• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
管理番号 1116143
異議申立番号 異議2003-72541  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-10-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-17 
確定日 2005-03-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3398381号「遷移金属オレフィン重合触媒」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3398381号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 【I】手続きの経緯
特許第3398381号の請求項1〜3に係る発明は、平成5年7月1日(優先権主張 平成4年7月1日 米国)に国際出願され、平成15年2月14日に請求項1〜3に係る発明について特許権の設定登録がなされ、その後、石川 治(以下、「特許異議申立人」という。)より、請求項1〜3に係る特許に対し特許異議の申立てがなされ、請求項1〜3に係る特許に対し取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年12月1日付けで意見書とともに訂正請求書が提出され、再度取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年2月4日付けで先の訂正請求書を取り下げるとともに意見書及び新たな訂正請求書が提出されたものである。

【II】訂正請求について
1.訂正の内容:訂正箇所は特許公報の頁行で代用する。
(訂正事項1)
特許公報5欄42行の「イオン対である。その」を、
「イオン対である。ただし、遷移金属がバナジウムであり、かつ補助配位子が=Oである組み合わせの化合物を除く。その」と訂正する。

(訂正事項2)
特許公報6欄14行の
「である。」を
「である。ただし、Gがバナジウムであり、かつL3又はL4が=Oである組み合わせの化合物を除く。」と訂正する。

(訂正事項3)
特許公報6欄38〜39行の
「数である)」を、
「数である。ただし、Gがバナジウムであり、かつL3又はL4が=Oである組み合わせの化合物を除く。)」と訂正する。

(訂正事項4)
特許公報9欄21行の
「含む。」を、
「含む。ただし、Gがバナジウムであり、かつL3又はL4が=Oである組み合わせの化合物を除く。」と訂正する。

(訂正事項5)
特許公報11欄45〜46行の
「族数である)」を、
「族数である。ただし、Gがバナジウムであり、かつL3又はL4が=Oである組み合わせの化合物を除く。)」と訂正する。

(訂正事項6)
特許公報14欄21〜22行の
「Cp*(C2J9H11)TaMe]+[J]-」を、
「Cp*(C2B9H11)TaMe]+[J]-」と訂正する。

(訂正事項7)
特許公報16欄9行,28行および39行の「実施例1」を「参考例」と訂正する。

(訂正事項8)
特許公報16欄34行の「実施例2」を「実施例1」と訂正する。

(訂正事項9)
特許公報の16欄42行の「実施例3」を「実施例2」と訂正する。

(訂正事項10)
特許公報の17欄10行、同欄30行および18欄2行の「実施例4」を「実施例3」と訂正する。

(訂正事項11)
特許公報の17欄29行の「実施例5」を「実施例4」と訂正する。

(訂正事項12)
特許公報の17欄41行の「実施例6」を「実施例5」と訂正する。

(訂正事項13)
特許公報の18欄7行の「実施例7」を「実施例6」と訂正する。

(訂正事項14)
特許公報の18欄29行の「実施例8」を「実施例7」と訂正する。

(訂正事項15)
特許請求の範囲の請求項1の
「有する、」を、
「有する(ただし、遷移金属がバナジウムであり、かつ補助配位子が=Oである組み合わせの化合物を除く)、」と訂正する。

(訂正事項16)
特許請求の範囲の請求項2の「(式中、」を「[式中、」と訂正する。

(訂正事項17)
特許請求の範囲の請求項2の
「である)で表わされるイオン対を含む、物質組成物。」を、
「である(ただし、Gがバナジウムであり、かつL3又はL4が=Oである組み合わせの化合物を除く)]で表わされるイオン対を含む、オレフィン触媒として有用な物質組成物。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項15と17において、「ただし・・・を除く」を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第29条第1項第3号に係る発明を除くためのものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものである。
訂正事項17において「オレフィン触媒として有用な」とする訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項16は、訂正事項17と整合性をとるためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。
訂正事項1〜5は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合性をとるためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。
訂正事項6は、誤記の訂正を目的とする訂正である。
訂正事項7〜14は、訂正後の特許請求の範囲に含まれない訂正前の実施例1を参考例とし、それに伴い訂正前の実施例2〜8の番号を繰り上げて、実施例1〜7とするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。
そして、上記訂正事項1〜17は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【III】特許異議申立てについて
1.訂正後の請求項1〜3に係る発明
訂正後の請求項1〜3に係る発明(以下、「訂正発明1」〜「訂正発明3」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「1.カチオンが低配位数のポリアニオン補助配位子系により安定化され、補助配位子は補助配位子が占める部位の数よりも大きな形式陰性電荷を有し、さらに重合に参加しないが単結合又は多重結合によって遷移金属に共有的に結合し、カチオンが少なくとも1つの相溶性の非配位アニオンでの電荷バランスによりさらに安定化される、遷移金属がd0酸化状態である、配位結合内に不飽和のカチオン5乃至10族遷移金属錯体を含み、前記遷移金属錯体が、反応性である少なくとも1つの金属配位子シグマ結合を有する(ただし、遷移金属がバナジウムであり、かつ補助配位子が=Oである組み合わせの組成物を除く)、オレフィン重合触媒として有用な物質組成物。
2.下記式、
[{(L3)(L4)}-cGn(X)]q+1[J-m]p
[式中、Gは、そのd0酸化状態にある5又は6族遷移金属、nはその金属の族の数、L3及びL4は、それらが占める部位の数よりも大きな形式陰性電荷を有する、同じか又は異なる、金属と共有結合された、置換された又は置換されていないアニオン補助配位子であり、Xは、水素化物基、ヒドロカルビル基、ハロゲン置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、ヒドロカルビル置換有機メタロイド基から選ばれる一陰性の(uninegative)配位子であり、cは補助配位子系{(L3)(L4)}における電荷を表わし、c+2=nであり、Jは電荷-mの相溶性の非配位アニオンであり、pはJアニオンの数、qは+1カチオンの数であり、p×m=qである(ただし、Gがバナジウムであり、かつL3又はL4が=Oである組み合わせを除く)]
で表わされるイオン対を含む、オレフィン重合触媒として有用な物質組成物。
3.2乃至20の炭素原子を有する1つ以上のオレフィンに、重合条件下で、請求項1又は2に記載の組成物を接触させることを含む、ポリオレフィンを製造する方法。」

2.取消理由の概要
訂正前の請求項1〜3に係る発明は、刊行物1又は2に記載された発明であり、またそうでないとしても、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。


刊行物1.特表平3-502207号公報
(特許異議申立人提出の甲第1号証)
刊行物2.Recueil Trav. Chim. Pays-Bas, Vol.85(1966), p.1007-1017
(同甲第2号証)
刊行物3.Journal of Organometallic Chemistry, Vol.152(1978), p.281-285 (同甲第3号証)
刊行物4.Journal of Organometallic Chemistry, Vol.347(1988), p.85-92 (同甲第4号証)

3.引用刊行物等に記載された事項
(刊行物1)
「実施例2 以下のようにして、シリカゲル担持VOCl3メチルアルモキサン触媒錯体を製造するために、・・・・。」(6頁左下欄1〜22行)
「実施例4 以下のようにして、シリカゲル担持VOCl3メチルアルモキサン触媒錯体を製造するために、・・・・。」(6頁右下欄2〜19行)
「触媒試験C 以下の方法によって、実施例2乃至5の触媒粉末の活性を・・・測定した。・・・エチレンの重合を1時間進行させた。・・・・
触媒試験D 実施例4の触媒の活性を・・・測定した。エチレンをヘキセン-1と共重合させた。・・・。」(7頁左上欄4行〜同頁右上欄最下行)

