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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E21D
管理番号 1116016
審判番号 不服2004-21783  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-06-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-21 
確定日 2005-05-06 
事件の表示 平成9年特許願第332446号「自由断面掘削機」拒絶査定不服審判事件〔平成11年6月2日出願公開、特開平11-148299〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年11月17日の出願であって、その請求項に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年11月22日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「先端位置を変えられるブームと、このブームの先端に設けられて掘削を行う掘削部と、を有し、
前記掘削部は、ドラム状をなして前記ブームの長さ方向に延びる直線に直交する軸を中心に回転する2つの回転体をそれぞれが前記ブームを挟むように前記ブームの両側に有し、
前記回転体には、複数列のディスクカッタが取り付けられ、
前記ブームは、長さが変わるとともに上下及び左右に揺動することを特徴とする自由断面掘削機。」

【2】刊行物記載の発明
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された、特開平5-141188号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
「【請求項1】ブーム手段上に枢軸運動のためにカッターホイールが設けられ、かつ該カッターホイールがトンネル加工面に対して順次振り運動する間トンネル加工面にほゞ平行な軸の回りに回転するような移動式掘削機械において、
前記ブーム手段は、前記トンネル加工面に対してほぼ平行な軸の回りに前記ブーム手段の枢軸運動を可能とする取り付け手段によつて運ばれ、前記取り付け手段は、前記トンネル加工面に対してほぼ垂直な軸の回りに回転可能な回転可能手段によつて、前記カッタホイールの回転軸が前記トンネル加工面に対してほぼ平行ないかなる所望の方向においても位置することの出来るように支持されたガントリ型移動式掘削機械。」
「【0018】【実施例】図1-図7には本発明の好適な実施例が示されるが、図1と図2はカッタホイール12を含む移動式掘削機械10を示す。”移動式掘削機械”という語は、採鉱、トンネル掘削及び発掘動作のすべてに利用される機械を含むものをいう。そのカッタホイール12は、横/水平軸ドラム14を有し、その上に複数の円板カッタ16及びゲージカッタ18が設けられている。横/水平軸ドラム14はブーム20に回転可能に接続されていて、公知の駆動トレイン24を介して駆動モータ22によつて回転軸の回りに駆動される。回転軸は、下記に述べるように、トンネル加工面Wにほぼ平行であり、移動式掘削機械10の進路Lの線にほぼ垂直である。
【0019】カッタホイール12は、進路方向に突き進むことによりトンネル加工面Wを形成し、かつ以下に詳しく述べるように横方向運動機構によつて制御されて左右に選択的に振り運動する。カッタホイール12は、下記に詳述するように時計方向にも反時計方向にもカッタホイール回転機構の回りに回転可能で、これによりカッタホイール12は軌道運動を行う。この回転機構は、移動式掘削機械10の進路方向Lにほぼ平行で、カッタホイール12の回転軸及びトンネル加工面Wにほゞ垂直な軸を有する。更に、ブーム20は軸の回りに枢軸回転し、カッタホイール12の回転軸から移動式掘削機械10の進路方向Lに測定したカッタホイール12の軌道半径を変化させる。ブーム20の回転軸は、移動式掘削機械10の進路Lの線とほぼ直角で、かつカッタホイール12の位置に関係無く、トンネル加工面W及びカッタホイール12の回転軸とほぼ平行である。以上述べた、カッタホイール12の水平振り運動とカッタホイール12の可変軌道半径による軌道移動との組み合わせにより、カッタホイール12の水平切削、垂直切削、弧状切削及び角度を有する切削等が可能となる。」
「【0025】移動式掘削機械10のカッタホイール12、ブーム20及びブーム支持シヤフト34の前後進運動を行う機構として、図1及び7に示す外部スリーブ78及び内部ピストン80をそれぞれ有する複数のプランジシリンダ76を説明する。……。植え込みボルト82は、各プランジシリンダ76の中央部を通過し、ナットのような締め付け手段84によつて外部スリーブ78に固定されている。外部スリーブ78に取り付けられていない方の植え込みボルト82の端は、前面シヤフト横断ハジング46aにねじ固定されている。植え込みボルト82は、ブーム支持シヤフト34が植え込みボルト82及びプランジシリンダ76に対して動き得るように、ブーム支持シヤフト34のスラスト板86に摺動可能に固定されている。従って、スラスト板86の近傍のプランジヤシリンダ76の内部ピストン80の面は、スラスト板86に固定される。
【0026】動作について述べると、カッタホイール12とブーム20とを突入させるために、ブーム支持シヤフト34は、プランジヤシリンダ76の右側チヤンバAにおける圧力を増加することによつて、移動式掘削機械10に対して前進する。この圧力増加により内部ピストン80は、ブーム支持シヤフト34のスラスト板86に対して移動式掘削機械10の長手軸にほぼ平行な力を与える。これにより、ブーム支持シヤフト34は、前面メインブッシング48及び後面メインブッシング50上の前面シヤフト横断ハウジング46aに対して相対的に前方に押される。また、ブーム20及びカッタホイール12も前方に押される。内部ピストン80によつてスラスト板86にかかる上記力によつて、外部スリーブ78がシヤフト82によつて前面シヤフト横断ハウジング46aに固定されるので、ブーム支持シヤフト34は相対移動する。」
したがって、上記記載を含む明細書全体および図面の記載からみて、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。
「先端位置を変えられるブーム20と、このブーム20の先端に設けられて掘削を行う掘削部と、を有し、
前記掘削部は、ドラム状をなして前記ブーム20の長さ方向に延びる直線に直交する軸を中心に回転する1つのカッタホイール12を有し、
前記カッタホイール12は、横/水平軸ドラム14を有し、その上に複数の円板カッタ16及びゲージカッタ18が設けられ、
前記ブーム20は、上下に揺動するとともに、横断ハウジング46の移動に伴い左右に移動し、かつ、ブーム支持シヤフト34の移動に伴い前後に移動する、
移動式掘削機械。」

