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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない B32B
管理番号 1115838
審判番号 訂正2004-39010  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-10-22 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-01-16 
確定日 2005-04-15 
事件の表示 特許第3199160号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3199160号の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成8年2月6日(国内優先による優先権主張平成7年2月10日)の出願であって、平成13年6月15日にその特許権の設定登録がなされ、その後、平成14年2月12日に特許異議申立人長谷川三冶子より特許異議の申立てがなされ、さらに平成14年2月13日に特許異議申立人東セロ株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成15年 4月30日付けで特許の取消決定がなされた。その後、平成15年 6月26日に取消決定を取り消すことを請求の趣旨とする訴状が東京高等裁判所に提出された(平成15年(行ケ)272号)。
本件審判の請求の趣旨は、特許第3199160号に係る発明の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであるが、これに対し平成16年 3月 4日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成16年 4月 9日に意見書が提出されたものである。

2.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第3139077号の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記(1)〜(3)のとおりに訂正することを求めるものである。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1において、「B層とからなる」とあるのを、「B層とからなり、前記不活性微粒子が、球状シリカ、球状ゼオライトまたは球状架橋ポリメチルメタアクリレート粒子である」と訂正する。
(2)訂正事項b
【0004】において、「B層とからなる」とあるのを、「B層とからなり、前記不活性微粒子が、球状シリカ、球状ゼオライトまたは球状架橋ポリメチルメタアクリレート粒子である」と訂正する。
(3)訂正事項c
【0029】において、「平均粒径4μの球状ゼオライト」とあるのを、「平均粒径4μmの球状ゼオライト」と訂正する。

3.訂正拒絶の理由の概要
一方、平成16年3月4日付けで通知した訂正拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
訂正事項a.〜訂正事項c.の訂正は、特許法第126条第1項ただし書き、第2号第2項及び第3項の規程に適合するものと認められる。

独立特許要件の適否の判断
(1)特許法第36条第5項及び第6項違反について
請求項1〜3に係る発明において、不活性微粒子の「平均粒径」を特定しているが、明細書中に該粒子の粒径測定方法および「平均粒径」の定義又は説明が何ら記載されておらず、一般的技術常識を考慮しても「平均粒径」の種類又は概念が明確でなく、粒子が特定できないから、本件請求項に係る発明が明確に記載されているものとは認められない(「平均粒径」には、種々の測定方法及び定義があり、同じ粒子を測定しても、測定方法と平均粒径の算出方法によって、平均粒径が異なるのであるから、平均粒径が具体的にどのような方法により求められたのかが特定されていなければならないが、本件特許明細書にはその測定方法が一切記載も示唆もされていないし、使用している粒子の商品名等で特定するものでもないことから、訂正後の特許請求の範囲の記載は、記載内容が技術的に明りょうでない)。
したがって、訂正明細書の請求項1ないし3に係る発明は、その特許出願が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないため、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(2)特許法第36条第4項違反について
発明の詳細な説明の記載において、特許請求の範囲に記載の特定の材料からなる不活性微粒子について、その平均粒径の種類及び平均粒径の測定方法、あるいは球状といわれる各特定された材料からなる微粒子が如何に得られたものか、どの程度球状なのか、などについて何ら記載されておらず、粒子が特定できないから、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているものとは認められない。
したがって、訂正明細書の請求項1ないし3に係る発明は、その特許出願が特許法第36条第4項の規定する要件を満たしていないため、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.請求人の主張
これに対して、請求人は、平成16年 4月 9日付けの意見書において、概略次のように主張している。
訂正後の本件特許が、特許法第36条の規定を満足する理由
本件特許発明に係る不活性微粒子の如き粒子の平均粒径を特定するに当たっては、「代表径のとり方」、「粒度分布の表し方」および「平均粒子径の選び方」、を明らかにする必要があります。なお、粒度分布の表し方については、平均粒子径の選び方が決まっていれば、改めて特定する必要はないと考えます(例えば、平均粒子径が個数平均径であることが明らかであれば、粒度分布は個数分布であることが当然ですので、改めて明らかにする必要がない、ということです)。
(4-1)代表径については、特許査定時の「不活性微粒子」を全て球状粒子に限定したため、訂正後の本件発明においては、粒子の直径自体を意味している。なお、粒径測定法を特定することは、代表径を定めることに他ならないが、本件特許発明に係る不活性微粒子の代表径は、粒子の直径自体を意味するのであるから、本件特許明細書に平均粒径の測定法に関する記載がないことによって、本件特許発明および発明の詳細な説明の記載が不明確となることはない(本件審判請求書第3頁〜第6頁<代表径のとり方>の項)。
また、(4-1-1)参考資料2ないし6のカタログを提示し、球状シリ力、球状ゼオライト、球状架橋ポリメチルメタアクリレート粒子といえば、現実には真球(略真球)のものが入手される訳ですから、本件審判請求書における「本件特許発明に係る不活性微粒子の平均粒径を特定するための代表径は、粒子の直径自体を意味している」との主張は、何らの欠陥もないものと確信しております。
(4-2)平均粒子径の選び方については、本件特許明細書には、不活性微粒子の平均粒径が如何なる種類のものかについては、何ら記載されていないが、このことは、裏返せば、不活性微粒子の平均粒径が「個数平均径(数平均径)」であることを意味しているものと理解できる(本件審判請求書第6頁〜第11頁<平均粒子径の選び方>の項)。
(4-2-1)本件特許明細書には平均粒径の種類を明記していません。ですから、「個数平均径」である、と理解するのが、極めて常識的であると考えます。
(4-2-2)本件特許明細書の記載および従来技術との関係から、本件特許発明に係る不活性微粒子の平均粒径の位置付けを見れば、個数平均径以外の平均径によって特定されるべき理由がないことは、十分に理解できるものと考えます。
(4-3)粒度分布の表し方については、本件特許発明に係る不活性微粒子の平均粒径は個数平均径であるため、その粒度分布も個数基準で表されたものである(本件審判請求書第11頁<粒度分布の表し方>の項)。

