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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04N
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1116105
異議申立番号 異議2003-71844  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-01-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-22 
確定日 2005-02-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3368672号「ヘッドマウントディスプレイ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3368672号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3368672号の請求項1に係る発明についての出願は、平成6年6月30日に出願され、平成14年11月15日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人大木茂から特許異議の申立てがなされ、取消理由通知の指定期間内である平成16年10月18日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
平成16年10月18日付け訂正請求書によって特許権者が求めている訂正の内容は以下のとおりである。
(ア)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1に係る記載
「【請求項1】
頭部に装着されるHMD本体;
この本体内の両眼に近接する位置で画像を表示する画像表示手段;
両眼の視野を撮像するための撮像手段;
これによって得られた背景画像の信号に外部から供給された鑑賞画像の信号を重ねて前記画像表示手段に供給する画像合成手段;
前記表示装置本体の動きを検知するためのセンサ手段;
このセンサ手段の検知結果に対応して、前記画像合成手段による鑑賞画像の合成位置に逆の動きを与える位置制御手段;
を備えたヘッドマウントディスプレイ。」
を、
「【請求項1】
鑑賞者の頭部に装着されるHMD本体;
この本体内の両眼に近接する位置で画像を表示視野内に表示する画像表示手段;
両眼の視野を撮像するための撮像手段;
これによって得られた背景画像の信号に外部から供給された鑑賞画像の信号を重ねて前記画像表示手段に供給する画像合成手段;
前記表示装置本体の動きを検知するためのセンサ手段;
予め前記鑑賞者により固定可能とされた、前記鑑賞者の顔を所望の方向に向けた際の前記表示視野内に表示される前記背景画像に対する前記鑑賞画像の相対的位置を、前記表示視野内における基準合成位置としてこの位置に前記鑑賞画像を合成表示し、前記鑑賞画像を、前記顔の方向の変換に伴う前記センサ手段の検知結果に対応して、前記鑑賞者に対する前記鑑賞画像の表示方向が固定されるよう、前記基準合成位置から前記表示装置本体の動きの方向とは逆の方向に移動させる位置制御手段;
を備えたヘッドマウントディスプレイ。」
と訂正する(下線部が訂正箇所)。
(イ)訂正事項b
明細書の段落番号【0007】に記載された
「【課題を解決するための手段と作用】
前記目的を達成するため、この発明は、装置本体の動きをセンサで検知し、この検知結果に応じて、背景画像に対する鑑賞画像の相対的な表示位置に逆の動きを与えているので、ヘッドマウント型であるにもかかわらず、据置型のテレビジョンと近似した表示環境が実現される。この発明の主要な態様によれば、外部音を得るためのマイクロホンが設けられる。そして、音声混合手段により、水平センサの動きに対応して、鑑賞画像の音像位置と画像位置が一致するように、外部音と鑑賞画像の音声とが混合される。この発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、次の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。」
を、
「【課題を解決するための手段と作用】
前記目的を達成するため、この発明は、装置本体の動きをセンサで検知し、この検知結果に応じて、背景画像に対する鑑賞画像の相対的な表示位置に逆の動きを与えているので、ヘッドマウント型であるにもかかわらず、据置型のテレビジョンと近似した表示環境が実現される。この発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、次の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。」
と訂正する(下線部が訂正箇所)。

(2)訂正事項について
上記訂正事項aは、「頭部」、「画像表示手段」及び「位置制御手段」についてそれぞれ限定事項を追加するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正事項bは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明における「課題を解決するための手段と作用」の記載とを整合させるための訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申し立てについて