同じく、原査定の拒絶の理由で引用された、特開平8-284592号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
「【0014】【実施例】本発明に係る岩石掘削機の一実施例について図面を参照して説明する。図1は本実施例の正面図、図2は本実施例の平面図であり、図において従来の岩石掘削機と同一もしくは同等な部分については同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0015】本実施例は図1ないし図4に示すように自走式クローラ1の上に基台2を設け、この基台2の中央部にコンベア3を枢着し、このコンベア3の前部には破砕岩石用掻き込み装置4が装備され、これには掻き込み爪5が回動可能に取り付けられている。そしてこの基台2の前部には掘削ブーム6の後部支持ブラケット7が水平方向に旋回可能に旋回軸受8によって取付けられており、この掘削ブーム6は基台2に対してブーム左右旋回シリンダ9によって左右方向に旋回可能であり、さらにこの掘削ブーム6は支持ブラケット7に対して水平ピン7Aによって取付けられており、掘削ブーム6はブーム上下方向揺動シリンダ10によって上下方向に揺動可能である。そして掘削ブーム6には原動機16と減速機17が装備され、その回転を伝達する駆動回転軸18の先端にはデイスクカッタユニット19が取り付けられている。このデイスクカッタユニット19には円錐台状をしたデイスクカッタ20を備えた2個以上の複数回転軸21が軸受22により回転自由に取り付けられており、押圧シリンダ12によってトンネルT内の切羽岩石Fの自由面に押圧される。
【0016】したがって、本実施例の動作は掘削ブーム6をブーム左右旋回シリンダ9,ブーム上下方向揺動シリンダ10,押圧シリンダ12によってデイスクカッタユニット19を切羽面に押圧し旋回、上下動させながら掘削ブーム6に装備した原動機16の回転駆動力を減速機17により減速し、駆動回転軸18を介してデイスクカッタユニット19に伝達させてデイスクカッタユニット19を回転駆動すると、その回転するデイスクカッタユニット19に装備されたデイスクカッタ20を備えた回転自由の複数の回転軸21が各自自転しながら公転し、前面が平らで円錐台状をしたデイスクカッタ20によりトンネルT内の切羽岩石Fを自由面に対してその周縁がくい込み剥ぎ取るように掘削する。」

【3】対比・判断
本願発明と、上記刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「横/水平軸ドラム14を有するカッタホイール12」、「円板カッタ16」、及び「移動式掘削機械」は、本願発明の「回転体」、「ディスクカッタ」、及び「自由断面掘削機」にそれぞれ相当するから、両者は、
「先端位置を変えられるブームと、このブームの先端に設けられて掘削を行う掘削部と、を有し、
前記掘削部は、ドラム状をなして前記ブームの長さ方向に延びる直線に直交する軸を中心に回転する回転体をブームに有し、
前記回転体には、複数のディスクカッタが取り付けられ、
前記ブームは、上下に揺動する、自由断面掘削機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:ブームが、本願発明では、長さが変わるとともに上下及び左右に揺動するものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、上下に揺動するとともに、横断ハウジングの移動に伴い左右に移動し、かつ、ブーム支持シヤフトの移動に伴い前後に移動するものである点
相違点2:回転体が、本願発明では、ブームを挟むようにブームの両側に2つあり、それぞれに複数列のディスクカッタが取り付けられたものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、1つであり、複数のディスクカッタが取り付けられたものである点

上記各相違点について検討する。

<相違点1について>
刊行物2には、上記のとおり、掘削ブーム6(本願発明の「ブーム」に相当。以下、同様。)を、ブーム左右旋回シリンダ9,ブーム上下方向揺動シリンダ10により、左右・上下に揺動可能とすると共に、押圧シリンダ12により掘削ブーム6の先端側を前後進可能、すなわち長さ可変とした掘削機が記載されており、この技術を相違点1として摘記した本願発明の構成とすることは、当業者が必要に応じ適宜なし得る設計的事項にすぎない。

<相違点2について>
掘削機の分野において、カッタを取り付けた回転体を、ブームを挟むようにブームの両側に2つ設けることは、特公昭49-36841号公報、特開昭56-108496号公報、特開平1-290895号公報等にみられるとおり、従来周知の技術にすぎず、また、回転体にディスクカッタを複数列設けることも、特公昭49-36841号公報、特公平4-44074号公報(原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1)等にみられるとおり、従来周知の技術にすぎないから、これらの周知技術を相違点2として摘記した本願発明の構成とする点には、何らの困難性も認められない。

そして、本願発明が奏する作用効果も、当業者が予期し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

【4】むすび
したがって、本願請求項1に係る発明は、上記刊行物1,2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-01 
結審通知日 2005-03-08 
審決日 2005-03-22 
出願番号 特願平9-332446
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 勝治  
特許庁審判長 山 田 忠 夫
特許庁審判官 峰 祐 治
木 原 裕
発明の名称 自由断面掘削機  
代理人 布施 行夫  
代理人 井上 一  
代理人 井上 一  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 布施 行夫  

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