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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1115996
審判番号 不服2004-1746  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-23 
確定日 2005-05-06 
事件の表示 平成10年特許願第223845号「番組予約装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月25日出願公開、特開2000- 59704〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成10年8月7日の出願であって、その請求項1ないし請求項4に係る発明は、平成15年11月25日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】テレビ放送信号を受信する受信装置に、入力されたテレビ放送信号より、テレビ番組情報を抽出するデータ抽出手段と、
該データ抽出手段にて抽出されたテレビ番組情報から、テレビ番組表を作成する番組表作成手段と、
該番組表作成手段にて作成されたテレビ番組表を、リモートコントロール装置からの送信要求に基づいて、該リモートコントロール装置に送信する番組表送信手段とを備え、
該リモートコントロール装置に、前記番組表送信手段に対して前記テレビ番組表の送信を要求する要求手段と、
前記番組表送信手段より送信されたテレビ番組表を表示する表示手段と、
該表示手段にて表示されたテレビ番組表から、所望の番組を選択指示する指示手段と、
該指示手段にて選択指示された番組の情報を、予約情報として前記受信装置に送信するリモコン送信手段とを設けたことを特徴とする番組予約装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由で引用された特開平10-174176号公報(以下、「引用例1」という。)には、発明の名称を「情報受信装置とリモートコントロール装置」とし、次のとおりのことが記載されている。
(a)「複数の番組および番組の放送時刻を含む番組表とが多重された複合信号が入力され、前記複合信号より前記番組表を分離する番組表分離手段と、現在の時刻を示す時計手段と、前記時計手段が示す現在の時刻に放送されている各チャンネルの現番組情報を前記番組表より抽出する現番組情報抽出手段と、抽出された現番組情報信号に所定の変調を行う第1の変調手段と、前記変調された電気信号を光信号に変換する第1の発光素子と、リモートコントロール装置から伝送される光信号受光し電気信号に変換する第1の受光素子と、前記第1の受光素子により変換された電気信号からリモートコントロール装置により選択したチャンネル情報を得る第1の復調手段と、前記復調されたチャンネル信号に基づき、表示するチャンネルを切り替えるチャンネル切換手段と、前記切り替えられたチャンネルに対応する伝送中の番組を所定の表示手段に表示可能な信号に変換する番組表示用処理手段と、前記番組を表示する表示手段とを具備することを特徴とする情報受信装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)
(b)「アンテナ1より受信された複数の放送チャンネルおよびその番組表信号から、番組表分離手段2を用いて番組表のみを分離する。分離された番組表は第1のメモリー3に蓄えられる。そして、この番組表は第1の変調手段6により光伝送に最適な変調が成される。そして、電気信号を光信号に変換する第1の発光素子7を用いてリモコン装置側に光伝送される。通常、発光素子赤外線発光ダイオードが用いられるがその他の発光素子でもよい。このように第2の実施形態では、現時刻に放送されている番組情報ではなく、抽出された番組表すべてをリモコン装置側に転送する。」(5頁左欄31〜41行、図3)
(c)「第1の発光素子7により光信号に変換された番組表は、リモートコントロール装置に具備された第2の受光素子13で電気信号に変換され、第2の復調手段14を用いて現番組情報が復調され第2のメモリー15に蓄積される。そして、現番組情報抽出手段5と現在時刻を示す時計手段4を用いて現在の時刻に放送されている現番組情報をリモートコントロール装置内部で抽出する。そして、表示用処理手段16により先に抽出された現番組情報が所定の表示用信号処理を行った後、リモートコントロール装置に装備された現番組情報表示手段17に、チャンネルと現時刻に放送されている番組が表示される。」(5頁左欄42行〜右欄4行、図2、図3)
(d)「第1の実施形態と同様に、テレビジョン放送を視聴しようとする者は、この表示を手元で見ながらリモートコントロール装置のチャンネル選択手段18を操作し、視聴したいチャンネルを選択する。チャンネル選択手段18により選択されたチャンネル信号は第2の変調手段19で光伝送に適した変調が掛けられ、第2の発光素子20を発光させてチャンネル選択情報をテレビジョン受信装置本体側に伝送する。」(5頁右欄8〜15行)
(e)「このように第2の実施形態のよれば、テレビジョン受信装置本体側に放送1日/1週間程度の放送予定表を分離する手段をもうけ、それをすべてリモートコントロール装置に転送した後に、リモートコントロール装置内で、現時刻に放送中の番組情報を抽出して表示することにより、第1の実施形態と同一の効果を得ることが出来る。また、第2の実施形態では、現在の時刻を含む1日/1週間単位の番組表がリモートコントロール装置内に蓄えられているので、番組を現在時刻以外の番組も抽出する回路を加えれば、好きな時刻の番組を把握することが出来、番組予約などの機能を付加する事も可能である。」(5頁右欄25〜37行)