(刊行物2)
刊行物2には、エチレンの重合用触媒として、シクロペンタジエニルバナジウムオキシジクロリド(CpVOCl2)とエチルアルミニウムジクロリド(C2H5AlCl2)からなる触媒を用いることが記載されている(1013頁のTableIV)

(刊行物3)
刊行物3には、ジエチルアルミニウムクロリド((C2H5)2AlCl)と四塩化チタン(TiCl4)の反応で、[AlCl4]-アニオンを含むカチオン性錯体が生成されることが記載されている。(282頁1〜11行)

(刊行物4)
刊行物4には、エチルアルミニウムジクロリド(EtAlCl2)等のアルキルアルミニウムと各種チタノセンジクロリド(Cp2TiCl2)の反応で、[AlCl4]-アニオンを含むカチオン性錯体が生成されることが記載されている。(85頁下から9行〜最下行、86頁下から17行〜5行)

4.対比・判断
<特許法第29条第1項第3号違反について>
(1)刊行物1には、VOCl3-メチルアルモキサン錯体からなるオレフィン重合用触媒として有用な物質組成物の発明が記載されている。
訂正発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、VOCl3-メチルアルモキサン錯体は、[ClV(=O)CH3]+[CH3[Al(CH3)-O-]nAl(CH3)3]-又は[V(=O)(CH3)2]+[CH3[Al(CH3)-O-]nAl(CH3)3]-と表現できるので、後者の「=O」は、-2の電荷であるから、前者の「補助配位子が占める部位の数より大きな形式陰性電荷を有するポリアニオン補助配位子」に相当し、また、後者の「V」は、前者の遷移金属がバナジウムである場合に相当し、さらに、後者の「メチルアルモキサン」は、前者の「少なくとも1つの相溶性の非配位アニオン」に相当する。
また、後者のバナジウムカチオンは、「低配位数のポリアニオン補助配位子」である「=O」すなわち「O-2が占める部位の数(1)より大きな形式陰性電荷(-2)を有するO-2」により安定化されており、「少なくとも1つの相溶性の非配位アニオン」であるメチルアルモキサンの電荷バランスによりさらに安定化されており、後者のバナジウムは、「遷移金属がd0酸化状態」である5価である。
後者の「=O」である補助配位子は、重合に酸化しないが多重結合である二重結合により遷移金属であるバナジウムに共有的に結合している。
後者の錯体は、「不飽和のカチオン5族遷移金属錯体」であるエチレンの配位ができるバナジウム錯体であり、かつ、そのバナジウム錯体は、エチレンの挿入するV-CH3を有するので「反応性である少なくとも1つのシグマ結合」を有している。
すると、刊行物1に記載された発明は、訂正発明1の中から除かれている「遷移金属がバナジウムであり、かつ補助配位子が=Oである組み合わせの組成物」に相当するので、訂正発明1は刊行物1に記載された発明ではない。

訂正発明2と刊行物1に記載された発明とを対比すると、後者の「V」は、前者の「G:そのd0酸化状態にある5族遷移金属」に相当し、後者の「CH3」は、前者の「X:ヒドロカルビル基である一陰性の配位子」に相当し、後者の「Cl又はCH3」と「=O」をあわせたものが、前者の{(L3)(L4)}に相当し、後者の「CH3[Al(CH3)-O-]nAl(CH3)3]-又は「CH3[Al(CH3)-O-]nAl(CH3)3]-は、前者の「Jは電荷-mの相溶性の非配位アニオン」に相当し、後者においてc=3、n=5、p=1、q=1、m=1であるから、前者の「c+2=n、p×m=q」を満たしている。
すると、刊行物1に記載された発明は、式[{(L3)(L4)}-cGn(X)]q+1[J-m]p において、Gがバナジウムであり、かつL3又はL4が=Oである組み合わせである場合に相当し、これは、訂正発明2の中から除かれているのであるから、訂正発明2は刊行物1に記載された発明ではない。

訂正発明3は、訂正発明1または訂正発明2に係る組成物を用いてポリオレフィンを製造する方法であるから、訂正発明1および訂正発明2と同様の理由により、訂正発明3は刊行物1に記載された発明一ではない。

(2)刊行物2には、CpVOCl2とEtAlCl2 からなるオレフィン重合用触媒として有用な物質組成物の発明が記載されている。
訂正発明1と刊行物2に記載された発明とを対比する。
刊行物3には、Et2AlClとTiCl4の反応で[AlCl4]-アニオンを含むカチオン性錯体が生成されることが記載され、刊行物4には、EtAlCl2等のアルキルアルミニウムと各種チタノセンジクロリド(Cp’2TiCl2)の反応で、[AlCl4]-アニオンを含むカチオン性錯体が生成されることが記載されるように、バナジウムやチタン等の遷移金属とエチル基との結合は、アルミニウムとエチル基の結合に比べて強いので、塩素等のハロゲンと遷移金属の結合を有する化合物と、アルミニウムとエチル基の結合を有する化合物を共存させると、そのハロゲンとエチル基が入れ替わって[AlCl4]-アニオンを含むカチオン性錯体が生成されることは周知であるから、刊行物2に記載された発明においては、CpV(=O)Cl2+EtAlCl2→[CpV(=O)Et]+[AlCl4]- の反応が起こっていると考えられる。
したがって、刊行物2に記載された発明における物質組成物は、[CpV(=O)Et]+[AlCl4]- の構造を有する錯体を含むものと認められる。
すると、後者の「=O」「V」「[AlCl4]-」は、前者の「補助配位子」「遷移金属」「少なくとも1つの相溶性の非配位アニオン」に相当する。
また、後者のバナジウムカチオンは、「低配位数のポリアニオン補助配位子」である「=O」すなわち「O-2が占める部位の数(1)より大きな形式陰性電荷(-2)を有するO-2」により安定化されており、「少なくとも1つの相溶性の非配位アニオン」である[AlCl4]-での電荷バランスによりさらに安定化されており、後者のバナジウムは、「遷移金属がd0酸化状態」である5価である。
後者の「=O」である補助配位子は重合に酸化しないが多重結合である二重結合により遷移金属であるバナジウムに共有的に結合している。
後者の錯体は、「不飽和のカチオン5族遷移金属錯体」であるエチレンの配位ができるバナジウム錯体であり、かつ、そのバナジウム錯体は、エチレンの挿入するV-Etを有するので「反応性である少なくとも1つのシグマ結合」を有している。
したがって、刊行物2に記載された発明は、訂正発明1の中で除かれている「遷移金属がバナジウムであり、かつ補助配位子が=Oである組み合わせの組成物」に相当する。
したがって、訂正発明1は刊行物2に記載された発明ではない。

訂正発明2と刊行物2に記載された発明とを対比すると、上記したように、刊行物2に記載された発明における物質組成物は、[CpV(=O)Et]+[AlCl4]- の構造を有する錯体を含むものと認められるので、後者の「Cpと=O」、「V」、「Et」及び「[AlCl4]-」は、それぞれ前者の「L3及びL4」、「G」、「X」及び「J-m」に相当し、後者はc=3、n=5、p=1、q=1,m=1であるから、前者の「c+2=n、p×m=q」を満たしている。
すると、刊行物2に記載された発明は、式[{(L3)(L4)}-cGn(X)]q+1[J-m]p において、Gがバナジウムであり、かつL3又はL4が=Oである組み合わせである場合に相当し、これは、訂正発明2の中から除かれているのであるから、訂正発明2は刊行物2に記載された発明ではない。
訂正発明3は、訂正発明1または訂正発明2に係る組成物を用いてポリオレフィンを製造する方法であるから、訂正発明1および訂正発明2と同様の理由により、訂正発明3は刊行物2に記載された発明ではない。