(1)申立ての理由の内容
特許異議申立人は、証拠として
甲第1号証:特開平3-226198号公報
甲第2号証:特開平5-241540号公報
甲第3号証:特開平3- 29472号公報
を提出し、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件請求項1に係る発明の特許は取り消されるべきものである旨主張している。
また、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであるから、本件請求項1に係る発明の特許は取り消されるべきものである旨主張している。なお、「特許請求の範囲が不明瞭である」との主張からみて、異議申立の理由が特許法第36条第6項とあるのは、特許法第36条第5項の誤記であると認められる。

(2)本件発明
上記2に記載したとおり、平成16年10月18日付け訂正請求書による訂正請求は認容されるので、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、同訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
鑑賞者の頭部に装着されるHMD本体;
この本体内の両眼に近接する位置で画像を表示視野内に表示する画像表示手段;
両眼の視野を撮像するための撮像手段;
これによって得られた背景画像の信号に外部から供給された鑑賞画像の信号を重ねて前記画像表示手段に供給する画像合成手段;
前記表示装置本体の動きを検知するためのセンサ手段;
予め前記鑑賞者により固定可能とされた、前記鑑賞者の顔を所望の方向に向けた際の前記表示視野内に表示される前記背景画像に対する前記鑑賞画像の相対的位置を、前記表示視野内における基準合成位置としてこの位置に前記鑑賞画像を合成表示し、前記鑑賞画像を、前記顔の方向の変換に伴う前記センサ手段の検知結果に対応して、前記鑑賞者に対する前記鑑賞画像の表示方向が固定されるよう、前記基準合成位置から前記表示装置本体の動きの方向とは逆の方向に移動させる位置制御手段;
を備えたヘッドマウントディスプレイ。」

(3)引用刊行物記載の発明
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(特開平3-226198号公報、甲第1号証)には、立体表示装置に関し、下記の事項が図面と共に記載されている。
(ア)「右目用実像入力部21は、使用者がいる位置で観測される映像を入力し、右目に対応する画像である右目用実像信号211を出力する。右目用画像合成部22は、目の回りを覆い、これらの装置をバンドやヘルメットなどで頭部に固定させる枠組みなどを用いる。」(6頁左上欄15-20行、第2図、第6図)
(イ)「第4の立体表示装置は、第2図に示す第2の立体表示装置の右目用画像合成部22および左目用画像合成部25に代えて右目用画像切り替え合成部41および左目用画像切り替え合成部42を備える。右目用画像切り替え合成部41には、合成もしくは切り替えを指定する選択制御信号103が入力され、右目用画像切り替え合成部41は、選択制御信号103に基づき、右目用画像信号101と右目用実像入力部21から出力された右目用実像信号211とを入力し、それらの画像の合成または右目用画像信号101および右目用実像信号211の内からいずれか一方の選択を行い、右目用画像合成信号411を右目用画像投影部23に出力する。同様に、左目用画像切り替え合成部42は、入力される選択制御信号103に基づき、左目用画像信号102と左目用実像入力部24から出力された左目用実像信号241を入力し、それらの画像の合成または左目用画像信号102および左目用実像信号241の内からいずれか一方の選択を行い、左目用画像合成信号421を左目用画像投影部26に出力する。
右目用画像切り替え合成部41および左目用画像切り替え合成部42は、第9図に示すように、画像切り替え器91とクロマキー合成装置64とからなる。」(6頁左下欄6行-右下欄10行)
(ウ)「使用者は本発明の立体表示装置92を装着具を介して装着する。位置検出部93は、使用者の頭部の位置および向きを検出し、位置信号931を出力する。仮想世界データベース96は、仮想的な3次元世界での人物などのデータを蓄積する。右目用画像生成部94もしくは左目用画像生成部95は、位置検出部93から出力された位置データ931を入力し、仮想的な3次元世界での使用者の位置を計算し、仮想世界データベース96から出力された仮想世界データ961を用いて、右目もしくは左目に対応する画像データを実時間で出力する。このとき使用者に観測される映像の一例を第11図に示す。机97は使用者がいる位置で見えた現実世界の対象物であり、人物98は、仮想世界データベースに蓄積されているデータから生成された映像である。」(6頁右下欄14行-7頁左上欄10行)

同刊行物2(特開平5-241540号公報、甲第2号証)には、視覚情報表示装置に関し、下記の事項が図面と共に記載されている。
(エ)「装着者の視線上に配置されたスクリーンと、
