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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1115995
審判番号 不服2004-2160  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-05 
確定日 2005-05-06 
事件の表示 特願2003-15312「地図表示設備、サーバ装置、および地図表示プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年1月29日出願公開、特開2004-30563〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成15年1月23日の出願であって、平成15年12月24日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月5日付で手続補正がなされたものである。

2 平成16年3月5日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月5日付の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 一軒ごとの住居や建物の形を表示するための住宅地図と、住所、経緯度等の位置情報を含む地図情報とを関連付けて格納する地図情報格納部と、
POSシステムで管理される顧客を識別する顧客識別子と、その顧客の氏名や住所や購買履歴などの属性値とを、顧客情報データとして格納する顧客情報格納部と、
顧客のランクを設定するための設定条件を受け付ける顧客ランク設定条件受付部と、
前記顧客情報格納部に格納される顧客情報データ及び前記顧客ランク設定条件受付部で受け付け設定されるランクに基づき顧客のランクを決定する顧客ランク決定部と、
任意のポイントとその任意のポイントからの範囲とを指定した所定のエリアに関するデータ、および、所定の顧客情報データを抽出する顧客抽出条件を受け付ける抽出条件受付部と、
前記抽出条件受付部で受け付けた顧客抽出条件に基づき、前記顧客情報格納部に格納される顧客情報データから該当する顧客情報データを有する顧客を抽出する顧客抽出部と、
前記顧客抽出部で抽出された顧客に対して、地図上に表示する色やマーク等の視覚可能な表示データを決定する表示データ決定部と、
前記地図情報格納部に格納される地図情報に基づく画面表示する地図上の一軒ごとの住居や建物に、前記表示データ決定部で決定された表示データを重ね合わせて表示する表示部とを具備するとともに、
前記顧客抽出部で抽出された顧客情報データと、前記抽出条件受付部で受け付けた所定のエリアとにより、その所定のエリアにある世帯数、抽出条件に該当した顧客数、前記世帯数の内該当した顧客数の比率を集計する集計部を具備し、
前記表示部が、前記集計部で集計したその所定のエリアに係る前記世帯数、前記顧客数、前記顧客数の比率を、さらに表示し得るように構成していることを特徴とする地図表示設備。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「所定の顧客情報データを抽出する顧客抽出条件を受け付ける抽出条件受付部」を「任意のポイントとその任意のポイントからの範囲とを指定した所定のエリアに関するデータ、および、所定の顧客情報データを抽出する顧客抽出条件を受け付ける抽出条件受付部」に限定し、「前記顧客抽出部で抽出された顧客情報データより、所定のエリアにある世帯数、抽出条件に該当した顧客数、前記世帯数の内該当した顧客数の比率を集計する集計部」を「前記顧客抽出部で抽出された顧客情報データと、前記抽出条件受付部で受け付けた所定のエリアとにより、その所定のエリアにある世帯数、抽出条件に該当した顧客数、前記世帯数の内該当した顧客数の比率を集計する集計部」に限定し、「集計した前記世帯数」を「集計したその所定のエリアに係る前記世帯数」に限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-325426号公報(以下「引用例1」という。)には、以下a〜hの事項が記載されている。
a 「【請求項2】 住所を含む顧客情報を分析し、分析結果を地図上に表示した地図情報を出力装置に出力する顧客情報分析システムであって、
前記顧客情報を記憶する顧客情報データベースと、
地図データを記憶する地図データベースと、
前記顧客情報データベースから所定の条件に合致した顧客情報を取得する顧客情報取得手段と、
前記顧客情報取得手段によって取得された顧客情報の住所を含む地域の地図データを前記地図データベースから取得する地図データ取得手段と、
前記地図データ取得手段によって取得された地図データ上の顧客情報の住所に対応した位置に、マークを表示した地図情報を作成する地図情報作成手段と、
