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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1115880
審判番号 不服2003-11299  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-10-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-19 
確定日 2005-05-02 
事件の表示 平成11年特許願第 78119号「データ記憶媒体の駆動システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月 6日出願公開、特開2000-278573〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 【手続きの経緯】
本願は、平成11年3月23日の出願であって、平成15年5月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月18日付けで手続補正がなされたものである。

第2 【平成15年7月18日付けの手続補正についての補正却下の決定】
《補正却下の決定の結論》
平成15年7月18日付けの手続補正を却下する。
《理由》
1 [補正後の本願発明]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 情報を書き込み可能な表示部を有するデータ記憶媒体が着脱自在であって、前記表示部が視認不可能な状態で装着されたデータ記憶媒体を駆動する駆動装置と、この駆動装置と信号を交換可能な、少なくとも画像データを処理するホスト機器とを備え、
前記駆動装置は、少なくともホスト機器からフォーマット処理の指示信号が送られると、前記データ記憶媒体をフォーマット処理すると共に、前記表示部にフォーマットに対応した表示内容を書き込むこと、
を特徴とする駆動システム。」と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「駆動装置」について、「前記表示部にフォーマットに対応した表示内容とする」を「 前記表示部にフォーマットに対応した表示内容を書き込む」とし、限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 [引用例]
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-296024号公報(以下「引用例1」という。)には、「ディジタル電子スチル・カメラ」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項アないしカが記載されている。
ア 「この発明は、撮影した映像信号をディジタルの画像データに変換して出力するディジタル電子スチル・カメラに関し、さらに詳しくは上記画像データを記憶する画像メモリを備えたメモリ・カートリッジが着脱自在のディジタル電子スチル・カメラに関する。」(公報1頁右下欄3行〜8行)
イ 「この発明によると、メモリ・カートリッジをカメラに装着した状態でカートリッジの表示装置に表示された画像を見ることができる。したがって、たとえばカメラで撮影した画像をただちにカートリッジの表示装置に表示させて、所望の画像が撮影されたかどうかを確認することができるようになる。さらに、カートリッジの表示装置をビュー・ファインダとして利用する展開も可能となる。」(公報2頁右上欄4行〜12行)
ウ 「第1図はメモリ・カートリッジの外観を示している。メモリ・カートリッジ20はディジタル電子スチル・カメラに装着されたときにカメラと電気的に接続するための多くの端子29を備えている。これらの端子29はデータ・バス、アドレス・バス、コントロール・ライン等を接続する。またメモリ・カートリッジ20の表面の一部には液晶表示器24が設けられ、この液晶表示器24には、メモリ・カートリッジ20内の後述する半導体画像メモリ(第4図符号22)に記憶されている画像デ-タによって表わされる画像に加えて、画像メモリ22に記憶できる残り駒数または撮影した順序を示す駒番号D1、撮影した日付D2等が表示される。これらのデータに加えて、撮影した場所を示すデータ、その他のインデックス情報等を表示するようにしてもよい。」(公報2頁右上欄14行〜同頁左下欄9行)
エ 「ディジタル電子スチル・カメラ10における撮影、画像データを含む各種データのメモリ・カートリツジ20への転送、その他の処理はシステム・コントローラ11によって制御される。システム・コントローラ11はCPU、その実行プログラムを格納したROM、必要なデータを記憶するためのRAM、日付、時間を計時する時計、駒数等を計数するカウンタ等から構成されている。」(公報3頁左上欄15行〜同頁右上欄2行)
オ 「シヤツタ17が押されると撮影処理が開始され、このとき得られた画像データは信号処理回路16からコネクタ30を通して画像メモリ22に与えられる。またシステム・コントローラ11から画像データを書込むべきアドレスを示すアドレス信号とライト指令がコネクタ30を通してメモリ22に与えられるので、上記の画像データはメモリ22の指定された場所に記憶される。コントローラ11からは残り駒数データ、駒番号データ、日付データ等もメモリ22に与えられ、同じように記憶される。
続いてコントローラ11から表示指令がカートリツジ20のCPU21に与えられるので、CPU21は書込まれた画像データをメモリ22から読出し表示用メモリ26に書込むとともに駆動回路25の動作を開始させる。このようにして撮影された映像が表示器24に表示される。このとき、残り駒数または駒番号D1や日付D2等も表示される。
操作者はこの表示をみて所望の画像であると判断した場合にはその画像デ-タをそのままメモリ22に記憶させておき、不可と考えたときにはカメラ10のキャンセル押ボタン(図示略)を用いてキャンセル入力を与える。するとコントローラ11またはCPU21は画像メモリ22の該当する画像デ-タを消去する。
上記の例ではメモリ・カートリッジ20における表示制御をカートリッジ20内のCPU21が行なっているが、カメラ10のコントローラ11によつて表示制御を行なわせるようにしてもよい。また、撮影した画像データを直接に表示用のバッファ・メモリ26に与えてもよい。そして、記録OKの入力に応じてバッファ・メモリ26の画像データをメモリ22の所定のエリアにストアするようにする。」(公報3頁右下欄7行〜4頁左上欄18行)
カ 「メモリ・カートリッジ20はビュー・ファインダとして用いることもできる。この場合には、入力する被写体像の画像データをメモリ・カートリッジ20の表示用バッファ・メモリ26に常に与えておき、これを表示器24に表示するようにする。そしてシャッタ17が押されたときにバッファ・メモリ26の画像データを画像メモリ22の所定のエリアに格納する。
メモリ・カートリッジ20をカメラ10から取外したのちにも表示器24に画像を表示させるようにすることもできる。」(公報4頁右上欄1行〜11行)

