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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G01C
管理番号 1116147
異議申立番号 異議2003-73702  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-04-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2004-11-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3438728号「車両用道路関連情報事前提示装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3438728号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3438728号の請求項1に係る発明は、平成3年4月15日に出願された特願平3-80343の一部を平成13年7月26日に新たな特許出願としたものであって、平成15年6月13日にその特許権の設定がなされ、その後、異議申立人大西蓉子より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月22日に訂正請求がされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2.1 訂正の内容
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1について、「道路関連情報を記憶した地図記憶手段」を特許請求の範囲の減縮を目的として、「少なくとも道路切片の情報を含む道路関連情報を記憶した地図記憶手段」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1について、「車両が走行中の位置に対応した上記地図記憶手段の地図上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、」を特許請求の範囲の減縮を目的として、「車両が走行中の位置に対応した上記地図記憶手段の地図における道路上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、」と訂正する。
(3)訂正事項c
訂正事項aに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の段落番号【0005】1行目,【0041】1行目の「道路関連情報を記憶した地図記憶手段」をそれぞれ「少なくとも道路切片の情報を含む道路関連情報を記憶した地図記憶手段」と訂正する。
(4)訂正事項d
訂正事項cに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の段落番号【0005】2行目、【0041】2行目の 「車両が走行中の位置に対応した上記地図記憶手段の地図上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、」をそれぞれ「車両が走行中の位置に対応した上記地図記憶手段の地図における道路上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、」と訂正する。

2.2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張、変更の存否について
(1)訂正事項aについて
訂正事項aについては、特許請求の範囲に記載された「道路関連情報」に「少なくとも道路切片の情報を含む」という限定を加えるものある。この点に関して、特許明細書には直接の記載はないが、段落【0004】の「この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、道路地図データを基に車両の道路データ上の道路/切片/位置を検出推定する・・・」との記載及び段落【0014】の「近傍の道路のそれぞれについて、軌跡切片と道路切片それぞれの方位の標準偏差が演算され、」との記載から明らかなものと認められる。
したがって、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、明細書に記載した事項の範囲内において行うものであり、かつ特許請求の範囲の記載を拡張・変更するものではない。
(2)訂正事項bについて
訂正事項bについては、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「地図上の位置を推定する位置関連情報検出手段」に「地図における道路上の位置を推定する」との限定を加えるものである。この点に関しては、特許明細書の段落【0014】の「最新の位置に相当する地図上の近傍の道路の形状の相関係数(カッコ内省略)が演算され、その相関係数を基に、道路、道路上の位置、道路上の走行方向などが推定演算され、」に基づくものと認められる。
したがって、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、明細書に記載した事項の範囲内において行うものであり、かつ特許請求の範囲の記載を拡張・変更するものではない。
(3)訂正事項c、dについて
これらの訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項a,bに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との記載の整合を計るものであるから、明りょうでない記載の釈明と目的とするものと認められる。そして、これらの訂正事項により、特許請求の範囲の記載が拡張・変更するとも認められない。

2.3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.異議の申し立てについて
3.1 異議申立の概要
特許異議申立人は、「特許請求の範囲の請求項1に係る特許発明は、甲第1号証(下記、引用例1参照)に記載の発明と同一であり、もしくは該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、甲第3号証(特開昭61-190698号公報)に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項または第2項の規定に違反して特許されたものである。」旨主張している。