本件特許発明に係る不活性微粒子の平均粒径については、代表径、平均粒径の種類のいずれもが明瞭ですので、訂正後の本件特許発明および本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条の要件を満足しているものと確信しております。

5.当審の判断
請求人は、「4.請求人の主張」の項に記載した主張をすることにより、本件特許発明および本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条の要件を満足していると主張するので、上記請求人の主張について検討する。
先ず初めにいえることは、本件特許発明において如何なる平均粒径が選定されているのか及び平均粒径が選定されるべきか何処にも記載がない上、粒度分布として如何なる分布基準が発明を適切に表現できるかについて何ら記載されていないのであり、代表径の選び方についても何ら記載がないのであるから、本件特許発明が特定できていないことは明かであるということである。
そして、請求人の主張には、根拠がなく、論理に飛躍があるということである。平均粒径が明かであればあらためて粒度分布の表し方について明らかにする必要がないなどと主張するが、請求人は代表径及び平均粒径の種類を根拠なく、特定のものであるとし、代表径及び平均粒径の種類は明かであるから、平均粒径の種類により粒度分布も明かであるとし、粒度分布を特定する必要がないと主張しており、根拠のない代表径及び平均粒径の種類を仮定しておいて粒度分布を特定する必要がないといっているもので意味のないことである。
また、平均粒径を決める基本となるのが粒子の粒度分布であり、平均粒径を決めて粒度分布が決まるのではないから、請求人の主張は本末転倒である。代表径や平均粒径がまずありきではなく、測定方法を選定することにより粒度分布が求まり、代表径が定まり、そして平均粒径の種類が決まるのであり、粒度分布は平均粒径を決める重要な測定対象である。また、測定方法により求まる分布基準が異なり、各種平均粒径の種類及び平均値が異なることなどの事実を忘れ、平均粒径が明かであればあらためて粒度分布を明らかにする必要がないなどとの請求人の主張は、到底、認めることはできない。

