• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1116790
審判番号 不服2003-22214  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-14 
確定日 2005-05-11 
事件の表示 平成 9年特許願第231411号「冷蔵庫の冷気供給装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月31日出願公開、特開平10- 82572〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年8月27日の出願であって(パリ条約による優先権主張1996年8月27日、韓国)、平成15年8月12日付け(発送日:同年8月19日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月14日に審判請求がなされるとともに、同日に手続補正がなされたものである。

2.平成15年11月14日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年11月14日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲は、次のとおりに補正された。

「【請求項1】 冷凍室で発生された冷気を冷蔵室に供給する冷蔵室ダクトと、前記冷蔵室に設置された複数個の棚によって区分される各領域に冷気を独立的に供給するため前記冷蔵室ダクトを分岐した複数の冷気ダクトと、前記各領域に設置される多数の温度センサーと、前記冷蔵室ダクトに設置されて前記各領域に供給される冷気を制御する冷気分配装置と、前記温度センサーによって感知された温度値と各領域別に設定された温度値を比べて前記冷気分配装置を制御する制御部とを含んでなり、前記冷気分配装置は前記冷蔵室ダクトを2つの冷気ダクトに分離する垂直分離板と、該垂直分離板と同一軸線上に位置する回転軸に設けられて前記分離された2つの冷気ダクトを開閉する調節板と、前記回転軸に結合したモータとよりなり、前記制御部からの信号により前記モータを介して前記調節板の角度を調節することにより各冷気ダクトに供給される冷気量を調節可能としたことを特徴とする冷蔵庫の冷気供給装置。
【請求項2】 冷凍室で発生された冷気を冷蔵室に供給する冷蔵室ダクトと、前記冷蔵室に設置された複数個の棚によって区分される各領域に冷気を独立的に供給するため前記冷蔵室ダクトを分岐した複数の冷気ダクトと、前記各領域に設置される多数の温度センサーと、前記冷蔵室ダクトに設置されて前記各領域に供給される冷気を制御する冷気分配装置と、前記温度センサーによって感知された温度値と各領域別に設定された温度値を比べて前記冷気分配装置を制御する制御部とを含んでなり、前記冷蔵室ダクトは一組の分離板によって中央案内ダクトと、共通案内ダクトと、下部案内ダクトに分離され、上記冷気分配装置は、直径方向の調整板と外周円部分に前記共通案内ダクト及び下部案内ダクトを同時に塞ぐことができる2つの遮断リブを具備して外周円が開口された回転可能な円筒形の冷気分配アセンブリで構成され、該冷気分配アセンブリの回転位置を調節することにより各案内ダクトに供給される冷気量を調節可能としたことを特徴とする冷蔵庫の冷気供給装置。
【請求項3】 冷凍室で発生された冷気を冷蔵室に供給する冷蔵室ダクトと、前記冷蔵室に設置された複数個の棚によって区分される各領域に冷気を独立的に分岐して供給するための複数個の冷気吐出孔と、前記各領域に設置される多数の温度センサーと、前記冷蔵室ダクトから上記各領域に供給される冷気を制御する冷気分配装置と、前記、温度センサーによって感知された温度値と各領域別に設定された温度値を比べて前記冷気分配装置を制御する制御部とを含んでなり、前記冷気分配装置は、前記冷蔵室ダクトの前面に上下摺動可能に設けられたスライダーよりなり、該スライダーには前記冷蔵室ダクトの冷気吐出孔を選択開閉可能な選択孔が設けられ、該スライダーの位置を調節することにより各冷気吐出孔から供給される冷気量を調節可能としたことを特徴とする冷蔵庫の冷気供給装置。
【請求項4】 冷凍室で発生された冷気を冷蔵室に供給する冷蔵室ダクトと、前記冷蔵室に設置された複数個の棚によって区分される各領域に冷気を独立的に供給するための複数個の冷気吐出孔と、前記各領域に設置される多数の温度センサーと、前記冷蔵室ダクトが冷気ダクトに分岐される地点に設置されて上記各領域に供給される冷気を制御する冷気分配装置と、前記温度センサーによって感知された温度値と各領域別に設定された温度値を比べて上記冷気分配装置を制御する制御部を含んでなり、前記冷気分配装置は、2つの冷気ダクトを開閉する1組のバッフルを備え、該バッフルの一方が全開のときは他方は全閉となり、一方が全閉のときは他方は全開となるように構成され、該バッフルの位置を調節することにより各冷気吐出孔から供給される冷気量を調節可能としたことを特徴とする冷蔵庫の冷気供給装置。」

(2)補正の適否
本件補正前の請求項1ないし4と、本件補正後の請求項3とを比較すると、本件補正により、各領域に冷気を独立的に分岐して供給するための複数個の「分岐ダクト」が「冷気吐出孔」に変更され、また、各領域に供給される冷気を制御する制御手段(補正後の「冷気分配装置」)の設置地点が、「冷気ダクトと分岐ダクトが会う地点」から「冷蔵室ダクトの前面」に変更されている。

