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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1116192
異議申立番号 異議2003-73213  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-04-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-24 
確定日 2005-04-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第3432305号「医療用貼付剤」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3432305号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。

「N-ビニルアセトアミド-アクリル酸(塩)共重合体100重量部及び酸化チタン5〜120重量部を含有してなる膏体が、支持体上に形成されていることを特徴とする医療用貼付剤。」

2.申立の理由の概要
特許異議申立人は、甲第1〜3号証を提出して、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、また、本件特許が同法第36条第4項又は第6項(第5項及び第6項の誤りと認められる。)に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、本件特許を取り消すべきと主張している。

3.甲第1〜3号証の記載

甲第1号証:特開平4-182437号公報

「N-ビニルアセトアミドの重合体又は共重合体もしくはその架橋体を必須成分とする人又は動物の外用剤用基材又は補助剤」(特許請求の範囲第1項:記載1)。

「N-ビニルアセトアミドの重合体又は共重合体もしくはその架橋体2.5〜33重量部、水及び/又はアルコール類67〜97.5重量部、及びこれらの合計量100重量部に対して薬効成分0.01〜30重量部を均一に混合して支持材に保持し、・・・貼付剤」(特許請求の範囲第7項:記載2)。

表1(第26頁左上欄)の実施例1〜4には、N-ビニルアセトアミド共重合体の構成モノマーが、NVA(N-ビニルアセトアミド)とAA-Na(アクリル酸ナトリウム)、及びNVAとAA-NaとAA(アクリル酸)である共重合体の製造例が記載(記載3)されている。

「また、・・・カオリン、ベントナイト、・・・等、従来パップ材の成形性や保水性を付与する目的で使用されている添加剤を、本発明の効果を妨げない範囲で加えることも任意である。」(第21頁右下欄第13行〜第19行:記載4)

甲第2号証:特開昭63-150222号公報

「アクリル系化合物を、水溶性の多価金属化合物と難溶性の多価金属化合物によって架橋して得た架橋アクリル系化合物をゲル膏体成分としたことを特徴とするパップ剤。」(特許請求の範囲第1項:記載5)。

「かかるゲル膏体成分を構成するためのアクリル系化合物は、具体的には、〔A〕アクリル酸とアクリル酸塩との共重合体,〔B〕前記のアクリル酸とアクリル酸塩との共重合体とポリアクリル酸と混合物,及び〔C〕ポリアクリル酸とポリアクリル酸塩との混合物がある。」(第2頁左下欄第14行〜第19行:記載6)。

「実施例1及び比較例1
・・・水にポリアクリル酸20%水溶液・・・を溶解し、これにカオリン、酸化チタン、薬効成分として・・・を加えてよく分散させた。一方グリセリンにアクリル酸-アクリル酸ソーダ共重合体として・・・、硫酸アルミニウム10%水溶液及び乾燥水酸化アルミニウムゲル・・・を加えてよく分散させた。これら二つの分散物を混合して均一に練合し、ペースト状のパップ剤用のゲル膏体を得、これを不織布状に塗布展延し、その表面をポリエチレンフィルムで保護してパップ剤を得た。」(第4頁右上欄第8行〜左下欄第2行:記載7)。

第1表(第4頁左下欄)には、実施例1及び比較例1として、ポリアクリル酸20%水溶液25.0%(固形分5%)、アクリル酸-アクリル酸ソーダ共重合体7.0%、カオリン2.0%、酸化チタン2.0%、等の構成成分からなるパップ剤で、実施例1と比較例1のものとは、パップ剤の構成成分として、前者が硫酸アルミニウム10%水溶液を含有しているが、後者は該成分を含有していない点で相違したものである処方が記載(記載8)されている。

第3表(第5頁右上欄)には、実施例1及び比較例1のパップ剤の、皮膚への粘着性についての評価の結果、実施例1の場合は強い粘着性あり、比較例1の場合は粘着性なしであると記載(記載9)されている。

甲第3号証:「新製剤開発システム総合技術-開発設計篇-」、発行所 R &Dプランニング、昭和61年4月29日発行

「パップ剤は主に支持体,膏体,ライナーの3部より構成されている。・・・膏体は・・・無機充填剤であるカオリン,ベントナイト,酸化亜鉛,無水ケイ酸などの粉末成分・・・が配合されている。」(第277頁右欄第16行〜第25行:記載10)

表-1(第277頁最下段)のパップ剤の充填剤(無機物)の欄には、パップ剤の膏体成分として、カオリン、ベントナイト、二酸化チタンが記載されている。(記載11)