5-1.上記(4-1)について
先ず言えることは、球状粒子に特定したからといって、粒子の直径自体を意味しているものではないということである。
願書に添付した明細書及び図面では、元々、粒子の材料、粒子の形状などについて、特に特定するところがなく、球状粒子に限るものではなかったものであり、また、球状だからといって微細粒子の外形形状が真球を意味するものではなく、球に近い形状をしているといにすぎず、しかも、願書に添付した明細書及び図面には、球状という記載のみで球状粒子が真球であるとか、あるいは球状粒子の真球度について何ら記載するところもないことなどを参酌するなら、「球状」とは、一般常識で意味するところを離れ、真球という意味で用いられているとすることは根拠がないことである。してみると、球状粒子とはいっても、真球ではない以上、球に近似した代表径であり、近似した直径であるにすぎず、球状粒子の直径自体を意味しているとはいえない。なお、球状粒子の場合には、測定される粒径が粒子が球に近いことから、実際の個々の粒子の直径に近似した値が得られやすいというに過ぎず、その直径自体を意味しているとの主張は妥当でない。
本件特許発明において、元々、粒子の形状について、特に、特定するものではないものを球状と特定したものであり、当初から一般的な非球状粒子であることを前提に粒子を選定していたものと解することができ、粒子の代表径としては、「幾何学的径」もしくは「相当径」であり得ることで、幾何学的径か相当径かのいずれかということも定まらないし、さらには、測定方法が記載されていない以上、それぞれの、より具体的などの代表径なのか、特定されているともいえない。
球状粒子であると粒子の直径自体を意味するのであるから、測定法が記載されていなくても不明確にならないとも主張するが、本件特許発明の代表径として上述したように幾何学的径としても特定されるものでもなく、代表径には、相当径もあり、相当径には測定方法によって各種相当径がある(請求人が訂正の審判請求書とともに提出した参考資料1(以下、請求書参考資料1という。)第52頁「表1 主な代表径とその意味」及び意見書とともに提出した参考資料1(以下、意見書参考資料1という。)第19頁「1.4各種流度測定装置の概略と特徴」の表参照)ことから、相当径としても特定されるものでもない。
本件特許明細書に粒径測定法を特定していないことは請求人も認めているところであり、とすると、測定方法が記載がなされていない以上、代表径が幾何学的径なのか、相当径なのか、更には、その下位の如何なる具体的な代表径を意味するのか特定できないことに変わりはない。
このように、球状ということだけでは、直ちに代表径が粒子の直径自体であるとはいえないし、さらに、粒子は分布を持つもので、測定方法により個数、長さ、面積、質量(体積)のいずれの基準となるかによって、得られる粒径分布に大きな違いが生じるのであるから、平均粒径が定まるわけでもないから、結局、請求書参考資料1の第52頁2.2.1に記載されているように「どの代表径によるものであるのかをあらかじめ明示しておくことが必要である.」との記載どおり、本件特許発明の代表径が何なのか特定できない。
したがって、請求人の「本件特許発明に係る不活性微粒子の代表径は、粒子の直径自体を意味するのであるから、本件特許明細書に平均粒径の測定法に関する記載がないことによって、本件特許発明および発明の詳細な説明の記載が不明確となることはない。」(意見書第4頁2〜5行)との主張は、認められない。

5-2.(4-1-1)について
参考資料2ないし6として公知日の明かでないカタログを提示し、本件特許発明で用いている球状粒子がさも、そのカタログに示したものであるかのように主張しているが、当該カタログに示された球状粒子を購入し、採用したとの記載も示唆も、さらには根拠も全くないし、また、特許明細書には、ポリマー粒子の製造方法が記載されていることからしてポリマー粒子についてはカタログのものを購入したものであるとする根拠はさらにない。
また、球状粒子であれば真球であるとの主張も、カタログ自体出願当時公知のものとの証拠もなく、出願時の技術水準を意味しているとも認められないし、カタログの真球と記載しているものも真球と称しているだけにすぎない。さらに、本件特許発明で使用した球状粒子が、唯一真球と表記しているカタログに掲載されている真球の粒子そのものであるとする根拠もないことである。参考資料は単に、真球と称する粒子が時期は別としてあったということを示すだけのことにすぎない。

