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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1116060
審判番号 不服2002-10882  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-10-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-14 
確定日 2005-05-06 
事件の表示 特願2000-107048「入金管理方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月19日出願公開、特開2001-290874〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
(手続の経緯について)
本願は、平成12年4月7日の出願であって、その請求項1〜8に係る発明は、平成14年4月25日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜8に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】借家人が、ネットワークに接続された借家人端末を使用して、該借家人の氏名と識別子とを入力し、
前記ネットワークに接続された家主端末が、入力された氏名と識別子とに基づいて、前記借家人を認証し、
前記借家人が認証されると、前記借家人端末が、予め登録された借家人の銀行口座情報を、前記ネットワークを介して、借家人銀行サーバへ送信し、
前記借家人が認証されると、前記家主端末が、該借家人の契約物件の賃料と予め登録された家主の銀行口座情報とを、前記ネットワークを介して、前記借家人銀行サーバへ送信し、
前記借家人銀行サーバが、前記借家人の銀行口座情報が示す銀行口座から、前記家主の銀行口座情報が示す銀行口座へ、前記賃料を振り込み、
前記家主端末は、入金状況情報を格納する入金管理テーブルを具備し、前記賃料が振り込まれると、該入金管理テーブルにおいて、入金にかかる物件の次回振込期限を更新するとともに、本日の日付を記録することを特徴とする入金管理方法。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用した特開平9-218896号公報(平成9年8月19日出願公開)(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の記載がある。

(ア)「【0030】(実施の形態1)買手は商品発注時と商品受け取り時に認証情報を作成し、クレジットカード会社はそれらの正当性を認証した後、買手の銀行口座から代金を引き落とす。本実施の形態では、このような場合について以下に詳しく述べる。また、本実施の形態では、公開鍵暗号にRSA(前述の「暗号理論入門」の第88〜91頁参照)を用いる。
【0031】買手はクレジットカード会社が発行したクレジットカード100を所持する。クレジットカード100内のメモリ101には買手固有の秘密鍵dと公開鍵(e,n)が格納されている。クレジットカード会社はクレジットカード側装置400内のメモリ402に買手の公開鍵(e,n)を保管している。ただし、n=pq(p,qは素数),ed≡1(mod N)(Nはp-1とq-1の最小公倍数)。ed≡1(mod N)は、ed-1がNで割り切れることを意味する。
【0032】図8を参照しながら、本実施の形態におけるショッピングの流れを説明する。
【0033】(1)買手は購入を希望する商品を選び、買手側装置200内の文書作成装置202を用いて注文書P(買手のID情報を含む)を作成する(81)。注文書は、各小売店が定めるものであり、通常、買物注文の日付、注文商品とその個数、合計金額、クレジットワード会社名、クレジットカード番号、クレジットカードの有効期限等を記載したものである。さらに、買手はクレジットカード100を買手側装置200のクレジットカード読み取り装置201に接続する。買手側装置200はハッシュ計算装置203を用いて注文書Pのハッシュ値h(P)を計算し、クレジットカード100のメモリ101に出力する。クレジットカード100内は、メモリ101にある秘密鍵dと署名作成装置102を用いてクレジットカード100内部にて、注文書Pに対する署名文S1を、
