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審決分類 |
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 E04H 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 E04H 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04H 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 E04H 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 E04H |
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管理番号 | 1115840 |
審判番号 | 不服2004-13828 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2003-01-08 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-02 |
確定日 | 2005-04-27 |
事件の表示 | 特願2001-195020「建築物」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月 8日出願公開、特開2003- 3681〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年6月27日の出願であって、平成15年10月31日付けの拒絶理由に対し平成15年12月22日付けで手続補正がなされ、平成16年6月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年7月2日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年7月2日付けの手続補正を却下する。 [理由] この手続補正は、平成15年12月22日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲(請求項の数1)を、さらに補正(請求項の数2)することを含むものである。 しかし、この手続補正は、新たな請求項を追加するものであって、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明の何れにも該当しない。 以上のように、この手続補正は、特許法第17条の2第4項各号に規定する要件を満たしていないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。 3.本願発明について (1)本願発明 平成16年7月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年12月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】観覧車1付きの建築物に於て、観覧車1の回転輪2の支持脚を省略して、建物3内部に存在する鉄骨4自体に、上記回転輪2の中心軸部2aを、支持させた建築物であって、 回転輪2の中心軸部2aを支持する建物3の鉄骨4が、梁4a…と柱4b…から成る正面視井桁形状であって、 上記建物3の正面に所定階Fから上方へ所定の狭い前後幅Eの切欠凹部5を形成し、この切欠凹部5に鉛直状の上記回転輪2を配設すると共に、該回転輪2の中心軸部2aを、上記建物3の屋上Sと上記切欠凹部5の上縁5aとの角部6近傍の上記屋上S側に、上記鉄骨4に片持梁状として、支持したことを特徴とする建築物。」 (2)引用例 (2-1)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-338143号公報(以下「引用例1」という)には、図面とともに以下の記載がある。 (a)「【請求項1】 水平軸芯(1)周りに鉛直回転自在な回転体(2)を設け、かつ、前記回転体(2)を前記水平軸芯(1)周りに回転駆動する駆動装置(6)を設けてなる回転遊戯設備(C)を、建物(B)に設けた回転遊戯設備付き建物であって、前記建物(B)に、互いに高さの異なる複数の天部を設け、前記複数の天部のうち、高位置にある天部の横側方でかつ低位置にある天部の上方に前記回転遊戯設備(C)を配設するとともに、前記水平軸芯(1)の両端(1a),(1b)を支持する一対の支持部材(D)の少なくとも一方を、前記回転体(2)の回転軌跡下端よりも上方において前記建物(B)の躯体部に連設してある回転遊戯設備付き建物。 【請求項2】 前記天部が互いに高さの異なる第一屋上部(A1)と第二屋上部(A2)とからなり、前記回転遊戯設備(C)の前記支持部材(D)を、前記第一屋上部(A1)において前記回転遊戯設備(C)の水平軸芯(1)の一端(1a)側を支持する第一支持部材(3)と、前記第二屋上部(A2)において前記回転遊戯設備の水平軸芯(1)の他端(1b)側を支持する第二支持部材(4)とから構成してなる請求項1に記載の回転遊戯設備付き建物。 【請求項3】 前記回転遊戯設備(C)が観覧車(C1)である請求項1〜2のいずれかに記載の回転遊戯設備付き建物。」 (b)「【0009】【実施例】以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1〜3に示すように、本発明の回転遊戯設備付き建物は、一部分が6階建て、他の部分が10階建てで、6階建て部分B1に第一屋上部A1,10階建て部分B2に第二屋上部A2を設けてなる建物Bに、前記第一屋上部A1の上方空間に半径約40メートルの観覧車C1を配設して構成してある。尚、図中B3は、前記第二屋上部A2のさらに上方側に設けてなる屋上室であり、その上面部が第三屋上部A3であり、各屋上部A1〜A3を総称して天部と呼ぶ。 【0010】図2〜3に示すように、前記観覧車C1は、水平軸芯1周りに回転自在な回転体2を備えてなり、前記回転体を前記水平軸芯1の両端部で支持する第一支持部材3、第二支持部材4を設けて前記回転体2を前記第一屋上部A1と、前記第二屋上部A2との間で支持する構成にしてある。前記回転体は、前記水平軸芯1から放射状に設けてなる多数の放射状フレーム2aとそれらの放射状フレーム2aを等間隔に連係して回転自在にする環状フレーム2bとを一体に設け、さらに、人が乗降自在に構成してなり、人が中に入った状態で寛ぐための遊覧車5を、上下姿勢維持自在にそれぞれの放射状フレーム2aの先端側に連設して構成してなる。また、前記第一支持部材3は、前記水平軸芯1の一端1aを、前記第一屋上部A1で支持する構成にしてあり、前記第二支持部材4は、前記水平軸芯1の他端1bを前記第二屋上部A2で支持する構成にしてあり、両者をもって前記回転体が水平軸芯に沿った方向へ位置ずれするのを抑制する支持構造を成している。前記第一支持部材3は、2本の支柱3a,3bをΛ字状に組み合わせて設け、ほぼ鉛直方向で前記水平軸芯を支持する構成としてあるとともに、前記第二支持部材4は、一対の支柱4a,4aどうしをΛ字状に組み合わせて設けるとともに、支柱4bを設け、前記水平軸芯1を斜め方向に支持して前記回転体2が水平軸芯1に沿った方向へ位置ずれするのを抑制する構成にしてある。また、前記建物の10階建て部分B2で前記第一屋上部A1の上方空間に面する位置に、前記回転体2を前記水平軸芯1周りに回転させる油圧シリンダ式の駆動装置6を設けてある。」 (c)「【0013】以下に別実施例を説明する。前記観覧車C1は、前記第二屋上部A2から前記回転軸芯1の他端1bを支持する第二支持部材4を設けて構成したが、図5に示すように、建物Bの第二屋上部A2側の側壁部をもって前記回転軸芯1の他端1bを支持する構成にしてあってもよく、要するに、前記回転体2の回転下端よりも上方において前記建物Bの躯体部に支持部材Dを連設してある構成であればよい。また、観覧車C1に替えて水平軸芯周りに揺動するものC2であってもよく(図6参照)、要するに本発明に言う回転とは、回転、回動、揺動、を含むものとし、前記観覧車C1等の回転型の遊戯設備、揺動型の遊戯設備等を総称して回転遊戯設備Cと呼ぶ。また、建物としては、図8、9に示すように、低位置にある第一屋上部A1と、高位置で同じ高さにある第二、第三屋上部A2,A3を備えてなるものであってもよく、さらに多数の屋上部を有する構成であってもよい(図7参照)。」 (d)図1〜図3及び図5〜図7の記載を参照すると、建物Bの一つの側面に、所定階から上方へ所定の幅の段違い部が形成され、この段違い部に鉛直状の回転体2が配設されていることは、当業者にとって明らかである。 また、図5の記載及び上記(c)の記載を参照すると、観覧車C1の水平軸芯1の一端を支柱からなる支持部材を介して天部Aに支持するとともに、他端1bを、支柱からなる支持部材を介さずに上記建物Bの屋上部A2と段違い部の上縁との角部近傍の側壁部側に建物Bの躯体部に連設させて支持した例が開示されている。 よって、引用例1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「観覧車付き建物であって、観覧車の水平軸芯1を、支柱からなる支持部材を介さずに、建物Bの躯体部に支持させた部分を有する建物であって、上記建物Bの一つの側面に、所定階から上方へ所定の幅の段違い部を形成し、この段違い部に鉛直状の回転体2を配設すると共に、該回転体2の水平軸芯1の一端を、支柱からなる支持部材を介して天部Aに支持し、該回転体2の水平軸芯1の他端を、上記建物Bの屋上部A2と段違い部の上縁との角部近傍の側壁部側において、建物Bの躯体部に支持した建物。」(以下、「引用例1記載の発明」という。) (2-2)引用例2 同特開平5-154256号公報(以下「引用例2」という)には、図面とともに以下の記載がある。 (a)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は観覧車を空中及び海中で回転移動して空中及び海中の観覧を可能にし、かつ海中でカプセル状のゴンドラの扉を開くことができ、しかも浮き本体を自在に移動可能にした水中観覧装置に関する。」 (b)「【0006】【実施例】以下、図面に沿って本発明を説明する。図1及び図2は本発明の一実施例を示す水中観覧装置の概要図である。水中に浮遊自在な船体1に駆動軸2を2台装着し、駆動輪3は海面上頭部にほぼ垂直面内で回転する。船体1の回転駆動制御装置10によって駆動輪3の回転方向及び緩速で回転制御する。