース制御部が、パケットの内容を示すのにヘッダ部のPTI部にフラグをセットする」ことは、周知例2の【0035】に示されているように周知である。

例えば、特開平10-187036号公報(以下、「周知例3」という。)には、次の事項が記載されている。

イ)「【0021】排他的論理和回路41は、48ビットの拡大鍵と、拡大転置回路40の出力との間で排他的論理和を演算した結果を出力する。なお、48ビットの拡大鍵は、図示せぬ拡大鍵生成回路により生成される。即ち、元となる56ビットの秘密鍵は、図示せぬ拡大鍵生成回路により、例えば、ビットシフトなどの処理が施され、16個の48ビット長の拡大鍵に変換される。」(第5頁第8欄第15行〜第21行)

例えば、特開平11-205301号公報(以下、「周知例4」という。)には、次の事項が記載されている。

イ)「【0003】 図11は、上記共通鍵ブロック暗号方式を実施するための典型的な暗号処理装置の概略構成図である。なお、この図において[ ]は、復号化工程を示しているが、最初に暗号化から説明する。通信すべき所定の平文を所定のビット数(例えば64ビット)にブロック化して形成された平文ブロック11は、初期転置部21において、所定の定められた規則に従って、ビット位置が置換えられて新たな配置の平文ブロックに生成される。
【0004】 初期転置部21で生成された平文ブロックは、左右に2分されて、すなわち、平文ブロックのビット数の半分のビット(上述の例では32ビット)に分割されて右変換過程文R1と左変換過程文L1とに分けられ、これら過程文R1、L1は、かくはん処理部3に入力されるように構成されている かくはん処理部3は、複数段(例えば16段)の段関数部から構成され、すなわち、第1段段関数部31から第r段段関数部3rで構成されていて、各段段関数部31,31,…,3rには暗号化関数部41,42,…,4r及び排他的論理和部51,52,…,5rがそれぞれ設けられている。各暗号化関数部41,42,…,4rは、鍵スケジュール部10から得られる拡大鍵K1,K1,…,Krを用いてそれぞれかくはん処理される。上記鍵スケジュール部10は、所定のビット(例えば56ビット)からなる共通鍵Kをもとに、拡大転置やビットシフトなどの所定の処理を行って、所定のビット数(例えば48ビットからなる拡大鍵K1,K1,…,Krを生成するように構成されている。各暗号化関数部41,42,…,4rのうち、任意の段の暗号化関数部(以下、これを第n段暗号化関数部4nとする。)を図12を用いて説明する。」(第2頁第2欄第19行〜第48行)

上記周知例3、4によれば、「共通鍵(秘密鍵)からビットシフトなどの処理を行って拡大共通鍵(秘密鍵)を生成して、拡大共通鍵により暗号化する」ことが、周知である。

(3)対比・判断
本願発明と引用例に記載された発明を対比する。
引用例に記載された発明の「ATM」は、本願発明の「非同期転送モード」に相当する。
引用例に記載された「ATM装置」と本願発明の「ATM制御装置」は、ATM装置である点で、一致する。
引用例記載の「疑似乱数」、「平文」が本願発明の「暗号用データ」、「データ」に相当し、引用例記載の「疑似乱数との排他論理和を演算して暗号化」することが、本願発明の「暗号用データを用いて暗号化処理手段」に相当する。

本願発明と引用例に記載された発明とは、
「非同期転送モードによるデータ転送を行うATM装置であって、暗号用データを用いて暗号化する暗号化処理手段を有するATM装置」である点で、一致し、以下の点で、相違する。

[相違点1]
本願発明は、「非同期転送モードによるデータ転送を制御するための制御信号を授受するためのATM外部インタフェ-ス端子を複数個持ちかつ上位装置からの指示に応じて装置全体を制御する制御部と、前記非同期転送モードによるデータ転送を行う伝送路に接続するためのATMインタフェ-スとの間で授受されるデータを記憶する送受信デ-タ記憶手段とを含むATM制御装置」であるのに対して、引用例に記載された発明は、「非同期転送モードによるデータ転送を行うATM装置」である点。

