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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61F 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61F |
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管理番号 | 1116190 |
異議申立番号 | 異議2003-70097 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2001-05-15 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-01-15 |
確定日 | 2005-04-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3302701号「吸収陰唇間装置」の請求項1ないし11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3302701号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3302701号の請求項1〜11に係る発明については、平成10年6月15日(優先権主張 1997年6月16日 米国、1998年5月1日 米国)に国際出願され、平成14年4月26日に特許権の設定登録がされた。その後、藤江佳子により特許異議の申立てがされ、取消しの理由の通知がされたものである。 2.本件発明 (請求項1) 液体透過性トップシート、前記トップシートに接合されている液体不透過性バックシート、そして前記トップシートと前記バックシートとの間に位置付けられている吸収性核を備えており、 女性の着用者の陰唇間の空間に挿入でき、長さ、幅、厚み、および長手方向中心線を有し、 ここにおいて、 前記長さは60mmと127mmとの間であり、 前記幅は25mmと40mmとの間であり、 前記幅と前記長さは各々前記厚みよりも大きく、 好ましい曲げ軸を備え、前記好ましい曲げ軸に沿って折り、そして着用者の陰唇間の空間に挿入した時、前記トップシートが着用者の陰唇の壁との接触を維持する、ことを特徴とする吸収陰唇間装置。 (請求項2) 女性の着用者の陰唇間の空間に挿入でき、長さ、幅、厚み、および長手方向中心線を有しており; 液体透過性トップシート; 前記トップシートに接合されている液体不透過性バックシート; 前記トップシートと前記バックシートとの間に位置付けられている吸収性核;そして、 前記バックシートに接合されていて、そこから下方に伸びている取り外しタブ; を備えていて、ここにおいて、 前記幅と前記長さは各々前記厚みよりも大きく、 好ましい曲げ軸をさらに備えており、前記好ましい曲げ軸に沿って折り、そして着用者の陰唇間の空間に挿入した時、前記トップシートが着用者の陰唇の壁との接触を維持する、ことを特徴とする吸収陰唇間装置。 (請求項3) 前記液体透過性トップシートがレーヨンを備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収陰唇間装置。 (請求項4) 前記吸収性核がレーヨンを備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収陰唇間装置。 (請求項5) 水分散試験により測定された時、前記吸収陰唇間装置が少なくとも2つの破片に分散するのに要求されている時間は2時間未満である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収陰唇間装置。 (請求項6) 前記液体不透過性バックシートがポリビニルアルコールを備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収陰唇間装置。 (請求項7) 前記吸収陰唇間装置が少なくとも70%生分解可能である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収陰唇間装置。 (請求項8) 前記液体不透過性バックシートに接合されている取り外しタブを備えている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収陰唇間装置。 (請求項9) 前記陰唇間装置が実質的に卵形の平面形状を有している、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収陰唇間装置。 (請求項10) 前記吸収陰唇間装置が前記好ましい曲げ軸に沿って展開するように弾性的に付勢されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収装置。 (請求項11) 前記吸収陰唇間装置は、水洗可能性試験で、2回またはそれよりも少ない水洗で少なくとも70%完全に便器を通過するのに充分な水洗可能性である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収陰唇間装置。 