3.2 本件発明
上記2.3に記載のとおり、訂正が認められたから、本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】 少なくとも道路切片の情報を含む道路関連情報を記憶した地図記憶手段と、
車両の位置を検出し、車両が走行中の位置に対応した上記地図記憶手段の地図における道路上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、
やがて車両の到達が予測される道路に関する任意の意味情報を上記道路関連情報に基づいて求め、提示タイミングに至ったら、上記意味情報を提示する提示手段とを備え、
上記提示手段は、上記意味情報を到達が予測される該道路に上記車両が到達する前にリードして加工しておいた上で、提示タイミングに至ったら、該意味情報を提示することを特徴とする車両用道路関連情報事前提示装置。」

3.3 引用発明
取消理由で通知した引用例1(甲第1号証:特開昭62-98497号公報)には、以下の記載がある。
a.「もって常に余裕を持って所定点に関する情報を運転者に提供できるようにしたものである。」(1頁右欄6〜8行)
b.「第1図は本発明の車両用ナビゲーション装置のブロック図である。同図において1は地図情報を記憶する記憶手段としての画像ファイルであり、例えば、CD-ROM、ビデオディスク等により構成することができる。画像ファイル1には通常の地図情報と、その地図情報に含まれる主要な交差点に関する情報とが記憶されている。交差点に関する情報は、その交差点への進入路に対応する進入路毎の情報として記憶されている。」(2頁左上欄8行〜16行)
c.「センサ類5が現在位置を認識するのに必要な車両の走行速度、距離、方向等のデータを公知の方法により検知する。この検知されたデータが位置認識装置6に供給され、現在位置が認識される。演算装置3は位置認識装置6が認識した現在位置を含む地図を画像ファイル1から読出し装置2を介して読出し、主画像メモリ8に現在位置とともに記憶させる。このとき演算装置3はスイッチ10を主画像メモリ8側に切り換えているので、現在位置を含む地図が現在位置とともに表示装置11に表示されている。」(2頁左下欄1行〜11行)
d.「斯かる状態において演算装置3は、画面上に表示されている地図上の交差点のうち、情報が記憶されている主要な交差点と現在位置との距離を演算する。例えば第2図に示すように情報を記憶している交差点として交差点A乃至Fが画面上に表示されているとき、これら交差点と交差点Bから交差点Eに向かう途中の現在位置との距離が演算される。」(2頁左下欄12行〜19行) なお、この記載から、上記d.の様に演算装置により現在位置を含む地図に現在位置を表示する際、該車両の現在位置を道路上に定めていることは明かである。
e.「所定の距離l1以内に交差点があるときはその交差点の中から進行方向が一致し、かつ距離が最も短い交差点が検索され、選択される。」(2頁右下欄20行〜3頁左上欄2行)
f.「例えばいま車両が走行している方向が西北西(WNW)であるとき、WNWの記号を有する進入路イからの交差点の情報が画像ファイル1から検索、選択される。さらに選択した情報が既に副画像メモリ9に記憶(格納)されている情報であるか否かが判断される。未だ記憶されていない情報である場合はその情報が画像ファイル1から読み出され、副画像メモリ9に記憶される。すなわち、第2図において、車両の走行に伴い接近してくる交差点Eが数字Iで示す円内に入ったとき、交差点Eの情報のうち、車両が進行している方向から見た情報が副画像メモリ9に予め記憶される。」(3頁左上欄14行〜右上欄8行)
g.「副画像メモリ9に情報が記憶されたとき、あるいは既に記憶されているとき、今度は距離l2以内に交差点があるか否かが判断される距離l2以内に交差点がないときシーケンスはスタートに戻る。距離l2以内に交差点があるときスイッチ10が副画像メモリ9側に切り換えられ、その交差点の情報が表示装置11に表示される。すなわち第2図において交差点Eが数字IIで示す円内に入ったとき、交差点Eを交差点Bの方向から見た画像が表示されることになる。」(3頁右上欄9行〜18行)
h.「2は画像ファイル1に記憶された情報を読み出し、デコードしてマイクロコンピュータ等によりなる演算装置3に出力する読出し装置である。」(2頁左上欄16行〜19行)

以上の記載及び図面の記載から見て、引用例1には「地図情報と、該地図情報に含まれる交差点に関する情報を記憶した画像ファイルと、
車両の現在位置を認識する位置認識装置と、
認識した車両の位置を含む地図を前記画像ファイルから読み出し、デコードして出力する読出し装置と、該読み出した地図の道路上に前記認識した車両の現在位置を定めて表示装置に表示させる前記演算手段と、
該演算手段は、車両が向かっている交差点に予め定められた第1の距離l1まで接近したとき、該交差点の進入方向からの画像を前記画像ファイルから前記読出し装置を介して読み出させるとともに、
車両が前記交差点に予め定められた第2の距離l2までさらに接近したとき、前記交差点の画像を表示させてなる車両ナビゲーション装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.4 周知例
本件発明や引用発明と同じナビゲーション装置の分野における文献として、それぞれ(A),(B)の摘記事項を備えた文献(以下「周知例」という。)がある。
(1)特開昭62-102111号公報
(A)「少なくとも各道路に関する名称およびその道路に付帯する情報とかく道路を折線近似した時の各ノードデータとを記憶した道路情報記憶手段と・・・(中略)・・」(特許請求の範囲1項)
(B)「ステップ35では、現在位置(X、Y)との距離が一定値以下である道路枝を求め、その道路を現在走行している道路とする。・・・車両が道路枝Lj1上を走行している可能性があり、・・・」(2頁右下欄17行〜3頁左上欄8行)

(2)特開昭62-102112号公報
(A)「少なくとも各道路に関する名称およびその道路に付帯する情報と各道路を折線近似した時の各ノードデータとを記憶した道路情報記憶手段と・・・(中略)・・」(特許請求の範囲第1項)