前記装着者の頭部に装着され、前記スクリーンを前記位置に保持する保持手段と、
前記装着者の頭部の向き及び位置を検出するセンサと、
前記センサの検出結果に基づいて、前記装着者の頭部の向き及び位置に対応した部分のコンピュータ画像を出力するコンピュータグラフィック装置と、
前記装着者の頭部の向き及び位置に対応した所定の撮像領域を撮像するテレビカメラと、
前記テレビカメラが撮像する画像を前記コンピュータグラフィック装置が出力するコンピュータ画像に合成する画像合成装置と、
前記保持手段に保持され、前記画像合成装置にて合成された画像を表示して前記スクリーンに投影する映像表示装置と、
を備えたことを特徴とする視覚情報表示装置。」(【請求項1】)
(オ)「頭部を動かして指向方向が変わったときに、その指向方向の変化に追従して前記実画像やCGによる竣工予定画像の向きや位置が変わるようにすればさらに便利であることは言うまでもない。
本発明は上述の点に着目してなされたものであり、装着者が頭部の向きや位置を変えて指向方向が変わったときに、その指向方向の変化に追従して実画像やCG画像の向きや位置を変えて、前記実画像とCG画像とを合成して装着者の目前に表示させることができる視覚情報表示装置を提供することを目的とする。」(【0003】段落)
(カ)「各CG作成用コンピュータ90は図3に示すように、建設中のビルやその周辺の造成工事が完了した時点を想定して作成したコンピュータ画像のデータを保持するCGデータ保持部96と、座標設定部94にて設定された座標値に基づいて、前記CGデータ保持部96に保持されたコンピュータ画像のデータから液晶表示装置30に出力する表示領域のデータを抽出し、且つ、抽出された領域のコンピュータ画像の向き及び大きさを、テレビカメラ102,102の指向方向及び位置、ひいては作業責任者の頭部Hの向き及び位置に対応したものに変換すると共に、その変換されたコンピュータ画像の指向性を左或は右側に少しずらして、作業責任者の左或は右の眼Eに対応したコンピュータ画像に変換する画像変換部92と、変換されたコンピュータ画像のデータから、背景(バックグランド)部分のデータを消去する背景消去部93とを備えている。
そして、背景部分のデータが消去されたコンピュータ画像は、各CG作成用コンピュータ90から2つの画像合成装置110へ夫々入力される。
このため、例えば作業責任者の頭部Hの向き乃至眼Eの視線が上下或は左右に動くと、これに呼応して上下或は左右方向にスクロールしたコンピュータ画像が画像変換部92から出力され、作業責任者の頭部Hが前後方向に動くと、これに呼応して拡大或は縮小したコンピュータ画像が画像変換部92から出力されて、この出力されたコンピュータ画像から背景部分が背景消去部93にて消去されてCG作成用コンピュータ90の外部に出力される。」(【0016】-【0017】段落)
(キ)「また、上記実施例では、画像変換部92にてコンピュータ画像の向き及び大きさを作業責任者の頭部Hの向き及び位置に対応したものに変換する際に、テレビカメラ102,102の指向方向及び位置を検出するセンサ103の検出結果に基づいて変換を行うものとしたが、作業責任者の頭部Hの向き及び位置を検出するセンサ80の検出結果に基づいて変換を行うようにしてもよく、テレビカメラをヘルメットMの側部に取り付けて雲台100や駆動装置101、及び駆動装置101の制御用の構成を省略するようにしてもよい。」(【0029】段落)

同刊行物3(特開平3-29472号公報、甲第3号証)には、映像合成装置に関し、下記の事項が図面と共に記載されている。
(ク)「この発明は、合成すべき主映像を撮影するビデオカメラのカメラワークやレンズ動作等の情報と、主映像内の被写体の動きの情報とに基づいて、合成すべき他の映像を変化させ、主映像と他の映像とを合成するようにしたものである。」(2頁右上欄5-9行)

(4)本件特許発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきとの主張について
本件特許発明と上記刊行物1ないし3に記載された発明とを対比、判断すると、
上記刊行物1に記載の発明は、上記記載(ア)ないし(ウ)からみて、使用者がいる位置で観測される実像信号と、位置検出部からの位置データに基づいて計算された仮想的な3次元世界での仮想世界データとを合成してヘッドマウントディスプレイに表示するものである。
上記刊行物2に記載の発明は、上記記載(エ)ないし(キ)からみて、HMDと、スクリーンと、装着者の頭部の向きと位置に対応し撮像領域を撮像するテレビカメラと、装着者の頭部の向きと位置を検出するセンサと、センサの検出結果に基づいて頭部の向きと位置に対応したコンピュータ画像を出力するコンピュータグラフィック装置と、テレビカメラの画像とコンピュータグラフィック装置からのコンピュータ画像とを合成する画像合成装置とを備え、画像合成装置で合成された画像をスクリーンに表示するものであり、頭部の動きに応じてスクリーンに表示された画像が変化するものである。
上記刊行物3に記載の発明は、主映像内の被写体の動き情報に基づいて、合成される映像を変化させて主映像と他の映像を合成させるものである。