以下、それぞれの請求項に係る発明を本件特許発明1、本件特許発明2・・・という。 3.特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人は、以下の理由により本件の全請求項に係る特許は特許法113条第2号に該当し取り消されるべきものであると主張している。 (1)請求項1に係る発明は甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号に該当し特許を受けることができない。 (2)請求項1〜11に係る発明は甲第1号証から甲第7号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 4.証拠の記載の概要 (i)甲第1号証 (特開昭61-149145号公報) 「湿性のカバー」「流体不透過性シールド」「流体保持コア即ち吸収体」を有し、後方領域に陰唇間の構造に順応する隆起部が存在する生理用ナプキンが記載されている。 (ii)甲第2号証 「日本女性の外性器」(笠井寛司著、フリープレスサービス1995年9月1日) 女性の陰唇の大きさにつき記載されている。 (iii)甲第3号証 (特開平9-99009号公報) 水崩壊性及び吸水性を有する材質からなる棒状吸収体を体液浸透性及び水崩壊性を有する表面材で包み込むとともに、該表面材の両端余長部分をつまみ片として残してその基部を止着してなる女性用衛生具が記載されている。 (iv)甲第4号証 (特開昭64-70051公報) 不透過性外側カバーと液体透過性身体側ウエブと、これらの間に設けられた吸収剤とを含み、クリトリスおよび恥丘の外部の位置調整用扁平フロント部および会陰、臀部及び外陰部陥凹部の後方部分と一直線上に位置決めするための隆起したピークを有する後方部分を含むヒトの滲出物の吸収用パッドが記載され、さらに係るパッドの長さは約7〜約12インチ、幅が約2〜約4インチであること、吸収剤はレーヨン繊維を含むことの記載がある。 (v)甲第5号証 (特開平5-228205号公報) 吸収体のバックシートに用いる好ましい組成物としてポリビニルアルコールが記載されている。 (vi)甲第6号証 特開平8-246320号公報 生分解性素材を生理用ナプキンに使用することが記載されている。 (vii)甲第7号証 (特開平7-47096号公報) 生理用パッドとして図18に卵型パッドが記載されている。 5.判断 5-1 本件特許発明1について 甲第1号証には、湿性カバー、流体不透過性シールド、流体保持コア即ち吸収体(各々本件特許発明1の液体透過性トップシート、液体不透過性バックシート、吸収核に相当する)からなる3層構造を備え、体液が身体から流出する前にその流れを阻止するために着用者の膣前庭内に挿置できるような外形を有し、着用者の身体形状に自己整合して高い整合性と快適性とを得ることができる生理用ナプキン(陰唇パッド)が記載されている。 かかるパッドについて、その寸法の記載はないが、図1〜9及び 「本発明の陰唇形パッド、特にその吸収芯は、液の配分と保持が著しく改善されているので、サイズを縮小することができる。本発明の陰唇形パッドの設計は、パッドを膣前庭内に部分的に挿入する必要があるだけで、身体のより敏感な泌尿生殖器官に直接接触するのを回避することに成功している。」(第8頁右上欄7〜14行) 「パッドの前方領域は、着用者の外陰部の周囲に、大陰唇の上方に、クリトリスから間隔をおいて、全体として外部に置かれるように後部領域に合体し、それにより、クリトリスを保護すると同時に、敏感な局部に触れてこすり合ったり、炎症が起こるのを防止する。」(第8頁左下欄13〜18行) 「パッドの後方領域54に、隆起した外形、即ち突起52を有する。隆起した外形52は膣前庭内に突き出るパッドの部分であり、それ故、大陰唇の間に介在し、クリトリス50から後方に離れた(若干後方に)位置から始まり、膣前庭32の最後方面まで延びて、大陰唇と内側で境を接し、後方陰唇接合部36に接触して、たとえば、月経液に対し、膣前庭の前記領域をほぼ閉塞する。」(第10頁右上欄12行〜下から2行) の各記載からすると、パッドの前方領域56は陰唇間の空間には配置されておらず外部空間に露出されていて、後方領域54の一部のみが陰唇間に置かれることが明らかであり、特に図3において前方領域部分に下着への接着部材を設けた例が見られることからも、従来の身体と下着の間に保持されるナプキンの範疇に属するものということができる。 一方、本件特許明細書第7欄には「用語「吸収陰唇間装置」は少なくともいくつかの吸収要素を有し、使用中に女性の着用者の陰唇間の空間内にあるように特に形成される構造を指す。・・・より好ましくは、使用中、吸収陰唇間装置全体20が女性の着用者のこのような陰唇間の空間内にある。」と定義されており、請求項1においても 「女性の着用者の陰唇間の空間に挿入でき、長さ、幅、厚み、および長手方向中心線を有し、・・・前記長さは・・幅は・・前記厚みよりも大きく、好ましい曲げ軸を備え、前記好ましい曲げ軸に沿って折り、そして着用者の陰唇間の空間に挿入した時、前記トップシートが着用者の陰唇の壁との接触を維持する・・吸収陰唇間装置」と特定されているのであるから、上記甲第1号証のものとは3層構造を有する点では共通するものの、本質的な構造において相違する。 