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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1116092
審判番号 不服2002-21106  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-01-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-31 
確定日 2005-05-06 
事件の表示 平成 5年特許願第149544号「携帯型電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 1月17日出願公開、特開平 7- 13660〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年6月21日の出願であって、その発明は、平成14年11月22日付手続補正書により補正された明細書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、「本願発明」という)と認める。

「前壁に放音用の孔を有するとともに、上壁にキーボード装置が配置された筐体と、
上記筐体に支持され、上記キーボード装置を覆う第1の位置と、上記キーボード装置を露出させる第2の位置とに亘って回動可能であるとともに、上記第1および第2の位置のいずれに回動されても上記放音用の孔を露出させた状態に保つディスプレイユニットと、
上記筐体の内部に収容され、上記放音用の孔と向かい合う振動体を有するスピーカと、
上記スピーカと上記筐体の前壁との間に介在されたシールド板と、
上記筐体に設けられ、上記スピーカ及びシールド板とを上記筐体内に位置決めする手段と、
を具備したことを特徴とする携帯型電子機器。」


【2】引用文献
原査定の拒絶理由に引用された特開昭62-28864号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の(イ)、(ロ)の各記載が認められる。
(イ)「第1図は本発明における携帯型コンピュータのシステム外観を示す図である。(a)が未使用(携帯)状態を、(b)が使用状態を示す。比較のため、第3図に従来例のシステム外観が示されている。図中1はシステム本体であり、マイクロプロセッサ及びメモリ他、各種周辺制御用LSIで構成される。2はキーボードユニットである。3はLCDユニットであり、一端にヒンジ機構(図示せず)を備えこのヒンジを介しシステム本体1と結合される。ヒンジにより矢印の如く回転させることによりLCDユニット3の傾斜角が可変となる。これはLCDの特質としてその表示コントラスト等が使用者の視角に強く依存するための工夫であると共に、未使用(携帯)時、キーボードユニット2を覆うことにより携帯の邪魔にならずLCDの保護にもなるといった効果をも合せ持つ。4はフロッピーディスクユニットである。本発明実施例に示される携帯型コンピュータは、キーボードユニット2、LCDユニット3、フロッピーディスクユニット4がシステム本体1と一体化されている。101、102は本発明により付加される、それぞれ、スイッチ、突起であり、これらは、LCDユニット3がキーボードユニット2側に倒されたことを検出しシステムに割込みを通知するものである。突起102はLCDユニット3がこのような状態になった場合、上記スイッチ101を確実に動作させるために設けられる。103は筐体内に組込まれたスピーカ、104は蓋(LCDユニット3)が閉じた状態でパワーがON状態を継続していることを示す表示ランプ、105はパワースイッチである。」(第2頁右下欄第4行〜第3頁左上欄第15行、第1図の各記載参照。)
(ロ)「そこで本発明はこの種携帯型コンピュータを第1図に示す構造とした。即ちまず、パワースイッチ105は蓋とは連動せず独立にパワーオン/オフできる構造としている。そして、新たに付加されるスイッチ101はパワーオンのまま蓋が閉じられた時、又はスイッチ101がマニュアルで押された時、システム本体1に優先度の高い割込みを発する。この割込みはスイッチ101が押されている間発し続ける。システム本体1はこの割込みを受けて次の動作を行う。まず割込みが発生した(パワーオンのまま蓋が閉じられた)ことを表示する。表示方法は表示ランプ104を駆動、又はスピーカ103を駆動、もしくはこれらを併用することが考えられる。次に、全ての入出力動作を禁止する。但し、この割込みより優先度の高いものは除く。そして随時、この割込みのスティタスを監視し、蓋が開放されたことを検出して、この割込みを解除する。」(第3頁右下欄第7行〜第4頁左上欄第5行、第1、3図参照。)

【3】対比・判断
(対比)
本願発明と上記引用文献に記載されたものとを対比する。引用文献に記載された「キーボードユニット2」、「LCDユニット3」、「携帯型コンピュータ」、「スピーカ103」のそれぞれは、本願発明の「キーボード装置」、「ディスプレイユニット」、「携帯型電子機器」、「スピーカ」のそれぞれに相当する。
よって、両者は、
「上壁にキーボード装置が配置された筐体と、
上記筐体に支持され、上記キーボード装置を覆う第1の位置と、上記キーボード装置を露出させる第2の位置とに亘って回動可能であるディスプレイユニットと、
上記筐体の内部に収容されるスピーカと、
を具備した携帯型電子機器」
である点で一致し、以下の(i)、(ii)の各点で相違している。