を備えていることを特徴とする顧客情報分析システム。」
b 「【請求項4】 請求項1〜3の何れかに記載の顧客情報分析システムにおいて、
地図情報を表示する表示装置と、表示装置の画面上でのカーソルの移動操作を行うポインティングデバイスと、を備え、
地図情報作成手段によって作成された地図データ上の所望する範囲を前記ポインティングデバイスによって指定することに基づいて、当該指定範囲に相当する顧客データを生成し、前記表示装置の画面上に当該顧客データを画面上に表示する顧客データ表示手段を備えていることを特徴とする顧客情報分析システム。」
c 「この記録媒体23aには、データベース形式で、住所に対応付けられた緯度経度情報が記憶される緯度経度情報データベース231と、緯度経度情報に対応付けられた地図データが記憶される地図データベース232と、所定の顧客情報が記憶される顧客情報データベース233と、当該顧客情報分析システム1のシステムプログラムや顧客情報分析処理で使用される各種アプリケーションプログラム等を記憶したプログラムデータベース234などが格納されるとともに、各種アプリケーションプログラムの実行結果などを記憶する結果情報データベース235なども備えている。」(段落【0026】)
d 「顧客情報データベース233には、顧客に関するデータが記憶されている。記憶されるデータとしては、例えば、顧客の住所、氏名、年齢、性別、職業、年収、家族構成、趣味、電話番号、郵便番号などであるが、これ以外にも、例えば、顧客が商品を購入したり、サービスの提供を受けた際の内容(商品名、サービス名、日時、料金等)を購買履歴として保有している。かかる顧客情報は、会員カードの発行などやアンケートの回答等により収集する。」(段落【0029】)
e 「顧客情報分析処理が開始されると、まず、ステップS1では、…、例えば、顧客情報の中に含まれる、地域、年齢、性別など各種キーワードを組み合わせて指定する。次いで、ステップS2では、分析内容や地図情報の指定を行う。具体的には、例えば、地図の縮尺の指定、各種アプリケーションプログラムによって提供されるサービスの指定を行う。ここで、例えば、地図の縮尺を1/1500とし、顧客情報データベース233から抽出された顧客の住所に相当する場所を地図上にプロットして表示するサービスを指定する(第1の地図情報提供の形態)。また、或いは、例えば、指定された顧客の住所に相当する場所を地図上にプロットするとともに、当該顧客の中で、ある地点から半径2km以内の顧客と、それ以外の顧客とを分類して、その分布を表示するサービスを指定する(第2の地図情報提供の形態)。」(段落【0046】)
f 「具体的には、例えば、第1の地図情報提供の形態の場合、図5に示すように、…顧客の住所に対応する場所が地図上にピンポイントでマークMされて表示される。または、該当建物が識別出来る意味を持った色で地図上に表示される。」(段落【0049】)
g 「更に、地図情報にマークされた一の店舗の顧客分布と、山や河や交通網などの立地条件と、に基づいて、立地条件が及ぼす当該店舗の売上げへの影響が分析されるので、マーケティング活動に利用することが出来る。」(段落【0057】)
h 「地図情報の表示態様も本実施の形態においては、色替えにより行うこととしたが、異なるマークに変換させたり、マークの大きさを変更するようにしてもよい。更に、建物形状や敷地そのものの色替えによって表示するようにしてもよい。」(段落【0059】)
上記fの「または、該当建物が識別出来る意味を持った色で地図上に表示される。」の記載及び上記hの「建物形状や敷地そのものの色替えによって表示するようにしてもよい。」の記載は、上記aの「地図データ」に主要建物のみらず顧客の住居となり得る建物の建物形状の情報も含ませることを示唆しており、上記aの「地図データ」に一軒ごとの建物の建物形状の情報を含ませることは自明のことである。
又、会員番号や職員番号にみられるように、集団の構成員の情報を管理するのに構成員を識別する識別子を用いて管理することが技術常識であるから(例えば株式会社日本実業出版社1999年10月10日第4刷発行小泉修著「図解でわかるデータベースのすべて」第133〜135頁参照。)、上記の「顧客情報」に顧客を識別する識別子を含ませることも自明のことである。
さらに、上記eの「ある地点から半径2km以内の顧客と、それ以外の顧客とを分類して、その分布を表示する」は、所定の地点とそこからの距離で範囲を定めており、顧客分析の対象範囲の広さを販売環境や販売組織の戦略に応じて変えることは当然であるから、上記bの「地図データ上の所望する範囲を前記ポインティングデバイスによって指定する」のに、所望する地点とそこからの距離を指定することも自明のことである。
したがって、上記a〜hの記載事項及び図面の記載から、引用例1には、
