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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09D
管理番号 1116075
審判番号 不服2003-5830  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-08 
確定日 2005-05-06 
事件の表示 平成 7年特許願第322480号「近赤外光硬化型パテ組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月27日出願公開、特開平 9-137089〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成7年11月17日の出願であって、平成14年12月24日(発送日)に拒絶理由の通知がなされ、その指定期間内である平成15年2月20日付けで手続補正がなされ、平成15年3月11日(発送日)に拒絶の査定がなされ、平成15年4月8日に当該拒絶査定を不服とする審判が請求され、平成15年4月15日付けで手続補正がなされたものである。

2.補正の却下の決定

[結論]
平成15年4月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
平成15年4月15日付けの手続補正は、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「補正後発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項に規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
以下(1)〜(5)に、理由を詳述する。

(1)補正後発明1

補正後発明1は、補正後の明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】基材面に、(A)重合性不飽和基含有樹脂、(B)重合性不飽和化合物、及び(C)近赤外光重合開始剤を含有し、該近赤外光重合開始剤(C)が近赤外光吸収性陽イオン染料である近赤外光硬化型パテ組成物を塗布し、近赤外光を照射して硬化せしめた後、ウレタン硬化形塗料を使用して上塗り塗装する塗装方法。」
なお、前記「近赤外光吸収性陽イオン染料」は、明細書の段落番号【0017】の記載からみて、特開平3-111402号公報などに開示されている近赤外光吸収性陽イオン染料-ボレート陰イオン錯体を好適な例とするものである。

(2)原審の拒絶理由で引用された刊行物の記載

(2-1)特開昭54-117588号公報(以下、引用例1という。)
「特許請求の範囲 (1)分子中に2個以上の重合性不飽和基を有するプレポリマーおよび光増感剤、さらに要すればモノマーを配合してなる光硬化性樹脂組成物と、光透過性充填剤である石英粉、ガラス粉、シリカ粉およびマイカ粉よりなる・・・光硬化性粘土状物質。」(1頁左下欄4〜10行)、
「本発明は・・・光硬化性にすぐれ、光照射によりきわめてすみやかに硬化しうるとともに、その硬化物特性がきわめてすぐれた光硬化性粘土状物質に関する。」(1頁左下欄20行〜同頁右下欄10行参照)、
「液状と固体状との中間の状態を示すものとして、粘土状物質がある。このものの代表例としては、パテがあげられる。従来よりパテは、主として塗装素地の調整、鋼管のヒビ割れの補修、ガラスの枠への固定などに用いられ、工業材料の主要素というよりは、むしろ補助的要素として用いられているのが実情である。」(2頁左上欄1〜7行参照)、
「分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する・・・(2)その硬化物は強固な架橋結合を有する橋かけ高分子であるために、機械的強度、接着強度、・・・にすぐれており」(2頁左下欄8〜19行参照)、
「本発明の光硬化性粘土状物質は、従来のパテと同様な用途についてはもちろん、さらに新しい用途や需要分野において、新材料として使用される可能性も潜在するものである。」(2頁右下欄7〜10行参照)、
「プレポリマーとしては、たとえばオリゴエステルポリオールとアクリル酸やメタクリル酸との縮合物、・・・エポキシ樹脂とアクリル酸および(または)メタクリル酸との付加物またはオリゴエステルポリオールと不飽和モノイソシアネート(・・・)との付加物などがあげられる。」(3頁右上欄5行〜同頁左下欄1行参照)、
「プレポリマーが充分な流動性を有しているばあいには、そのまま充填剤と練り合せることにより、本発明の光硬化性粘土状物質がえられるが、該プレポリマーがきわめて高粘度な液体であったり、あるいは固体であるばあいには、液状のモノマーを配合して低粘度化する必要がある。かかるモノマーとしては、たとえばスチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル(・・・)、・・・などが用いられるが、・・・を用いるのが好ましい。」(4頁左上欄1行〜同頁右上欄1行参照)、
「プレポリマーまたはプレポリマーとモノマーとの配合物に添加される光増感剤としては、たとえば・・・ベンゾイン系化合物、・・・キノン系化合物、・・・アゾ系化合物または・・・スルフィド化合物などがあげられる。」(4頁右上欄5〜12行参照)、
「本発明の粘土状物質の硬化方法について説明する。前述のごとく本発明の粘土状物質は光硬化性であり、・・・その光源としては、・・・などのように、紫外線領域の波長の光を発生する光源が用いられる。」(6頁左上欄15行〜同頁右上欄1行参照)。