(2)同じく、引用された特開平7-93097号公報(以下「引用例2」という。)には、「情報取り扱い装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項ア、イが記載されている。
ア 「【実施例】以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。図1ないし図3は、本発明の一実施例を示す情報取り扱い装置の電子スチルカメラのブロック構成図と外観図である。なお、本実施例の電子スチルカメラは、ICメモリカードを情報記録媒体として適用するものであり、その構成を信号の流れに沿って上記図1のブロック構成図を参照して説明する。
・・・(中略)・・・そして、圧縮されたデータは、データバス20を通って該電子スチルカメラに着脱可能に取り付けられた情報記録媒体たるICメモリカード10に書き込まれる。」(公報段落【0012】〜【0014】)
イ 「以上のように構成された本実施例のカメラにおける、メモリカ-ド10の初期化処理について、図4のサブルーチンのフローチャートにより説明する。ERASEスイッチ36とUPスイッチ33を押圧して、カメラを初期化モードに設定し、そこで、トリガスイッチ45押圧するとメモリカ-ド10の上記初期化処理が開始される。」(公報段落【0027】)

3 [対比]
本願補正発明と引用例1に記載の発明とを対比すると、次のことが認められる。
引用例1には、着脱自在のメモリ・カートリッジを備えたディジタル電子スチル・カメラに関し(引用例1の上記アの記載参照)、メモリ・カートリッジ20の表面の一部には液晶表示器24が設けられ、この液晶表示器24には、画像に加えて、画像メモリ22に記憶できる残り駒数または撮影した順序を示す駒番号D1、撮影した日付D2等が表示され、これらのデータに加えて、撮影した場所を示すデータ、その他のインデックス情報等を表示するようにしてもよいこと(引用例1の上記ウの記載参照)、また、ディジタル電子スチル・カメラ10における撮影、画像データを含む各種データのメモリ・カートリッジ20への転送、その他の処理は、システム・コントローラ11によって制御されること(引用例1の上記エの記載参照)、さらに、シヤツタ17が押されると撮影処理が開始され、このとき得られた画像データは信号処理回路16からコネクタ30を通して画像メモリ22に与えられ、システム・コントローラ11から画像データを書込むべきアドレスを示すアドレス信号とライト指令がコネクタ30を通してメモリ22に与えられるので、上記の画像データはメモリ22の指定された場所に記憶され、コントローラ11からは残り駒数データ、駒番号データ、日付データ等もメモリ22に与えられ、同じように記憶され、続いてコントローラ11から表示指令がカートリツジ20のCPU21に与えられ、CPU21は書込まれた画像データをメモリ22から読出し表示用メモリ26に書込むとともに駆動回路25の動作を開始させ、撮影された映像が表示器24に表示され、このとき、残り駒数または駒番号D1や日付D2等も表示されること(引用例1の上記オの記載参照)が、それぞれ記載されており、上記「液晶表示器24」、「メモリ・カートリッジ20」が、それぞれ本願補正発明の「表示部」、「データ記憶媒体」に相当することは明らかである。
これらの記載によれば、引用例1に記載の発明も、本願補正発明でいう「情報を書き込み可能な表示部を有するデータ記憶媒体が着脱自在であって」といえ、また、ディジタル電子スチル・カメラ10における撮影、画像データを含む各種データのメモリ・カートリッジ20への転送、その他の処理は、システム・コントローラ11によって制御(駆動)されるものであり、引用例1に記載の発明も、メモリ・カートリッジを駆動する「駆動装置」を有するものといえ、そして、その「駆動装置」と信号を交換可能な「電子スチル・カメラ」が、本願補正発明でいう「ホスト機器」に対応するものといえる。
してみると、引用例1に記載の発明も、本願補正発明でいう「情報を書き込み可能な表示部を有するデータ記憶媒体が着脱自在であって、装着されたデータ記憶媒体を駆動する駆動装置と、この駆動装置と信号を交換可能な、少なくとも画像データを処理するホスト機器とを備え」るものといえる。
また、「前記駆動装置」は、フォーマットに対応した表示内容を書き込むものか否かはともかくとして、表示器に表示内容を書き込むといえる点では、本願補正発明と変わりがない。すなわち、引用例1に記載の発明も、「前記駆動装置は、前記表示部に表示内容を書き込む」ものといえ、また、引用例1に記載の発明が、「駆動システム」を対象としている点でも、本願補正発明と変わりがない。