「住所を含む顧客情報を分析し、分析結果を地図上に表示した地図情報を出力する顧客情報分析システムであって、
住所に対応付けられた緯度経度情報が記憶される緯度経度情報データベース231と、
緯度経度情報に対応付けられ一軒ごとの建物の建物形状の情報を含む地図データが記憶される地図データベース232と、
会員カードを利用して収集され取り込まれた顧客を識別する識別子、顧客の住所、氏名、年齢、性別、購買履歴等の顧客情報が記憶される顧客情報データベース233と、
顧客情報の中に含まれる、地域、年齢、性別など各種キーワードを組み合わせて所定の条件を指定する条件指定手段と、
前記顧客情報データベース233に記憶される顧客情報から前記条件指定手段で指定される所定の条件に合う顧客情報を抽出して取得する顧客情報取得手段と、
前記顧客情報取得手段によって取得された顧客情報の住所を含む地域の地図データを前記地図データベースから取得する地図データ取得手段と、
前記地図データ取得手段によって取得された地図データ上の顧客情報の住所に対応した位置の建物に、色替えした色を付けて表示する地図情報を作成する地図情報作成手段と、
前記地図情報を表示する表示装置とを備えるとともに、
前記地図データ上の所望する地点とそこからの距離を指定して所望する範囲を指定する範囲指定手段と、
前記指定された範囲の顧客データを生成して前記表示装置の画面上に表示する顧客データ表示手段とを備えていることを特徴とする顧客情報分析システム。」
の発明(以下「引用例1に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。
同じく引用された特開平10-207958号公報(以下「引用例2」という。)には、「このような手順で商品の販売が行われたとき、POS端末17は、顧客カードに記録されている顧客コードを含むPOSデータをCPU21に通知し、そのようなPOSデータの通知を受けたCPU21は、管理対象店舗における各商品の販売記録を記憶するためのファイルである管理マスタを更新する処理である管理マスタ更新処理を開始する。」(段落【0043】)と記載されており、該記載事項及び図面の記載から、引用例2には、
POSシステムで顧客を管理し顧客の情報を取得すること
が記載されていると認められる。
同じく引用された特開平8-7081号公報(以下「引用例3」という。)には、「従来、店舗における顧客の管理として、店舗周辺の複数の地域毎に顧客の来店客数を把握し、重点地域へのダイレクトメール発行などの、いわゆる地域戦略を行っている。」(段落【0002】)、「このような顧客管理には、販売時点売上管理(POS)システムが使用されている。この場合、顧客マスターに、複数の地域に対応する住所コードをそれぞれ登録しておき、顧客の来店時に、顧客の住所に対応する住所コード毎に来店客数をカウントし、これにより得られた数値を、例えば図5の表示例のように、地域1〜4についてディスプレイ上に表示する。」(段落【0003】)と記載されており、これらの記載事項及び図面の記載から、引用例3にも、
POSシステムで顧客を管理し顧客の情報を取得すること
が記載されていると認められる。
同じく引用された特開2001-351019号公報(以下「引用例4」という。)には、顧客管理システムに関し、「このようにして得られた顧客データ13Aには、各顧客の購買記録が所定期間に亘って図2に示すように購買履歴22として記録されているので、顧客層分類手段12Bは、記憶装置13に格納されている顧客分析基準表13Bとこの購買履歴とを用いて、これらを比較して顧客に対して顧客層のランク付を行う。」(段落【0018】)、「顧客分析基準表13Bは、R分析基準表、F分析基準表、P分析基準表の3つの分析基準表から成り立ち、それぞれその構成の1例として、図3〜図5に示すように、購買期日(R)、購買回数(F)、ポイント(P)の3項目についてそれぞれランク付けを行うための基準を予め設定したものである。」(段落【0019】)、「顧客層分類手段12Bは、例えば日単位で定期的に、変更のあった顧客データ13Aに記録されている購買履歴22のデータを引き出し、顧客分析基準表13Bと照らし合わせて、どの分類に入るかを判断してランクを決定する。」(段落【0026】)、「決定された各RFP評価は、例えば記録手段12Aを介して顧客データ13Aの評価欄23のR、F、Pの各欄に修正記録され、常に新しい状態の評価結果が得られるようになっており、必要に応じて出力装置14から顧客データ13Aをプリントすることができる。」(段落【0027】)、「この他に、顧客データ13Aの使い方としては、商圏内の地図上に所帯数、人工分布、来店客数、会員数等のデータに基づきプロットして、会員の地域分布の把握により会員発掘に活用したり、会員の希薄地域を把握して会員強化に活用したり、また優良会員の分布を把握して地域性を分析し、疑問会員の分布を把握して睡眠会員を活性化して販促を図るなどの対応もある。」(段落【0059】)と記載されている。