また、原査定の拒絶理由で引用された特開昭63-54830号公報(以下、「引用例2」という。)には、発明の名称を「番組予約装置」とし、次のとおりのことが記載されている。
(f)「装置本体と、この装置本体を遠隔操作するリモートコントロール手元ボックスと、上記装置本体に形成された手元ボックス収納口と、液晶表示素子で構成されるとともに、上記手元ボックスに一体化されて主面に少なくともチャンネル番組枠と時刻枠とからなるマトリックス状の着色選択領域が表示される番組予約ボードと、上記着色選択領域のそれぞれに対応して上記手元ボックス内に設けられて番組予約に必要な情報を書き込まれたメモリと、上記着色選択領域のうちから希望する領域が指定された際、この指定領域を着色させる液晶駆動回路と、上記手元ボックスが上記収納口に収納された際、上記着色された指定領域に対応するメモリの内容を読み出させて番組予約用の制御信号を送出する制御装置とを具備したことを特徴とする番組予約装置。」(特許請求の範囲)
(g)「なお、上記実施例では、全チャンネル番号と朝から晩までの番組分を1枚の番組予約ボード(4)に1度に表示させるもので説明したが、リモートコントロール手元ボックス(2)の大きさにも限界があるので、たとえば朝、昼、晩と分けて表示するようにしてもよい。また、上記着色選択領域(5)は上記のものの他、曜日、2週目、毎日などの区分についても同様に設けることができる。」(4頁右下欄4〜11行)

同じく、原査定の拒絶理由で引用された特開平10-42207号公報(以下、「引用例3」という。)には、発明の名称を「テレビジョン番組案内選択装置」とし、次のとおりのことが記載されている。
(h)「また、テレビジョン番組案内選択装置10は、通信媒体20を介して番組情報送信装置30と接続されている。通信媒体20は、インターネットのような一般通信回線やCATV回線などである。番組情報送信装置30は、CPU、メモリ、通信制御手段などからなる情報提供用の処理装置で、インターネットのWWW(World Wide Web)サーバの技術を利用することができる。番組情報送信装置30にはテレビジョン番組表や番組案内を蓄えてあり、テレビジョン番組案内選択装置10の要求に応じて、これらの情報を発信する。番組情報送信装置30は、放送局や番組情報サービス会社などに設置される。」(3頁右欄37〜48行)

3.対比
本願発明と引用例1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、
(1)引用例1における上記記載(a)ないし(e)によれば、引用例1には、テレビジョン受信装置本体(本願発明でいう「テレビ放送信号を受信する受信装置」に相当)に、受信された複数のチャンネルおよびその番組表信号(本願発明でいう「テレビ番組情報」に相当)から、放送1日/1週間程度の放送予定表(または、現在の時刻を含む1日/1週間単位の番組表。本願発明でいう「テレビ番組表」に相当)を分離する番組表分離手段2(本願発明でいう「入力されたテレビ放送信号より、テレビ番組情報を抽出するデータ抽出手段と、該データ抽出手段にて抽出されたテレビ番組情報から、テレビ番組表を作成する番組表作成手段」に相当)と、該番組表分離手段2にて分離された前記予定表(テレビ番組表)のすべてをリモートコントロール装置側に送信する第1の変調手段6および第1の発光素子7(本願発明でいう「番組表送信手段」に相当)を備え、
前記リモートコントロール装置に、転送された前記予定表(テレビ番組表)から現在時刻の番組と現在時刻以外の番組を抽出して表示する現番組表示手段17(本願発明でいう「表示手段」に相当)と、前記現番組表示手段17にて表示された予定表(テレビ番組表)から視聴したい番組を選択指示するチャンネル選択手段18(本願発明でいう「指示手段」に相当)と、前記チャンネル選択手段18にて選択指示された番組の情報をチャンネル選択情報として前記テレビジョン受信装置本体に送信する第2の変調手段19および第2の発光素子20(本願発明でいう「リモコン送信手段」に相当)とを設けた装置が記載されているものといえる。
(2)引用例1における上記記載(e)によれば、引用発明は、上記チャンネル選択手段18(本願発明でいう「指示手段」に相当)にて選択指示された番組の情報を、予約情報として上記テレビジョン受信装置本体(本願発明でいう「テレビ放送信号を受信する受信装置」に相当)に送信するリモコン送信手段を設けた番組予約装置でもあることがいえる。
(3)したがって、(1)ないし(2)によれば、両者はともに「テレビ放送信号を受信する受信装置に、入力されたテレビ放送信号より、テレビ番組情報を抽出するデータ抽出手段と、該データ抽出手段にて抽出されたテレビ番組情報から、テレビ番組表を作成する番組表作成手段と、該番組表作成手段にて作成されたテレビ番組表を、リモートコントロール装置に送信する番組表送信手段とを備え、前記リモートコントロール装置に、前記番組表送信手段より送信されたテレビ番組表の中で選択指示対象となるテレビ番組に関する情報を表示する表示手段と、該表示手段にて表示されたテレビ番組に関する情報から、所望の番組を選択指示する指示手段と、該指示手段にて選択指示された番組の情報を、予約情報として前記受信装置に送信するリモコン送信手段とを設けたことを特徴とする番組予約装置。」である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。