したがって、本件発明1は甲第1号証に記載された発明であるということはできない。 次に、甲第1〜7号証から本件特許発明1が容易に発明することができたか否かについて検討する。 甲第2号証には、日本女性の外性器の陰唇の種々の大きさ、小陰唇の高さ基準等についての記載があるが、甲第1号証のパッドのサイズを長さを60mmと127mmとの間に、幅を25mmと40mmとの間にし、幅と長さは各々厚みよりも大きくすることを動機づける記載は見あたらない。 さらに、甲第3〜7号証にも、甲第1号証の生理用ナプキンに見られる3層構造を、女性の着用者の陰唇間の空間に挿入でき、特定のサイズを有し、着用者の陰唇間の空間に挿入した時、トップシートが着用者の陰唇の壁との接触を維持する吸収陰唇間装置に採用することを容易に導きうるに足る記載や示唆を見出すことはできない。 とりわけ甲第4号証には「米国特許4631062号(ラッセン等)の・・・位置設定を改善するために、米国特許4673403号は着用者の身体上にパッドを適切に位置設定するのを補助するための指示具をパッドの身体側に設けることを提案している。上記ラッセン等の提案したパッドは良好に機能するが、これがあまりに小さくて利用者によりそれ程受け入れられていないという欠点があった。・・しかも利用者にとってより慣用度のある大きな寸法を持つパッドに対する要求がある。」(第2頁右下欄〜第3頁左上欄)との記載があるが(上記米国特許46731062号は甲第1号証のパテントファミリーに相当し、これを更に改良したとされる米国特許4673403号のパッドは長手方向の長さは約5〜6インチである)、甲第4号証の発明にかかるパッドの長さは約7〜12インチ(178〜305mm)幅約2〜4インチ(50〜102mm)であってラッセンのパッドよりいっそう大きくされている。 そうすると、甲第1号証のパッドを小さくし、陰唇間の空間に適合させて本件特許発明1の大きさの吸収陰唇間装置とすることについてはむしろ阻害要因が存在したと認められる。 したがって、甲第1〜7号証の記載事項から本件特許発明1が容易に発明できたとすることはできない。 5-2 本件特許発明2について 甲第3号証には、水崩壊性及び吸収性を有する材質からなる棒状吸収体を体液透過性及び水崩壊性を有する表面材で包み込むとともに、該表面材の両端余長部分を摘み片として残しその基部を止着した女性用衛生具が記載されており、その構造や寸法(外径15mm、長手方向寸法45mm)、使用態様から見て本件発明の吸収陰唇間装置に相当し、摘み片をつけることで着脱作業を容易にしたものである。 しかしながら甲第3号証の吸収陰唇間装置は本件特許発明3の液体透過性トップシート、トップシートに接合されている液体不透過性バックシート、 前記2つのシート間に位置付けられている吸収性核からなる3層構造を備えるものではなく、曲げ軸に沿って折り、そして着用者の陰唇間の空間に挿入した時、前記トップシートが着用者の陰唇の壁との接触を維持するものでもない。 そして、甲第1、2および4〜7号証を精査しても、甲第1号証の生理用ナプキンに見られるような3層構造を、甲第3号証の吸収陰唇間装置に適用し、女性の着用者の陰唇間の空間に挿入でき、着用者の陰唇間の空間に挿入した時、トップシートが着用者の陰唇の壁との接触を維持する吸収陰唇間装置とすることを動機付ける記載や示唆を見出すことはできない。 したがって、本件特許発明2にしても甲第1〜7号証の記載事項から当業者が容易に発明できたとすることはできない。 5-3 本件特許発明3〜11について 上記の通り、本件特許発明1,2はいずれも甲第1〜7号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたとすることはできないから、かかる発明にさらに特定事項を付加したものである本件特許発明3〜11も同様の理由により当業者が容易に発明できたとすることはできない。 6.むすび 以上のとおり、本件特許発明1は甲第1号証に記載された発明ではなく、本件特許発明1〜11は甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできないから、本件発明1〜11についての特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2005-03-29 |
出願番号 | 特願平11-504677 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(A61F)
P 1 651・ 113- Y (A61F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 上條 のぶよ |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
深津 弘 横尾 俊一 |
登録日 | 2002-04-26 |
登録番号 | 特許第3302701号(P3302701) |
権利者 | ザ、プロクター、エンド、ギャンブル、カンパニー |
発明の名称 | 吸収陰唇間装置 |
代理人 | 風間 鉄也 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 白根 俊郎 |