S1=exp(h(P),d) mod n,
にて作成する(82)。この式は、S1=exp(h(P),d) mod nは、exp(h(P),d)をnで割った余りをS1とする、という意味である。ただし、hは公開されたハッシュ関数で、exp(a,x)はaをx乗した値を表す。本例ではデジタル署名にRSAを用いているので、ハッシュ値h(P)は、0≦h(P)≦nであればよい。クレジットカード100は、署名文S1を買手側装置200に出力する。買手側装置通信装置206を用いて注文書Pおよび署名文S1を小売店側装置300に通信ネットワーク800を介して送る(83)。なお、安全性の観点からnには512ビット以上の値が推奨される。
【0034】(2)小売店は、注文書Pおよび署名文S1を受け取ると、注文書Pに記載の買手のID情報を用いて、クレジットカード会社側装置400のメモリ402に格納されている買手の公開鍵(e,n)を問い合わせる(84)。クレジット会社側装置400は、これに応答して公開鍵を返送する(85)。小売店側装置300は、公開鍵(e,n)を受け取り、ハッシュ計算装置301と署名検証装置302を用いて、
h(P)≡exp(S1,e)(mod n),
の成立を確かめる(86)。この式は、h(P)-exp(S1,e)がnで割り切れることを意味する。これにより、署名文S1の認証を行う。
【0035】(3)小売店は、買手の注文した商品の発送を運搬者を通して行う(87)。また、代金の請求をクレジットカード会社に対して行う(88)。この際、注文書Pと署名文S1をクレジットカード会社へ送信する。
【0036】(4)買手は運搬者からの商品受け渡し時に、クレジットカード100を運搬者が携帯する運搬者携帯装置600のクレジットカード読み取り装置601に接続する。運搬者携帯装置600はハッシュ計算装置602を用いて商品受取書Rのハッシュ値h(R)を計算し、クレジットカード100に出力する(90)。商品受取書Rは、通常、運送業者が定めるものであり、発注者の名称、受取者の名称、日付等が記載されたものである。商品受取書Rは、通常、運搬者が小売店から商品発送を請け負った後に作成する。但し、小売店が作成し、運搬者に商品発送を行った際に運搬車に渡すようにすることも可能である。クレジットカード100はメモリ101に格納された秘密鍵dと署名作成装置102を用いて商品受取書Rに署名文S2をクレジットカード100内部で、
S2=exp(h(R),d) mod n,
にて作成し、署名文S2と公開鍵(e,n)を運搬者携帯装置600のメモリ604に出力する(90)。このとき、受取書Rおよび署名S2のコピーをクレジットカード100または他の記憶媒体に出力し、買手はこれを保管する、(5)運搬者携帯装置600は、署名検証装置603を用いて、
h(R)≡exp(S2,e)(mod n),
を確かめることにより、署名文S2の認証を行った後、S2を運搬者側装置500のメモリ501に出力する(91)。運搬者側装置500は通信装置502を用いて通信ネットワーク800を介してRとS2をクレジットカード会社側装置400に送信する(92)。
【0037】(6)クレジットカード会社側装置400は、メモリ402に保管された買手の公開鍵(e,n)と署名検証装置401を用いて、
h(P)≡exp(S1,e)(mod n),
h(R)≡exp(S2,e)(mod n),
を確かめることにより、S1とS2の認証を行なう(93)。その後、商品受取書Rの日付情報から商品返品有効期間を経た後、クレジットカード会社は買手の銀行口座から商品の代金を引き落とす(94)。」(段落【0030】〜【0037】)

以上の記載から見て、引用例1には、次のような発明が記載されているものと認められる。
