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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G07B
管理番号 1115851
審判番号 不服2003-2845  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-21 
確定日 2005-04-27 
事件の表示 特願2000-115113「提供を受けたサービス料金の精算方法と装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月23日出願公開、特開2001- 52214〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年4月17日の出願であって、平成15年1月9日付け(発送日:同月21日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月21日に審判請求がなされるとともに、同年3月24日に手続補正がなされたものである。

2.平成15年3月24日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年3月24日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。

「【請求項1】 不特定多数の者が入場して複数種のサービスの提供を受けられる入場者が使用する靴ロッカーと衣服ロッカーを備えた施設であって、施設入口での入場料の支払いと入場者が使用した靴ロッカーキーと引換えに衣服ロッカーキーが係員から前記入場者に手渡される施設であること、
入場者が入場料を支払い使用した靴ロッカーキーを施設側の係員に渡すと、それと引換えに前記係員がその入場者に各人の所持品などを収納しておくため夫々の入場者に特定の衣服ロッカーキーを手渡すと共に、個々の衣服ロッカーキーを識別するため当該各キーに予め付与されているキーコードと、各入場者が支払った前記入場料の金額情報とを、前記キーコードに対応させてコンピュータに入力すること、
各入場者がこの施設内で種々のサービスの提供を受けるとき、各入場者が有する前記キーコードに対応させて提供を受けたサービスの名称と料金とを前記コンピュータに入力されて記憶されること、
各入場者が前記サービスを受けた後にこの施設を出るとき、各入場者はその衣服ロッカーキーのキーコードを前記コンピュータのスキャナに読取らせて当該コンピュータに入力すること、
前記コンピュータは、夫々の入場者が施設内で提供を受けたサービス料金の合計額と夫々の入場者についての前記設定金額とを比較演算し、不足額又は余剰額があるときはそれを算出して当該コンピュータに接続した精算機の表示部に表示させ、不足額についてはその額を前記精算機の現金投入口に入場者により投入させ、余剰額についてはその額を前記精算機の返却口から返却させて精算額をゼロにしてその表示を行わせ、レシートを発行すること、
レシートを受け取った入場者は衣服ロッカーキーとレシートを前記係員に渡しそれを引換えに前記靴ロッカーキーを受け取り自分の靴を履いて退場すること、
を特徴とする提供を受けたサービス料金の精算方法。」

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を次のとおりに補正するものである。

a.施設は、衣服ロッカーに加えて、靴ロッカーを備えること。
b.衣服ロッカーキーは、入場料の支払いに加えて、靴ロッカーキーとの引換えにより、手渡されること。
c.提供を受けたサービスの名称と料金の入力を、コンピュータ又は該コンピュータに接続された別のコンピュータではなく、当該コンピュータに入力すること。
d.各入場者がこの施設を出るときに、衣服ロッカーキーのキーコードをコンピュータに入力するが、その入力をコンピュータのスキャナに読取らせて行うこと。
e.精算機がコンピュータに接続されること。
f.レシートを受け取った入場者は、衣服ロッカーキーとレシートを係員に渡しそれを引換えに靴ロッカーキーを受け取り自分の靴を履いて退場すること。
g.「各入場者が予め金銭を支払うことによりこの施設内での使用が許容される初期設定された金額情報」を「各入場者が支払った前記入場料の金額情報」とすること。

上記aないしfは、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定する補正であり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、上記fは、前記した「入場料」との整合を計るものであり、補正の前後で実質的な変更はない。

更に、上記補正は、請求項3についても補正を行っているが、この補正は、請求項1についての補正と実質的に同じものである。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した特開平7-134784号公報(以下、「引用例1」という。」)には、図面とともに次の記載がある。