<特許法29条第2項違反について>
刊行物1〜4を合わせて考慮しても、刊行物1〜2に記載された発明以外の訂正発明1〜2に含まれる物質組成物をオレフィン重合用触媒として用いることは記載されておらず、また、示唆もされていない。
そして、訂正発明1〜2は、請求項1〜2に記載の物質組成物とすることにより、特許明細書に記載のオレフィン重合用触媒として有用であるという効果を奏する。
したがって、訂正発明1〜2は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
訂正発明3は、訂正発明1または訂正発明2に係る物質組成物を用いてポリオレフィンを製造する方法であるから、訂正発明1および訂正発明2と同様の理由により、訂正発明3は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、訂正発明1〜3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正発明1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遷移金属オレフィン重合触媒
【発明の詳細な説明】
発明の分野
本発明は、活性遷移金属中心が高酸化状態にあり、低配位数ポリアニオン補助(ancillary)配位子系により安定化された、5乃至10族からの遷移金属重合触媒系及びその触媒系の使用及びその触媒系を製造する方法及び用いる方法に関する。
発明の背景
オレフィンの重合用の従来のチーグラー・ナッタ系触媒は1950年代から公知であった。一般的に、それらの触媒は、遷移金属ハロゲン化物化合物、特にチタン及び塩化物の1つとアルキル金属助触媒、特にアルキルアルミニウム助触媒を含む。遷移触媒系は、一般的に、安定な状態反応器条件下で異なる重合物質(分子量コモノマー等)を製造する数種の化学的に区別される活性金属部位を含む。開発の後半の30年間には、従来のチーグラー・ナッタ触媒は、効果的になり、種々の商業的に重要なポリオレフィンへの低コスト経路を供給するが、さらに、分子量分布(MWD)、組成分布(CD)、末端基官能価、序列分布及び極性コモノマー相溶性のような主要なポリマー構造のパラメーターの制御における改良がなお必要とされている。
チーグラー・ナッタ系を改良するための最近の進歩は、可溶性の単一部位を有する、従来の触媒に用いられるハロゲン化物配位子が、シクロペンタジエニル(Cp)誘導体のような嵩高の有機補助配位子系に置換された、遷移金属前駆体から誘導されたオレフィン重合触媒の製造に向けられていた。単純なハロゲン化物配位子と異なり、嵩高の補助配位子系は重合中の除去又は改変に対して影響を受けやすくなく、触媒の単純な形態を安定化し、触媒中心の特性を変えるのに合理的なように修飾されることができる。ビス-及びモノ-Cpで安定化された4族の金属前駆体及びアルモキサンから誘導された高活性の触媒系の開発に関しては、現在、詳細に記載されている。助触媒(及び従って得られる触媒)は、アルキルアルミウム配位子の化学的に複雑な混合物であるにもかかわらず、活性触媒は、一般的に単一部位の触媒として挙動し、狭いMWDのポリオレフィンを製造する。
その技術における最近の進歩は、よく定義された(別個の)、補助配位子で安定化された単一部位の、3族及び4族の遷移金属のオレフィン重合触媒の開発をもたらした。それらの系は、アルキルアルミニウム助触媒に依存しておらず、コスト及び生成物多用性に関する改良をもたらす。3族及び4族に基づくモノーCp及びビス-Cpの個々の触媒の例は、