(B)「ステップ35では、現在位置(X、Y)から一定距離以内にモードがあり、そのノードから隣接するノードへ向う方位が車両の走行方位と一致するようなモードを有する道路を検出し、これを現在走行している道路とする。・・・(中略)・・そのノードに車両が到達しているものとする。」(2頁右下欄13行〜3頁左上欄5行)

(3)特開平1-276015号公報
(A)「・・・上記地図情報として予め記憶させた道路上に多数のノードが設定されていると共に、・・・」(特許請求の範囲)
(B-1)「・・・自車位置推測手段により推測した自車の現在位置と上記地図情報記憶手段に記憶された地図情報とを比較して自車位置を地図上の道路にマッチングするマップマッピング手段とを有する車両用ナビゲーション装置であって、」(特許請求の範囲)
(B-2)「上記のように測定誤差を含んだ上で推測した自車の現在位置を地図上の道路にマッチングする場合には、」(2頁左上欄18行〜20行)

(4) 特開平2-6714号公報
(A)「道路データは、第4図に示すように、複数のノードと、その隣接するノード相互間を接続するリンクからなるベクトルデータとなっており、」(3頁右下欄6〜8行)
(B-1)「次いで、操作手段6からのキー入力によってCRT5の画面に現在位置及び進行方向を示す現在位置表示マーク(第2図N1参照)が表示地図上における出発点位置にくるようにシフトさせ、表示マークの初期設定を行う。」(3頁右上欄13行〜19行及び現在地表示マークN1が道路上に表示されている第2図参照)
(B-2)「更には、装置の測位誤差などが原因で表示画面上の現在位置と、実際の走行位置が異なっていた場合、画面表示内容を良く見ないと気付きにくいという不都合を有している。」(2頁左上欄17行〜20行)
上記の周知例(1)〜(4)の(A)によれば、ナビゲーション装置において、「地図上の道路切片の情報(リンクやノードの情報)を含んでいる地図情報」が、又(B)によれば「道路上に現在位置を推定あるいは推測して位置決めする点」が周知の技術であることが明かである。

3.5 対比
本件発明と引用発明を技術常識を考慮して対比すると、以下のことが言える。
ア.引用発明の「画像ファイル」は、本件発明の「地図記憶手段」と対応する。
イ.引用発明の「車両の現在位置」は、本件発明の「車両の(走行中の)位置」に相当する。
ウ.ナビゲーション装置を前提とした引用発明と本件発明は、1つの表示画面上に地図と車両の現在位置を表示する必要があるが、そのために前記地図の道路上の座標と車両の現在位置の座標を一致させることを行う機能として、引用発明の「読み出した地図の道路上に前記認識した車両の現在位置を定めて(表示装置に表示させる)演算手段」は、本件発明の「車両が走行中の位置に対応した地図上の位置を推定する位置関連情報検出手段」に対応する。
エ.交差点は道路と道路が交差する点であるから道路の一部であることは明かであり、引用発明における「(車両が向っている)交差点の進入方向からの画像」は、交差点に関する情報であり、かつ、本件発明における「やがて車両が到達が予測される道路に関する任意の意味情報」の一部に相当することは明かである。
オ.引用発明の「表示装置」は、操作者に地図や車両が所定の交差点に近づいたときに交差点画像を見せるための装置、即ち操作者に画像として示す装置であるが、本件発明の「提示手段」も何等かの方法で「示す」手段であるから、その中には引用発明の「表示(装置)」も含まれるものと認めらる。
カ.引用発明の「車両が前記交差点に予め定められた第2の距離l2までさらに接近したとき」は、本件発明の「提示タイミング」に相当する。
キ.引用発明の「予め定められた第1の距離l1まで接近したとき、該交差点の進入方向からの画像を前記画像ファイルから前記読出し装置を介して読み出させる」は、画像を表示する第2の距離l2までさらに接近する前の動作であるから、本件発明の「到達が予測される該道路に上記車両が到達する前に」に相当する。
ク.引用発明の「読み出し」は本件発明の「リード」に相当し、また、引用発明の「デコード」も記憶装置としての画像ファイルから読み出した情報を画像情報とし、且つ、表示装置に表示させるための処理を行っているのであるから、本件発明の「加工して」に相当する。

上記の点を考慮すると、両者は、
「道路関連情報を記憶した地図記憶手段と、
車両の位置を検出し、車両が走行中の位置に対応した上記地図記憶手段の地図における道路上の位置を位置決め位置関連情報検出手段と、
やがて車両の到達が予測される道路に関する任意の意味情報を上記道路関連情報に基づいて求め、提示タイミングに至ったら、上記意味情報を提示する提示手段とを備え、
上記提示手段は、上記意味情報を到達が予測される該道路に上記車両が到達する前にリードして加工しておいた上で、提示タイミングに至ったら、該意味情報を提示することを特徴とする車両用道路関連情報事前提示装置。」で一致し、以下の点で相違する。
【相違点1】
地図記憶手段について本件発明が「少なくとも道路切片の情報を含む」と規定しているのに対し、引用発明はこのような規定をしていない点。
【相違点2】
地図における道路上に車両の現在位置を表示(提示)するために、本件発明は「位置を推定する」と規定しているのに対し、引用発明では「道路上に位置を定める」としている点。

3.6 相違点についての判断
【相違点1】について
ナビゲーション装置に用いられる地図情報として、地図上の道路切片の情報(リンクやノードの情報)を含んでいるものは、上記3.4-(1)〜(4)の(A)に列記したように本件出願前に周知のものにすぎない。
しかも、ナビゲーション装置である引用発明の地図情報として、該周知の地図上の道路切片の情報(リンクやノードの情報)を含んでいるものを用いることを阻害する格別な理由も認められないから、引用発明において、該周知の地図情報を採用することは、当業者が容易に実施し得るものと認められる。
そして、引用発明において、上記周知の地図を用いたとしても、得られる効果は当業者が予測し得る程度のことにすぎないと認められる。
【相違点2】について
ナビゲーションそうちにおいて、検出された車両の位置と、これとは別異なものであるが該車両が含まれているはずの地図とにおいて、該地図のしかも道路上に車両が走行中の位置を決める際、車両の位置の検出や地図の表示等にそれぞれ誤差があることから、これらを考慮して「地図の道路上に位置を決めること」を「推測」や「推定」等と呼ぶことは、上記「3.4周知例」の(B)に記載したように周知のことであるから、引用発明において、地図の道路上に車両の位置を定める際、直接の記載がなくても「推測」して定める、即ち、「推定」を行っていることは当然のことと認められる。