(2-2)特開平6-192459号公報(以下、引用例2という。)
「【請求項1】 付加重合可能なエチレン性不飽和化合物と近赤外光重合開始剤及び中空状充填剤乃至熱膨張性マイクロカプセルの1種または2種以上を含む近赤外光硬化型発泡樹脂組成物。」(1頁左欄2〜5行)、
「【産業上の利用分野】この発明は、近赤外線照射によって短時間に厚みのある硬化物を得ることができる発泡樹脂組成物に関する。」(2頁左欄8〜10行)、
「【従来の技術】例えば・・・、コーティングやガスケット、・・・等の用途に発泡状硬化物が広く用いられている。【0003】従来、これらの発泡性硬化物を製造する方法としては、・・・がある。【0005】更に、紫外線硬化樹脂中に中空状の充填剤や熱膨張性マイクロカプセルを練り込んで外部より紫外線を照射して発泡状硬化物を得る方法がある。」(2頁左欄12〜26行参照)、
「【0006】【発明が解決しようとする問題点】・・・【0008】一方、紫外線硬化樹脂中に中空状の充填剤や熱膨張性マイクロカプセルを練り込んで外部より紫外線を照射して発泡状硬化物を得る方法については、短時間に硬化できるという利点があるものの、樹脂中に中空充填剤や熱膨張性マイクロカプセルのような不透明な充填剤が添加されると、紫外線が樹脂の内部にまで透過せず、表面のみしか硬化できないという問題点があり、また紫外線照射に使用するUVランプからはオゾンガスのような有害ガスが発生するという問題点もある。」(2頁左欄28〜49行参照)、
「【0010】この発明において付加重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、ビニル、アクリル、メタアクリルなどのエチレン性不飽和基を有するモノマー並びに末端もしくは側鎖にエチレン性不飽和基を有するオリゴマー或はポリマーの全てを用いることができる。【0011】特に・・・アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル・・・脂肪酸変性アルキッド樹脂のアクリル酸エステル、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、エポキシアクリレ-ト、エポキシメタクリレート、・・・などや、或はメタアクリレート基等を有するポリブタジエン、オルガノポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステル、アクリロニトニルブタジエン共重合ポリマーなどのラジカル重合性液状ゴムなどを挙げられる。」(2頁右欄6〜38行参照)、
「【0012】この発明で用いられる近赤外重合開始剤としては、・・・、特開平3-111402号に開示されている近赤外線吸収性陽イオン染料-ボレート陰イオン錯体を用いることができる。」(2頁右欄39〜44行参照)、
「【0014】これらの開始剤は近赤外線領域である650〜1500nmの領域の光エネルギーで励起され、特に特開平3-111402号に開示される近赤外線吸収性陽イオン染料-ボレート陰イオン錯体からなる開始剤は820〜880nmという長波長領域で硬化が可能なため、光の透過性に優れているという特徴がある。」(3頁左欄1〜6行)、
「【0028】【発明の効果】この発明で使用する近赤外線は充填剤を高充填しても波長が長く透過性が高いという特徴があり、したがって中空充填剤や熱膨張性マイクロカプセルのような不透明な充填剤を添加しても問題なく短時間に厚みのある硬化物を得ることができる。【0029】またこの発明によれば発泡樹脂組成物が無溶剤1液性で、光を照射しなければ硬化しないため・・・、ハンドリング時間を自由に採ることができ、しかも一旦近赤外線を照射すれば短時間に硬化できるので、作業性が極めて良い。【0030】また、この発明で使用する近赤外線ランプはUVランプのようにオゾンガスなどの有害ガスを発生せず、・・・大きなメリットである。【0031】更に、この発明においては・・・一旦近赤外線を照射すると短時間に硬化ができるという作業性の良さを生かしていろいろな用途に使用できる。【0032】例えば自動車などの板金用補修パテ、・・・など各種の用途に用いることができる。」(3頁右欄40行〜4頁左欄19行参照)、
「【0044】なお、接着性については、この発明の発泡体硬化物はいずれもアルミ板に対して良好な接着性を示した。」(5頁右欄下から5〜3行参照)。