で表わされる。
中性の3族系は、Ballardらにより[J.Chem.Soc.Comm.(1978年)、994-995頁]及びBercawらにより[Organometallics、9巻(1990年)、867-869頁]製造されそして研究された。Bercawらによるこの分野における研究は、補助配位子の大きさが低減すると、中性の3配位系は、二量化され、不活性の4配位系を形成する。立体的に自己二量化を防ぎ、触媒活性を維持するための嵩高のCp配位子の使用は成功をおさめたが、得られた系は、しばしば立体的に妨げられすぎて、より大きなオレフィンモノマーの組み込みをさせない。
同構造のそして同等電点の区別されるモノ-及びビス-Cp系4族カチオン系の発見について欧州特許出願公開(EPA)277,003号及び欧州特許出願公開277,004号、PCT出願公開WO92/00333号及び欧州特許出願公開418,044号に記載されている。それらのカチオン系は、補助配位子系によって安定化されており、特定の企図された相溶性の非配位アニオンの塩として単離される。欧州特許出願公開277,003号及び277,004号に記載されているように、相溶性の非配位アニオンの開発は、それによって高度に反応性の配位結合的に(coordinatively)不飽和の有機金属カチオンが生成され単離され得る方法をもたらすのでその分野において主要な進歩であった。イオンの4族触媒は有機アルミニウムで活性化された系において、より大きな分子量、増大された分子量分布及び組成分布制御を有するポリマーを生成するという点について非常に改良されたが、改良された熱安定性、生成物多用性及び極性官能価に対する耐性を有する触媒を供給する必要が存在する。
特に化学的安定性(例えば空気安定性)及び極性官能価に対する耐性について改良された単一部位のオレフィン重合触媒に対する必要性は明らかである。それらの特性における改良によって、モノマー供給原料における不純物の、より多量を許容でき、極性のコモノマーをポリオレフィン主鎖に組み込むことができる触媒を生成する。この理由のために、より後の遷移金属から成るオレフィン重合触媒を開発するのが望ましい。エチレンの重合に対する最もよく研究され、よく明確にされた後半の金属触媒は、Brookhart及び共同研究者によって開発された[J.Am.Chem.Soc.(1985年)、107巻、1443-1444頁]。これらの系、Cp*Co(L)R+BX4-は、配位子、Cp*、中性の供与された結合配位子、L、及び、金属中心に硼酸塩アニオンBX4-によって平衡が保たれた電荷を有する反応性シグマ結合アルキルを含有するカチオンコバルト(III)から成る。それらの触媒系はいくつかの潜在的な利点を与えるが、特に極性官能価を有する相溶性に関してそして非常に狭い分子量分布の生成にとって、それらは非常に低い活性という欠点を有し、金属原子当り単一のポリマー鎖のみを生成する。最終点は、活性と、選択性及びより後の金属系の官能基耐性を有するカチオンの4族系の生成を組み合わせる重合触媒を開発することである。
発明の概略
本発明は、遷移金属が高酸化状態にあり、低配位数補助配位子系によって安定化されている5乃至10族遷移金属重合触媒、それらの使用、それらを製造する方法及びそれらを用いる方法に関する。その触媒は、少なくとも1つの反応性の金属-配位子シグマ結合を有し、低配位数ポリアニオンの補助配位子系によりそして相溶性の非配位アニオンによってバランスがとれた電荷によって安定化されている、配位結合的に不飽和のカチオン遷移金属錯体から成る、イオン対である。ただし、遷移金属がバナジウムであり、かつ補助配位子が=Oである組み合わせの化合物を除く。その触媒の前駆体、遷移金属錯体を含む中性の低配位数補助配位子は、メチルアルモキサン又はB(C6F5)3のようなルイス酸活性剤を用いて又は反応性のカチオン及び相溶性の非配位アニオンを含むイオン交換剤により活性のイオン触媒に変換され得る。本発明は、より特定すると、2乃至20の炭素原子を有するポリオレフィンの生成のためのオレフィン重合触媒として有用な組成物に関する。
本発明の好ましい触媒は、
[{(L3)(L4)}-cGn(X)]q+1[J-m]p
(式中、Gは、形式最高酸化状態である5又は6族遷移金属、nはその金属の族の数、L3及びL4は同じか又は異なり、置換された又は置換されていない嵩高の、金属と共有結合されたアニオン補助配位子であり、cは補助配位子系{L3L4}における陰電荷を表わし、c+2=n、Xは、水素化物基、ヒドロカルビル基、ハロゲン置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、ヒドロカルビル置換有機メタロイド基、ハロカルビル置換有機メタロイド基から選ばれる一陰性の(uninegative)配位子であり、Jは電荷-mの相溶性の非配位アニオンであり、pはJアニオンの数であり、qは+1カチオンの数であり、p×m=qである)で定義されたカチオン5族又は6族遷移金属錯体を含むイオン対である。ただし、Gがバナジウムであり、かつL3又はL4が=Oである組み合わせの化合物を除く。
Jは、好ましくは、アニオンが嵩高で不安定で、遷移金属化合物を安定化することができる、共有的に配位され、中心電荷保有金属又はメタロイド原子を防護する、複数の親油基を有する単一のアニオン配位錯体であり、
Jは、式、M[Q1Q2…Qn]d-
(式中、Mは、金属又はメタロイド、Q1乃至Qnは個々に、水素化物基、架橋又は非架橋ジアルキルアミド基、アルコキシド及びアリールオキシド基、ヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基及び置換ハロカルビル基、ヒドロカルビル-及びハロカルビル-置換有機メタロイド基であり、1つより多くはないいずれかのQ1乃至Qnがハロゲン化物基であってもよく、nはQ配位子の総数であり、dはアニオンにおける総電荷を表わす整数である)で表わされ得る。
遷移金属成分又は触媒前駆体は、
{(L3)(L4)}cGnX2
(式中、Gは、その最高の酸化状態(d0)である5族又は6族遷移金属であり、L3及びL4は、嵩高の、形式アニオン電荷の合計がcに等しいような補助アニオン配位子であり、c+2=nであり、Xは、水素化物基、ヒドロカルビル基、ハロゲン置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、ヒドロカルビル置換有機メタロイド基、ハロカルビル置換有機メタロイド基から個々に選ばれる一陰性の(uninegative)配位子であり、nは金属の族の数である。ただし、Gがバナジウムであり、かつL3又はL4が=Oである組み合わせの化合物を除く。)
によって定義される第一成分と
少なくとも1つの配位子、Xと不可逆的に反応し、5族又は6族化合物に含まれるカチオン及び相溶性の非配位アニオンを含むイオン交換化合物を含む第二成分とから成る。
その代わりとして、遷移金属化合物は、配位子Xを抜き取り、相溶性の非配位アニオンを生成することができるルイス酸と反応され得る。
記載した組成物は、オレフィン重合用触媒として使用する前に担体上に置かれそして任意に予備重合され得る。
発明の詳細な記載
公知の単一部位のオレフィン重合触媒の主な特徴には、三角形の環境内での配位結合的に不飽和の求電子性の金属中心、活性シグマ結合置換体、好ましくはアルキル、及びシグマ結合配位子に隣接した(シス)少なくとも1つの空いている軌道関数が含まれる。1組の不活性の補助配位子は、重合中、金属中心の適当な求電子性及び立体的環境を確立しそして維持するためにそれらの系に存在している。補助配位子は、重合に関与しないが、単一又は多重の結合によって金属に共有的に結合されている配位子であると定義される。補助配位子は、区別され良く定義されたように一般的に有機及び/又は無機部分から成り、好ましくはおよそ50amu(原子質量単位)又はそれより大きい分子量を有する。補助配位子の基本的例は、Cp基である。先きに定義したオレフィン重合触媒の特徴を含む中性の錯体は、非常に大きい補助配位子が存在しなければ、自己二量化に関して不安定である。重合触媒の先きに定義した基準に合う荷電した金属錯体は自己二量化を防ぐために嵩高の補助配位子を必要としない。二量化を制御するために立体的力よりも静電力を用いる方がそれらのイオン種の、より大きなオレフィン基質とのずっと大きな反応性が見込まれる。
それらの系における金属中心の電子の性質は、触媒の最大の反応性を決定することにおいて臨界的である。初期の遷移金属では、最も高い可能な形式酸化状態の錯体(d0錯体)が好ましい。Brookhartのコバルトの錯体のような後期の金属系では、最も高い形式酸化状態は、接近不可能である。それらの系では、接近可能な最も高い酸化状態が望ましい。それらの系の金属中心における残存している電子密度は、その系を極性の官能価に対してより耐性にするが連鎖終結の速度に比べて連鎖生長反応の速度を遅くさせ、ある場合には、それによって低分子量ポリマーを生成する。それらの系における高分子量のポリマーの生成は、金属中心での電子密度の注意深い平衡を要求する。