なお、権利者は、特許異議意見書において、「本件発明では、センサ類により車両の位置を検出した上で、車両の軌跡と、地図上の近傍の道路の形状との相関関数を基に、車両の位置を道路上に補正し、車両がどの道路上を走行しているか推定しています。」(7頁1行〜3行)と主張している。
しかしながら、特許請求の範囲には、「車両の位置を検出し、車両が走行中の位置に対応した上記地図記憶手段の地図における道路上の位置を推定する」としか規定していない。
この記載から明らかなことは、検出された車両の位置と、これとは別異なものであるが該車両が含まれているはずの地図とにおいて、該地図の道路上に車両が走行中の位置を決める必要があるが、その際、本件発明は、「推定」するとの用語を単に用いているだけであり、具体的にどのように推定するのか何等規定していない。
且つ、そのための具体的な手段も上記周知例に記載されているように種々存在するので、本件発明において、「推定」と規定することにより権利者が主張するような上記技術を当然に意味するものとは認められない。
したがって、権利者の上記主張は特許請求の範囲の記載に基づかない主張であって、採用することができない。

3.7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
別掲 (1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1について、「道路関連情報を記憶した地図記憶手段」を特許請求の範囲の減縮を目的として、「少なくとも道路切片の情報を含む道路関連情報を記憶した地図記憶手段」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1について、「車両が走行中の位置に対応した上記地図記憶手段の地図上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、」を特許請求の範囲の減縮を目的として、「車両が走行中の位置に対応した上記地図記憶手段の地図における道路上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、」と訂正する。
(3)訂正事項c
訂正事項aに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の段落番号【0005】1行目,【0041】1行目の「道路関連情報を記憶した地図記憶手段」をそれぞれ「少なくとも道路切片の情報を含む道路関連情報を記憶した地図記憶手段」と訂正する。
(4)訂正事項d
訂正事項cに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の段落番号【0005】2行目、【0041】2行目の 「車両が走行中の位置に対応した上記地図記憶手段の地図上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、」をそれぞれ「車両が走行中の位置に対応した上記地図記憶手段の地図における道路上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、」と訂正する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
車両用道路関連情報事前提示装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも道路切片の情報を含む道路関連情報を記憶した地図記憶手段と、
車両の位置を検出し、車両が走行中の位置に対応した上記地図記憶手段の地図における道路上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、
やがて車両の到達が予測される道路に関する任意の意味情報を上記道路関連情報に基づいて求め、提示タイミングに至ったら、上記意味情報を提示する提示手段とを備え、
上記提示手段は、上記意味情報を到達が予測される該道路に上記車両が到達する前にリードして加工しておいた上で、提示タイミングに至ったら、該意味情報を提示することを特徴とする車両用道路関連情報事前提示装置。
【請求項2】 道路関連情報を記憶した地図記憶手段と、
車両の位置を検出し、車両が走行中の位置に対応した上記地図記憶手段の地図上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、
やがて車両の到達が予測される道路に関する任意の意味情報を上記道路関連情報から検索し、提示タイミングに至ったら、上記意味情報を提示する提示手段とを備え、
上記地図記憶手段は、提示開始タイミングの情報と、提示期間あるいは提示終了タイミングの情報とを上記意味情報毎に上記提示手段に与えるものであることを特徴とする車両用道路関連情報事前提示装置。
【請求項3】 道路関連情報を記憶した地図記憶手段と、
車両の位置を検出し、車両が走行中の位置に対応した上記地図記憶手段の地図上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、
やがて車両の到達が予測される道路に関する任意の意味情報を上記道路関連情報に基づいて求め、提示タイミングに至ったら、上記意味情報を提示する提示手段とを備え、
上記提示手段の提示タイミングは走行時の平均車速の関数であることを特徴とする車両用道路関連情報事前提示装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車などの車両あるいは移動体に搭載し、任意の出発地あるいは現在位置、目的地までの推奨走行経路を演算し、その現在位置、経路あるいは進路などを提示する車両用道路関連情報事前提示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の装置としては、電子通信学会8/’79,P870〜P887「自動車用総合管制システム」で提案されたものがあった。これは、車両の現在地データと目的地データを入力し、この間の最短経路を演算し、所要の行動をとるべき地点の10〜15秒ほどの手前にきたら経路データに従って右折/左折などの指示をするものであった。