「買手はクレジットカードによる代金支払いを前提として、通信ネットワークを介して小売店に対して商品注文を行い、小売店は買手の注文商品を運搬者に委託して発送し、クレジットカード会社は買手の銀行口座より商品代金を引き落し、その後小売店の銀行口座に商品代金を振り込む電子ショッピング方法において、買手は商品注文時に商品注文書Pに関する署名文S1を作成し、商品注文書Pと署名文S1を小売店に送り、小売店は署名文S1の正当性を確かめた後、買手の注文した該商品を運搬者に渡し発送し、さらに商品注文書Pと署名文S1をクレジットカード会社に送り、買手は運搬者から該商品を受け取った際に、商品受取書Rに対して署名文S2を作成し、署名文S2を運搬者に渡し、運搬者は署名文S2の正当性を確かめた後、商品受取書Rと署名文S2を小売店経由でクレジットカード会社に送信し、クレジットカード会社は署名文S1と署名文S2の正当性を確かめた後、該商品代金を買手の銀行口座から引き落とし、その後小売店の銀行口座に商品代金を振り込むことを特徴とする電子ショッピング方法。」

3.対比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、買手と借家人は、支払い義務を有する支払人という点で一致し、小売店と家主は、支払いを受け取る権利を有する受取人という点で一致し、商品と物件は、支払い義務を生じさせる物という点で一致し、及び商品代金と賃料は、支払い義務のある金額という点で一致する。そして、本願発明と引用例1に記載された発明の要旨の大略は、ネット(通信回線網)上で金銭貸借上の決済を行うという点にある。そうすると、買手と借家人、小売店と家主、商品と物件、及び商品代金と賃料は、経済用語上の相違であり技術的構成上の相違を構成するものではないから、引用例1に記載された発明の「買手」、「小売店」、「商品」、及び「商品代金」は、それぞれ、本願発明の「借家人」、「家主」、「物件」、及び「賃料」に相当し、引用例1に記載された発明の「買手側端末200」、「小売店側装置300」、及び「通信ネットワーク800」は、それぞれ、本願発明の「借家人端末」、「家主端末」、及び「ネットワーク」に相当することは、明かである。
そして、引用例1には、買手が通信ネットワーク800に接続された買手側端末200を用いて、買手のID情報を含む注文書Pを作成すると共に署名文S1を作成し、該注文書P及び署名文S1を通信ネットワーク800を介して小売店側装置300に送り、通信ネットワーク800に接続された小売店側装置300は、注文書P及び署名文S1を受け取ると署名文S1を検証し買手を認証することが記載されている(前記(ア)参照。)から、本願発明と引用例1に記載された発明とは、
「借家人が、ネットワークに接続された借家人端末を使用して、該借家人の氏名と識別子とを入力し、前記ネットワークに接続された家主端末が、入力された氏名と識別子とに基づいて、前記借家人を認証」
する点で相違しない。
引用例1には、買手と小売店の正当性が認証され代金が確かめられた後、商品代金を買い手の銀行口座から引き落とし、その後小売店の銀行口座に商品代金を振り込むことが記載されている(前記(ア)参照。)から、本願発明と引用例1に記載された発明とは、
「前記借家人の銀行口座情報が示す銀行口座から、前記家主の銀行口座情報が示す銀行口座へ、前記賃料を振り込む」
点で相違しない。
そうすると、本願発明と引用例1に記載された発明とは、
(一致点)
「借家人が、ネットワークに接続された借家人端末を使用して、該借家人の氏名と識別子とを入力し、
前記ネットワークに接続された家主端末が、入力された氏名と識別子とに基づいて、前記借家人を認証し、
前記借家人の銀行口座情報が示す銀行口座から、前記家主の銀行口座情報が示す銀行口座へ、前記賃料を振り込む入金管理方法。」
である点で一致し、次の2点で相違する。
(相違点1)
本願発明では、前記借家人が認証されると、前記借家人端末が、予め登録された借家人の銀行口座情報を、前記ネットワークを介して、借家人銀行サーバへ送信し、前記借家人が認証されると、前記家主端末が、該借家人の契約物件の賃料と予め登録された家主の銀行口座情報とを、前記ネットワークを介して、前記借家人銀行サーバへ送信し、前記借家人銀行サーバが、前記借家人の銀行口座情報が示す銀行口座から、前記家主の銀行口座情報が示す銀行口座へ、前記賃料を振り込んでいるのに対し、引用例1に記載された発明では、買手と小売店間の振込業務を契約により請け負い代行するクレジットカード会社側の装置400が、買手と小売店の正当性を認証しかつ代金を検証し、買手の銀行口座から代金を引き落とし、その後小売店の銀行口座へ振り込んでいる点。
すなわち、本願発明は、借家人と家主が、ネット上で直接決済を行っているのに対し、引用例1に記載された発明は、買手と小売店が、ネット上でクレジットカード会社を介して決済を行っている点。