4族よりも後の金属系の独特の特徴を獲得する挑戦は、配位結合的に不飽和のままである、より高い酸化状態の錯体を構築することにある。本発明は、4族より大きな群の遷移金属に基づくオレフィン重合触媒の構築用の低配位数のポリアニオン配位子に基づく配位子系の設計と使用に関する。低配位数のポリアニオンの補助配位子(LCPALs)は、それらが占める部位の数よりも、より大きな形式陰電荷を有する補助配位子として定義される。系として、それらの配位子は、その金属上における占有部位を満たすより大きな程度まで金属中心を酸化する特有の特性を有し、従って高酸化状態及び低配位数を維持する方法を提供する。
本発明の単一部位のオレフィン重合触媒は、少なくとも1つの反応性金属-配位子シグマ結合を有し、低配位数のポリアニオンの補助配位子系により安定化されている配位結合的に不飽和の周期表(Grant & Hackh’s Chemical Dictionary、5版(1987年)、433頁)5族乃至10族からのカチオン遷移金属錯体である。その補助配位子系は、最少数の配位部位(好ましくは2)を用いて高酸化状態にその金属を安定化するように設計されている。本発明において用いられ得るポリアニオン配位子の例示的で限定するものではない例としては、t-ブチルイミド及び2,6-ジイソプロピルイミドのような嵩高のイミド及びC2B9H112-及びCB10H113-のようなカルボライド(carbolides)が含まれる。そのポリアニオン配位子は、単独で又は従来のモノアニオン補助配位子(Cp誘導体、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、ホスフィド等のような)又は中性の補助配位子(ホスフィン、アミン、カルボニル等のような)と共に用いられ得て、補助配位子系を生成する。その他に、カチオン遷移金属錯体は、置換可能なルイス塩基配位子によって安定化され得る。カチオン遷移金属錯体は、活性金属中心に弱く配位され、それによって十分に不安定であり、オレフィンのような中性のルイス塩基により置換される相溶性の非配位アニオンによって電荷がバランスが取れている。本明細書に記載されているように、用語「相溶性の非配位アニオン」は特に、空白な配位部位の大きさに比較して嵩高であり、陰性に荷電されたフラグメントをカチオンへ移送して中性の副生物を生成するような、活性金属中心との化学的反応に対して耐性があるアニオンをいう。本発明のカチオンの例示的で限定的ではない例には、(C5Me5)(C2B9H11)TaCH3+(式中、Meはメチルである)及び(C5Me5)(RN)TaCH3+(式中、Rはアルキル又はアリールである)のようなd05族系、(C2B9H11)2WCH3+及び(RN)2WMe+のようなd06族系、(C2B9H11)(CB10H11)ReMe+のようなd07族系、(CB10H11)2OsMe+のようなd08族系及び、(C2B9H11)(Ph3P)NiCH3+(式中、Phはフェニルである)のようなd010族系及びそれらのルイス塩基付加物が含まれる。
本発明の活性触媒は、種々の活性化方法を用いてポリアニオン配位子系を含む中性の遷移金属前駆体から製造され得る。活性触媒を生成するための一つの一般的な方法は、中性の前駆体に、陰性に荷電された配位子(又は電子)を中性の遷移金属前駆体から除去することができるカチオン及び相溶性の非配位アニオンを含むイオン交換化合物を反応させることに関する。他の試みは、B(C6F5)3のような別個のルイス酸共活性剤を中性遷移金属前駆体とともに用い、遷移金属前駆体からアニオン非補助配位子を除去し、活性触媒カチオン及び、アニオン非補助配位子に配位されたルイス酸から成る非配位アニオンを生成することに関する。一般に、アルモキサン、好ましくはメチルアルモキサンを中性の遷移金属前駆体と組み合わせて用いて活性触媒を生成することができる。それらの試みの、より詳細な記載は以下に記載する。
好ましい態様
本発明の好ましい触媒は、(1)2つの補助安定化配位子、(2)金属炭素又は水素化物結合のような1つの反応性シグマ金属-配位子結合、(3)その最高の形式酸化状態(d0)である金属中心及び(4)遷移-金属中心における+1の総形式電荷の一般構造特徴を有する5族及び6族の遷移金属触媒である。好ましい触媒は、式(1)、
[{(L3)(L4)}-cGn(X)]q+1[J-m]p (1)
(式中、Gは、最高の酸化状態にある5又は6族遷移金属、nはその金属の族数、L3及びL4は同じか又は異なり、置換された又は置換されていない、金属に共有結合されたアニオン補助配位子であり、Xは、水素化物基、ヒドロカルビル基、ハロゲン置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、ヒドロカルビル置換有機メタロイド基から選ばれる一陰性の(uninegative)配位子であり、cは補助配位子系{(L3)(L4)}における電荷を表わす整数であり、c+2=nであり、Jは電荷-mの相溶性の非配位アニオンであり、pはJアニオンの数、qは+1カチオンの数であり、p×m=qである)
によって表わされるイオン対を含む。ただし、Gがバナジウムであり、かつL3又はL4が=Oである組み合わせの化合物を除く。
上記の式で与えられる任意のX配位子は好ましい選択である。例えば、パイ又は多重結合特性をほとんど又は全く有しない単一の金属-配位子シグマ結合を形成するすべてのX基である他のX配位子の選択も本発明の触媒用に適している。従って多重結合特性を有しない単一のシグマ結合によって金属に結合されている、上記の式中に列挙されたもの以外の金属X配位子を含む金属錯体は本発明において実施可能であり、包含される。
{L3L4}から成る補助配位子系は、低配位数のポリアニオン配位子系であり、そのために{L3L4}の総アニオン電荷がその配位子系が占める配位部位の数よりも大きい。当業者は、補助配位子について5族触媒が上記のように1つの二アニオンLCPAL、1つの一陰性(uninegative)補助配位子及び1つの一陰性配位子Xから成るであろうことを認識するであろう。同様に、6族金属触媒が2つの二アニオンLCPAL及び1つの一陰性配位子X又は1つの三アニオンLCPAL、1つの一陰性補助配位子及び1つの一陰性配位子Xから成る。
上記の基準に合う配位子の組を選択するための例示的ではあるが制限するものではない補助配位子の例としては、置換された又は置換されていないCp部分のような当業者によく良く知られた一陰性補助配位子、ビストリメチルシリルアミド、ビス-t-ブチルアミドのようなアミド、トリ-t-ブチルアルコキシドのような嵩高のアルコキシド、オキソ(=O)、スルフィド(=S)、イミド(=NR)、ホスフィド(=PR)、アルキリデン(=CR2)、シクロオクタテトラエニル(cyclooctatetraenyl)([C8H8-xRx]2-、ポルフィリン、フタロシアニン、コリン(corrin)及びその他のアニオン性ポリアザマクロサイクル(polyazamacrocycles)のような二アニオンLCPAL、カルボライド(例えば[C2B9H11]2-)、ビス(o-ヒドロキシフェニル)アルキル及び -アリールホスフィンオキシド(h3-(RPO(C6H4O)22-)及び、ボロライド(borollides)、ニトリド配位子(=N)、アルキリダイン(alkylidynes)(=CR)、三アニオンカーボライド(例えば[CB10H11]3-及び三アニオンコロール(corrole)のような三アニオンLCPAL類が含まれる。より高い原子価のLCPAL類は、遷移金属に結合することが知られており、本発明において用いられ得る。本発明の第一成分における補助配位子は、触媒前駆体として実施不可能とせずに広範囲の置換基種で置換され得る。例えば、参考として本明細書に組み込まれる本発明の用途に置換基のすべてが用いられ、本発明の第一の成分及び触媒の補助配位子を修飾するために用いられ得る。それらの置換基はさらに、それ自体が触媒毒ではないいずれの官能価でも修飾され得る。さらに、分子量により測定される置換基の大きさは、前駆体又は触媒の実施可能性に影響を与えることなく広範囲に変わり得て、従って本発明に包含され得る。
ボロライド配位子は、一般式(2)、
(C4RxH4-XBR´)2- (2)