他には、例えば特開昭58-223017号公報で示されるものがあつた。これは、車両の現在地データと目的地データを入力し、この間の最短経路を演算し、車両の表示位置が所定の交差点の一定距離手前にきたら経路データに従って右折/左折などの指示をするものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の車両用道路関連情報事前提示装置は、以上のように構成されているので、いずれのものにおいても、提示タイミングに位置検出誤差がまちまちの値で含まれるため、交差点を通過してから提示したり、提示すべき交差点よりずっと手前の異なる交差点右折/左折を提示してしまうなどのいわゆる経路誘導における致命的問題点を有していた。また、交差点を通過してから提示する原因として、表示するまでの処理時間が必要なこと、提示タイミングの演算に時間を要することなどが挙げられる。さらに、提示する場合、瞬時の車速に基づいて行うと、提示する形態が変動して一定しないと云う問題もあり、単に表示するだけでは、ドライバが表示を見落とす虞があり、減速、方向変更等がなされると、突然生じる車両の動きにドライバが対応できないと云う安全上重大な問題がある。あるいは、路上のインフラが整備されなければ実現できないといった問題点を有していた。
【0004】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、道路地図データを基に車両の道路データ上の道路/切片/位置を検出推定するとともに位置検出誤差を逐一推定し、位置検出誤差を見込んだ所定の距離あるいは所定時間だけ手前で、運転者に推奨経路あるいは先々の道路網関連情報を適当なタイミングに提示する段階を有する車両用道路関連情報事前提示装置を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる車両用道路関連情報事前提示装置は、少なくとも道路切片の情報を含む道路関連情報を記憶した地図記憶手段と、車両の位置を検出し、車両が走行中の位置に対応した地図記憶手段の地図における道路上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、やがて車両の到達が予測される道路に関する任意の意味情報を道路関連情報に基づいて求め、提示タイミングに至ったら、意味情報を提示する提示手段とを備え、提示手段は、意味情報を到達が予測される該道路に上記車両が到達する前にリードして加工しておいた上で、提示タイミングに至ったら、該意味情報を提示するものである。
【0006】
また、この発明に係わる車両用道路関連情報事前提示装置は、道路関連情報を記憶した地図記憶手段と、車両の位置を検出し、車両が走行中の位置に対応した地図記憶手段の地図上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、やがて車両の到達が予測される道路に関する任意の意味情報を道路関連情報から検索し、提示タイミングに至ったら、意味情報を提示する提示手段とを備え、地図記憶手段は、提示開始タイミングの情報と、提示期間あるいは提示終了タイミングの情報とを意味情報毎に提示手段に与えるものである。
【0007】
また、この発明に係わる車両用道路関連情報事前提示装置は、道路関連情報を記憶した地図記憶手段と、車両の位置を検出し、車両が走行中の位置に対応した地図上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、やがて車両の到達が予測される道路に関する任意の意味情報を道路関連情報に基づいて求め、提示タイミングに至ったら、意味情報を提示する提示手段とを備え、提示手段の提示タイミングは走行時の平均車速の関数であるものである。
【0008】
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態を図について説明する。
この発明は、概略を図1に示すような機能ブロック構成とし、ハードロジック回路、センサ類、入力装置、地図記憶装置、出力装置の組合せで構成して動作・作用をさせることができるが、ハードロジック回路の代わりにマイクロコンピュータをベースとした処理装置を用い、半導体メモリに記憶したコンピュータプログラムにより、つまり逐次的処理により、この発明の特徴的な手段を実現することが実際的なので、次に、より詳細な実施の形態として、図2に示すマイクロコンピュータを用いたシステムによるものを説明する。なお、図1において、1は地図記憶手段、2は地図記憶手段1に相互接続された位置関連情報検出手段、3は地図記憶手段1及び位置関連情報検出手段2に相互接続された提示手段である。図2において、100は車速センサ、200は方位センサ、210はGPS受信機、220はビーコン受信機、300はCRT、400はタッチパネル、500はスピーカ、600は地図データベースが記憶されたCD-ROMとそれを駆動するドライバ、700は交通情報受信機、1000は、CPU1100を核としたマイクロコンピュータシステムであり、各種センサ、CD-ROMドライブ、タッチパネルなどとのインターフェース回路、CRTコントローラ、画像メモリなどの資源1200を備え、また演算の途中結果などを記憶するRAM1300、プログラムを記憶するROM1400はもとより、図示しない不揮発性記憶RAM、システムタイマ、クロック源などを備える。ROM1400には、例えば、図3、図4、図5にその処理手順を示すようなコンピュータプログラムが組み込まれている。
【0010】
以下、一実施の形態の動作を、図3〜図6に示すコンピュータプログラムの処理フローチャートを用いて、説明する。まず、これらのプログラムは、例えば、システムタイマによる0.1秒といった所定の時間毎の割り込み処理とされている。
図3において、ステップ1では、一定距離走行する度に発生する車速センサ100の出力パルスのカウントアップ値より移動距離△Lが演算される。
ステップ2では、車速Vが演算される。
【0011】
V=ΔL/Δt
【0012】
ステップ3では、車速Vの移動平均Vavが演算される。
ステップ4では、方位センサ200例えば地磁気方位センサ、あるいはさらにレートジャイロセンサにより、地磁気方位あるいはさらに相対方位を検出し、車両方位Ωが推定される。