(2-3)特開平3-111402号公報(以下、引用例3という。)
「一般式(1)で表わされる近赤外光吸収性陽イオン染料-ボレート陰イオン錯体からなる近赤外光重合開始剤。一般式(1)・・・」(1頁左下欄5〜末行参照)、
「この発明は、少なくとも1種のエチレン性不飽和の重合しうる単量体またはオリゴマーを近赤外光で敏感に重合を開始させうる重合開始剤に関する。」(1頁右下欄3〜6行)、
「発明が解決しようとする課題 しかし、これらの光重合性組成物は可視光を使用するために組成物の色調により光の透過性が悪くなり、色調によって硬化の度合が異なるという問題点がある。本発明は、光重合性組成物の色調に影響されない近赤外光によって重合を開始しうる重合開始剤を提供することを目的とする。」(2頁左上欄9〜15行)、
「本発明による重合開始剤が使用できるフリーラジカル付加重合可能なもしくは架橋可能な化合物は、慣用のすべてのエチレン性不飽和化合物、特に・・・などを意味する。」(4頁左下欄17行〜同頁右下欄19行参照)。

(3)対比

引用例1には、「光硬化性樹脂組成物と充填剤とを含む、塗装素地の調整等に用いられるパテに有用な光硬化性粘土状物質」の発明(以下、「引例1発明」という。)について記載されるところ、該発明と、補正後発明1とを対比する。
引用例1における該光硬化性樹脂組成物は「分子中に2個以上の重合性不飽和基を有するプレポリマー、光増感剤、要すればモノマー」を配合したものであり、ここで「プレポリマー」には、エポキシ樹脂とアクリル酸および(または)メタクリル酸との付加物等が包含され、「モノマー」には、スチレンやアクリル酸エステルなどが包含されるから、これらは本願明細書おいて、段落【0008】に「重合性不飽和基含有樹脂」として例示され、また同段落【0012】に「重合性不飽和化合物」として例示されているものであり、「光増感剤」は、これによりプレポリマーあるいは、プレポリマーとモノマーが、硬化を開始するものであるから、補正後発明1における「光重合開始剤」と同様の作用を有するものである。また、「塗装素地の調整」とは、まず、対象とする基材に引用例1に記載の粘土状物質を塗布し、該粘土状物質は光硬化性なのであるから、これに、光を照射して硬化させるものと認められ、「充填剤」については、補正後発明1においてもマイカ等の充填剤を配合できることは、本願明細書段落【0035】に記載されている。
そうすると、両者は、「重合性不飽和基含有樹脂、重合性不飽和化合物、及び、光重合を開始させる物質を含有し、これは、光硬化型のパテ組成物として有用であり、このパテ組成物を基材に塗布し、光を照射して硬化せしめる」点で一致し、以下の(イ)〜(ハ)の点で相違する。
(イ)用いる「光」が、補正後発明1においては「近赤外光」であるのに対し、引例1発明においては、「紫外線領域の波長の光」である点、
(ロ)「光重合を開始させる物質」として、補正後発明1においては「近赤外光吸収性陽イオン染料」を用いているのに対し、引例1発明においては、「光増感剤」を用いている点、
(ハ)塗装への適用について、補正後発明1においては、「パテ組成物を硬化せしめた後、ウレタン硬化形塗料を使用して上塗り塗装をする塗装方法」としているのに対し、引例1発明においては、「パテ組成物を硬化せしめて、塗装素地の調整」としている点。