4.特許法第29条第2項について、
甲第1号証には、外用剤用基材としてN-ビニルアセトアミドの共重合体を薬効成分等と混合して支持材に保持した貼付剤(記載1、記載2)が、そして、N-ビニルアセトアミドの共重合体の具体例として、N-ビニルアセトアミド-アクリル酸(塩)共重合体(記載3)が、また、該貼付剤には添加剤として、カオリン、ベントナイト等を加えることができる(記載4)旨記載されている。
しかし、引用例1には、本願発明の構成要件である、N-ビニルアセトアミド-アクリル酸(塩)共重合体とともに酸化チタンを配合する点につき記載されていない。
そこで、酸化チタンを配合することが、甲第2号証及び甲第3号証の記載内容に基づいて容易になし得るかどうかにつき、以下検討する。
甲第2号証には、架橋アクリル系化合物とともに酸化チタンを、ゲル膏体成分として含有させたパップ剤が、実施例1及び比較例1(記載5、記載7、記載8)に記載されているが、該架橋アクリル系化合物のアクリル系化合物の具体例としては、アクリル酸とアクリル酸塩との共重合体,アクリル酸とアクリル酸塩との共重合体とポリアクリル酸と混合物,及びポリアクリル酸とポリアクリル酸塩との混合物が挙げられているにすぎず(記載6)、本件発明におけるN-ビニルアセトアミド-アクリル酸(塩)共重合体については何らの記載も示唆もない。また、本件発明における酸化チタンは含水性粘着基材の粘着力の増大を意図したものであるが、ともに酸化チタンを含有している同引用例の実施例1及び比較例1のパップ剤の粘着性の顕著な差違は、酸化チタンの有無によるものではなく、水溶性の多価金属化合物である硫酸アルミニウム10%水溶液の有無によるものであることは明らかである(記載8、記載9)。
したがって、甲第2号証は、N-ビニルアセトアミド-アクリル酸(塩)共重合体とともに酸化チタンを配合すること、それにより粘着力を著しく向上させることを示唆するものではない。

甲第3号証にはパップ剤の膏体構成成分中の無機物充填材として、本件発明の酸化チタンに相当する二酸化チタンが、カオリンやベントナイト、酸化亜鉛,無水ケイ酸などの粉末成分と共に記載されているが(記載10、11)、N-ビニルアセトアミド-アクリル酸(塩)共重合体という特定の基材に酸化チタンを配合すること、それにより粘着力が著しく向上することについて示唆する記載はない。そして、表-3のパップ剤一覧によれば、通常のパップ剤に添加される充填剤としては、カオリン、ベントナイトが一般的であって酸化チタンがこれらと同程度に汎用されているともいえない。したがって、甲第1号証においてカオリン、ベントナイトを添加することができるとの記載があるとしてもその記載から直ちに酸化チタンの添加を導くことができるとすることはできない。

以上のとおりであるから、甲第1号証に甲第2、3号証を組み合わせても、本件発明におけるN-ビニルアセトアミド-アクリル酸(塩)共重合体と酸化チタンを含有させた膏体につき、当業者が容易に想到し得るものとは認められない。

そして、本願発明は、N-ビニルアセトアミド-アクリル酸(塩)共重合体とともに酸化チタンを含有することによって、その貼付剤は十分な粘着力が得られ、貼付時の剥がれ等が生じず、また、基剤が幅広い薬物に適用可能な特性を有するために、種々の目的の医療用貼付剤を容易に設計でき、さらに低刺激性であることなど、明細書記載の効果を奏するものである。

したがって、本願発明は、甲第1〜3号証の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。

5.特許法第36条について
特許異議申立人は、請求項1には、「N-ビニルアセトアミド-アクリル酸(塩)共重合体100重量部及び酸化チタン5〜120重量部」と記載されているが、酸化チタンの上限値120重量部について、数値的根拠が発明の詳細な説明の欄に記載されていないので、明細書の記載が不備である旨主張している。
そこで、酸化チタンの配合量につき、発明の詳細な説明をみると、実施例には、N-ビニルアセトアミド-アクリル酸ナトリウム共重合体100重量部に対して、酸化チタン10重量部(実施例1)、及び100重量部(実施例2)の例が示されている。また、比較例4として、N-ビニルアセトアミド-アクリル酸ナトリウム共重合体100重量部に対して、酸化チタン140重量部配合した場合には、粘度が高くて均一に混合できず塗工できなかったことが示されている。
そうすると、好適な(実施例)100重量部と不適な(比較例)140重量部のほぼ中間をその上限として設定することは当業者の常識の範囲であるから、120重量部という上限値の設定根拠の記載のないことをもって、本件発明が明細書の発明の詳細な説明に記載されていないとすることはできない。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおりであるから、異議申立の理由及び証拠によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-04-06 
出願番号 特願平6-241531
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61K)
P 1 651・ 532- Y (A61K)
P 1 651・ 534- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 清野 千秋山口 昭則  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 亀田 宏之
谷口 博
登録日 2003-05-23 
登録番号 特許第3432305号(P3432305)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 医療用貼付剤  

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