(i)本願発明においては、筐体の前壁に放音用の孔を有するようにし、ディスプレイユニットが第1および第2の位置のいずれに回動されても上記放音用の孔が露出した状態に保たれるようにし、スピーカの振動体を上記放音用の孔に向かい合うようにしているのに対して、引用文献1に記載されたものは、筐体に対しどのようにスピーカが設けられているか不明な点。

(ii)本願発明においては、スピーカと放音用の孔を有する筐体の壁との間に介在されたシールド板と、上記筐体に設けられ、上記スピーカ及びシールド板とを上記筐体内に位置決めする手段と、を具備しているのに対して、引用文献に記載されたものにおいては、このようにしていない点。

(判断)
上記相違点(i)、(ii)について検討する。
相違点(i)について、
引用文献には「103は筐体内に組込まれたスピーカ」と記載されているのみで、筐体内にどのように組み込まれているか不明であるが、引用文献の第1図(b)ではキーボードユニット2の前方位置に103の添え数字とともに点線で内蔵されていることが示されており、また、引用文献には蓋(本願発明の「ディスプレイユニット」に相当する。)が閉じられた状態でスピーカ103を駆動することが記載されている(上記【2】の(ロ)の記載参照。)ことから、筐体の前壁を介在してスピーカが設けられ、蓋の開閉の位置(本願発明の第1および第2の位置に相当。)においてもスピーカの音が聞くことができることが開示されているものと認められる。
一方、上壁にキーボード装置(キーパッド20)が配置された筐体(ケース11の基体13)と、上記筐体に支持され、上記キーボード装置を覆う第1の位置と、上記キーボード装置を露出させる第2の位置とに亘って回動可能であるディスプレイユニット(ケース11の蓋15)と、上記筐体の内部に収容されるスピーカと、を具備する携帯用電子機器(音声言語翻訳機)において、上記筐体の壁に放音用の孔(スピーカ格子35)を有するようにし、上記ディスプレイユニットが上記第1および第2の位置のいずれに回動されても上記放音用の孔が露出した状態に保たれるように構成することは周知のことである(例えば、特開平2-7168号公報の第7頁右上欄第4〜10行の記載を参照。)。
また、筐体(筐体1、外筺5)の壁に放音用の孔(通気穴11、放音孔7)を有し、上記筐体の内部にスピーカを収容する電子機器において、上記筐体の前壁(前面の操作パネル2、フロントパネル6)に上記放音用の孔を有するようにし、上記スピーカの振動体を上記放音用の孔に向かい合うようにすることも周知のことであり(例えば、実願昭62-47034号(実開昭63-153694号)のマイクロフィルム、実願昭62-65910 号(実開昭63-173994号)のマイクロフィルムの各記載参照)、スピーカを装置のどこに配置するかは装置のデザインや音の指向性を考慮して適宜配置する程度の設計的事項である。
したがって、上記引用文献に記載されたものにおいても、前記各周知事項を参酌して、スピーカ等の取付けを本願発明のように構成することは当業者が容易になし得ることである。
なお、該構成により奏する作用効果も、当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとは認められない。

相違点(ii)について、
筐体(外筺ハーフ1)の壁(スピーカ取付け部4)に放音用の孔(貫通孔5)を有し、上記筐体の内部にスピーカを収容する電子機器において、上記スピーカと上記放音用の孔を有する筐体の壁との間に介在されたシールド板(網目状の導電性部材11)と、上記筐体に設けられ、上記スピーカ及びシールド板を上記筐体内に位置決めする手段(ボス部7)と、を具備するようすることは周知のことである(例えば、実願昭57-39158号(実開昭58-142995号)のマイクロフイルムの記載参照)。ここで、スピーカは音を出すための構成として種々の装置に付けられており、スピーカの技術を各種装置に適用することは普通に行われている。よって上記引用文献に記載されたものにおいても、前記周知事項を参酌して、本願発明のように構成することは当業者が容易になし得ることである。

【4】むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明は、上記引用文献及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-10 
結審通知日 2005-03-11 
審決日 2005-03-23 
出願番号 特願平5-149544
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 匡明  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 治田 義孝
内田 正和
発明の名称 携帯型電子機器  
代理人 外川 英明  
代理人 外川 英明  

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