ステップ5では、車両方位と移動距離で表される移動ベクトルを前回の位置に積算して、車両の新たな位置が演算される。前回位置の初期値は、システムの停止直前の位置を記憶しておいたバッテリバックアップメモリを読みだして用いられる。
【0013】
また、GPS受信機210、ビーコン受信機220、あるいはタッチパネル400の操作による絶対位置の新たな検出あるいは修正位置の検出があると、位置が補正される。
ステップ6では、CD-ROM1600地図の道路網上の新たな道路の車両が位置してからの走行距離L1、経過時間T1が積算される。
ステップ7では、位置が補正あるいは修正されて(誤差の期待値が減少して)からの走行距離L2、経過時間T2が積算される。
ステップ8では、照合の時期か否か、つまり例えば、前回パス1を実行したときの位置から、10メートルといった、所定距離以上走行したか否かがチェックされる。照合の時期であればステップ9に進み、照合時期でなければステップ24に進む。
【0014】
ステップ9では、軌跡、つまり位置系列と、最新の位置に相当する地図上の近傍の道路の形状の相関係数(例えば、近傍の道路のそれぞれについて、軌跡切片と道路切片それぞれの方位の標準偏差が演算され、それらを用いて類似度を求めたもの)が演算され、その相関係数を基に、道路、道路上の位置、道路上の走行方向などが推定演算され、位置系列を逆算して得た軌跡が45度ないし135度といった所定角度折れ曲がっており、かつ地図上の道路もそのような折れ曲がり角の範囲で曲がっているときには、位置が道路上に補正される。ここで、折れ曲がった後の位置は累積していた推定位置の誤差が減少することが期待される。なお、近くに折れ曲がった道路が複数あって相関係数が似たような値の場合には、位置補正が保留され、相関係数が他のものに対して顕著に大きくなったときにその位置に補正される。なお、ここでの位置補正は、ステップ5での各種受信機などによる絶対位置情報をここで用いて、さらに位置補正されるか、あるいは保留していた位置補正を、絶対位置を参考にして、案分位置へ補正することもある。
【0015】
ステップ10では、ステップ9での旋回(折れ曲がり)がチェックされる。旋回していればステップ11に進み、旋回してなければステップ12に進む。
ステップ11では、ROM1400の常数テーブルなどのような適当な記憶手段に記憶してある位置誤差演算のための、旋回角に対応した値をリードしてパラメータK22をセットする。
ステップ12では、絶対位置が新たに検出されたかがチェックされる。つまり、ステップ5でのGPS受信機210、あるいはビーコン受信機220の受信結果がここでチェックされる。検出されればステップ13に進み、検出されなければステップ14に進む。
ステップ13では、絶対位置の検出精度に対応した値がパラメータK22にセットされる。例えば、GPS受信機210が絶対位置を検出した場合は、DOP(位置検出精度劣化指数)値に比例した値がセットされる。
【0016】
ステップ14では、タッチパネル400などのような適当な手段で操作されて位置の修正がされたか否かがチェックされる。修正されていればステップ15に進み、修正されてなければステップ17に進む。
ステップ15では、位置修正の精度がパラメータK22の値にセットされる。この精度は、ユーザが位置修正したときにセットするようにされるか、予め適当な値が決められる。
ステップ16では、位置の補正あるいは修正後の走行距離L2がクリアされる。
ステップ17では、車両の位置が地図上で新たな道路に移ったか否かがチェックされる。移っていればステップ18に進み、移ってなければステップ24に進む。
【0017】
ステップ18では、新たに乗り移った道路の走行方向で、やがて到達が予測される任意の先、例えば、道なりには3つ先の交差点までの道路に関して、次の交差点で道なり以外の道路については次の交差点までの道路に関する情報が地図記憶手段としてのCD-ROM600から検索される。位置の属性を有する施設などのデータが、到達予測道路近傍という条件で、同様に検索される。推奨経路を別に求めておく応用の場合は、推奨経路を構成している道路の、ユーザの指定に応じての任意の遠方までの道路に関する情報が検索される。この検索は経路が探索されたときに実施されることもある。
ステップ19では、例えば、その道路の次の交差点(特徴点A)までの道路長CLあるいは所要時間TLがCD-ROM600から検索される。なお、推奨経路を別に求めておく応用の場合は、予め、推奨経路の長さ、つまり目的地までの道路長、あるいは所要時間が演算しておかれる。あるいは、道なりには走行するのが終了する地点まで、つまり分岐点あるいは交差点などであって、かつ推奨経路が道なりに進行しなくなる地点(特徴点A)までの、経路の長さ、あるいは所要時間が検索あるいはさらに演算される。外部から交通情報受信機700で受信した道路交通情報があれば同様に利用される。
【0018】
ステップ20では、係る到達予測道路の属性を調べ、例えば、ある制限速度が設定された区間が存在し、データ化されたものがあれば、その内容(意味)、提示開始時期、提示終了時期もしくは提示間隔などが、内容毎に登録される。
ステップ21では、係る到達予測道路の道路形状の特徴を演算抽出し、内容(意味)、その特徴、提示時期/位置などを登録する。例えば、道路切片の折れ曲がり角度が評価されて、その角度と折れ曲がりの200メートル手前の位置(後で述べるXSの例)が登録される。
ステップ22、23では、位置が新たに道路に移ってからの走行距離L1、経過時間T1がクリアされる。
ステップ24では、車両の位置の推定誤差gが例えば以下のような式により演算される。
【0019】
g=K21・L+K22
ここで、K21は車速センサの最大誤差率で例えば、0.005である。
【0020】
ステップ25では、走行距離L1あるいは経過時間T1に推定誤差が正に見込まれる。
【0021】
L1′=L1+g
T1′=T1+g/Vav
【0022】
ステップ26では、走行距離L1に推定誤差gが負に見込まれる。
【0023】
L1″=L1-g
T1″=T1-g/Vav
【0024】
ステップ27では、例えば、特徴点Aまでの道路長CLあるいは所要時間TLで規格化し、任意スケールDにデフォルメ表示される道路上での車両の位置DL、あるいは所要時間DTが演算される。
【0025】
DL=D・(CL-L1′)/CL
DT=D・(TL-T1′)/CL
【0026】