しかしながら、上記刊行物1及び2に記載の各発明は、いずれも現実世界の3次元座標と対応した仮想世界3次元座標上で予め作成されたコンピュータグラフィックの3次元座標を検出器からの位置検出に基づいて現実世界の映像の3次元座標と合うように合成するものであり、また、上記刊行物3に記載の発明は、主映像の被写体の動きに合わせて合成される映像を変化させて合成するものであり、本件特許発明のように鑑賞者が基準合成位置を固定可能とするものではない。
したがって、上記刊行物1ないし3に記載の各発明は、本件特許発明における「予め前記鑑賞者により固定可能とされた、前記鑑賞者の顔を所望の方向に向けた際の前記表示視野内に表示される前記背景画像に対する前記鑑賞画像の相対位置を、前記表示視野内における基準合成位置としてこの位置に前記鑑賞画像を合成表示し、前記鑑賞画像を、前記顔の方向の変化に伴う前記センサ手段の検知結果に対応して。前記鑑賞者に対する前記鑑賞画像の表示方向が固定されるよう、前記基準合成位置から前記表示装置本体の動きの方向とは逆の方向に移動させる位置制御手段」という主要事項を備えておらず、当該事項を示唆する記載もされていない。
そして、本件特許発明は、上記主要事項により、明細書に記載された「鑑賞者から見ると、鑑賞画像が表示される方向が固定されており、鑑賞者が他の方向を見ると鑑賞画像が視野内からはずれて背景画像が見えるようになる。このときの背景画像は、ビデオカメラ24R,24Lによる外界の撮影画像であり、鑑賞者の顔が向いた方向の画像である。従って、鑑賞者は、HMD使用中であっても、必要があればその方向に顔を動かすことで、その方向の画像を見ることができる。別言すれば、あたかも据置型のテレビジョンを鑑賞しているような感覚となる。」という作用効果を奏するものであり、この点は前記各刊行物に記載のものから期待することができない格別のものである。
したがって、本件特許発明は、上記刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(5)本件特許発明は、その明細書が特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきとの主張について
本件特許明細書の記載は、上記訂正事項aの訂正により、鑑賞画像を基準合成位置から表示装置本体の動きの方向とは逆の方向に移動させることが明確となり、また、請求項1に記載された発明は発明の詳細な説明に記載したものであることは明らかであるので、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとすることはできない。

(6)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ヘッドマウントディスプレイ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鑑賞者の頭部に装着されるHMD本体;
この本体内の両眼に近接する位置で画像を表示視野内に表示する画像表示手段;
両眼の視野を撮像するための撮像手段;
これによって得られた背景画像の信号に外部から供給された鑑賞画像の信号を重ねて前記画像表示手段に供給する画像合成手段;
前記表示装置本体の動きを検知するためのセンサ手段;
予め前記鑑賞者により固定可能とされた、前記鑑賞者の顔を所望の方向に向けた際の前記表示視野内に表示される前記背景画像に対する前記鑑賞画像の相対的位置を、前記表示視野内における基準合成位置としてこの位置に前記鑑賞画像を合成表示し、前記鑑賞画像を、前記顔の方向の変化に伴う前記センサ手段の検知結果に対応して、前記鑑賞者に対する前記鑑賞画像の表示方向が固定されるよう、前記基準合成位置から前記表示装置本体の動きの方向とは逆の方向に移動させる位置制御手段;
を備えたヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、鑑賞者がその頭部に装着して使用するヘッドマウントディスプレイに関する。
【0002】
【背景技術】
鑑賞者の両眼に対してそれぞれ画像表示部が近接して設けられており、頭部に装着して使用する画像表示装置、いわゆるヘッドマウントディスプレイ(HMD)としては、例えば、特開平4-61495号公報や特開平5-183943号公報に開示されたものがある。これらに開示されたものは、外観が眼鏡型となっており、耳にかけるようにして頭部に装着する構成となっており、左右の眼に対して対向するような1対の画像表示部がある。日経エレクトロニクス,1993,14,No.571に開示されているように、ヘッドバンドで頭部にかけるようにしたものもある。
【0003】
画像表示部としては、液晶素子やEL素子などが用いられており、両眼の前方位置にそれぞれ設けられている。左右それぞれの表示部に、左眼画像,右眼用画像をそれぞれ表示するようにすれば、立体感のある画像を楽しむことができる。なお、眼鏡状のスクリーンの内側に画像を反射させるレンズを置き、これによりスクリーン上部に表示された画像を反射させてスクリーンに投影して鑑賞するようにした透過型のHMDもある。このタイプのものは、スクリーン上の画像とともに、スクリーンを透過して外部も同時に見ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上のような背景技術には、次のような不都合がある。
