• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01P
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01P
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01P
管理番号 1116079
審判番号 不服2002-23538  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-05 
確定日 2005-05-06 
事件の表示 平成11年特許願第144314号「円偏波発生器」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月30日出願公開、特開2000-332503〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年5月25日の出願であって、平成14年10月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年12月27日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成14年12月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
上記手続補正は、補正前の請求項1に記載された発明を、
「第1の導波管と、
前記第1の導波管の内側に同軸構造で形成される第2の導波管と、
前記第1の導波管の内側と前記第2の導波管の外側とに当接するように設けられ、直線偏波面に対してほぼ45°だけ傾けて設けられ、所望の位相特性およびリターンロスが得られるように予め定められた材質および形状を有する誘電体部材とを含む円偏波発生器。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正は、補正前の請求項1に記載された「誘電体部材」の構成に「所望の位相特性およびリターンロスが得られるように予め定められた材質および形状を有する」という構成を付加するものであるところ、当該構成は願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されているから、上記補正は特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合している。
しかしながら、上記構成は誘電体部材が本来備えている位相回路としての周知の作用効果であって、円偏波発生器に用いられるどのような誘電体部材も、程度の差こそあれ、「所望の位相特性およびリターンロスが得られるように予め定められた材質および形状を有する」ものであるから、当該構成は「誘電体部材」の構成を限定するものではない。したがって、上記補正は、発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから、特許請求の範囲の減縮にはあたらず、誤記の訂正や明りょうでない記載の釈明でないことも明らかである。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第4項(補正の目的)のいずれの規定にも適合していない。

(2)独立特許要件
仮に上記補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、以下の理由により、上記補正後の発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

[補正後の発明]
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

[引用発明及び周知技術]
A.原審の拒絶理由に引用された実願昭61-127558号の願書に添付された明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開昭63-33206号参照、以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「パラボラアンテナに用いられる2周波共用一次放射器において、中心導体と外部導体とからなる同軸導波管で形成され、該同軸導波管を低域周波数専用放射器とし、前記中心導体を中空状として高域周波数専用放射器とし、かつ、前記同軸導波管への入射モード波を励振する面内に金属平板を配設するとともに、前記低域周波数専用放射器と広域周波数専用放射器に、それぞれ直交偏波間に90度の位相差を生じせしめる位相器を偏波面に対し45度傾けて取り付けたことを特徴とする2周波共用円偏波一次放射器。」(1頁、実用新案登録請求の範囲、なお上記「広域周波数専用放射器」は「高域周波数専用放射器」の単純な誤記と認められる。)

上記引用例の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「中心導体と外部導体とからなる同軸導波管」は「第1の導波管」を構成しており、上記「中空状」の「中心導体」は「前記第1の導波管の内側に同軸構造で形成される第2の導波管」を構成しており、上記「2周波共用円偏波一次放射器」はいわゆる「円偏波発生器」である。また、上記「偏波面」がいわゆる「直線偏波面」であることは自明のことである。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「第1の導波管と、
前記第1の導波管の内側に同軸構造で形成される第2の導波管と、
前記第1の導波管の内側に設けられ、直線偏波面に対して45°傾けて設けられ、直交偏波間に90度の位相差を生じせしめる位相器とを含む円偏波発生器。」

B.また、原審の拒絶理由通知書に引用された特開平3-220901号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「第3図は、結合手段で信号として取り出したい直線偏波の方向に対して45度傾けて直交する2つの直線偏波の一方の垂直方向の電界成分Yに平行になるようにして誘電体板2を導波管1の内部に取り付けたものである。このように誘電体板2を導波管1の内部に取り付けることにより、誘電体板2に平行な電界成分の直線偏波の位相を遅らせることができ、従って直線偏波の他方の水平方向の電界成分Xより成分Yが90度遅れるような長さに誘電体板2の長手方向の寸法を選べば、誘電体板2を通り抜けた位置では円偏波が直線偏波に変換された状態となる。この他にもこのような作用による位相回路構造例としては以下のものが使用されている。第4図(a)及び(b)は位相回路構造として複数のビス3を導波管1の内部表面の向かい合った円弧の中心に取り付け各々のビス3の先端が導波管の中心に向かうようにし、さらに導波管1の長手方向にビス3を並べて取り付けたものであり、・・・(中略)・・・。」(2頁左下欄15行目〜右下欄18行目)

上記周知例1の記載によれば、「複数のビス3を導波管1の内部表面の向かい合った円弧の中心に取り付け各々のビス3の先端が導波管の中心に向かうようにし、さらに導波管1の長手方向にビス3を並べて取り付けた」構成(並列ビス方式)と「結合手段で信号として取り出したい直線偏波の方向に対して45度傾けた誘電体板を導波管の内部に取り付けた」構成(誘電体板方式)はいずれも相互に置換可能な「位相回路」である。