5-3.(4-2)の(4-2-1)について
不活性微粒子の平均粒径が如何なる種類のものかについては何ら記載されていないことが個数平均径を意味しているとどうして理解できるか、理解できないし認めることはできない。
何も書いてないと、何故「個数平均径」であることを意味するのか、また、当業者であれば当然理解できるといえるのか、その根拠も理由も何ら記載されていない、独善的な主張に過ぎない。
忘れていけないことは、先ず、使用する粒子の外形形状は、願書に添付した明細書の記載から明らかなように、特に定められていなかったこと、測定方法も平均粒径の種類が何なのかも記載されていないということであり、当初から非球形粒子を前提にしていたものであり、如何なる代表径、粒度分布及び平均粒径も本件特許発明の対象になり得たものであることが基本となる。訂正後の本件特許発明を基本にすべきものではない。その上で、平均粒径の数値が記載されていることから、何らかの測定方法で平均粒径が求められたものであることは明かであるので、粒子の測定方法があるはずであり、幾何学的径及び相当径のいずれも可能性があり、記載されている平均粒径として、数ある平均粒径のいづれも可能性があることとなり、結局、平均粒径が特定できず、本件特許発明は特許を受けようとする発明が明確でないのである。
また、粒子の平均粒径として採用する唯一無二のものが個数平均径であるということはできないし、同様に測定基準分布の唯一無二のものが個数基準分布であるとか、個数平均径であるのが技術常識であるとも認められないから、記載がないから「個数平均径」であると理解するなどという主張は到底認めることはできない。
また、本件特許明細書において、一例として記載されている球状粒子に特定したからといって、今まで特定できなかったものが、突然、平均粒径が明確になるようなことは有り得ることではなく、ましてや、「個数平均径」を意味するなどと到底、いえることではないのは、敢えて言うまでもないことである。

5-4.(4-2-2)について
平均粒径の位置付けとは何か、主張自体が明確でない。また、個数平均径以外の平均径によって特定すべき理由がないとは、如何なる根拠、理由に基づく主張なのか不明であり、十分に理解できるものなどとはいえない。
以上、平均粒径が如何なる種類のものか何等記載あるいは示唆されていない事項であり、何も記載されていないことは個数平均径を意味するなどということが本件出願当時に当業者の技術常識になっていたとも認められないから、請求人の主張(4-2)は、何ら根拠のない、恣意的な主張に過ぎない。

5-5.(4-3)について
「個数平均径であるため、その粒度分布も個数基準であらわされたものである」との結論付けの主張は、個数平均径ありきの論理であり、測定方法によって各種粒度分布が得られることから、そのような分布を代表する表現手段として平均粒径があるという基本的な考えと相容れないもので、自己に都合のよいように解釈したに過ぎない。
以上のとおり、本件特許発明に係る不活性微粒子の平均粒径については、代表径、平均粒径、粒度分布のいずれも定まらず、平均粒径の定義・意味が定まらないから、訂正明細書の請求項1ないし3に係る特許請求の範囲の記載は、発明が明確であるとはいえないから、訂正拒絶の理由3.(1)について解消されていないというべきであるし、訂正明細書の発明の詳細な説明の項は、当業者が訂正明細書の請求項1ないし3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは到底認められず、上記訂正拒絶の理由3.(2)は解消されていないというべきである。

6.むすび
したがって、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第4項の規定に適合しないから、本件訂正審判の請求に係る訂正を認めない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-13 
結審通知日 2004-05-14 
審決日 2004-05-27 
出願番号 特願平8-19885
審決分類 P 1 41・ 856- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 高梨 操
鴨野 研一
登録日 2001-06-15 
登録番号 特許第3199160号(P3199160)
発明の名称 線状低密度ポリエチレン系複合フイルム  
代理人 菅河 忠志  
代理人 小谷 悦司  
代理人 三輪 英樹  
代理人 植木 久一  
代理人 二口 治  

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