[相違点2]
本願発明では、暗号用データを記憶するために、「暗号用データ記憶手段」を有しているのに対して、引用例に記載された発明では、記憶手段を有していない点。

[相違点3]
本願発明では、データ48バイトを暗号化しているのに対して、引用例に記載された発明では、データ46バイトを暗号化している点。

[相違点4]
本願発明では、「前記暗号化処理手段で暗号化された48バイトのデータを格納したATMセルのヘッダ部内PTI(Packet Type Identifier)部に暗号化済フラグを付加する暗号化済フラグ処理機能を含むATMインタフェース制御手段」を有しているのに対して、引用例には、それについての記載がない点。

[相違点5]
本願発明では、「前記暗号用デ-タ記憶手段は、前記上位装置から送られてくる暗号用複数バイトのデ-タを格納する格納手段と、前記格納手段に格納されたデ-タを予め設定された一定規則に基づいて48バイトに展開された暗号用デ-タを記憶する記憶手段とを含み、前記一定規則は、前記制御部の指示に応じて正順の読出し及び逆順の読出しを含む種々の組合わせからなる」のに対して、引用例では、それについての記載がない点。

上記相違点について、検討する。
[相違点1について]
「ATMによるデータ転送を行うためのヘッダを授受するためのATM外部インタフェース端子を持ちかつ上位装置からの指示に応じて装置全体を制御する制御部と、前記ATMによるデータ転送を行う伝送路に接続するためのATMインタフェースとの間で授受データを記憶する送受信データ記憶手段とを含むATM制御装置」は、周知例2に示されるように周知であり、「ヘッダ」は、データ転送を制御するための制御信号であり、ATM外部インタフェース端子の数は、適宜設定すべきことであるので、引用例に記載された発明において、データ転送を制御するための制御信号を授受するためのATM外部インタフェース端子を複数個持ちかつ上位装置からの指示に応じて装置全体を制御する制御部と、前記非同期転送モードによるデータ転送を行う伝送路に接続するためのATMインタフェースとの間で授受されるデータを記憶する送受信データ記憶手段とを含むATM制御装置とすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。

[相違点2について]
データを蓄積するための記憶手段を設けることは、常套手段であるから、引用例に記載された発明において、暗号用データである疑似乱数を、記憶手段で記憶することは、当業者が容易になし得ることと認められる。

[相違点3について]
引用例に記載された発明では、セルの46バイトのデータにセルの順番を示す2バイトのカウンタ情報を付加して、送信しているが、カウンタ情報をなくして、データを48バイトとして、これを暗号化することは、当業者が適宜なすべきことに過ぎない。

[相違点4について]
「パケットのヘッダ部に暗号化データであることを示す情報を付加する」ことは、周知例1に示すように周知であり、ここで、暗号化データであるとは、暗号化済を示すもので、「ATMインタフェース制御部が、パケットの内容を示すのにヘッダ部のPTI部にフラグをセットする」ことは、周知例2の【0035】に示されているように周知であり、PTI部にフラグをセットするためには、処理機能が必要といえるから、引用例に記載された発明において、暗号化処理手段で暗号化されたデータを格納したATMセルのヘッダ部内PTI部に暗号化済フラグを付加する暗号化済フラグ処理機能を含むATMインタフェース制御手段を有することは、当業者が容易になし得ることと認められる。

[相違点5について]
「共通鍵(秘密鍵)からビットシフトなどの処理を行って拡大共通鍵(秘密鍵)を生成して、拡大共通鍵により暗号化する」ことは、周知例3、4に示されるように周知であり、上記周知技術で、暗号用の種をもとにビットシフトなどを行って展開して長い暗号用データを得ているといえるから、引用例に記載された発明において、暗号用複数バイトを展開して暗号用データを生成することは、当業者が容易になし得ることと認められる。
その際、情報を記憶するために、記憶手段、格納手段を設けること、ビットシフトによる展開に替えて、正順の読出し及び逆順の読出しを含む種々の組み合わせを行うこと、読出しを制御部の指示に応じて行うことは当業者が適宜設計することに過ぎない。

そして、本願発明の作用効果も、引用例に記載された発明及び周知例1〜4に示される周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知例1〜4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知例1〜4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-01 
結審通知日 2005-03-01 
審決日 2005-03-16 
出願番号 特願平11-338921
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 571- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 真之間野 裕一  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 衣鳩 文彦
望月 章俊
発明の名称 ATM制御装置  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 机 昌彦  
代理人 工藤 雅司  

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