C.原審の拒絶理由に引用された特開平4-267601号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【請求項1】 大小の直径の異なる2つの円筒を同軸状に配置して同円筒間に溝を設け、同溝の一端を円偏波の電磁波を入出力し得る開口とし、同溝の他端を終端面とし、同溝の内部の前記開口と終端面間に位相回路を設けて、同位相回路により前記開口に入射された円偏波信号が直線偏波信号に変換される位置に信号の出力手段を設けて、同出力手段によりコンバータに信号を伝送し、前記2つの円筒の直径の小さい円筒の内部の一端を直線偏波信号を入出力し得る開口とし、同円筒の他端に円形導波管を接合して同円形導波管を延長して終端面を設け、同円形導波管の接合箇所と前記終端面の中間に直線偏波信号の出力手段を設け、同出力手段により前記と異なる他のコンバータに信号を伝送することを特徴とする円偏波及び直線偏波共用一次放射器。」(2頁1欄、請求項1)
ロ.「【請求項3】 前記位相回路が前記溝の終端面に設けた2枚の金属板からなり、同金属板の両側を前記溝を構成する外側の円筒の内壁と内側の円筒の外壁とで挟持せしめて、円筒の対向する円周部分に配置し、前記溝内を伝播する電磁波の2つの直交するモードの一方の電界の方向と平行となるような向きにして同電界を反射せしめ、2つの直交するモードの他方の電界を前記溝の終端面で反射せしめて、両モードの反射経路差により前記溝に入射された円偏波信号を直線偏波信号に変換することを特徴とする請求項1記載の円偏波及び直線偏波共用一次放射器。」(2頁1欄、請求項3)

上記周知例2の記載によれば、「位相回路を構成する板状部材の両側を外側の円筒の内壁と内側の円筒の外壁とで挟持せしめ」る技術手段は周知である。

[対比・判断]
補正後の発明と引用発明とを対比すると、補正後の発明の「前記第1の導波管の内側と前記第2の導波管の外側とに当接するように設けられ、直線偏波面に対してほぼ45°だけ傾けて設けられ、所望の位相特性およびリターンロスが得られるように予め定められた材質および形状を有する誘電体部材」の構成と引用発明の「前記第1の導波管の内側に設けられ、直線偏波面に対して45°傾けて設けられ、直交偏波間に90度の位相差を生じせしめる位相器」の構成はいずれも「所望の位相特性が得られるように予め定められた材質および形状を有する位相回路」であるという点で一致している。
したがって、補正後の発明と引用発明は、
「第1の導波管と、
前記第1の導波管の内側に同軸構造で形成される第2の導波管と、
所望の位相特性が得られるように予め定められた材質および形状を有する位相回路とを含む円偏波アンテナ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点)
「所望の位相特性が得られるように予め定められた材質および形状を有する位相回路」に関し、補正後の発明は「前記第1の導波管の内側と前記第2の導波管の外側とに当接するように設けられ、直線偏波面に対してほぼ45°だけ傾けて設けられ、所望の位相特性およびリターンロスが得られるように予め定められた材質および形状を有する誘電体部材」であるのに対し、引用発明は「前記第1の導波管の内側に設けられ、直線偏波面に対して45°傾けて設けられ、直交偏波間に90度の位相差を生じせしめる位相器」である点。

そこで、上記相違点について検討するに、例えば上記周知例1に記載されているように、「複数のビス3を導波管1の内部表面の向かい合った円弧の中心に取り付け各々のビス3の先端が導波管の中心に向かうようにし、さらに導波管1の長手方向にビス3を並べて取り付けた」構成(並列ビス方式)と「結合手段で信号として取り出したい直線偏波の方向に対して45度傾けた誘電体板を導波管の内部に取り付ける」構成(誘電体板方式)はいずれも相互に置換可能な「位相回路」であり、引用発明の並列ビス方式の位相回路に代えて上記周知例1に記載されている誘電体板方式の位相回路を採用する上での格別の阻害要因は何ら見あたらず、何れの位相回路も「位相回路としての所望の特性が得られるように予め定められた材質および形状を有する」ものであり、上記周知例2によれば、「位相回路を構成する板状部材の両側を外側の円筒の内壁と内側の円筒の外壁とで挟持せしめ」る技術手段も周知なのであるから、引用発明の「前記第1の導波管の内側に設けられ、直線偏波面に対して45°傾けて設けられ、直交偏波間に90度の位相差を生じせしめる位相器」の構成を本願発明のような「前記第1の導波管の内側と前記第2の導波管の外側とに当接するように設けられ、直線偏波面に対してほぼ45°だけ傾けて設けられ、所望の位相特性およびリターンロスが得られるように予め定められた材質および形状を有する誘電体部材」に変更する程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。

以上のとおりであるから、補正後の発明は上記引用例に記載された発明及び周知例1、2に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項(補正の目的)のいずれの規定にも適合しておらず、また、仮に上記補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、補正後の発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第4項の規定にも違反するから、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成14年12月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「第1の導波管と、
前記第1の導波管の内側に同軸構造で形成される第2の導波管と、
前記第1の導波管の内側と前記第2の導波管の外側とに当接するように設けられ、直線偏波面に対してほぼ45°だけ傾けて設けられる誘電体部材とを含む円偏波発生器。」

2.引用発明及び周知技術
引用発明及び周知技術は、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項中の[引用発明及び周知技術]の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明の「誘電体部材」の構成から、「所望の位相特性およびリターンロスが得られるように予め定められた材質および形状を有する」という構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に前記構成を付加した補正後の発明が上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び周知例1、2に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明ならびに上記周知例に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-02 
結審通知日 2005-03-08 
審決日 2005-03-23 
出願番号 特願平11-144314
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01P)
P 1 8・ 572- Z (H01P)
P 1 8・ 575- Z (H01P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新川 圭二  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 望月 章俊
浜野 友茂
発明の名称 円偏波発生器  
代理人 野田 久登  
代理人 森田 俊雄  
代理人 仲村 義平  
代理人 堀井 豊  
代理人 深見 久郎  
代理人 酒井 將行  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