(相違点2)
本願発明では、家主端末が、入金管理テーブルにおいて、入金にかかる物件の次回振り込み期限を更新するとともに、本日の日付を記録し入金管理しているのに対し、引用例1に記載された発明では、小売店側装置300が、入金額、振込日時を記録し次回振込期限を更新し、入金管理するとは明記しない点。

4.判断
(相違点1について)
電力、ガス、電話などの公共料金のみならず、一般の通信販売やインターネット通販などの支払いをも口座振込みにて行うビル・ペイメント、すなわち、ネットに接続された消費者の端末の指示により又は消費者から委託を受け振込サービスを提供する業者の端末の指示により振込元銀行口座から振込先銀行口座へ代金を「自動的」にまたは「その都度」振り込むいわゆるネットバンキングサービスは、当業者が周知している技術事項である。この点については、例えば、『日経デジタルマネー・システム編集,「ネットバンキング 日米最新事例とシステム構築法」,日経デジタルマネーシステム別冊,日本,日経BP社,p.38,p.60,pp.150-153』を参照のこと。また、現金自動預け払い機(ATM)を利用して振込元銀行口座から振込先銀行口座へ簡単に振込みを行うことも、当業者が周知している技術事項である。この点については、例えば、特開平11-53616号公報を参照のこと。
以上のように、振込元のコンピュータ又はサーバが、振込元と振込先の正当性を認証しかつ振込金額を確認した後振込元の銀行口座から振込先の銀行口座へ代金を振り込むこと、および消費者の委託を受けたクレジットカード会社が、振込元と振込先の正当性を認証しかつ振込金額を確認した後振込業務を行うことのいずれもが当業者には周知な技術事項であるから、引用例1に記載された発明に於いて買手の委託を受けたクレジットカード会社が振込業務をなすのに代えて、本願発明の如く借家人銀行サーバが、借家人の銀行口座から、家主の銀行口座へ賃料を振り込むように構成することは、当業者が適宜なし得ることである。
(相違点2について)
通常、ネットを介した振込にて商品代金が通販を業とする小売店に振り込まれた時、ネットを介した振込にて電力、ガス、電話、水道などの公共料金が公益に係る企業に振り込まれた時、または金銭貸借上の契約の履行等によりネットを介して貸金が貸し手に振り込まれた時、小売店、公益に係る企業、及び貸し手は、振込金額、振込日時等の入金情報を記憶媒体に記録するとともに振込日時を振込期限と比較することにより入金管理をしている。また、定期的に振り込まれる振込については、振込日時と振込期限を比較し振込日時が振込期限の前か後かを検証し振込日時が適正か否かを判断しており、この判断は次回振込についても同様になされるのである。例えば、手形の振込等を考えると分かるように期日管理は、重要な問題である。もしこれらの基本的かつ自明なことがなされなければ、金額、振込日時及び振込期限等に係る入金管理の一切ができないことになる。そして以上のことは、経済上の常識ともいえる事項であるが、例えば『日経デジタルマネー・システム編集,「ネットバンキング 日米最新事例とシステム構築法」,日経デジタルマネーシステム別冊,日本,日経BP社,p.38,p.60,pp.150-153』の第150頁右欄の記載「登録内容(振込間隔、回数、金額など)の変更」、および特開平11-53616号公報の振込指定日に関する記載からも知れることである。したがって、本願発明の如く、次回振り込み期限を更新するとともに、本日の日付を記録し入金にかかる情報を記録及び更新することは、当業者が適宜なし得る自明な技術常識の付加程度のことにすぎない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-18 
結審通知日 2005-02-22 
審決日 2005-03-11 
出願番号 特願2000-107048(P2000-107048)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 関川 正志
特許庁審判官 江頭 信彦
大野 弘
発明の名称 入金管理方法およびシステム  
代理人 机 昌彦  
代理人 河合 信明  
代理人 谷澤 靖久  

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