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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01P
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01P
管理番号 1116756
審判番号 不服2002-22534  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-21 
確定日 2005-05-06 
事件の表示 平成11年特許願第279600号「衛星放送受信用コンバータ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年4月13日出願公開、特開2001-102802〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年9月30日の出願であって、平成14年10月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年12月20日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成14年12月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
上記手続補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を、
「一方の端部が一次放射器に接続される第1の導波管と、
一方の端部が前記第1の導波管に直接接続され、他方の端部が閉塞され、軸線に垂直な断面において前記第1の導波管と形状が異なる第2の導波管と、
前記第2の導波管の軸線に垂直な平面上に、直交するように配置された2本のプローブと、
前記2本のプローブが突出する2つの辺が交わるコーナーと、該コーナーに対向するコーナーとに設けられ、導体によって形成される導波管窓とを含む衛星放送受信用コンバータ。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「衛星放送受信用コンバータ」の構成に「前記2本のプローブが突出する2つの辺が交わるコーナーと、該コーナーに対向するコーナーとに設けられ、導体によって形成される導波管窓」の構成を含めることによりその構成を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
次に、上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて検討する。

[補正後の発明]
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

[引用発明及び周知技術]
A.原審の拒絶理由に引用された実願平3-3898号のCD-ROM(実開平5-2403号参照、以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【請求項1】 導波管形低雑音周波数変換器において、電磁波の入力側導波管を円形導波管とし、1/4波長多角形内径のインピーダンス変換器を介して正方形導波管に変換し、前記正方形導波管の内壁の一部に第1の電磁界検出プローブを設け、この第1の電磁界検出プローブと平行に、かつ、上記第1の電磁界検出プローブに対し、円形導波管側と反対方向の所定の位置に短絡板を設け、更に、上記の第1の電磁界検出プローブを設定した正方形導波管内壁面と直交する内壁面で、上記の短絡板に対し、上記の第1の電磁界検出プローブと反対方向の所定の位置に第2の電磁界検出プローブを設けたことを特徴とする導波管形低雑音周波数変換器。」(2頁1欄、実用新案登録請求の範囲、請求項1)

ロ.「【産業上の利用分野】
この考案は衛星通信受信用アンテナ等に用いられる導波管形低雑音周波数変換器の改良に関するものである。」(3頁、段落1)

上記引用例の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「衛星通信受信用アンテナ等に用いられる導波管形低雑音周波数変換器」はいわゆる「衛星放送受信用コンバータ」であり、上記「円形導波管」は「一方の端部が一次放射器に接続される第1の導波管」であり、上記「正方形導波管」は「一方の端部が前記第1の導波管にインピーダンス変換器を介して接続され、他方の端部が閉塞され、軸線に垂直な断面において前記第1の導波管と形状が異なる第2の導波管」であり、上記「第1の電磁界検出プローブ」と「第2の電磁界検出プローブ」は「前記第2の導波管の軸線に垂直に、直交するように配置された2本のプローブ」を構成している。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「一方の端部が一次放射器に接続される第1の導波管と、
一方の端部が前記第1の導波管にインピーダンス変換器を介して接続され、他方の端部が閉塞され、軸線に垂直な断面において前記第1の導波管と形状が異なる第2の導波管と、
前記第2の導波管の軸線に垂直に、直交するように配置された2本のプローブと、
を含む衛星放送受信用コンバータ。」

B.また、例えば、特開平7-263904号公報(以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【従来の技術】通信衛星(CS)から送られてくる電磁波は同一の周波数帯域内で、より多くのチャンネルを伝送できるように、衛星ごとに水平偏波および垂直偏波の偏波面を割当ている。この点が放送衛星(BS)の電波(円偏波)と異なっているが、一台のパラボラアンテナによって、前記水平偏波および垂直偏波の直線偏波を受信する必要があるため、前記水平偏波および垂直偏波共用一次放射器が使用され、同水平偏波および垂直偏波共用一次放射器から水平偏波信号と垂直偏波信号とを選択して取り出すことができるようにしている。」(2頁1欄47行目〜2欄6行目)
ロ.「【実施例】以下に、本発明による一実施例を図を用いて説明する。図1に示すように本発明による直線偏波受信装置は、一端に電磁波導入用の開口部1を設け、他端にショート面7を介して方形導波管5を結合した円形導波管2と、前記ショート面7に結合用スリット6を形成し、前記円形導波管2の管軸と直交する所要位置に配置され前記円形導波管2の外部から内部に前記スリット6の長手方向と一致するようにして挿入された垂直偏波受信用プローブ3と、前記方形導波管5の断面と等しい大きさで、且つ、長手方向が前記円形導波管2の管軸方向と一致する開口部14を有し、同開口部14が前記方形導波管5の断面と一致するように前記方形導波管5内に係合されると共に前記円形導波管2の管壁に沿った方向に保持された基板4と、前記開口部14の長手方向の中央部から前記開口部の中央に突出した垂直偏波受信用プローブ8とで構成される。」(3頁3欄、段落6)