相違点(イ)、(ロ)について
引用例2に記載された発明についてみるに、これは摘示したように、中空状充填剤乃至熱膨張性マイクロカプセルを含むものではあるが、付加重合可能なエチレン性不飽和化合物を光によって硬化させる、という点で、本願補正後発明1とも、引例1発明とも、関連の深いものであるところ、該引用例2には、「紫外線を照射して発泡状硬化物を得る方法については、短時間に硬化できるという利点があるものの、樹脂中に中空充填剤や熱膨張性マイクロカプセルのような不透明な充填剤が添加されると、紫外線が樹脂の内部にまで透過せず、表面のみしか硬化できないという問題点」があることが指摘され、その解決方法として、近赤外線を用いて硬化させるものであり、その効果として、「近赤外線は充填剤を高充填しても波長が長く透過性が高いという特徴があり、したがって中空充填剤や熱膨張性マイクロカプセルのような不透明な充填剤を添加しても問題なく短時間に厚みのある硬化物を得ることができる。」と説明されており、具体的には「特開平3-111402号に開示されている近赤外線吸収性陽イオン染料-ボレート陰イオン錯体を用いることができる」と記載されている。
引用例2の記載から、光硬化型組成物とする際に、紫外線を照射すると紫外線が樹脂の内部にまで透過せず表面のみしか硬化できないという問題点があり、紫外線に代えて近赤外線を照射すると短時間に厚みのある硬化物を得ることができること、光硬化、すなわち光重合を開始させるために近赤外光吸収性陽イオン染料が適することが記載されており、さらに引用例3には、当該染料が引例1発明で用いるのと同様のエチレン性不飽和基を有するモノマーやオリゴマーの近赤外光による重合開始に有効である旨が記載されているのであるから、光硬化用の光として近赤外光を用い、そのために、近赤外光吸収用陽イオン染料を用いるということは、引用例2及び3に十分に示唆されている。したがって、前記(イ)、(ロ)の点に格別の創意を要したものとは認められない。
相違点(ハ)について
引用例1には、上記したように「塗装素地の調整」と記載されているのであるが、何の目的で塗装素地を調整するかというと、それは、その上に上塗り塗装をするためと考えるのが自然であって、一方、上塗り用の塗料としては種々の用途に合わせて多種多様のものが存在することは極めて周知であり、例えばウレタン硬化形塗料も、上塗り用の塗料として広く慣用のものである(必要なら、特開昭62-277472号公報、特開平2-305873号公報等参照。)から、これを上塗り用の塗料として特定した点に格別の技術的意味を認めることはできない。

(4)補正後発明1の効果

補正後発明1は、前記構成を採用することにより、本件明細書段落【0059】に記載されるように、有毒ガスの発生を伴うことなく厚みのある硬化物が短時間で得られ、硬化時間が短く一液型で無溶剤化が可能な省資源組成物で環境汚染の低減化が図れ、これを用いることにより大幅に工程を簡略化した補修塗装が可能である、という効果を奏するものであるが、引用例2においても、短時間に厚みのある硬化物を得られること、無溶剤一液性であること、一旦近赤外線を照射すれば短時間に硬化できるので、作業性が極めて良いこと、オゾンガスなどの有害ガスを発生せず、したがって換気などの設備がいらないこと、生産性が向上すること等、記載されており、そうしてみると、本願補正後発明1が奏する効果は、近赤外光を用いるという構成の採用により奏されるとされている効果にすぎず、引用例2に記載された事項から当業者が予測できる範囲内の効果である。