上記「顧客分析基準表13B」に「ランク付けを行うための基準」を予め設定するのに、商品販売組織の考えを反映させることは当然であるから、商品販売組織の管理者により「ランク付けを行うための基準」に関する指示がなされて顧客管理システムに入力され、該入力された指示に従って「ランク付けを行うための基準」が設定されることは自明のことである。
したがって、これらの記載事項及び図面の記載から、引用例4には、
顧客管理システムにおいて、商品販売組織の管理者により顧客のランク付けを行うための基準に関する指示がなされて顧客管理システムに入力され、該入力された指示に従って顧客のランク付けを行うための基準を顧客分析基準表13Bに予め設定しておき、記憶装置13に記憶される顧客データ13Aの購買履歴22のデータを引き出し前記顧客分析基準表13Bに予め設定された顧客のランク付けを行うための基準と照らし合わせて顧客のランクを決定し、顧客の分析を行うこと
が記載されていると認められる。
同じく引用された平田昌信、戦略情報システムのツールとして期待高まる地図情報システム、日経コンピュータ、日本、日経BP社、1989年8月14日、第206号、p.75-85(以下「引用例5」という。)には、「キッコーマンも営業マンの活動を支援するマーケティング・システムを現在構築中だ。ソフトウエアは…「エリアダイナミックシステム」を利用する。…エリアダイナミックシステムは年令別人口や世帯数、銀行店舗数など、100種類以上の統計データをあらかじめ持っている。統計データとユーザ・データを組み合わせて条件検索を行い、この結果を市町村単位の地図上に表示する機能や、地図上のある面を指定し、この面の中に含まれるデータを集計する機能…などがある(83ページの写真4)。」(84頁中欄12行〜同頁右欄6行)、「(a)は、任意の地点を中心として半径1.1kmのエリアの情報を検索しているところ」(83頁写真4の説明)、「属性データとしては、…各卸店への販売量のデータと、…各小売店に置かれた同社の商品に関する情報…を利用する。これらのデータと世帯数や若年人口などの統計データとを組み合わせ、地域単位のシュアなどを集計して地図上に表示する。」(84頁右欄7〜18行)と記載されている。
上記の「システム」は、「営業マンの活動を支援するマーケティング」のために集計するのであるから、条件検索を行って得られたデータを集計することは自明のことである。
したがって、これらの記載事項及び図面の記載から、引用例5には、
マーケティングシステムにおいて、統計データとシステムのユーザーが入力したデータ(ユーザ・データ)を組み合わせて条件検索を行い、得られたデータについて地図上のエリアを指定してこのエリアに含まれるデータを集計して地図上に表示すること
が記載されており、
商品を対象として、対象のデータと世帯数や人口などの統計データとを組み合わせ、集計して得た地域単位のシェアを地図上に表示すること
も記載されていると認められる。

(3)対比
本願補正発明(以下「前者」という。)と引用例1に記載された発明(以下「後者」という。)とを対比すると、
イ 後者の「顧客情報分析システム」は、地図情報を表示する点で、前者の「地図表示設備」に相当し、
ロ 後者の「一軒ごとの建物の建物形状の情報を含む地図データ」は、前者の「一軒ごとの住居や建物の形を表示するための住宅地図」に相当し、
ハ 後者の「緯度経度情報データベース231」と「地図データベース232」とで、前者の「地図情報格納部」に相当し、
ニ 後者の「顧客の住所、氏名、年齢、性別、購買履歴」は、前者の「顧客の氏名や住所や購買履歴などの属性値」に相当し、
ホ 後者の「顧客情報データベース233」は、前者の「顧客情報格納部」に相当し、
ヘ 後者の「地点」、「距離」、「範囲」は、前者の「ポイント」、「範囲」、「エリア」にそれぞれ相当し、
ト 後者の「顧客情報の中に含まれる、地域、年齢、性別など各種キーワードを組み合わせて所定の条件を指定する条件指定手段」と「地図データ上の所望する地点とそこからの距離を指定して所望する範囲を指定する範囲指定手段」とで、前者の「任意のポイントとその任意のポイントからの範囲とを指定した所定のエリアに関するデータ、および、所定の顧客情報データを抽出する顧客抽出条件を受け付ける抽出条件受付部」に相当し、
チ 後者の「顧客情報取得手段」は、前者の「顧客抽出部」に相当し、
リ 後者の「建物に、色替えした色を付けて表示する」は、前者の「一軒ごとの住居や建物に、…色やマーク等の視覚可能な表示データを重ね合わせて表示する」に相当し、
ヌ 後者の表示データ決定部は、「顧客情報の住所に対応した位置の建物に、色替えした色を付けて表示する」のであるから、顧客情報取得手段によって取得された「顧客情報」に対して建物に付ける色を決定する機能を奏することは明らかであり、該機能を奏する部分は、前者の「表示データ決定部」に相当し、