したがって、本件補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではなく、また、請求項の削除を目的とするものでも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでも、誤記の訂正を目的とするものでもない。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年11月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、同年7月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。

「【請求項1】 冷凍室で発生された冷気を冷蔵室に供給する冷気ダクトと、冷蔵室に設置された複数個の棚によって区分される各領域に冷気を独立的に分岐して供給するための複数個の分岐ダクトと、冷蔵室に設置された複数個の棚によって区分される各領域に設置される多数の温度センサーと、上記冷気ダクトと分岐ダクトが会う地点に設置されて独立的に上記各領域に供給される冷気を制御する制御手段と、上記温度センサーによって感知された温度値と各領域別で設定された温度値を比べて上記制御手段を制御する制御部を含んで構成された冷蔵庫の冷気供給装置。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した特開平5-93571号公報には、図面とともに次の記載がある。

・「【0002】
【従来の技術】強制通風方式の冷蔵庫において、近年、特に冷蔵室内をより均一に冷却する目的で、冷却ダクトを改善した例が増えている。例えば、特開平1-189477号公報に示される例がそれであり、以下図5に従い説明する。
【0003】1は冷蔵庫本体で外箱2,内箱3および前記外箱2,内箱3間に充填された断熱材4により構成されている。5は前記冷蔵庫本体1の内部を上下に仕切る区画壁であり、上部に冷凍室6、下部に冷蔵室7を仕切って形成している。冷蔵室7内は棚8によって複数のゾーン9に区画されている。
【0004】10は前記冷蔵庫本体1の底部後方に収めた冷凍サイクルの圧縮機である。11は前記冷凍室6の背面に収めた冷凍サイクルの冷却器であり、12は前記冷却器10で冷却した冷気を前記冷凍室9および冷蔵室7に強制通風するための送風機である。
【0005】13は前記冷蔵室7に冷気を導くための通風ダクト、14は前記冷蔵室7の入口に設けて電気的入力で冷気流入量を調節するダンパ装置(以下電動ダンパ14という)である。15は前記電動ダンパ14より前記各ゾーン9に連通する吐出ダクトであり、16はそれぞれのゾーン9に開口した吐出口である。17,18はそれぞれ前記冷凍室6,冷蔵室7内に設けた温度サンサである。」

・「【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明の冷蔵庫は、ダンパ装置から各ゾーンへの吐出ダクトを第1,第2に二分し、第1の吐出ダクトは各ゾーンに直接連通させ、第2の吐出ダクト内の中間には各ゾーンの吐出口に向けて選択的に風向を切り換える風向切換装置と強制送風用の補助送風機を設けるとともに、各ゾーン内にそれぞれ個別に温度検知手段を設けて、それぞれの温度検知手段の出力に基づいてダンパ装置,風向切換装置および補助送風機を制御する制御手段を付加するものである。
【0012】
【作用】本発明は上記した構成によって、通常冷却時は第1の吐出ダクトを通じてダンパ装置により冷気量が調節され冷蔵室内全体が所定の温度に冷却される。一方、いずれかのゾーンの温度が上昇すると、温度検知手段が検知してダンパ装置が開放するとともに風向切換装置,補助送風機が作動し、第2の吐出ダクトを介して、そのゾーンの吐出口に向けて選択的に冷気が供給され、集中的に冷却作用が行われる。そして、そのゾーン内の温度が低下すると温度検知手段が検知してダンパ装置が閉塞するものである。」

・「【0013】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図1から図4に従い説明する。なお、従来と同一構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。
【0014】9a,9b,9cは冷蔵室7内に区画された各ゾーンであり、18a,18b,18cはそれぞれ前記各ゾーン9a,9b,9c内の一画に設けられた温度検知手段(以下温度センサ18a,18b,18cという)である。19は電動ダンパ14より前記各ゾーン9a,9b,9cに直接連通する第1の吐出ダクトであり、20a,20b,20cはそれぞれの第1の吐出口である。
【0015】21は前記第1の吐出ダクト19と並列に配置されて前記各ゾーン9a,9b,9cに連通する第2の吐出ダクトであり、22a,22b,22cはそれぞれの第2の吐出口である。23は前記第2の吐出ダクト21内の中間に設けた風向切換装置であり、24は前記電動ダンパ14と風向切換装置23の中間に設けた補助送風機である。」

・「【0017】次に制御関係について説明する。27はマイクロコンピュータなどよりなる制御手段(以下マイクロコンピュータ27という)であり、前記風向切換装置23の作動タイムセーフ時間T(例えば1min)をカウントするタイマ28などが内蔵されている。
【0018】前記マイクロコンピュータ27の入力端子には冷凍室の温度センサ17、冷蔵室内の各ゾーンに対応する温度センサ18a,18b,18cが接続され、出力端子には圧縮機10,送風機12,電動ダンパ14,風向切換装置23,補助送風機24とそれらを駆動するための電磁リレーなどの駆動手段が接続されている。」