・「【0006】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明による有料施設の利用料金を当該有料施設の退場時に精算するための施設利用料金精算システムは、前記有料施設の入場時に貸与され、固有のバードードを担持したリストバンドと、前記有料施設内の設備等の利用に際して前記リストバンドに担持されたバーコードの取り込みを行うために、前記設備等に設置したバーコード読取り器と、前記設備等において読み取られたバーコードの設備利用データを集計して利用料金の演算を行い、その結果を利用者データとして格納するためのデータ処理装置と、前記有料施設の退場時に、前記リストバンドに担持されたバーコードと前記データ処理装置に格納された利用者データに基づき施設利用者自身に前記有料施設利用料金の精算操作を行わせる精算機とを少なくとも有し、前記リストバンドを介在させて前記設備等の利用料金を前記有料施設の退場時に利用者自身で精算することを特徴とする。
【0007】また、本発明による前記施設利用料金精算システムは、前記の特徴に、入場カードの投入に応じてリストバンドを放出するリストバンド貸与器を備えたことを特徴とする。さらに、本発明による前記施設利用料金精算システムは、前記の特徴に、前記リストバンドが前記有料施設内に設置されたロッカーの施錠開閉用キーを備えたことを特徴とする。」

・「【0018】同図において、一点鎖線で区画した有料施設12を利用する利用者1は、まず入場カード販売機2において入場カード3を購入もしくは配付を受ける。この入場カードは入場のみでも料金を課する場合は有料で、入場のみは料金を徴収しない場合は無料配付とする。入場カードを手にした利用者1は、リストバンド貸与ゲート4に当該入場カードを呈示することでリストバンド5の貸与を受ける。この時点で利用者は入場者としてワークステーション11に登録される。リストバンド貸与ゲート4に代えて機械による自動貸与としてもよい。
【0019】なお、入場カードを省略して入場カード販売機2で直接リストバンド5を販売または貸与するようにしてもよい。このとき、貸与したリストバンドを識別するバーコードデータを回線aを介してワークステーション11に転送して、その後の利用設備等からのバーコードデータと共に格納される。リストバンド5を貸与された利用者1は、施設内の希望する設備等6-1〜6-nに行き、当該設備等の利用前もしくは利用後(一般的には、利用前)に自身のリストバンド5をバーコード読取器6-1a〜6-naに読ませる。このときのバーコードの読み取りはバーコードスキャナーにリストバンド5を近接さ
せるか、あるいは当該利用設備等に立ち会う従業員がスキャナーで読み取ることにより行う。
【0020】読み取られたバーコードのデータは当該設備等の利用データとして回線b,c,・・・nを介してワークステーション11に転送され、その記憶装置Mに格納される。施設の利用を終了した利用者1は、ロッカーを使用している場合はロッカーでの着替え等を行った後リストバンド精算機7に行き、そのリストバンド投入口に自身のリストバンド5を投入して精算処理を行う。
【0021】利用料金の精算は、投入されたリストバンド5のバーコードを読み取り、そのバーコードデータをワークステーション11に転送する。ワークステーション11は転送されたバーコードデータに対応して格納されている設備等の利用データを集計し、必要に応じて回数,時間等の要素を基に課金演算を実行し、これを回線mを介してリストバンド精算機7に転送する。
【0022】リストバンド精算機7は、音声あるいは画像表示で利用に精算手順を案内しながら精算を促す。精算処理を完了したとき、リストバンド精算機7は退場カード8を発行する。利用者1は退場カード8をもって退場ゲート9を出る。この退場カードは、再度利用する際の割引き優待券である再来割引きカード10とすることもでき、集客向上対策となる。」

・「【0030】リストバンド入口24にリストバンド30が投入されると、リストバンド取込み機構40がリストバンドを内部に取り込む。取り込まれたリストバンド30の膨出部31が検出され、その部分に表示されているバーコード32がバーコードスキャナー41で読み取られる。」

・「【0032】(中略)リストバンド自動精算機は、転送された料金をプラズマディスプレイに表示すると共に、スピーカから料金の投入を促す。利用者は表示された料金を投入し、必要に応じて釣銭を受け取り、精算操作を実行する。
【0033】精算が完了すると、一次保留部42に保留されていたリストバンド30は回収路44から回収ボックス45に落下し、回収ボックス45に回収される。そして、スピーカ22から、例えば「ありがとうございました。またのお越しをお待ちいたしております。退場カードをお持ち帰りください。」等のメッセージが流れ、またプラズマディスプレイ23にも必要な表示がなされる。
【0034】利用者は、退場カードを受け取り、これを退場ゲートに提示し、あるいは退場ゲートのカードスロットに投入することで当該有料施設を後にする。」