(式中、Bはホウ素、Cは炭素、各R及びR´は個々に、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、置換ハロカルビル基、ヒドロカルビル置換有機メタロイド基、ハロカルビル置換有機メタロイド基、二置換15族基、置換16族基又はハロゲン基であり、2つの隣接するR基又は隣接するR及びR´基は結合され環状の置換基を生成し、xは0、1、2、3又は4である)で示される。
G.E.HerberichによるComprehensive Organometallic Chemistry、Pergamon Oxford、1巻、381-410頁(1984年)により開示されたようなボロライド二アニオンを製造する公知の方法には、アルカリ金属又はその混合物により中性ボロール(borole)前駆体の還元、低原子価遷移金属錯体の配位軌道(coordinationsphere)内の中性ボロール前駆体の還元及び、1-(ジアルキルアミノ)-2,5-ジヒドロボロールの脱プロトン化が含まれる。
例示的であり、限定するものではない相溶性の非配位アニオンの例には、ボラン、多核ボラン、カルボラン、メタラカルボラン、ポリオキソアニオン及びアニオン配位錯体は、文献によく記載されている(本明細書に参考として組み込まれる欧州特許出願公開(EPA)277,003号、欧州特許出願公開277,004号、欧州特許出願公開520732号を参照)。本明細書に参考として組み込まれる米国特許第5,198,401号には、相溶性の非配位アニオン及びアニオン配位錯体が記載され、優れた対アニオンを設計することが教示されている。好ましい非配位アニオンは、共有的に配位されそして中心電荷保有金属又はメタロイド原子を防護する複数の親油性基を含み、そのアニオンは、嵩高で不安定であり遷移金属カチオンを安定化することができる。アニオン配位錯体は、下記式(3)、
M[Q1Q2…Qn]d- (3)
(式中、Mは金属又はメタロイド、Q1乃至Qnは個々に、水素化物基、架橋又は非架橋ジアルキルアミド基、アルコキシド基及びアリールオキシド基、ヒドロカルビル基及び、置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基及び置換ハロカルビル基及び、ヒドロカルビル-及びハロカルビル-置換有機メタロイド基であり、Q1乃至Qnの1つより多くはないいずれかがハロゲン化物基であってもよく、nはQ配位子の総数であり、dはアニオンにおける総電荷を表わす整数である)で表わされ得る。
最も好ましい相溶性の非配位アニオンは、ホウ素に配位された少なくとも3つのペルフルオロフェニル基を含み、式、B(pfp)3Q1-(式中、pfp=C6F5)により表わされる。
式(1)で定義される触媒組成物は、第一成分合成の副生物として存在し得るルイス塩基配位子と反応でき又は触媒中に添加され(1)の配位錯体を生成し得る。得られた配位錯体は、一般的にオレフィン重合用の活性触媒であるが、この触媒の活性及び/又は能力はルイス塩基の選択によって変わり得る。
記載された5族又は6族の遷移金属触媒は、溶液、スラリー、凝集相、高圧又は気相重合方法又はそれらの組み合わせにおいて用いられ得て、高分子量、高コモノマー含量及び/又は狭い分子量分布のポリオレフィンを製造する。
触媒製造
触媒は、好ましくは、少くとも2つの成分、第二のイオン化活性剤成分(第二成分)と反応することができる少なくとも1つの配位子を含む5族又は6族遷移金属含有成分(第一成分)を組み合わせることにより製造できる。遷移金属成分又は触媒前駆体は、下記式(4)、
{(L3)(L4)}cGnX2 (4)
(式中、Gは、最高の酸化状態(d0)にある5族又は6族遷移金属であり、L3及びL4は、嵩高の、形式アニオン電荷の合計がcに等しいような補助アニオン配位子であり、c+2=nであり、Xは、水素化物基、ヒドロカルビル基、ハロゲン置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、ヒドロカルビル置換有機メタロイド基、ハロカルビル置換有機メタロイド基から個々に選ばれる一陰性の(uninegative)配位子であり、nは金属の族数である。ただし、Gがバナジウムであり、かつL3又はL4が=Oである組み合わせの化合物を除く。)
で表わされる第一成分と
5族又は6族金属化合物に含まれる、少なくとも1つの配位子、Xと不可逆的に反応するカチオン及び相溶性の非配位アニオンを含むイオン交換化合物から成る第二成分
から成る。
式(4)で定義される構造を有する第一成分の製造は、L3及びL4の選択に依存する。一般的に、本発明の一価及び多価の補助配位子を含む遷移金属錯体を製造する合成方法は、本技術分野において知られており、望ましい第一成分の合成に適用できる。一般的な製造においてL3、L4又はL3L4のリチウム塩は、有機溶媒中で最高酸化状態の金属ハロゲン化物と結合される。1族塩又は2族塩のグリニャードのような他の従来の塩が用いられ得る。イミドが用いられる場合のようなある場合には、リチウム塩の試みは理想的ではなく、標準の「イミド」連鎖移動反応が用いられ得る。一般的に、本発明の補助配位子は公知の方法により製造され得る。
遷移金属前駆体(4)を触媒として活性なイオン対(1)に変換するのに有用な第二成分は、式(5)、
M[Q1Q2…Qn]d- (5)
(式中、Mは、金属又はメタロイド、Q1乃至Qnは個々に、水素化物基、架橋又は非架橋ジアルキルアミド基、アルコキシド基及びアリールオキシド基、ヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基及び置換ハロカルビル基及び、ヒドロカルビル-及びハロカルビル-置換有機メタロイド基であり、1つより多くはないいずれかのQ1乃至Qnがハロゲン化物基であってもよく、nはQ配位子の総数であり、dはアニオンにおける総電荷を表わす整数である)
で定義されたイオン交換剤又は式(6)、
M´(Q)r (6)
(式中、M´は最高酸化状態の金属又はメタロイドであり、rはQ配位子の数を表わし、Qは水素化物基、ジアルキルアミド基、アルコキシド及びアルコキシド基、ヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基及び置換ハロカルビル基及び、ヒドロカルビル-及びハロカルビル-置換有機メタロイド基から成る群から選ばれる)
で定義される非常に明確に定められたルイス酸である。M´は好ましくはホウ素であり、Qは好ましくはC6F5である。
第一成分及び第二成分の化合時に、第二成分又は少なくともその一部は、第一成分の配位子の1つと反応し、それによって遷移金属カチオン及び、第一成分から生成される遷移金属カチオンと相溶性である上記のアニオン、Jから成るイオン対を生じる。アニオンは、一般的に遷移金属カチオンの触媒として機能する能力を安定化することができ、一般的に非配位でなければならないか又は、重合中にオレフィン、ジオレフィン又はアセチレン性不飽和のモノマーにより置換されるのに十分に不活性でなければならない。
式(4)で表わされる触媒前駆体は、式(1)で表わされる活性の触媒に、前駆体の性質及び配位子Xに依存して数種の経路により変換され得る。そのような方法の例示的なしかし限定するものではない例を以下に開示する。
第一の方法は、第一成分(4)を第二成分[Ct]m[J]m-(式中、カチオンCtは式(1)のイオン対の生成中に還元される酸化剤である)と接触させる。Ctは、第一成分のX配位子又は電子と反応性のカチオンである。これに用いられる好ましい第二成分には、[Cp´2Fe]+[J]-及びAg+[J]-(式中、Jは上記のようにB(pfp)3Q1である)が含まれる。より反応性の小さい第一成分としては、より高度に酸化させるカチオンが用いられ得る。この試みは、低酸化力を有する第一成分で有用である。
第二の方法は、第二成分として、下記の一般式(7)、
[LH]+m[J-m] (7)
(式中、[LH]は電荷+1のブレーンステッド酸であり、Lは中性のルイス塩基であり、Jは相溶性の非配位アニオンであり、mはJの電荷及び[LH]カチオンの数を表わす)
を有する相溶性の非配位アニオンのブレーンステッド酸塩を用いる。2つの成分を適する溶媒(脂肪族又は芳香族溶媒が好ましい)中で化合させる場合、カチオンの酸プロトンが第一成分のX配位子の1つと反応し、非反応性中性生成物(X-H)、溶液中に残存するかまたは金属カチオンに弱く結合する中性ルイス塩基L及び、式(1)により定義される組成物を遊離する。この試みは一般的に、水によって加水分解されるX配位子を有する第一成分に有用である。酸プロトンを有するブレーンステッド酸塩は、水によって分解するのに対して抵抗性である第一成分に関して好ましい。第二成分のカチオンとして有用なブレーンステッド酸カチオンの例には、アンモニウムイオン(R3NH+)、ホスフォニウムイオン(R3PH+)及びオキソニウムイオン(R2OH+)が含まれる。