駆動輪3の外周には定間隔で支持アーム4を放射方向に設ける。駆動輪3及び各支持アーム4は図2のように空中11及び海中9で回転する配置になっており、各支持アーム4にカプセル状のゴンドラ5を吊り下げた構成になっている。また、船体1の乗降位置8は2階建になっており、乗車位置と降車位置に振り分けてゴンドラ5に乗降する。」 (c)図2の記載を参照すると、駆動輪3の駆動軸2を、船体1に、片持梁状として、支持した構成が開示されている。 よって、引用例2には、以下の発明が記載されている。 「駆動輪3の駆動軸2を、船体1に、片持梁状として支持した観覧装置。」(以下、「引用例2記載の発明」という。) (3)対比 そこで、本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「観覧車付き建物」、「回転体2」、「水平軸芯1」、「支柱からなる支持部材」、「建物Bの一つの側面」、「所定の幅」及び「段違い部」は、それぞれ、本願発明の「観覧車付きの建築物」、「回転輪」、「中心軸部」、「支持脚」、「建物の正面」、「所定の狭い前後幅」及び「切欠凹部」に相当する。 また、引用例1記載の発明の「躯体部」と、本願発明の「建物内部に存在する鉄骨」は、「建物の構造体」という点で共通する。 よって、両者は、 「観覧車付きの建築物に於て、観覧車の回転輪の支持脚を省略して、建物の構造体に、上記回転輪の中心軸部を支持させた部分を有する建築物であって、 上記建物の正面に所定階から上方へ所定の狭い前後幅の切欠凹部を形成し、この切欠凹部に鉛直状の上記回転輪を配設すると共に、該回転輪の中心軸部を、上記建物の屋上と上記切欠凹部の上縁との角部近傍において、上記構造体に、支持した建築物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 回転輪の中心軸部を、本願発明では、角部近傍の屋上側に支持したのに対して、引用例1記載の発明では、角部近傍の側壁部側に支持した点。 <相違点2> 回転輪の中心軸部を支持するにあたって、本願発明では、構造体に片持梁状に支持したのに対して、引用例1記載の発明では、そのような構成とはなっていない点。 <相違点3> 本願発明では、回転輪の中心軸部を支持する建物の構造体が、建物内部に存在する鉄骨自体であり、その鉄骨が、梁と柱からなる正面視井桁形状となっているのに対して、引用例1記載の発明では、前記構造体の構成は不明である点。 上記各相違点について検討する。 <相違点1について> 回転輪の中心軸部を支持する部位を、角部近傍の、屋上側と側壁部側のどちらにするかは、当業者が適宜選択しうる設計的事項にすぎない。 <相違点2について> 引用例2記載の発明における「駆動輪3」、及び「駆動軸2」は、それぞれ、本願発明の「回転輪」、及び「中心軸部」に相当し、引用例2記載の発明の「船体1」と本願発明の「建物」は、「支持構造物」である点で共通する。 よって、上記引用例2には、「回転輪の中心軸部を、支持構造物に、片持梁状として、支持した」構成が記載されていると認められる。 そして、引用例1記載の発明に、引用例2記載の発明を適用することに際しては、何ら阻害要因を認めることができないから、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たものと認められる。 <相違点3について> 建物の構造体として、梁と柱からなる正面視井桁形状とされた鉄骨を用いた構造体は例示するまでもなく従来周知の事項である。また、鉄骨を用いた建物において、建物の自重や建物に付随する装置等の荷重を、主に前記鉄骨によって支持させるようにすることは、当業者であれば当然なし得ることであるから、観覧車の回転輪の荷重がかかる中心軸部を建物内部に存在する鉄骨によって支持し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たものと認められる。 (4)まとめ そして、本願発明によって奏する効果も、引用例1及び2記載の発明に基づき当業者が予測できる範囲のものであって、格別なものがあるとは認められないから、本願発明は、引用例1及び2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと云わざるを得ない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1及び2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-02-10 |
結審通知日 | 2005-02-22 |
審決日 | 2005-03-07 |
出願番号 | 特願2001-195020(P2001-195020) |
審決分類 |
P
1
8・
574-
Z
(E04H)
P 1 8・ 121- Z (E04H) P 1 8・ 573- Z (E04H) P 1 8・ 572- Z (E04H) P 1 8・ 571- Z (E04H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 五十幡 直子 |
特許庁審判長 |
伊波 猛 |
特許庁審判官 |
高橋 祐介 山田 忠夫 |
発明の名称 | 建築物 |
代理人 | 中谷 武嗣 |
代理人 | 中谷 武嗣 |