ステップ28では、推定誤差gから、規格化位置誤差g1、あるいは規格化時間誤差gtが、同様にして、演算される。
【0027】
g1=D・g/CL
gt=D・g(Vav・TL)
【0028】
図4において、ステップ29では、提示開始位置Xth、あるいは提示開始時間Tthが演算される。
【0029】
Xth=CL-(CL-XS)・{Vav/V0+exp(-Vav/V1)}
Tth=CT-(CT-XS)・{1/V0+exp(-Vav/V1)/Vav}
V0、V1はそれぞれ任意の速度(定数)
【0030】
ステップ30では、誤差を正に見込んだ走行距離L1′が、平均車速を考慮した提示開始位置Xthと比較される。あるいは、同様な経過時間T1′が提示開始時間Tthと比較される。L1′≧Xthであればステップ31に進み、そうでなければステップ35に進む。
ステップ31では、推定誤差gが所定値より大きいか否かがチェックされる。大きいければステップ32に進み、大きくなければステップ33に進む。
ステップ32では、位置を中心にして、誤差の範囲に交差点がないか否かがチェックされる。交差点がなければステップ33に進み、あればステップ34に進む。
【0031】
ステップ33では、到達予測道路に関連した情報が登録内容に応じて任意の形態で、例えば、走行中の道路の特徴点までと最初の交差点や近傍の施設などがデフォルメされ、走行方向を上にして、画面の一部へ任意に拡大あるいは縮小されてスーパインポーズされて、提示される。その場合、例えば、その情報がスピーカ500からの予告音とともにCRT300にスーパインポーズ表示され、あるいはスピーカ500から予め予告音で注意を促した後に、音声でアナウンスされる。また、登録に提示中が加えられる。
【0032】
到達予測道路に関連した情報は、さらに例えば、以下のように提示される。
特徴抽出された折り曲がり道路の曲率と現在の車速Vを基に、遠心力が予測演算され、所定の値を越えていたら、警告が発せられる。さらに、警告の理由、危険な位置までの誤差を見込んだ距離あるいは時間などが提示される。あるいは、さらに、安全圏の車速が演算され、安全車速が提示される。あるいは、図示しない車速制動装置を介して、車速を減ずる制御がなされ、車速は徐々に減速される。この場合、車速は安全(推奨)速度まで減速されるのが望ましい。危険要因としては、道路の曲率の他、勾配、傾斜、道路幅変更などであってもよく、また、それらの組合せであってもよい。また、単に、減速あるいは加速といった車両の制御だけではなく、推定精度が高いときなどに車両の向きを変える制御をしてもよい。
【0033】
ステップ34では、例えば、提示がとりやめられ、登録が抹消される。あるいは、誤差が大きい旨、もしくは意味情報を位置的に幅を持たせた表現で提示される。
ステップ35では、他に提示中以外の登録がないか否かがチェックされる。登録があればステップ29に戻り、なければステップ36に進む。
ステップ36では、誤差を負に見込んだ走行距離L1″が、提示終了位置XEと比較される。あるいは、経過時間T1″が、同様な提示終了時間TEと比較される。L1″>XE又はT1″>TEであればステップ37に進み、逆であればステップ38に進む。
ステップ37では、提示が停止され、登録が抹消される。
ステップ38では、他に提示中で、未抹消の登録がないか否かがチェックされる。未抹消の登録がなければステップ36に戻り、あればリターンする。
【0034】
図5において、ステップ39では、例えば、車両の位置をCRT300の画面中心とし、位置の移動につれて表示地図がスクロールされる。つまり、表示用バッファメモリ(図示せず)のどの部分を表示するかを決めるウインドウが、移動につれてシフトされる。そして表示用バッファメモリに地図の不足が予測される領域ができると、新たに続きの表示用地図データがCD-ROM600からリードされる。CRT300の画面中心には、車両の記号が、地図座標系での車両の方位に向けて、表示される。また、特徴点Aまでの長さDの道路の表示上に、規格化位置DL、規格化位置誤差g1の情報が重ねて表示される。あるいは規格化経過時間TL、規格化時間誤差gtの情報が重ねて表示される。これらは、グラフ的な表示ではなく、数値表示されることもある。
【0035】
ステップ40では、新たに登録された内容(意味情報例えば属性や道路網上あるいは道路形態上の特徴あるいは位置)がないか否かがチェックされる。すでに提示中のものは、対象とされない。登録された内容があればステップ41に進み、なければリターンする。
ステップ41では、加工に時間がかかる内容(意味情報)のものについては迅速な提示のためにデータの加工が開始される。あるいは、検索に時間がかかるもの例えば、かなり複雑な図形データの読みだしについては、CD-ROM600からのデータリードが開始される。加工終了時には、旗が立てられる。そして、その後リターンする。
【0036】
図6において、ステップ42では、ユーザの選択結果の保持内容に応じて、経路を表示するか否かがチェックされる。経路表示モードであればステップ43に進み、そうでなければリターンする。
ステップ43では、出発地あるいは目的地が設定済みか否かがチェックされる。設定済みであればステップ45に進み、そうでなければステップ44に進む。
ステップ44では、出発地あるいは目的地が設定される。
ステップ45では、経路を修正すべきか否かがチェックされる。経路を修正すべきであればステップ46に進み、そうでなければリターンする。
ステップ46では、出発地から目的地までの推奨経路が交通情報を加味して探索され、その後リターンする。
【0037】
以上のことによって、以下のような効果が達成される。
1.到達予測道路あるいは推奨経路に関する任意の意味情報を位置推定誤差を見込んだタイミングに提示することができるので、ユーザは意味情報を的確に把握することができる。
2.到達予測道路あるいは推奨経路に関する任意の地点までの残距離あるいは予測所要時間を位置推定誤差を見込んだタイミングに提示することができるので、ユーザは残距離あるいは予測所要時間を遅滞なく判断することができる。
3.到達予測道路あるいは推奨経路に関する任意の意味情報の提示形態を位置推定誤差に応じて変更することができるので、ユーザが提示内容を信用することができる。
【0038】