なお、上記段落【0018】に記載された「入場カードを手にした利用者1は、リストバンド貸与ゲート4に当該入場カードを呈示することでリストバンド5の貸与を受ける。」及び「リストバンド貸与ゲート4に代えて機械による自動貸与としてもよい。」から、「リストバンド貸与ゲート」には係員が駐在し、入場者は該係員からリストバンドの貸与を受けるものと認められる。

したがって、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例1発明」という。」)。

「不特定多数の者が入場して複数種のサービスの提供を受けられる利用者が使用するロッカーを備えた施設であって、施設入口での入場料の支払いと引換えにロッカーキーが係員から前記利用者に手渡される施設であること、
利用者が入場料を支払うと、それと引換えに前記係員がその利用者にロッカーキーを貸与すると共に、個々のロッカーキーを識別するため当該各キーに予め付与されているバーコードをコンピュータに入力すること、
各利用者がこの施設内で種々のサービスの提供を受けるとき、各利用者が有する前記バーコードに対応させて提供を受けたサービスを前記コンピュータに入力されて記憶されること、
各利用者が前記サービスを受けた後にこの施設を出るとき、各利用者はそのロッカーキーのバーコードを前記コンピュータのスキャナに読取らせて当該コンピュータに入力すること、
前記コンピュータは、夫々の利用者が施設内で提供を受けたサービス料金の合計額を演算し、当該コンピュータに接続した精算機の表示部に表示させ、その額を前記精算機の現金投入口に利用者により投入させ、精算額をゼロにしてその表示を行わせ、退場カードを発行すること、
退場カードを受け取った利用者は退場カードを提示し退場すること、
を有する提供を受けたサービス料金の精算方法。」

また、原査定の拒絶の理由に引用した特開昭61-275993号公報(以下、「引用例2」という。」)には、図面とともに次の記載がある。

・「本発明は、下足箱と更衣ロッカーとがあり、利用時間の長さによって料金が異なるようなサウナ風呂等において、その入場と退場とを個々に管理する装置に関するものである。」(第1頁左下欄第15-18行)

・「そこで、入場者があると、まず下足箱3に靴等を収納して施錠し、下足キーを抜き取つて受付又はカウンターに来る。受付又はカウンターにおいては、入場者に下足キーの提出を求め、該下足キーを対応する整理番号6に基いてキーボックス4の上段の鍵穴に収納し、対をなす下段のロッカーキーを抜取って人場者に手渡す。」(第2頁右下欄第16行-第3頁左上欄第3行)

・「入場者が退場する場合も上記の逆の手順で行えば良い。即ち、ロッカーキーを対応する整理番号の下段に差込んでから対をなす上段の下足キーを引抜いて手渡す。この間に費用の清算が行われることは勿論である。」(第3頁左上欄第10-15行)

・「キーボックス4の対応する整理番号の上段の鍵穴に下足キーが差込まれた後において、対をなす下段のロッカーキーが抜き取られ、そのロッカーキーが入場者に手渡され、入場者はそのロッカーキーの整理番号に対応するロッカーを使用して脱衣し入浴する。入場中において受けるマッサージ等のサービス又は飲食物等精算をする。この場合に、ロッカーキーを収納するか又は下足キーをキーボックス4から抜き取ることにより信号が発生し、その信号が退場のための初期信号になる。そして入場者が入浴中に受けたサービス料金及び飲食物等の購入代金、更には入場の延長時間等がコンピューター1の記憶部、積算部及び演算部等により正確に算出され、清算されるのである。清算後に入場者は下足キーを受取って下足箱の対応する整理番号の鍵穴に下足キーを差込んで開綻することで信号が得られ、該信号がコンピューター1に入力され退場したことが確認されるのである。」(第3頁右上欄第10行ー左下欄第7行)