・「【0023】一方、STEP7で各ゾーン9a,9b,9c内のうち、いずれか一つのゾーンの温度、すなわち温度センサ18a,18b,18cのいずれかが所定値t5℃より高いか低いかを判断し、低ければSTEP3で高くなるまで待機する。STEP3で温度が高いと判断されると、STEP8に移り、電動ダンパ14が開放され、送風機12および補助送風機24が同時に運転される。このため第2の吐出ダクトを介して第2の吐出口22a,22b,22cより各ゾーン9a,9b,9c内に連続的に、かつ十分な風量で冷気が強制的に通風される。
【0024】これと同時にSTEP8では、風向切換装置23が食品の収納などで温度の上昇したゾーン(例えばゾーン9aとする)の方向に向けて回転し、送風機12および補助送風機24によって多量に通風される冷気が、第2の吐出口22aを介してゾーン9a内に集中的に送り込まれる。そして、新たに収納された食品を短時間で冷却するとともに、ゾーン9a内の既存食品の温度上昇を抑制する。」

・「【0027】このように、一つのゾーンのみが例えば食品の収納などで通常の状態よりも大きく温度上昇した場合は、風向切換装置23によって選択的にそのゾーンのみを連続して集中的に冷却し、複数のゾーンが同時に温度上昇した場合は、所定時間ごと交互に風向切換装置23で風向を切り換えて自動的に冷却配分されることになる。」

これらの記載及び図面を参照すると、引用例には次の発明が記載されている(以下、「引用例発明」という。)。

「冷凍室で発生された冷気を冷蔵室に供給する通風ダクトと、冷蔵室に設置された複数個の棚によって区分される各ゾーンに冷気を供給するための第1の吐出ダクト及び第2の吐出ダクトと、冷蔵室に設置された複数個の棚によって区分される各ゾーンに設置される多数の温度センサと、上記各領域に供給される冷気を制御する電動ダンパ、及び第2の吐出ダクトに設けた風向切換装置、補助送風機と、上記温度センサによって感知された温度値と各ゾーン別で設定された温度値を比べて上記電動ダンパ、及び第2の吐出ダクトに設けた風向切換装置、補助送風機を制御する制御手段を含んで構成された冷蔵庫の冷気供給装置。」

(3)対比
本願発明と上記引用例発明とを比較する。

引用例発明の「通風ダクト」は本願発明の「冷気ダクト」に相当し、以下同様に「ゾーン」は「領域」に、「温度センサ」は「温度センサー」に、「電動ダンパ、及び第2の吐出ダクトに設けた風向切換装置、補助送風機」は「制御手段」に、また、「制御手段」は「制御部」に相当する。

したがつて、両者は、

「冷凍室で発生された冷気を冷蔵室に供給する冷気ダクトと、冷蔵室に設置された複数個の棚によって区分される各領域に冷気を供給するためのダクトと、冷蔵室に設置された複数個の棚によって区分される各領域に設置される多数の温度センサーと、上記各領域に供給される冷気を制御する制御手段と、上記温度センサーによって感知された温度値と各領域別で設定された温度値を比べて上記制御手段を制御する制御部を含んで構成された冷蔵庫の冷気供給装置。」の点で一致し、

次の点で相違する。

[相違点]
本願発明は、「各領域に冷気を独立的に分岐して供給するための複数個の分岐ダクト」、及び、「冷気ダクトと分岐ダクトが会う地点に設置されて独立的に各領域に供給される冷気を制御する制御手段」を有するのに対して、引用例発明は、「各領域に冷気を供給するための第1の吐出ダクト及び第2の吐出ダクト」を有するが、本願発明に係る分岐ダクトは有しておらず、また、「各領域に供給される冷気を制御する制御手段(電動ダンパ、及び第2の吐出ダクトに設けた風向切換装置、補助送風機)」を有するが、これらの制御手段は、本願発明のように「冷気ダクトと分岐ダクトが会う地点に設置されて」おらず、「独立的に各領域に供給される冷気を制御する」ものではない点。

(4)相違点についての判断
引用例発明において、第1の吐出ダクト、電動ダンパ、及び第2の吐出ダクトに設けた補助送風機がなくても、各領域に冷気を供給できることから、これらを削除し、第2の吐出ダクトを用いて各領域に冷気を供給するとともに、該第2の吐出ダクトに設けた風向切換装置により各領域に供給される冷気を制御すること、更に、風向切換装置を通風ダクトと第2の吐出ダクトが会う地点に設置することは、当業者が適宜なし得た設計事項である。

また、冷気を分岐ダクトにより供給することが従来周知であることから(例えば、原査定の拒絶の理由で引用した特開平2-21076号公報を参照。)、引用例発明において、風向切換装置で風向を切換えた冷気を複数個の分岐ダクトにより独立して各領域に供給することは、当業者が容易に想到し得たことである。

したがつて、引用例発明において、上記相違点に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例に記載された事項、及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用例に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-08 
結審通知日 2004-12-14 
審決日 2004-12-27 
出願番号 特願平9-231411
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F25D)
P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長崎 洋一  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 長浜 義憲
櫻井 康平
発明の名称 冷蔵庫の冷気供給装置  
代理人 樋口 外治  
代理人 鶴田 準一  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