第三の方法は、相溶性の非配位アニオン触媒前駆体のルイス酸塩を式(4)の第一成分と反応させる。第二成分のカチオンとして有用なルイス酸カチオンの例には、[Cp2MMe(NR3)]+(式中Mは4族金属である)のような反応性遷移金属カチオン、[CPh3]+及びトロピリウム(tropylium)のような反応性カルボニウムイオン及び、[ZnMe]+のような有機金属主族カチオンが含まれる。
第四の試みは、非常に明らかに定められた中性ルイス酸第二成分に式(4)で定義された第一成分を反応させることに関する。中性ルイス酸第二成分は、一般的に式(6)により定義される。好ましいルイス酸は、B(pfp)3である。中性のルイス酸は、陰性に荷電したX配位子を第一成分から除去し、活性の遷移金属カチオン及び相溶性の非配位アニオン(例えば、B(pfp)3を用いるときに、非配位アニオンは、B(pfp)3X-である)を生成する。一般的に、その配位子系上の電子引き抜き基を導入することによって第二成分のルイス酸度が増すことによって、より広範囲の第一成分を活性化できる、より強力な共活性剤(coactivators)にする。
式(4)により定義された第一成分に依存しない、本発明の触媒の製造に関するその他の試みには下記の2つの一般的な方法が含まれる。
第一の方法は、酸化カチオンを含む第二成分に式(8)、
{(L3)(L4)}-cGnX (8)
(式中の記号は、たった1つのX配位子があり、金属はn-1の酸化状態(d1)であることを除いて式(4)に定義された通りである)
で定義された第一成分を反応させることに関する。これに用いられる好ましい第二成分の例には、[Cp´2Fe]+[J]-、Ag+[J]-(式中、Jは上記のようにB(pfp)3Q1である)が含まれる。
その他の一般的な方法は、カチオン中心の生成に続いて1つ以上の安定化補助配位子を金属中心に添加することに関する。例えば、C2B9H13及び[Cp*TaMe3]+[J]-の等モル量の反応により[Cp*(C2 B9H11)TaMe]+[J]-(式中、Cp*は置換又は非置換Cp基である)の生成をもたらす。
式(4)の第一成分を活性化するその他の一般的な方法は、下記式、
(R3-Al-O)s (9)
R4(R5-Al-O)s-AlR62 (10)
により定義される加水分解されたルイス酸の使用に関する。xには、ハライド、アルコキシド、アミド、ホスフィドが含まれる。
当業者には、アルモキサンが助触媒のときに第一成分における広範なX基が用いられ得ることが明らかであろう。
アルモキサン又はその誘導体を表わす一般式(9)及び(10)において、Oは酸素、R3、R4、R5及びR6は、個々にC1乃至C6のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル又はペンチルであり、sは1乃至50の整数である。より好ましくは、R3、R4、R5及びR6は各々メチルであり、sは少なくとも4である。アルモキサンの製造においてハロゲン化アルキルアルミニウムが用いられるときは、1つ以上のR3-6基はハロゲン化物である。
現在よく知られているように、アルモキサンは、種々の方法により製造され得る。例えば、トリアルキルアルミニウムを湿った不活性の有機溶媒の形態で水と反応させ又はトリアルキルアルミニウムを、不活性有機溶媒中に懸濁された水和硫酸銅のような水和塩と接触させ、アルモキサンを生成する。
本発明の触媒に用いられ得る適するアルモキサンは、トルメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウムの加水分解によって製造されるものである。使用のための最も好ましいアルモキサンは、メチルアルモキサン(MAO)である。4乃至25(sは4乃至25)の平均オリゴマー化度を有するメチルアルモキサンが最も好ましく、1:1乃至106:1のMAO対遷移金属成分のモル比で用いられる。
一般的に、本発明の触媒は、適する溶媒中又は希釈剤中で-100℃乃至300℃の温度で第一成分と第二成分とを化合させることにより製造することができる。その触媒は、2以上の炭素原子を有する環状オレフィン、α-オレフィン、ジオレフィン及び/又はアセチレン性不飽和モノマーを含むオレフィンを単独で又は他のモノマー又はモノマー混合物と組み合わせて重合するのに用いられ得る。一般的に、その重合は、本技術分野で公知の条件で達成されることができる。当然、それらの成分が直接重合工程に添加されそして濃縮されたモノマーを含む、適する溶媒又は希釈剤が上記重合工程で用いられる場合、触媒はその場で生成されるのがよい。しかし、触媒を重合工程に添加する前に、触媒を適する溶媒中又は希釈剤中で別の工程で生成することが好ましい。2つの成分の反応に好ましい温度は、-30℃乃至100℃であり、15秒乃至60分間の保持時間を用いる。その触媒は、自然発火し得る種、特にメチルアルモキサンを含み得て、窒素、アルゴン又はヘリウムのような不活性雰囲気中で処理され移動させなければならない。
上記のごとく、本発明の改良された触媒は好ましくは、適する溶媒又は希釈剤中で製造される。適する溶媒又は希釈剤には、モノマーの重合において有用であると先行技術において公知のすべての溶媒が含まれる。従って、適する溶媒には、イソブタン、ブタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンのような直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサンのような環状及び脂環脂肪族炭化水素及び、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族及びアルキル置換芳香族溶媒が含まれるが、それらに限定されない。適する溶媒には又、エチレン、プロピレン、ブタジエン、シクロペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、1,4-ヘキサジエンを含む、モノマー又はコモノマーとして作用し得る液体オレフィンが含まれる。
ポリマー粒度及び分布のより大きな制御及び気相重合方法との適合性を達成するために、米国特許第4,701,432号、5,006,500号、5,008,228号に記載されているように、又PCT出願公開WO91/09882号に記載されているように、触媒を適する不活性物質上に担持し得る。担持された触媒は任意にオレフィンモノマーで予備重合され得る。
このように本発明及びその好ましい態様を広範に記載したが、下記の実施例を参照することによってさらにより明らかになるであろう。しかし、実施例は例示の目的でのみ提示されており、本発明を限定するものとして解釈するべきではない。すべての実施例を乾燥させた、酸素がない雰囲気中及び溶媒中で行い、分子量は重量平均分子量として報告され、MAOはシェーリングカンパニー(オハイオ州、ダブリン)から購買した。
参考例
第一成分の合成:不活性雰囲気中で三塩化酸化バナジウム(2.75g)をジクロロメタン(100ml)中に溶解させ、トリス(ピラゾリル)ホウ酸カリウム(2.0g)をゆっくりと添加した。暗いオレンジ色から紫色に変わったその混合物を一晩攪拌させた。揮発物を真空中で除去した。70:30のペンタン/ジクロロメタン混合物を添加し、固体を回収し、洗浄水が無色になるまでペンタンで洗浄し、乾燥させた。収量:3.28g。その固体の1HNMRスペクトル(CD2Cl2)は、反磁性固体、トリス(ピラゾリル)ボラートバナジウムオキシドジクロライド(tris(pyrazolyl)borato vanadium oxide dichloride)であることを示した。1gの試料を沸騰するトルエン(60ml)に溶解し、濾過し、濾液を真空中で減少させた。ジクロロメタン-ペンタンからの結晶化により0.45gの生成物を得た。
エチレン重合:予め窒素でパージした1l容のステンレス鋼のオートクレーブにメチルアルモキサンの9.5重量%のトルエン溶液5mlを添加した。次に乾燥した脱酸素化ヘキサン400mlを添加し、続いて参考例の触媒(30mg)のトルエン中(5ml)溶液を添加した。オートクレーブの内容物を攪拌し、60℃に加熱し、エチレン(200psi)(13.6atm)で加圧した。30分後、オートクレーブを冷却し、ガス抜きをした。生成したポリエチレンを濾過により単離し、乾燥した。収量:16g。
実施例1
エチレン重合:金属成分として、Maattaらにより報告された方法(Journal of the American Chemical Society、109巻(1987年)、7408-7416頁)によって製造された(シクロペンタジエニル)バナジウム(p-トリルイミド)ジクロライドを用いてエチレンを参考例と同様に重合した。線状ポリエチレンの収量は5.8gであった。