上記周知例1の記載によれば、「衛星放送受信用コンバータにおいて、円形導波管に結合用スリットを介して正方形導波管を直接接続する」技術手段は周知である。

C.また、原審の拒絶理由通知書に引用された特開平9-46102号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項イ〜ニが記載されており、また、例えば、特開平5-226906号公報(以下、「周知例3」という。)には図面とともに以下の事項ホ〜ヘが記載されている。
イ.「入力された電磁波を伝送する導波管と、
少なくとも一方の面にストリップラインが形成され、端部が上記導波管の内部に導波管軸に対して直交するように挿入されている配線基板と、
上記導波管の内部に挿入されている配線基板上に水平偏波用のチャンネル信号を受信する第1のプローブと、
上記導波管の内部に挿入されている配線基板上に垂直偏波用のチャンネル信号を受信する第2のプローブと、
上記導波管の内部に挿入されている配線基板上に一端部が上記導波管の壁面に接続されて形成される第3のプローブと、
上記第1のプローブで受信された水平偏波用のチャンネル信号、及び第2のプローブで受信された垂直偏波用のチャンネル信号をダウンコンバートするコンバータと、
を備えて構成されることを特徴とするマイクロ波受信用コンバータ。」(2頁1欄、【請求項3】)
ロ.「なお、このプローブP1、P2は導波管8内を伝播されている水平偏波、又は垂直偏波の電界と略一致するように配置されているため、プローブP1、P2がほぼ90度の角度となるように配置されている。」(5頁7欄、段落26)
ハ.「さらに、本実施例の形態では図4(b)に示すように配線基板9の表面上に擬似プローブとしてプローブ3を形成するようにしている。このプローブ3はプローブ1及びプローブ2と例えば135度をなす位置に配置し、導波管9の壁面とほぼ径が同一されるアース導体10cと一端を接するように接続する。」(5頁7欄、段落30)
ニ.「【発明の効果】以上説明したように本発明の伝送線路導波管変換器によれば、導波管内に挿入されている配線基板上に第3のプローブを配置することで、導波管内を伝播される電磁波の電界の乱れを防止することができるため、第1のプローブ及び第2のプローブの電磁気的な結合を弱めることが可能になり、交差偏波識別度の悪化を防止することができる。
また、導波管軸に対して直交するように挿入された配線基板上に水平偏波成分及び垂直偏波成分の信号を受信するプローブを形成することができるため、このような伝送線路導波管変換器を用いれば小型化されたマイクロ波受信用コンバータ及び衛星放送受信アンテナを実現することができる。」(5頁7欄〜8欄、段落32)

ホ.「【作用】つまり、2個のプローブ及びスタブが同一平面上に配置され小形化が図られるだけでなく、スタブが上記2個のプローブの相互に対し45度の角度に沿って設けられることで、両プローブ間の交差偏波特性が向上されるようになる。」(2頁2欄、段落10)
ヘ.「前記図1におけるプローブ間結合構造でのスタブ11は、第1のプローブ7と第2のプローブ9との二等分線が示す対面の管壁に対して、該二等分線と同軸上に直立配置して構成したが、図2で示すように、スタブ12は、第1のプローブ7と第2のプローブ9との間の相互に等角度となる45度の位置に対応して挿入立設して構成してもよい。」(3頁3欄〜4欄、段落18)

上記周知例2、3の記載によれば、「衛星放送受信用コンバータにおいて、導波管の軸線に垂直な平面上に、直交するように配置された2本のプローブと、前記2本のプローブと例えば135度をなす位置に配置され、導体によって形成されるスタブを設けることにより、装置の小型化を図るとともに、交差偏波特性の改善を図る」構成は周知であり、上記周知例3の記載によれば、スタブを設ける位置は対面ではなく2本のプローブと45度をなす位置も含まれるものである。

D.また、原審の拒絶理由通知書に引用された実公昭40-19291号公報(以下、「周知例4」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「第3図乃至第5図は本考案を正方形の導波管に適用した場合の実施例で、第3図は正方形導波管1の片隅に金属製薄板または誘電体板2を挿入した場合、第4図は断面L形の金具2’を挿入した場合で何れの場合も薄板2または金具2’の長さを調整することにより交叉偏波特性を補償することができる。・・・(中略)・・・
なお導波管が円形の場合には第6図に示すようにマイクロ波の入射電界EV,EHに対し適当な角度θ傾いた位置に金属板または誘電体2をはり付け、前記金属板または誘電体の長さ、幅及び取付角度θを適当に選択することにより交叉偏波特性を補償することができる。」(1頁右欄10〜27行目)

上記周知例4の記載によれば、「円形導波管の入射電界EV,EHに対し適当な角度θ(例えば、45度またはその倍数度)傾いた位置と正方形導波管の隅部は交差偏波特性を補償する上で同等な位置である」ことは周知である。