(1)非透過型のものは、画像のみを楽しむには好都合であるが、外界が遮断されているため、外界を見たいときはHMDを一度取り外さなくてはならず、必ずしも使い勝手がよいとはいえない。これに対し、透過型のものは、外界の風景と鑑賞画像とが重なって見えるため、必ずしも上述した不都合は生じない。しかし、頭を動かしても、外界の風景は動くものの、鑑賞画像は視界の中の一定位置を占めている。このため、外界の必要な風景と鑑賞画像をどちらも見る必要があるときには、それら両方が見えるような位置に頭を動かして固定しておかなければならない。
【0005】
(2)非透過型,透過型のいずれのタイプであっても、両眼の視野内における表示画像の位置が固定されている。このため、頭を動かしても、鑑賞画像は常に視野内の一定の場所に位置する。他方、部屋の中でテレビジョンを見ているようなときは、頭を回して別の方向を見れば、テレビジョンの画像は視界から消える。これとHMDとを比較すれば明らかなように、両者は画像を見る環境が大きく異なる。すなわち、HMDでは鑑賞画像を避けることができないため、長時間見たときの圧迫感や疲労の程度は増大すると考えられる。
【0006】
この発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、外界の所望風景を必要に応じて良好に見ることができる、使い勝手のよいヘッドマウントディスプレイを提供することである。他の目的は、従来のテレビジョンに近似した環境で画像を楽しむことができ、長時間鑑賞しても疲れの少ないヘッドマウントディスプレイを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段と作用】
前記目的を達成するため、この発明は、装置本体の動きをセンサで検知し、この検知結果に応じて、背景画像に対する鑑賞画像の相対的な表示位置に逆の動きを与えているので、ヘッドマウント型であるにもかかわらず、据置型のテレビジョンと近似した表示環境が実現される。この発明の前記及び他の目的特徴,利点は、次の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【0008】
【好ましい実施例の説明】
この発明のヘッドマウントディスプレイには数多くの実施例が有り得るが、ここでは適切な数の実施例を示し、詳細に説明する。
【0009】
<実施例1>図1には、実施例1の機械的な構成部分の平面が示されている。同図に示すように、全体がゴーグル形状となっており、頭部前面側の本体10には、装着したときに両眼に近接する位置となるように、画像表示部12R,12Lがそれぞれ設けられている。これら画像表示部12R,12Rは、液晶ディスプレイ14R,14Lとバックライト16R,16Lによってぞれぞれ構成されている。また、画像表示部12R,12Lの肉眼側には、接眼レンズ18R,18Lがそれぞれ設けられている。本体10の両側部には、眼鏡のつるに相当する装着腕20R,20Lがそれぞれ延設されている。これら装着腕20R,20Lの端部内側には、スピーカ22R,22Lがそれぞれ設けられている。
【0010】
更に実施例1では、本体10の前面左右端部には前方(図の左方)を向いたビデオカメラ24R,24Lがそれぞれ設けられており、左右端部内側には垂直センサ26R,26Lがそれぞれ設けられている。また、本体10中央には水平センサ28が設けられている。
【0011】
これらのうち、ビデオカメラ24R,24Lは、それぞれ右眼,左眼の視野範囲を撮像するためのものである。垂直センサ26R,26Lは、視野の垂直方向の相対的な位置を検知するためのセンサであり、水平センサ28は、視野の水平方向の相対的な位置を検知するためのセンサである。また、垂直センサ26R,26Lの検知出力から視野の回転を検出することができる。
【0012】
次に、実施例1の電気的な構成部分は、図2に示す通りである。なお、同図に示す回路ブロックは、左又は右のいずれか一方の回路のみであり、もう1つ同様の回路が設けられる。基本的な動作,つまり、上述したセンサ26R,26L,28を考慮しない場合の動作を説明すると、ビデオカメラ24R,24Lによって撮像された風景のR,G,B画像信号は、同期信号発生回路30から供給された同期信号に基づいて出力され、合成スイッチ32に供給される。
【0013】
他方、映画などの外部入力画像信号は、色復調回路34によって色復調された後、A/D変換器36でデジタル信号に変換される。そして、入力画像信号に同期してメモリ38に蓄積される。このとき、書込制御回路40による調整によって、メモリ38に蓄積する画像の画素を間引いたり、あるいは補間したりすることで、画像の拡大,縮小や、アスペクト比の変更が鑑賞者の所望に応じて行われる。
【0014】
メモリ38に蓄積された画像信号は、ビデオカメラ24の同期信号と同じタイミングで読み出され、D/A変換器42によってアナログ信号に変換された後、合成スイッチ32に供給される。合成スイッチ32では、ビデオカメラ24側から供給された風景の画像と、映画などの鑑賞画像とが合成される。
【0015】