(3)対比
本願補正発明と上記引用例1発明とを比較する。

引用例1発明の「利用者」は本願補正発明の「入場者」に、また、「バーコード」は「キーコード」に相当し、更に、引用例1発明の「退場カード」と本願補正発明の「レシート」は共に精算を済ませた証となるものであり、「精算済み証」といいうるものであるから、両者は、

「不特定多数の者が入場して複数種のサービスの提供を受けられる入場者が使用する少なくともロッカーを備えた施設であって、少なくとも施設入口での入場料の支払いと引換えにロッカーキーが係員から前記入場者に貸与される施設であること、
入場者が少なくとも入場料を支払うと、それと引換えに前記係員がその入場者にロッカーキーを貸与すると共に、少なくとも個々のロッカーキーを識別するため当該各キーに予め付与されているキーコードを、コンピュータに入力すること、
各入場者がこの施設内で種々のサービスの提供を受けるとき、各入場者が有する前記キーコードに対応させて提供を受けたサービスを前記コンピュータに入力されて記憶されること、
各入場者が前記サービスを受けた後にこの施設を出るとき、各入場者はそのロッカーキーのキーコードを前記コンピュータのスキャナに読取らせて当該コンピュータに入力すること、
前記コンピュータは、少なくとも夫々の入場者が施設内で提供を受けたサービス料金の合計額を演算し、当該コンピュータに接続した精算機の表示部に表示させ、その額を前記精算機の現金投入口に入場者により投入させ、精算額をゼロにしてその表示を行わせ、精算済み証を発行すること、
精算済み証を受け取った入場者は少なくとも精算済み証を提示して退場すること、
を有する提供を受けたサービス料金の精算方法。」の点で一致し、

次の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明では、当該施設は、各人の所持品などを収納しておくため夫々の入場者に特定の衣服ロッカーを備え、係員が入場者に当該衣服ロッカーキーを手渡すのに対して、引用例1発明では、当該施設は、ロッカーを備え、係員が入場者に当該ロッカーキーを貸与する点。

[相違点2]
本願補正発明では、個々のロッカーキーを識別するため当該各キーに予め付与されているキーコード等のコンピュータへの入力を、係員が行なうのに対して、引用例1発明では、係員が行なうとの限定がない点。

[相違点3]
本願補正発明では、提供を受けたサービスをコンピュータに入力して記憶するに際して、サービスの名称と料金とを入力して記憶するのに対して、引用例1発明では、サービスの名称と料金とを入力して記憶するとの限定がない点。

[相違点4]
本願補正発明では、当該施設が靴ロッカーと衣服ロッカーとを備え、入場者が施設入口で入場料を支払い、使用した靴ロッカーキーを施設側の係員に渡すと、それと引換えに、前記係員がその入場者に衣服ロッカーキーを貸与し、施設内で提供を受けたサービス料金の清算後に精算済み証を受け取った前記入場者は、衣服ロッカーキーと精算済み証を前記係員に渡し、それと引換えに靴ロッカーキーを受け取り、自分の靴を履いて退場するのに対して、引用例1発明では、当該施設がロッカーを備え、入場者が施設入口で入場料を支払うと、それと引換えに、係員がその入場者にロッカーキーを貸与し、施設内で提供を受けたサービス料金の清算後に精算済み証を受け取った前記入場者は、精算済み証を提示し退場する点。

[相違点5]
本願補正発明では、各入場者が支払った入場料の金額情報をキーコードに対応させてコンピュータに入力し、前記コンピュータは、夫々の入場者が施設内で提供を受けたサービス料金の合計額と夫々の入場者についての設定金額とを比較演算し、不足額又は余剰額があるときはそれを算出して、当該コンピュータに接続した精算機の表示部に表示させ、不足額についてはその額を前記精算機の現金投入口に入場者により投入させ、余剰額についてはその額を前記精算機の返却口から返却させて、精算額をゼロにしてその表示を行わせ、レシートを発行するのに対して、引用例1発明では、コンピュータは、夫々の入場者が施設内で提供を受けたサービス料金の合計額を演算し、当該コンピュータに接続した精算機の表示部に表示させ、その額を前記精算機の現金投入口に入場者により投入させ、精算額をゼロにしてその表示を行わせ、退場カードを発行する点。