[相違点1]
上記「選択指示対象となるテレビ番組に関する情報」が、本願発明では、「送信されたテレビ番組表」であるのに対して、引用発明では、送信されたテレビ番組表から抽出された番組情報である点。

[相違点2]
本願発明では、リモートコントロール装置がさらに「番組表送信手段に対してテレビ番組表の送信を要求する要求手段」を備え、番組表送信手段が、「リモートコントロール装置からの送信要求に基づいて、」テレビ番組表をリモートコントロール装置に送信するのに対して、引用発明では、リモートコントロール装置から番組表送信手段に対してテレビ番組表の送信を要求することについては何ら記載されていない点。

4.当審の判断
そこで上記相違点について検討する。

[相違点1]について
テレビ番組の選択指示を、現在の時刻に放送されている番組か、もしくは現在時刻以外に放送される予定の番組の情報ではなく、テレビ番組表そのものを表示手段に表示させた上で行うことは、例えば、引用例2にも記載されているように周知技術にすぎず、引用発明において、リモートコントロール装置の表示手段に表示させる情報を、送信されたテレビ番組表から抽出された番組情報ではなく、テレビ番組表そのものとすることは、当業者ならば適宜なし得る程度の設計的事項にすぎない。

[相違点2]について
引用例3における上記記載(h)によれば、引用例3には、所望のテレビジョン番組の選択指示を行うテレビジョン番組案内選択装置10から要求があったときに、番組情報送信装置30からテレビジョン番組表を前記テレビジョン番組案内選択装置10に対して送信すること、すなわち、「選択装置から送信要求があったときに、送信装置から前記選択装置に対して対象となる情報を送信する」といった技術思想が開示されている。
したがって、引用発明において、リモートコントロール装置にさらに「番組表送信手段に対してテレビ番組表の送信を要求する要求手段」を設け、前記リモートコントロール装置からの送信要求に基づいて、テレビジョン受信装置本体(本願発明でいう「テレビ放送信号を受信する受信装置」に相当)から前記リモートコントロール装置に対して、テレビ番組表を送信するようにすることは、上記技術思想に基づいて、当業者ならば容易に推考できたものである。

そして、これらを総合的に考慮しても、当業者が容易に推考できたものであり、また、その効果も予測し得るものである。

5.審判請求書における主張点の検討
請求人は、平成16年1月23日付けの審判請求書の5頁1〜8行において、「引用文献1,2のものに、引用文献3に記載のものを組み合わせたとしても、外部サーバなどの番組情報送信装置を追加して、通信回線を介してこの番組情報送信装置から要求に応じてリモートコントロール装置にテレビ番組表を送信するものが想到されるのみで、たとえ上記引用文献1〜3を単に組み合わせたとしても、上記本願発明のように、テレビ番組表の送信要求があったときにのみ、受信装置A(テレビジョン受像機やビデオテープレコーダ等の受信装置)で保持されている最新のテレビ番組表を、該受信装置Aのリモートコントロール装置Bに送信するものは、当業者といえども決して容易に発明できたものではありません。」と主張しているが、引用例3に記載された内容において引用しているのは、上記4の「[相違点2]について」で述べたように「選択装置から送信要求があったときに、送信装置から前記選択装置に対して対象となる情報を送信する」といった技術思想のみであり、当該技術思想は、引用例3に記載されたような、WWWサーバである番組情報送信装置からテレビジョン番組案内選択装置に対して番組表を送信するようなときにのみ適用し得る技術思想ではなく、一般的に、何らかの情報を送信する送信装置と前記情報の中から選択指示を行う選択装置との間の情報の送受信において適宜採用し得る技術思想であることは明らかである。
したがって、審判請求書における上記主張を採用することはできない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項2ないし4に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-28 
結審通知日 2005-03-01 
審決日 2005-03-18 
出願番号 特願平10-223845
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅原 道晴  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 橋本 恵一
橋爪 正樹
発明の名称 番組予約装置  
代理人 堀 城之  

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