[対比・判断]
補正後の発明と引用発明とを対比すると、補正後の発明の「一方の端部が前記第1の導波管に直接接続され」という構成と引用発明の「一方の端部が前記第1の導波管にインピーダンス変換器を介して接続され」という構成はいずれも「一方の端部が前記第1の導波管に所定の態様で接続され」という構成であるという点で一致している。
また、補正後の発明の「前記第2の導波管の軸線に垂直な平面上に、直交するように配置された2本のプローブ」の構成と引用発明の「前記第2の導波管の軸線に垂直に、直交するように配置された2本のプローブ」の構成はいずれも「前記第2の導波管の軸線に垂直に、直交するように配置された2本のプローブ」であるという点で一致している。
したがって、補正後の発明と引用発明は、
「一方の端部が一次放射器に接続される第1の導波管と、
一方の端部が前記第1の導波管に所定の態様で接続され、他方の端部が閉塞され、軸線に垂直な断面において前記第1の導波管と形状が異なる第2の導波管と、
前記第2の導波管の軸線に垂直に、直交するように配置された2本のプローブと、
を含む衛星放送受信用コンバータ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点1)「一方の端部が前記第1の導波管に所定の態様で接続され」という構成に関し、補正後の発明は「一方の端部が前記第1の導波管に直接接続され」という構成であるのに対し、引用発明は「一方の端部が前記第1の導波管にインピーダンス変換器を介して接続され」という構成である点。
(相違点2)「前記第2の導波管の軸線に垂直に、直交するように配置された2本のプローブ」に関し、補正後の発明は「前記第2の導波管の軸線に垂直な平面上に、直交するように配置された2本のプローブ」であるのに対し、引用発明は「前記第2の導波管の軸線に垂直に、直交するように配置された2本のプローブ」である点。
(相違点3)「衛星放送受信用コンバータ」に関し、補正後の発明は「前記2本のプローブが突出する2つの辺が交わるコーナーと、該コーナーに対向するコーナーとに設けられ、導体によって形成される導波管窓とを含む」構成であるのに対し、引用発明はその点の構成を備えていない点。

そこで、まず、上記相違点1について検討するに、例えば上記周知例1に記載されているように、「衛星放送受信用コンバータにおいて、円形導波管に結合用スリットを介して正方形導波管を直接接続する」技術手段は周知であるところ、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、円形導波管と正方形導波管間のインピーダンス整合をとる必要のない場合に、引用発明のインピーダンス変換器を省き、「直接接続」するように変更する程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。
ついで、上記相違点2及び3について検討するに、例えば上記周知例2、3の記載によれば、「衛星放送受信用コンバータにおいて、導波管の軸線に垂直な平面上に、直交するように配置された2本のプローブと、前記2本のプローブと例えば135度をなす位置に配置され、導体によって形成されるスタブを設けることにより、装置の小型化を図るとともに、交差偏波特性の改善を図る」構成は周知であり、上記周知例3の記載によれば、スタブを設ける位置は対面(即ち、135度)ばかりでなく、2本のプローブと45度をなす位置も含まれるものである。更に、上記周知例4の記載によれば、「円形導波管の入射電界EV,EHに対し適当な角度θ(例えば、45度またはその倍数度)傾いた位置と正方形導波管の隅部は交差偏波特性を補償する上で同等な位置である」ことも周知である。そして、プローブ及び交差偏波特性の改善に関するこれらの周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明の「前記第2の導波管の軸線に垂直に、直交するように配置された2本のプローブ」を導波管と同型(即ち、正方形)の平面上に形成することにより本願発明のような「前記第2の導波管の軸線に垂直な平面上に、直交するように配置された2本のプローブ」として装置の小形化を図るとともに、交差偏波特性の改善を図るために正方形導波管の両隅部に対応する位置に導体を配置することにより本願発明のように「前記2本のプローブが突出する2つの辺が交わるコーナーと、該コーナーに対向するコーナーとに設けられ、導体によって形成される導波管窓とを含む」構成を付加する程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。

したがって、補正後の発明は上記引用例に記載された発明及び周知例1〜4に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が独立特許要件を満たしていないので、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第4項の規定に違反するから、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成14年12月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「一方の端部が一次放射器に接続される第1の導波管と、
一方の端部が前記第1の導波管に直接接続され、他方の端部が閉塞され、軸線に垂直な断面において前記第1の導波管と形状が異なる第2の導波管と、
前記第2の導波管の軸線に垂直な平面上に、直交するように配置された2本のプローブとを含む衛星放送受信用コンバータ。」

2.引用発明及び周知技術
引用発明及び周知技術は、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項中の[引用発明及び周知技術]の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から、「前記2本のプローブが突出する2つの辺が交わるコーナーと、該コーナーに対向するコーナーとに設けられ、導体によって形成される導波管窓」の構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に前記構成を付加した補正後の発明が上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び周知例1〜3に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明ならびに上記周知例1〜4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-01 
結審通知日 2005-03-08 
審決日 2005-03-23 
出願番号 特願平11-279600
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01P)
P 1 8・ 121- Z (H01P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新川 圭二  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 野元 久道
浜野 友茂
発明の名称 衛星放送受信用コンバータ  
代理人 酒井 將行  
代理人 深見 久郎  
代理人 野田 久登  
代理人 仲村 義平  
代理人 森田 俊雄  
代理人 堀井 豊  

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