(4)判断
相違点1について
引用例1発明において、ロッカーとして、各人の所持品などを収納しておくため夫々の入場者に特定の衣服ロッカーを備え、係員が入場者に当該衣服ロッカーキーを手渡すようにすることは、単なる設計事項である。

相違点2について
引用例1発明において、係員が、個々のロッカーキーを識別するため当該各キーに予め付与されているキーコード等をコンピュータに入力するようにすることは、単なる設計事項である。

相違点3について
引用例1発明において、提供を受けたサービスをコンピュータに入力して記憶するに際して、サービスの名称と料金とを入力して記憶することは、単なる設計事項である。

相違点4について
引用例2には、下足箱と更衣ロッカーとを備え、入場者が使用した下足キーを係員に渡すと、それと引換えに、前記係員がその入場者にロッカーキーを貸与し、施設内で提供を受けたサービス料金の清算後に、前記入場者は、ロッカーキーを係員に渡し、それと引換えに下足キーを受け取り、自分の靴を履いて退場するサウナ風呂の入場・退場管理装置が記載されている。

したがつて、引用例1発明において、上記相違点4に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点5について
サービス等の提供における料金等の徴収において、とりあえず特定の金額を徴収し、事後に過不足を精算することは、営業活動の一つの手法として、経営者等が適宜なし得ることである。

したがって、引用例1発明において、上記料金等の徴収の手法を採用し、レシートを発行することにより、上記相違点5に係る本願補正発明の構成をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1、及び引用例2に記載された事項から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1、及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年3月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年9月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。

「【請求項1】 不特定多数の者が入場して複数種のサービスの提供を受けられる入場者が使用するロッカーを備えた施設であって、入場料の支払いを条件にロッカーキーが係員から前記入場者に手渡される施設において、施設側の係員が個々の入場者に各人の所持品などを収納しておくため夫々の入場者に特定のロッカーキーを手渡すと共に、その際、前記係員が個々のロッカーキーを識別するため当該各キーに予め付与されているキーコードと、各入場者が予め金銭を支払うことによりこの施設内での使用が許容される初期設定された金額情報とを、前記の各キーコードに対応させてコンピュータに入力し、各入場者がこの施設内で種々のサービスの提供を受けるとき、各入場者が有するキーコードに対応させて提供を受けたサービスの名称と料金とを前記コンピュータ又は該コンピュータに接続された別のコンピュータに入力して記憶させ、各入場者がこの施設を出るとき、各入場者のロッカーキーのコードを前記のコンピュータに入力することにより、当該コンピュータが、夫々の入場者が施設内で提供を受けたサービス料金の合計額と夫々の入場者についての前記設定金額とを比較演算し、不足額又は余剰額があるときはそれを算出して精算機の表示部に表示させ、不足額についてはその額を前記精算機の現金投入口に入場者により投入させ、余剰額についてはその額を前記精算機の返却口から返却させて精算額をゼロにしてその表示を行い、レシートを発行することを特徴とする提供を受けたサービス料金の精算方法。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した引用例、及びその記載事項は前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明から前記「2.(1)」のaないしfに記載した限定事項を省き、更に、本願補正発明の「各入場者が支払った前記入場料の金額情報」を実質的に同じ内容の「各入場者が予め金銭を支払うことによりこの施設内での使用が許容される初期設定された金額情報」としたものである。

したがって、本願発明は、本願補正発明と同様の理由により、引用例1、及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-10 
結審通知日 2005-02-22 
審決日 2005-03-07 
出願番号 特願2000-115113(P2000-115113)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07B)
P 1 8・ 575- Z (G07B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大河原 裕  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 会田 博行
櫻井 康平
発明の名称 提供を受けたサービス料金の精算方法と装置  
代理人 樋口 盛之助  
代理人 小泉 良邦  

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