なお、請求人は、平成15年4月15日付けの審判請求書を補正する手続補正書の【本願発明が特許されるべき理由】の「5.訂正された請求項1〜2に係る発明と引用文献との対比」の中で、「近赤外光硬化型パテ組成物を塗布し、近赤外光を照射して硬化せしめた後、上塗り塗装する塗装方法において、近赤外光を照射することにより硬化性がよくなることは、引用文献2および3の記載から、当業者が予測可能であるとしても、近赤外光硬化塗膜と素地または上塗り塗膜との付着性については、引用文献2および3には、全く記載されておらず、出願前当業者にとって予測し得なかったことであり、本願実施例に記載されているように、近赤外光硬化塗膜と素地または上塗り塗膜との付着性が向上することは、本願発明によって初めて実証されたことである。」と、本願発明の効果が予測し得ないものであるとの、主張している。
しかしながら、引用例1に「その硬化物は強固な架橋結合を有する橋かけ高分子であるために、機械的強度、接着強度、・・・にすぐれており」と記載され、引用例2においても「なお、接着性については、この発明の発泡体硬化物はいずれもアルミ板に対して良好な接着性を示した。」とされていることからすると、接着性は塗料を選択したことにより生じる効果ではなく、光を用いて硬化させたことによる効果と考えられ、しかも、引用例1、2に記載される接着性と、請求人が主張する付着性とは同種のものと認められるから、補正後発明1の付着性に関する効果も、引用例1、2に記載されているように、当業者が予測しうる範囲内のものである。
さらになお、本願明細書の付着性に関する記載をみるに、段落【0032】に、「本発明組成物は、素地や上塗り層との付着性向上、作業性向上などの点から、さらに必要に応じて繊維素誘導体、非反応性希釈剤、熱可塑性樹脂などを含有することができる。・・・特にCABグラフト共重合体などの繊維素誘導体を用いると、パテ表面に水酸基が配向し上塗がウレタン硬化系の場合、付着性が向上するので好適である。」と記載され、また、同【0034】に「また本発明組成物は、素地との付着性向上の点からリン酸基含有化合物を含有してもよい。」と記載されているところからすると、本願発明における付着性は、繊維素誘導体等あるいはリン酸基含有化合物等をさらに含有した場合に生じる効果であって、本願補正後発明1の効果であると直ちに認めることもできない。

したがって、請求人の主張を考慮してもなお、本願補正後発明1の効果は、当業者の予測の範囲内である、と認められる。

(5)むすび

以上のとおりであるから、補正後発明1は、本出願前に国内で頒布された刊行物であり、原審の拒絶理由で引用された刊行物である、前記引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定によって、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、前記補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項に規定に違反するものである。

3.本件発明

(1)本件発明

平成15年4月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件の請求項1〜3に係る発明(以下、「本件発明1〜3」という。)は、平成15年2月20日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】 基材面に、(A)重合性不飽和基含有樹脂、(B)重合性不飽和化合物、及び(C)近赤外光重合開始剤を含有し、該近赤外光重合開始剤(C)が近赤外光吸収性陽イオン染料である近赤外光硬化型パテ組成物を塗布し、近赤外光を照射して硬化せしめた後、上塗り塗装する塗装方法。
【請求項2】 上塗り塗装に、ウレタン硬化形塗料を使用する請求項1記載の塗装方法。
【請求項3】 (A)重合性不飽和基含有樹脂、(B)重合性不飽和化合物、及び(C)近赤外光重合開始剤を含有し、該近赤外光重合開始剤(C)が近赤外光吸収性陽イオン染料であり、請求項1または2に記載の方法に用いられる近赤外光硬化型パテ組成物。」

(2)引用例及びその記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された引用例1〜3、および、その記載事項は、前記2.(2)に示したとおりである。

(3)対比・判断

本件発明2は、前記3.(1)からすると補正後発明1と同一であると認められるところ、補正後発明1は、前記2.(5)に示したように、前記引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これと同様の理由により、引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明1は、本件発明2を含むものであるから本件発明2について判断したのと同様の理由により、さらに、本件発明3は、本件発明2について判断する過程で判断されているものであるから、本件発明2について判断したのと同様の理由により、いずれも引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび

以上のとおりであるから、本件発明1〜3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-21 
結審通知日 2005-03-01 
審決日 2005-03-14 
出願番号 特願平7-322480
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09D)
P 1 8・ 575- Z (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉住 和之  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 佐藤 修
鈴木 紀子
発明の名称 近赤外光硬化型パテ組成物  
代理人 片桐 光治  
代理人 片桐 光治  

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