図3には、その様子が示されている。ビデオカメラ24R,24Lでは、例えば同図(A)に示すような風景画像PBR,PBLがそれぞれ撮像される。合成スイッチ32では、背景画像よりも鑑賞画像を優先する合成処理,つまり、一枚の画面の中で鑑賞画像がある領域はそちらを出力し、鑑賞画像がない領域は背景画像を出力する処理が行われる。このため、同図(B)に示すように、それら風景画像PBR,PBLに、鑑賞画像PMR,PMLがそれぞれ合成されるようになる。これは、テレビジョンやVTRにおけるピクチャ・イン・ピクチャの機能に例えることができる。合成された左右両眼用の画像信号は、液晶ディスプレイ14R,14Lにそれぞれ供給される。
【0016】
他方、液晶ディスプレイ14R,14Lは、水平・垂直タイミング回路44から供給される走査タイミング信号によって表示走査が行われている。この水平・垂直タイミング回路44は、同期信号発生回路30から供給された同期信号に基づいて動作しているので、液晶ディスプレイ14R,14Lの走査もビデオカメラ24R,24Lの画像信号出力に同期して行われることになる。つまり、ビデオカメラ24R,24Lからの画像信号出力及びメモリ38からの画像信号読出しから、液晶ディスプレイ14R,14Lにおける表示に至る回路の動作は、いずれも同期して行われている。
【0017】
液晶ディスプレイ14R,14Lでは、バックライト駆動装置46によって駆動されているバックライト16R,16Lの光を受けて、図3(B)に示した左右両眼用の合成画像が表示される。これら合成画像は、接眼レンズ18R,18Lを通して鑑賞者の両眼で観察される。
【0018】
ところで、実施例1では、上述したセンサ26R,26L,28の検知出力側が読出制御回路48に接続されており、この読出制御回路48によってメモリ38からのデータ読出しが制御されるようになっている。また、垂直センサ26R,26Lの検知出力側は回転角度検出回路50に接続されており、この回転角度検出回路50の出力側は画像回転回路52に接続されている。画像回転回路52は、メモリ38から供給された画像を回転して出力するためのものである。
【0019】
これらの動作を説明すると、つまり図1に示したHMDが水平方向に移動したとすると、これが水平センサ28で検知される。読出制御回路48では、この水平移動に対応してメモリ38からの信号読出しのタイミングが制御される。この結果、ビデオカメラ24R,24Lから送られて来る背景画像に対する鑑賞画像の表示タイミングがずれるようになり、結果的に相対的な表示位置がずれることになる。読出制御回路48では、鑑賞画像の移動方向が水平センサ28によって検知された移動方向の逆となるように、メモリ38からのデータ読出しの制御が行われる。図4(A)にはその様子が示されており、水平センサ28の検知移動方向が矢印FAであったとすると、液晶ディスプレイ14R,14L上における鑑賞画像PMR,PMLは、逆の矢印FB方向に移動することになる。
【0020】
次に、HMDが垂直方向に移動したとすると、これが垂直センサ26R,26Lで検知される。読出制御回路48では、この垂直移動に対応してメモリ38からの信号読出しのタイミングが制御される。この場合も、読出制御回路48では、鑑賞画像の移動方向が垂直センサ26R,26Lによって検知された移動方向の逆となるように、メモリ38からのデータ読出しの制御が行われる。図4(B)にはその様子が示されており、垂直センサ26R,26L8の検知移動出方向が矢印FC,FDであったとすると、液晶ディスプレイ14R,14L上における鑑賞画像PMR,PMLは、それらの平均移動量だけ逆の矢印FE方向にそれぞれ移動することになる。
【0021】
更に、このとき、垂直センサ26R,26Lの検知結果から、回転角度検出回路50によって図1のHMDの回転角度θが検出される。例えば、図4(C)に示すように、垂直センサ26Rの検知方向が矢印FFで移動量Δa,垂直センサ26Lの検知方向が矢印FGで移動量Δbあったとすると、垂直センサ間の距離をSとして、
θ=tan-1((Δa+Δb)/S)
の演算を行うことで回転角度θが求められる。画像回転回路52では、この回転角度θと逆の-θに相当する画像の回転が行われる。この結集、液晶ディスプレイ14R,14Lには、図4(C)に示すように、鑑賞画像PMR,PMLが回転して表示されるようになる。
【0022】
このように、鑑賞者から見ると、鑑賞画像が表示される方向が固定されており、鑑賞者が他の方向を見ると鑑賞画像が視野内からはずれて背景画像が見えるようになる。このときの背景画像は、ビデオカメラ24R,24Lによる外界の撮影画像であり、鑑賞者の顔が向いた方向の画像である。従って、鑑賞者は、HMD使用中であっても、必要があればその方向に顔を動かすことで、その方向の画像を見ることができる。別言すれば、あたかも据置型のテレビジョンを鑑賞しているような感覚となる。
【0023】
例えば、鑑賞者が顔を、図3(B)に示すような表示状態において、同図(C)に矢印FHで示す左方向に徐々に移動させたとする。すると、液晶ディスプレイ14R,14L上における鑑賞画像PMR,PMLは、同図(C)に矢印FIで示す逆の方向に移動するようにようになる。垂直方向の移動や回転についても同様である。
【0024】
なお、読出制御回路48,回転角度検出回路50には、初期設定スイッチ54が接続されており、これによって、HMDの頭部装着時における鑑賞者の所望の姿勢と、視野内における鑑賞画像PMR,PMLの位置との相対的な関係の初期設定を行うことができるようになっている。
【0025】