4 [一致点・相違点]
以上の点を踏まえると、本願補正発明と引用例1に記載された発明とは、
「情報を書き込み可能な表示部を有するデータ記憶媒体が着脱自在であって、装着されたデータ記憶媒体を駆動する駆動装置と、この駆動装置と信号を交換可能な、少なくとも画像データを処理するホスト機器とを備え、
前記駆動装置は、前記表示部に表示内容を書き込むこと、を特徴とする駆動システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
データ記憶媒体が、本願補正発明では、「前記表示部が視認不可能な状態で」装着されたものであるのに対して、引用例1に記載の発明では、視認可能に装着されている点。

相違点2
駆動装置が、本願補正発明では、「少なくともホスト機器からフォーマット処理の指示信号が送られると、前記データ記憶媒体をフォーマット処理すると共に」、前記表示部に「フォーマットに対応した」表示内容を書き込むものであるのに対して、引用例1に記載の発明には、それらのことが開示されていない点。

5 [相違点の検討]
そこで、上記各相違点について検討する。
相違点1について
引用例1には、メモリ・カートリッジをカメラに装着した状態でカートリッジの表示器に表示された画像を見ることができるので、所望の画像が撮影されたかどうかを確認することができる、すなわちカートリッジの表示器をビュー・ファインダとして利用できることが記載されており(引用例1の上記イ、カの記載参照)、引用例1に記載の発明において、メモリ・カートリッジの表示器をビュー・ファインダとして利用しないのであれば、メモリ・カートリッジの表示器が視認できない状態でカメラに装着されるようになす程度のことは当業者が設計上適宜になし得ることといえる。すなわち、引用例1に記載の発明において、データ記憶媒体を、本願補正発明のように、「前記表示部が視認不可能な状態で」装着されたものとする程度のことは当業者が設計上適宜になし得ることといえる。

相違点2について
電子スチルカメラにおいて、カメラ(ホスト機器)からフォーマット処理の指示信号が送られることによって、メモリカードをフォマット処理することは引用例2にも記載されているように極く普通のことであり(引用例2の上記ア、イの記載参照)、また、ビデオ機器(ホスト機器)からフォーマット処理の指示信号が送られることによって、データ記憶媒体をフォーマット処理すると共に、表示部にフォーマットに対応した表示内容を書き込むことによってフォーマット済みであることを認識できるようにすることも周知の事項(例えば、特開平6-119752号公報参照)であることを勘案すると、引用例1に記載の発明において、その駆動装置が、本願補正発明のように「少なくともホスト機器からフォーマット処理の指示信号が送られると、前記データ記憶媒体をフォーマット処理すると共に」、前記表示部に「フォーマットに対応した」表示内容を書き込むようになす程度のことは当業者が適宜なし得ることといえる。

そして、これら相違点を総合的に考慮しても当業者が容易になし得るものといえ、また本願補正発明の構成に基づく効果についてみても格別顕著なものがあるとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

6 [むすび]
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 【本願発明について】
平成15年7月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年2月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 情報を書き込み可能な表示部を有するデータ記憶媒体が着脱自在であって、前記表示部が視認不可能な状態で装着されたデータ記憶媒体を駆動する駆動装置と、この駆動装置と信号を交換可能な、少なくとも画像データを処理するホスト機器とを備え、
前記駆動装置は、少なくとも前記ホスト機器からフォーマット処理の指示信号が送られると、前記データ記憶媒体をフォーマット処理すると共に、前記表示部をフォーマットに対応した表示内容とすること、
を特徴とする駆動システム。」

1 [引用例]
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び2には、前記「第2の2」に摘記したとおりの事項が記載されている。

2 [当審の判断]
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明を特定するために必要な事項である「駆動装置」について、「前記表示部にフォーマットに対応した表示内容を書き込む」を、「前記表示部をフォーマットに対応した表示内容とする」とし、構成の一部を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2の5」に記載したとおり、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 [むすび]
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-17 
結審通知日 2005-02-22 
審決日 2005-03-09 
出願番号 特願平11-78119
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木方 庸輔山本 章裕  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 橋本 恵一
橋爪 正樹
発明の名称 データ記憶媒体の駆動システム  

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