実施例2
触媒合成:Cp*(C2B9H11)TaMe2(式中、MeはCH3であり、Cp*はC5Me5)の製造:Cp*TaMe4(1.0g、2.6ミリモル、公知の文献の方法により製造された)とC2B9H13(0.36g、2.6ミリモル、公知の文献方法により製造された)を化合させ、トルエン中で室温で30分間攪拌した。溶媒を真空で除去すると固体の黄色の生成物が残った。その粗生成物をトルエンで抽出し、濾過し、結晶化時点まで濃縮した。その黄色の結晶生成物を濾過により単離し、真空内で乾燥させ、0.4gのCp*(C2B9H11)TaMe2(NMRスペクトルで特徴付けられた)を得た。
エチレン重合:ステンレス鋼のオートクレーブ反応器にヘキサン(400cc)、Cp*(C2B9H11)TaMe2(10mg)とメチルアルモキサン(5ml、1.6M)を入れた。反応器を40℃に加熱し、エチレンの200psig(13.6a tm)(14bar)で加圧した。反応器を30分間攪拌し、ガス抜きをした。この操作により1.5gの高分子量ポリエチレンを得た。
実施例3
触媒合成:(C2B9H11)W=NArMe(Cl)の合成:出発物質、W=NAr(Me)3Cl(式中、Arは2,6-ジメチルベンゼン)を公知の文献の方法により製造した。30mlのトルエン中のW=NAr(Me)3Cl(1.8g、5ミリモル)と(C2B9H13)(0.7g、5ミリモル)の混合物をN2雰囲気下で65℃に加熱した。48時間後、トルエンを減圧下で除去すると油状の赤い残渣を生じた。粗生成物をペンタンで洗浄し、ガラスフリットを通して濾過し、暗赤色の固体を得た(収量:1.2g、53%)。
エチレン重合:触媒溶液を使用直前に製造した。30mgの(C2B9H11)W=NAr(Me)(Cl)(Et2O)の溶液及び3.0mlの10%MAOトルエン溶液をトルエンで10mlに希釈した。150-200psi(10.2-13.6a tm)(14bar)で40-50℃で250mlのトルエンを用いて11容のオートクレーブ反応器で重合を行った。25分後、反応器をカス抜きした。線状ポリエチレンの収量は、Mwが1.1×106で1.8の多分散度を有して6.7gであった。触媒活性は、536gPE/gW・時間であると計算された。
実施例4
エチレン重合:実施例3で製造された(C2B9H11)W=NAr(Me)(Cl)(50mg)及び5.0mlの10%MAOトルエン溶液を含有する触媒溶液をトルエンで15mlに希釈した。80℃においてトルエンのエチレン飽和溶液(500ml)にその溶液を2.0又は3.0mlのインクレメントにおいて重合の初めの5分間に添加した。最初の圧力は200psi(13.6a tm)(14bar)であり、300psi(20.4a tm)まで増加させ、温度を90℃まで上昇させた。重合を25分間させた後に、反応器を冷却し、ガス抜きした。Mwが5.6×105で2.1の多分散度を有するポリエチレンの9.8gの収量を得た。
実施例5
プロピレン重合:370psi(25.2a tm)(26bar)で80mlのトルエンを用いて塊状重合を行った。掃去剤として作用するために最初に10%MAOのトルエン溶液3.0mlをオートクレーブ反応器に入れ、次に実施例3で製造した(C2B9H11)W=NAr(Me)(Cl)28mgの1mlトルエンでの溶液を供給した。全部で40分間の反応時間の間に40℃の温度を保った。Mwが2×104で5.2の多分散度を有するポリプロピレンの1.5gの収量を得た。
実施例6
触媒合成:W(=NAr)2(CH2SiMe3)2(式中、Arは2,6-ジイソプロピルベンゼン)の製造:W(=NAr)2Cl2を公知の文献の方法により製造した。0.40gのW(=NAr)2Cl2(0.70ミリモル)の20mlのEt2Oの溶液を-35℃に冷却した。ゆっくりと、Et2O中の1.0MのMe3SiCH2MgCl、0.70mlを冷却した溶液に注入し、その反応混合物を室温に暖めながら17時間攪拌させた。Et2Oを真空内で除去し、粗オレンジ固体をペンタンで抽出し、抽出物をセライトを通して濾過した。ペンタンを真空内で除去後、0.25gのオレンジのW(=NAr)2(CH2SiMe3)2を得た(収率:47%)。
エチレン重合:トルエン(500ml)を200psi(14bar、13.6a tm)の圧力下で80℃で1l容のオートクレーブ反応器にエチレンで飽和させた。W(=NiPAr)2(CH2SiMe3)2、42mgと10%MAOのトルエン溶液5.0mlをその2つの2.5mlのインクレメントで重合の最初の5分間に反応器に入れた。重合を全部で25分間行わせた。温度を一定な80℃に維持し、圧力を200乃至250psi(13.6乃至17a tm)(14-17bar)にした。乾燥した得られたポリマーの量は、10.1gであり、721gPE/gW・時間の触媒活性度を与えた。
実施例7
触媒合成:ジエチルエーテル中で室温においてMeMgIのCpNb=N(2,6-ジイソプロピルベンゼン)Cl2との反応によってCpNb=N(2,6-ジイソプロピルベンゼン)Me2を製造した。ジクロライドを公知の文献の方法で製造した。
エチレン重合:触媒溶液を使用直前に製造した。80mgのCpNb=N(2,6-ジイソプロピルベンゼン)Me2と89mgの[PhNHMe2][B(C6F5)4]の20mlのトルエンで溶液を調整した。150-200psi及び40-50℃で500m
lのヘキサンを用いて1l容のオートクレーブ反応器での重合を行った。20分後、反応器をガス抜きした。ポリエチレン(1HNMRにより測定された)をその反応混合物から分離した(収量:250mg)。
(57)【特許請求の範囲】
1.カチオンが低配位数のポリアニオン補助配位子系により安定化され、補助配位子は補助配位子が占める部位の数より大きな形式陰性電荷を有し、さらに重合に参加しないが単結合又は多重結合によって遷移金属に共有的に結合し、カチオンが少なくとも1つの相溶性の非配位アニオンでの電荷バランスによりさらに安定化される、遷移金属がd0酸化状態である、配位結合内に不飽和のカチオン5乃至10族遷移金属錯体を含み、前記遷移金属錯体が、反応性である少なくとも1つの金属配位子シグマ結合を有する(ただし、遷移金属がバナジウムであり、かつ補助配位子が=Oである組み合わせの組成物を除く)、オレフィン重合触媒として有用な物質組成物。
2.下記式、
[{(L3)(L4)}-cGn(X)]q+1[J-m]p
[式中、Gは、そのd0酸化状態にある5又は6族遷移金属、nはその金属の族の数、L3及びL4は、それらが占める部位の数よりも大きな形式陰性電荷を有する、同じか又は異なる、金属と共有結合された、置換された又は置換されていないアニオン補助配位子であり、Xは、水素化物基、ヒドロカルビル基、ハロゲン置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、ヒドロカルビル置換有機メタロイド基から選ばれる一陰性の(uninegative)配位子であり、cは補助配位子系{(L3)(L4)}における電荷を表わし、c+2=nであり、Jは電荷-mの相溶性の非配位アニオンであり、pはJアニオンの数、qは+1カチオンの数であり、p×m=qである(ただし、Gがバナジウムであり、かつL3又はL4が=Oである組み合わせを除く)]
で表わされるイオン対を含む、オレフィン重合触媒として有用な物質組成物。
3.2乃至20の炭素原子を有する1つ以上のオレフィンに、重合条件下で、請求項1又は2に記載の組成物を接触させることを含む、ポリオレフィンを製造する方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-02-15 
出願番号 特願平6-503411
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08F)
P 1 651・ 113- YA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小出 直也  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 佐野 整博
藤原 浩子
登録日 2003-02-14 
登録番号 特許第3398381号(P3398381)
権利者 エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク
発明の名称 遷移金属オレフィン重合触媒  
代理人 木村 博  
代理人 木村 博  
代理人 日野 修男  
代理人 山崎 行造  
代理人 山崎 行造  
代理人 日野 修男  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