次に、実施例1の全体動作を説明する。鑑賞者は、図1に示したHMDの装着腕20R,20Lを左右の耳にかけて、頭部に装着する。この状態で、液晶ディスプレイ14R,14Lには、ビデオカメラ24R,24Lによって撮像された風景画像PBR,PBLと、外部から入力された映画やテレビジョン番組などの鑑賞したい画像PMR,PMLが重ねて映し出される(図3(B)参照)。
【0026】
この状態で鑑賞者が、顔の方向を変えると、その変化がセンサ26R,26L,28によって検知され、図4に示すように鑑賞画像の表示位置が変化する。そこで、鑑賞者は、ソファシートに座るなどの所望の姿勢をとるとともに、鑑賞画像が表示視野内の所望の位置となるように適当な方向を向く。そして、この状態で初期設定スイッチ54を操作する。すると、読出制御回路48,回転角度検出回路50ではセンサ入力を無視する初期設定動作が行われ、視野を変えても液晶ディスプレイ14R,14L上における鑑賞画像の表示位置が固定された状態となる。
【0027】
この状態で、鑑賞者は、初期設定スイッチ54を解除する。すると、読出制御回路48,回転角度検出回路50では、解除時点におけるセンサ出力を基準として、以後、上述した読出制御,回転角度検出の動作が行われる。つまり、センサ出力に基づいて、液晶ディスプレイ14R,14L上における鑑賞画像の表示位置が図4に示したように変化する。
【0028】
鑑賞者は、必要があるときはその方向に顔を向けるようにすれば、その方向の背景画像が液晶ディスプレイ14R,14Lに表示されるとともに、鑑賞画像は移動するので、その方向の外界の様子を簡単に知ることができる。
【0029】
次に、音声について説明する。図6には、音声信号の処理回路が示されている。同図において、外部の音声を得るためのマイクロホン(以下単に「マイク」という)70の出力側は、可変抵抗器によって構成された音声混合回路72R,72Lの入力側にそれぞれ接続されている。マイク70は、適宜位置例えば図1に示したHMDにおける水平センサ28の上部に設けられる。
【0030】
音声混合回路72Rには、R音声,モノラル音声が入力されている。また、音声混合回路72Lには、L音声,モノラル音声が入力されている。音声混合回路72R,72Lの摺動端子は、水平センサ28の検知結果に対応して移動するようになっている。音声混合回路72R,72Lの出力側は、アンプ74R,74Lを介してスピーカ22R,22Lにそれぞれ接続されている。このような音声信号処理回路は、HMDの適宜位置に収納されている。
【0031】
次に、音声処理の動作について説明する。最初、図7(A)に示すように、鑑賞者が鑑賞画像をみる正面方向を向いているものとする。このとき、水平センサ28は水平方向の移動を検知しない状態にある。音声混合回路72R,72Lでは、摺動端子が中央に位置するため、R音声,L音声がそれぞれ出力されることになる。このため、スピーカ22R,22Lからは、それぞれR,Lの音声信号が再生されて出力されることになる。つまり、鑑賞画像に対応した音声出力となっている。
【0032】
次に、図7(B)に示すように、鑑賞者が外界を見るために左を向いたとする。すると、水平センサ28によってその動きが検知され、音声混合回路72R,72Lでは、摺動端子が「左」の方向に移動する。このため、音声混合回路72Rではモノラル音声R+Lが出力されるようになり、音声混合回路72Lではマイク70の外部音が出力されるようになる。つまり、仮想的に鑑賞画像PMの方を向く右耳にはモノラル音声が聞こえ、反対の左耳には外部音が聞こえるようになる。
【0033】
また、図7(C)に示すように、鑑賞者が外界を見るために右を向いたとする。すると、水平センサ28によってその動きが検知され、音声混合回路72R,72Lでは、摺動端子が「右」の方向に移動する。このため、音声混合回路72Rではマイク70の外部音が出力されるようになり、音声混合回路72Lではモノラル音声R+Lが出力されるようになる。つまり、仮想的に鑑賞画像PMの方を向く左耳にはモノラル音声が聞こえ、反対の右耳には外部音が聞こえるようになる。このように、音声や外部音は水平センサ28の検知移動量に対応して混合され、鑑賞画像PMの位置と音源の位置とが対応するようになる。
【0034】
以上のように、実施例1によれば、外界の所望風景を必要に応じて良好に見ることができ、非常に使い勝手がよい。また、従来の据置型のテレビジョンに近似した環境で画像を楽しむことができ、長時間鑑賞しても疲れが少ない。更に、鑑賞画像の大きさを変えることができるので、外界風景の観察に好都合である。また、鑑賞画像の位置と音源の位置とが合致するようにしたので、HMDを装着しているという違和感が低減され、音声的に外界の情報を得ることができるので、使用環境が据置型テレビジョンに更に近づくことになる。
【0035】
<実施例2>次に、図5を参照しながら実施例2について説明する。上述した実施例1は、非透過型のHMDの例であるが、この実施例2は、透過型のHMDの例である。この透過型の場合は、鑑賞者はゴーグルを介して外界を見ることができるので、外界の映像を写すためのビデオカメラは必要がない。このため、図1中のビデオカメラに関係する構成部分は除かれており、外部から供給された鑑賞画像の表示位置を制御する構成要素のみで良い。また、実施例2は簡易型のため、回転運動に基づく表示位置制御の構成部分は除かれている。従って、垂直センサは1つでよい。
