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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04H |
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管理番号 | 1115873 |
審判番号 | 不服2004-15584 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-27 |
確定日 | 2005-05-02 |
事件の表示 | 特願2001-145245「墓地用花立て器」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月27日出願公開、特開2002-339598〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は平成13年5月15日に出願されたものであり、その請求項1、2に係る発明は、平成16年5月13日付けで補正された明細書及び出願当初図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 下部を内方に向かってテーパー状に形成するとともに下端を鋭角に形成し擂り鉢状の中空を内部に設け、外周面の上部には花の絵図を描いた上花柄を、前記外周面の中央部には家名を記載する家名記載欄を、前記外周面の下部には花の絵図を描いた下花柄を設けた円筒状の筒部の下方に、内部が中空でなく全長の約3分の1で下端部はテーパー状に形成するとともに下端を鋭角に形成した差込部を連設して全体を紙製又は古紙製のいずれかとするとともに、前記円筒状の筒部の外周面及び前記差込部の外周面に天然の着色料を用いて着色したことを特徴とする墓地用花立て器。 【請求項2】(省略) (以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 2.引用例記載の発明 (1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2000-336976号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の(イ)ないし(ヘ)の記載がある。 (イ)「紙を筒状に形成して、この上部に開口部を設け、下部を密閉して尖らせた尖頭部を形成した紙製筒状体の内面に、撥水層を設けると共に、この撥水層の内側に、吸水性高分子をシートに保持させた吸水シートを設けたことを特徴とする野立用花立。」(【特許請求の範囲】【請求項1】) (ロ)「【発明が解決しようとする課題】本発明は上記欠点を除去し、本体を紙製筒状体で形成して、使用後の焼却処分が容易で、しかも形状を保持しながら内部に水を長時間に亘って保持できるので花を長持させることができる野立用花立を提供するものである。」(段落【0005】) (ハ)「内側のダンボール紙2aは図3に示すように長方形部4の空洞部の方向に沿った下部に山形部5が形成され、内面に撥水シート9が貼付されている。・・・」(段落【0009】) (ハ)「上記構成の野立用花立1は、図5に示すように墓前の地面24に尖頭部22を押し込んで垂直に立てる。この場合、ダンボール紙2は2重に形成され、しかも空胴部が縦方向になっているので強度が強く、地面24に大きな力で差し込んでも変形しない。」(段落【0013】) (ニ)「・・・1週間から10日程度経過して、花26が枯れたら、墓地の管理人が野立用花立1を地面24から抜き取って集め、これを花26と共にそのまま焼却処分する。この野立用花立1はダンボール紙2で形成されているので、従来のプラスチック製の野立用花立20のような公害上の問題もなく墓地で焼却処分することができる。・・・」(段落【0015】) (ホ)「また紙製筒状体3は外側に着色したり色紙を貼付したものでも良く、また六角筒状に限らず、三角筒状や四角筒状、円筒状でも良い。・・・」(段落【0018】) (ヘ)第5図には「下端を鋭角に形成し擂り鉢状の中空を内部に設け、下端部はテーパー状に形成するとともに下端を鋭角に形成した差込部を連設した」野立用花立の構成が図示されていると認められる。 したがって、引用例1には、「下部を尖らせた尖頭部を形成するとともに、下端を鋭角に形成し擂り鉢状の中空を内部に設け、下端部はテーパー状に形成するとともに下端を鋭角に形成した差込部を設けた撥水層を有する紙製の筒状体3とするとともに、前記紙製筒状体3の外側に着色した野立用花立」の発明が記載されていると認められる。 (2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭59-114945号(実開昭61-31168号公報)のマイクロフイルム(以下、「引用例2」という。)には、次の(ト)の記載がある。 (ト)第2図には、花立外筒の周囲に上部から中部にかけて、そして下部に花の絵図を描いた花柄が設けられた墓石用花立が図示されていると認められる。 (3)同じく、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭56-190712号(実開昭58-95452号公報)のマイクロフイルム(以下、「引用例3」という。)には、次の(チ)の記載がある。 (チ)「本花立は内筒2を花の投げ込み用として機能させ、外筒1を一種の碑銘柱として機能させたものである。 碑銘13としては例えば家紋、又は「○○家」等の表示、若しくは戒名等が考えられる。 外筒1はステンレス製であって、実施例はその外周面を鏡面仕上げし碑銘13を刻設によって表示した。」(明細書第3頁8行目〜15行目) 3.対比・判断 本願発明と引用例1記載の発明を対比すると、引用例1記載の発明の「下部を尖らせた尖頭部を形成」、「筒状体」、「野立用花立」は、各々本願発明の「下部を内方に向かってテーパー状に形成」、「円筒状の筒部」、「墓地用花立て器」に相当する。 したがって両者は、 「下部を内方に向かってテーパー状に形成するとともに下端を鋭角に形成し擂り鉢状の中空を内部に設け、円筒状の筒部の下方に、下端部はテーパー状に形成するとともに下端を鋭角に形成した差込部を設けた紙製とするとともに、前記円筒状の筒部の外周面及び前記差込部の外周面に着色したことを特徴とする墓地用花立て器」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1 本願発明では、円筒状の筒部の外周面の上部には花の絵図を描いた上花柄を、前記外周面の中央部には家名を記載する家名記載欄を、前記外周面の下部には花の絵図を描いた下花柄を設けているのに対し、引用例1記載の発明は、このような構成がない点 相違点2 本願発明は、全体が紙製又は古紙製のいずれかであるのに対し、引用例1記載の発明の花立て器は、紙製であるものの撥水層を有するものである点 相違点3 差込部が、本願発明では、円筒状の筒部の下方に、内部が中空でなく全長の約3分の1に形成し筒部の下方に連接したものであるのに対し、引用例1記載の発明は、このような構成がない点 相違点4 円筒状の筒部の外周面及び差込部の外周面の着色に関して、本願発明では、天然の着色料を用いているのに対し、引用例1記載の発明は、このような構成がない点 そこで、これらの相違点について検討する。 相違点1の検討 引用例2には、花立外筒(本願発明の「円筒状の筒部」に相当。)の外周面の上部から中部にかけて、そして下部に花の絵図を描いた花柄を設けた墓石用花立(本願発明の「墓地用花立て器」に相当。)が図示されている。また、引用例3には、外筒1(本願発明の「円筒状の筒部」に相当。)の外周面に碑銘13(本願発明の「家名を記載する家名記載欄」に相当。)を施した本花立(本願発明の「墓地用花立て器」に相当。)が記載されている。このように花立に花の絵図や家名を記載することは本願出願前周知の事項であり、それらの配置を上記相違点1に係るようにすることは、単なる設計的事項にすぎない。したがって、相違点1に係る本願発明の上記構成は、引用例1記載の発明に周知の事項を適用して、当業者ならば容易になし得ることである。 相違点2の検討 引用例1記載の発明の花立て器は、撥水層を有するものの紙製であるから、花立て器全体を紙製とすることは、当業者が必要に応じて適宜できる事項にすぎない。 相違点3の検討 差込部を、本願発明のように、円筒状の筒部の下方に、内部が中空でなく形成し筒部の下方に連設することは、実用新案公告第954号公報、昭和3年実用新案出願公告第11012号公報に記載されているように、本願出願前周知の事項である。この場合、本願発明のように、内部が中空でない部分を全長の約3分の1にすることは、単なる設計的事項であるから、相違点3に係る本願発明の上記構成は、引用例1記載の発明に上記周知の事項を適用して、当業者ならば容易になし得ることである。 相違点4の検討 円筒状の筒部の外周面及び差込部の外周面の着色に関して、天然の着色料を用いることは、当業者が必要により適宜なし得る程度のことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用例1記載の発明及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。 4.むすび したがって、本願発明は、引用例1記載の発明に、周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-03-07 |
結審通知日 | 2005-03-07 |
審決日 | 2005-03-22 |
出願番号 | 特願2001-145245(P2001-145245) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E04H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 五十幡 直子 |
特許庁審判長 |
田中 弘満 |
特許庁審判官 |
▲高▼橋 祐介 小山 清二 |
発明の名称 | 墓地用花立て器 |
代理人 | 中川 邦雄 |