ル 上記ヌの機能を奏する部分を除いた後者の「地図情報作成手段」と「表示装置」とで、前者の「表示部」に相当している。
したがって、両者は、
「一軒ごとの住居や建物の形を表示するための住宅地図と、住所、経緯度等の位置情報を含む地図情報とを関連付けて格納する地図情報格納部と、
顧客を識別する顧客識別子と、その顧客の氏名や住所や購買履歴などの属性値とを、顧客情報データとして格納する顧客情報格納部と、
任意のポイントとその任意のポイントからの範囲とを指定した所定のエリアに関するデータ、および、所定の顧客情報データを抽出する顧客抽出条件を受け付ける抽出条件受付部と、
前記抽出条件受付部で受け付けた顧客抽出条件に基づき、前記顧客情報格納部に格納される顧客情報データから該当する顧客情報データを有する顧客を抽出する顧客抽出部と、
前記顧客抽出部で抽出された顧客に対して、地図上に表示する色やマーク等の視覚可能な表示データを決定する表示データ決定部と、
前記地図情報格納部に格納される地図情報に基づく画面表示する地図上の一軒ごとの住居や建物に、前記表示データ決定部で決定された表示データを重ね合わせて表示する表示部とを具備することを特徴とする地図表示設備。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
前者は、POSシステムで顧客を管理するのに対して、後者は、そうではない点。
[相違点2]
前者は、顧客のランクを設定するための設定条件を受け付ける顧客ランク設定条件受付部と、顧客情報格納部に格納される顧客情報データ及び前記顧客ランク設定条件受付部で受け付け設定されるランクに基づき顧客のランクを決定する顧客ランク決定部とを具備しているのに対して、後者は、そのような構成を具備していない点。
[相違点3]
前者は、顧客抽出部で抽出された顧客情報データと、抽出条件受付部で受け付けた所定のエリアとにより、その所定のエリアにある世帯数、抽出条件に該当した顧客数、前記世帯数の内該当した顧客数の比率を集計する集計部を具備し、表示部が、前記集計部で集計したその所定のエリアに係る前記世帯数、前記顧客数、前記顧客数の比率を、さらに表示し得るように構成しているのに対して、後者は、そのような構成を具備していない点。

(4)判断
[相違点1]について検討する。
引用例2、3に記載されているように、POSシステムで顧客を管理し顧客の情報を取得することが周知であるから、後者において、顧客の情報を取得するのにPOSシステムで顧客を管理するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
[相違点2]について検討する。
引用例4に、顧客管理システムにおいて、入力された顧客のランク付けを行うための基準に関する指示に従って顧客のランク付けを行うための基準を予め設定しておき、記憶装置に記憶される顧客データの購買履歴データを前記予め設定された顧客のランク付けを行うための基準と照らし合わせて顧客のランクを決定し、顧客の分析を行うことが記載されているから、後者において、顧客のランクを設定するための設定条件を受け付け、顧客情報格納部に格納される顧客情報データ及び前記受け付け設定されるランクに基づき顧客のランクを決定するようにして、前者の相違点2に係る構成を具備するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
[相違点3]について検討する。
引用例5に、「マーケティングシステムにおいて、統計データとシステムのユーザーが入力したデータを組み合わせて条件検索を行い、得られたデータについて地図上のエリアを指定してこのエリアに含まれるデータを集計して地図上に表示すること」が記載されており、上記の条件検索の前提技術としてシステムのユーザーが入力したデータについて条件検索を行うことは自明のことであり、さらに、商品を対象としてではあるが、「対象のデータと世帯数や人口などの統計データとを組み合わせ、集計して得た地域単位のシェアを地図上に表示すること」も記載されており、事業のための情報分析において、地域の顧客を対象としてシェアの指標(人口比)を求めることが周知であるから(例えば特開2001-306658号公報参照。特に段落【0014】の記載及び段落【0016】の記載に注目されたい。)、後者において、顧客抽出部で抽出された顧客情報データと、抽出条件受付部で受け付けた所定のエリアとにより、所定のエリアにある抽出条件に該当した顧客数を集計し、該集計した顧客数と所定のエリアにある世帯数を基に所定のエリアにある世帯数の内該当した顧客数の比率を集計値として算出して地図上に表示するようにすることは、当業者が容易に推考し得たことである。その際に、集計値を表示するのに集計値を算出する基になる値も表示することが周知であるから、所定のエリアにある世帯数と抽出条件に該当した顧客数も表示するようにして、前者の相違点3に係る構成を具備するようにすることは、当業者が適宜になし得た設計的事項にすぎない。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1〜5に記載された発明及び周知の技術事項の作用効果から当業者が容易に予測し得たものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1〜5に記載された発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