【0036】
図5において、外部から入力された鑑賞画像信号は色復調回路34によって色復調された後、そのまま液晶ディスプレイ14R,14Lに供給される。この鑑賞画像信号は、同期信号分離回路60にも入力されており、ここで水平,垂直の同期信号HD,VDが分離される。水平同期信号HDは、水平タイミング回路62に入力されており、これから得られた水平走査タイミング信号が液晶ディスプレイ14R,14Lに供給される。また、垂直同期信号VDは、垂直タイミング回路64に入力されており、これから得られた垂直走査タイミング信号が同様に液晶ディスプレイ14R,14Lに供給される。液晶ディスプレイ14R,14Lでは、これらのタイミング信号に基づいて色復調回路34から入力された映像が表示される。
【0037】
この場合において、水平センサ28の検知出力は水平タイミング回路62に供給されており、これによって、鑑賞画像が顔の移動方向と逆の方向に移動するように、水平タイミングが調整される。他方、垂直センサ26R(又は26L)の検知出力は垂直タイミング回路64に供給されており、これによって、鑑賞画像が顔の移動方向と逆の方向に移動するように、垂直タイミングが調整される。
【0038】
このように、実施例2では、顔の方向に対応して鑑賞画像の表示位置が水平,垂直の逆方向に変化する。このため、ゴーグルからは外界が見えるようになり、実施例1と同様の効果が得られる。なお、実施例2では、簡易型のため、鑑賞画像の大きさは変化しない。
【0039】
<他の実施例>この発明は、以上の開示に基づいて多様に改変することが可能であり、例えば次のようなものがある。
(1)前記実施例1では、左右両眼に対応してビデオカメラを設けたが、もちろん1つのみでもよい。
(2)実施例1で行った初期設定動作は、実施例2では水平,垂直タイミング回路62,64で行うようにすればよい。実施例2は透過型であるから、背景画像に重ねて鑑賞画像が表示される。このため、外界の風景の中で、モノトーンな場所,例えば白い壁などの部分に鑑賞画像が位置するように初期設定すると、好都合である。
【0040】
(3)前記実施例では液晶ディスプレイを両眼で直接見る構成としたが、ミラーなどを利用して間接的に見るようにしてもよい。その他、水平,垂直センサの代りにビデオカメラによる撮影画像の動きを検知し、その動きとは逆の方向に鑑賞画像を移動させるようにするなど、同様の作用を奏するように各種設計変更が可能である。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、次のような効果がある。
(1)HMDの動きを検知し、その動きと逆の動きを鑑賞画像に付与することとしたので、据置型のテレビジョンと近似した環境が実現でき、顔を動かすのみで所望の外界風景を簡単に見ることができ、使い勝手がよい。
(2)従来の据置型のテレビジョンと近似した環境で画像を楽しむことができ、長時間鑑賞しても圧迫感がなく、疲れも少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例1の機械的構成の主要部を示す平面図である。
【図2】実施例1の電気的構成の主要部を示すブロック図である。
【図3】実施例1の作用を示す図である。
【図4】実施例1の作用を示す図である。
【図5】実施例2の電気的構成の主要部を示すブロック図である。
【図6】実施例1の音声処理系を示すブロック図である。
【図7】実施例1の音声処理系の作用を示す図である。
【符号の説明】
10…HMD本体
12R,12L…映像表示部(画像表示手段,画像投影手段)
14R,14L…液晶ディスプレイ
16R,16L…バックライト
18R,18L…接眼レンズ
20R,20L…装着腕
22R,22L…スピーカ
24R,L…ビデオカメラ
26R,26L…垂直センサ(センサ手段)
28…水平センサ(センサ手段)
30…同期信号発生回路
32…合成スイッチ
34…色復調回路
36…A/D変換器
38…メモリ(位置制御手段)
40…書込制御回路
42…D/A変換器
44…水平・垂直タイミング回路
46…バックライト駆動装置
48…読出制御回路(位置制御手段)
50…回転角度検出回路(位置制御手段)
52…画像回転回路(位置制御手段)
54…初期設定スイッチ
60…同期分離回路
62…水平タイミング回路(位置制御手段)
64…垂直タイミング回路(位置制御手段)
70…マイクロホン
72R,72L…音声混合回路(音声混合手段)
74R,74L…アンプ
PBR,PBL…背景画像
PM,PMR,PML…鑑賞画
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-02-10 
出願番号 特願平6-171782
審決分類 P 1 651・ 537- YA (H04N)
P 1 651・ 121- YA (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 橋本 恵一
高瀬 勤
登録日 2002-11-15 
登録番号 特許第3368672号(P3368672)
権利者 日本ビクター株式会社
発明の名称 ヘッドマウントディスプレイ  

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