4.到達予測道路あるいは推奨経路に関する任意の意味情報を、低速時は所定距離以上の、高速時は、所定時間以上の事前のタイミングに提示することができるので、低速時あるいは高速時に、より的確なタイミングに提示される。あるいは、同様のタイミングに車両の運動を変更する制御がなされるので、あらゆる車速において、運動変更上の不都合が生ずることがない。
5.到達予測道路に関する任意の意味情報の提示形態を、推定位置誤差の程度および道路網の密度に応じて変更することができるので、ユーザは提示内容をより信用することができる。
6.到達予測道路あるいは推奨経路に関する任意の意味情報を、提示すべき時点よりも前もって加工することができるので、提示タイミングを失することがない。あるいは、より複雑な提示内容を提示することができる。
【0039】
7.到達予測道路あるいは推奨経路に関する任意の属性情報毎に、提示開始タイミング、提示終了タイミングを与えることができるので、よりきめの細かい提示が実現できる。
8.到達予測道路あるいは推奨経路に関する任意の意味情報を、平均車速の関数にできるので、瞬時車速による提示形態がふらつくことがない。
9.到達予測道路あるいは推奨経路に関する任意の意味情報を、予告音を発した後に提示するので、ユーザは注意をアナウンスの聴取に直前から傾けることができるので、聴きもらすことがない。
10.到達予測道路あるいは推奨経路に関する任意の特徴情報と車速から、危険を予測し、位置推定誤差を見込んだタイミングに、警告を発するので、ユーザは信頼度の高い予めに危険防止のための車両操作ができる。
【0040】
11.到達予測道路あるいは推奨経路に関する任意の特徴情報と車速から、危険を予測し、位置推定誤差を見込んだタイミングに、警告および安全(推奨)速度を提示するので、ユーザは信頼度の高い事前のタイミングに、危険防止のための車両操作の程度を知ることがができる。
12.到達予測道路あるいは推奨経路に関する任意の特徴情報と車速から、危険を予測し、位置推定誤差を見込んだタイミングに、車速を減ずる制御を行うので、車両は信頼度の高い事前のタイミングから危険防止のための減速を自動的に行ってくれ、運転が楽になるとともに安全性が高まる。
13.到達予測道路あるいは推奨経路に関する任意の特徴情報と車速を基に車両の運動を変更すべきことを予測し、位置推定誤差を見込んだタイミングに、車両の運動を変更する制御を行うので、車両は信頼度の高い事前のタイミングに、危険防止等のための運動変更制御を自動的に行ってくれ、運転が楽になる。
【0041】
【発明の効果】
この発明に係る車両用道路関連情報事前提示装置は、少なくとも道路切片の情報を含む道路関連情報を記憶した地図記憶手段、車両の位置を検出し、車両が走行中の位置に対応した地図における道路上の位置を推定する位置関連情報検出手段、やがて車両の到達が予測される道路に関する任意の意味情報を道路関連情報に基づいて求め、提示タイミングに至ったら、意味情報を提示する提示手段を備え、提示手段は、意味情報を到達が予測されるこの道路に車両が到達する前にリードして加工しておいた上で、提示タイミングに至ったら、この意味情報を提示するので、提示タイミングを失することがなく、あるいは、より複雑な提示内容を提示することができる。
【0042】
また、この発明に係る車両用道路関連情報事前提示装置は、道路関連情報を記憶した地図記憶手段、車両の位置を検出し、車両が走行中の位置に対応した地図上の位置を推定する位置関連情報検出手段、やがて車両の到達が予測される道路に関する任意の意味情報を道路関連情報から検索し、提示タイミングに至ったら、意味情報を提示する提示手段を備え、地図記憶手段は、提示開始タイミングの情報と、提示期間あるいは提示終了タイミングの情報とを意味情報毎に提示手段に与えるので、よりきめの細かい提示が実現できる。
【0043】
また、この発明に係る車両用道路関連情報事前提示装置は、道路関連情報を記憶した地図記憶手段と、車両の位置を検出し、車両が走行中の位置に対応した地図上の位置を推定する位置関連情報検出手段と、やがて車両の到達が予測される道路に関する任意の意味情報を道路関連情報に基づいて求め、提示タイミングに至ったら、意味情報を提示する提示手段とを備え、提示手段の提示タイミングは走行時の平均車速の関数としたので、瞬時車速による提示形態がふらつくことがない。
【0044】
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施の形態の機能構成の概略を示すブロック図である。
【図2】 この発明の一実施の形態の実際のハードウエア構成を示すブロック図である。
【図3】 この発明の一実施の形態のROMに組み込む処理プログラムを示すフローチャートである。
【図4】 この発明の一実施の形態のROMに組み込む処理プログラムを示すフローチャートである。
【図5】 この発明の一実施の形態のROMに組み込む処理プログラムを示すフローチャートである。
【図6】 この発明の一実施の形態のROMに組み込む処理プログラムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 地図記憶手段、2 位置関連情報検出手段、3 提示手段。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-09-29 
出願番号 特願2001-226022(P2001-226022)
審決分類 P 1 652・ 121- ZA (G01C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 佐々木 芳枝  
特許庁審判長 三友 英二
特許庁審判官 村上 哲
大野 覚美
登録日 2003-06-13 
登録番号 特許第3438728号(P3438728)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 車両用道路関連情報事前提示装置  
代理人 中鶴 一隆  
代理人 村上 加奈子  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 村上 加奈子  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 宮田 金雄  
代理人 宮田 金雄  
代理人 高橋 省吾  
代理人 高橋 省吾  
代理人 高瀬 彌平  
代理人 高瀬 彌平  
代理人 中鶴 一隆  

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