平成16年3月5日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成15年10月2日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 一軒ごとの住居や建物の形を表示するための住宅地図と、住所、経緯度等の位置情報を含む地図情報とを関連付けて格納する地図情報格納部と、
POSシステムで管理される顧客を識別する顧客識別子と、その顧客の氏名や住所や購買履歴などの属性値とを、顧客情報データとして格納する顧客情報格納部と、
顧客のランクを設定するための設定条件を受け付ける顧客ランク設定条件受付部と、
前記顧客情報格納部に格納される顧客情報データ及び前記顧客ランク設定条件受付部で受け付け設定されるランクに基づき顧客のランクを決定する顧客ランク決定部と、
所定の顧客情報データを抽出する顧客抽出条件を受け付ける抽出条件受付部と、
前記抽出条件受付部で受け付けた顧客抽出条件に基づき、前記顧客情報格納部に格納される顧客情報データから該当する顧客情報データを有する顧客を抽出する顧客抽出部と、
前記顧客抽出部で抽出された顧客に対して、地図上に表示する色やマーク等の視覚可能な表示データを決定する表示データ決定部と、
前記地図情報格納部に格納される地図情報に基づく画面表示する地図上の一軒ごとの住居や建物に、前記表示データ決定部で決定された表示データを重ね合わせて表示する表示部とを具備するとともに、
前記顧客抽出部で抽出された顧客情報データより、所定のエリアにある世帯数、抽出条件に該当した顧客数、前記世帯数の内該当した顧客数の比率を集計する集計部を具備し、
前記表示部が、前記集計部で集計した前記世帯数、前記顧客数、前記顧客数の比率を、さらに表示し得るように構成していることを特徴とする地図表示設備。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及び該引用例に記載された発明は、上記2(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
上記2で検討した本願補正発明は、本願の請求項1に係る発明の「所定の顧客情報データを抽出する顧客抽出条件を受け付ける抽出条件受付部」を「任意のポイントとその任意のポイントからの範囲とを指定した所定のエリアに関するデータ、および、所定の顧客情報データを抽出する顧客抽出条件を受け付ける抽出条件受付部」に限定し、「前記顧客抽出部で抽出された顧客情報データより、所定のエリアにある世帯数、抽出条件に該当した顧客数、前記世帯数の内該当した顧客数の比率を集計する集計部」を「前記顧客抽出部で抽出された顧客情報データと、前記抽出条件受付部で受け付けた所定のエリアとにより、その所定のエリアにある世帯数、抽出条件に該当した顧客数、前記世帯数の内該当した顧客数の比率を集計する集計部」に限定し、「集計した前記世帯数」を「集計したその所定のエリアに係る前記世帯数」に限定したものである。
そうすると、本願の請求項1に係る発明の構成を全て含み、さらに構成を限定した本願補正発明が、上記2(4)に記載したとおり、引用例1〜4に記載された発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の請求項1に係る発明も、同様の理由により、引用例1〜5に記載された発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1〜5に記載された発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-22 
結審通知日 2005-03-01 
審決日 2005-03-14 
出願番号 特願2003-15312(P2003-15312)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高瀬 勤  
特許庁審判長 小林 信雄
特許庁審判官 竹中 辰利
山本 穂積
発明の名称 地図表示設備、サーバ装置、および地図表示プログラム  
代理人 赤澤 一博  
代理人 井上 敬子  

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