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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07B
管理番号 1116866
審判番号 不服2004-1167  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-15 
確定日 2005-05-12 
事件の表示 平成 8年特許願第279077号「乗車券処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月15日出願公開、特開平10-124718〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年10月22日の出願であって、平成15年12月12日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月13日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年2月13日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年2月13日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 係員によって操作される乗車券処理装置本体に挿入された定期券の前科データ記録部の中から、その定期券が不正使用されたときの内容の前科データを抽出する抽出手段と、
抽出された前科データを表示画面に表示して、又はプリンタを用いて印字して出力する出力手段と、
前記乗車券処理装置本体に定期券が不正使用されたときの内容の前科データを係員操作により入力する入力手段と、
不正使用された定期券を前記乗車券処理装置本体に挿入して、入力された前科データをその定期券に設けられている前科データ記録部に書込む書込手段と、
を有することを特徴とする乗車券処理装置。」と補正された。
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項2及び3を一つにして新たな請求項1としたものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際、独立して特許を受けることができたものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由には、次の刊行物が引用された。
引用刊行物:特開平5-238183号公報

(3)引用刊行物に記載されている事項
上記引用刊行物には、定期券を用いた不正行為を的確に防止できるようにした定期券とその自動改札機に関して、図面とともに、次の事項の記載が認められる。
・「定期券の不正乗車行為の共通特徴が同一駅で繰返し改札使用されることに着目し、この同一駅の改札回数を券面に表示させる表示機能を定期券に持たせることで、不正乗車使用に対しても、その不正乗車行為を的確に検出して、定期券の不正行為を確実に防止できるようにした定期券とその自動改札機の提供を目的とする。」(段落【0004】)
・「定期券を用いて不正乗車行為がなされたとき、この定期券は同一駅で連続的に2回以上改札されることになり、この連続使用された不正乗車毎に、券面の書換え表示部にその不適な改札利用データを書込み手段が書換えて表示させる。」(段落【0006】)
・「図2はこの自動改札機に使用される定期券21を示し、この定期券21は表面に印刷した乗車区間、有効乗車期日、価格、氏名、年齢等の所要の定期券表示事項の他に、該定期券表面の例えば右下隅部に不正乗車行為検出用の書換え表示部22を備えている。」(段落【0010】)
・「この書換え表示部22は、左右に小さく入場データ欄23と出場データ欄24を区画して設け、これらデータ欄23、24をさらに駅コード番号欄23a、24aと、入場日時欄23b・出場日時欄24bと、同駅連続入場回数欄23c・同駅連続出場回数欄24cとに詳細に区画して設け、定期券21を不正乗車利用した場合に、この書換え表示部22にその詳細な不正乗車データを書込んで明示させる。これにより、定期券21自体に不正乗車行為の証明を自動的に持たせることができ、この定期券21に対しては係員が、この書換え表示部22をチェックするだけで容易に不正乗車を検出できる。」(段落【0011】)
・「図5は自動改札機の制御回路ブロック図を示し、CPU51はROM52に格納されたプログラムに沿って各回路装置を制御し、その制御データをRAM53に読出し可能に記憶する。」(段落【0015】)
・「次に、この発明の定期券を用いた改札処理動作を図14のフローチャートを参照して説明する。 今、定期券21が自動改札機の乗車券投入口13に投入されると(ステップn1)、この投入された定期券21は、この改札機内部で磁気ヘッド54により該定期券に記録された有効乗車データが読取られると共に、入場した「入場駅」とその時の「入場日時」が磁気書込みされる(ステップn2〜ステップn4)。」(段落【0031】)
・「このとき、CPU51は当駅での入場・出場回数が連続して2回以上か否かを判定し、連続使用されていない適正な定期券と判定した場合は正常に取扱い、この定期券を乗車券放出口14より放出して、定期券による改札処理が終了する(ステップn5〜n8)。」(段落【0032】)
・「ところで、CPU51が、当駅での入場・出場回数が連続して2回以上なされた定期券と判定した場合は、不正乗車行為がなされた定期券として取扱い、サーマルヘッド55側に導き、書換え表示部22を対応させる。このとき、定期券が裏面で導かれた場合は表裏反転して同じくサーマルヘッド55に定期券21の書換え表示部22を対応させて、駅コード番号欄23a,24a、入場日時欄23b・出場日時欄24b、同駅連続入場回数欄23c・同駅連続出場回数欄24cに、このときの入出場データを書込んだ後、乗車券放出口14より放出する(ステップn9〜n12)。」(段落【0033】)
・「したがって、係員が定期券の書換え表示部22をチェックするだけで、乗車使用状態の適・不適が明確に分かり、不正乗車使用された定期券の場合には、明瞭に定期券の不正乗車利用であることが判明する。このため、顧客に対しては不正乗車行為を抑制して定期券の正常な運用促進が図れ、定期券および自動改札機の無人化利用に適した信頼性の高い管理ができる。」(段落【0034】)

(4)対比・判断
引用刊行物には、上記摘示した事項からみて、次の発明が記載されているものと認められる。
「CPU51によって、自動改札機に挿入された定期券21の書換え表示部22の中から、その定期券21が不正に使用されたときの内容である同駅連続入場回数欄23c・同駅連続出場回数欄24cの回数が2以上か否かを判定し、不正使用かを判定する判定手段と、
判定された同駅連続入場回数欄23c・同駅連続出場回数欄24cの2以上の回数を定期券21の書換え表示部22に表示する表示手段と、
前記自動改札機に定期券21が不正使用されたときの内容の同駅連続入場回数欄23c・同駅連続出場回数欄24cの回数をCPU51により処理する処理手段と、
不正使用された定期券21を自動改札機に挿入して、処理された同駅連続入場回数欄23c・同駅連続出場回数欄24cの回数をその定期券に設けられている書換え表示部22に書き込む手段と、
を有する自動改札機。」

そして、引用刊行物に記載されている「自動改札機」は、入場時、出場時に、乗車券である定期券21の有効乗車データを読み取り、当駅での入場、出場回数を判定して、適正使用の定期券か、不正使用の定期券かを判定して改札処理するものであるから「乗車券処理装置」ともいうことができる。また、CPU51は、「当駅での入場・出場回数が連続して2回以上なされた定期券と判定した場合は、不正乗車行為がなされた定期券として取扱い、」として処理するものであるから、入場・出場回数をCPU51によって電子的に抽出処理しているものと認められ、また、「同駅連続入場回数欄23c・同駅連続出場回数欄24c」の2回以上の表示は、以前に不正乗車行為がなされたことを示しているものであるから、この2回以上の表示あるものは前科があり、これを表示している書換え表示部22は、「前科データ記録部」ということもできる。

そうすると、引用刊行物に記載された発明の「自動改札機」は、本件補正発明の「乗車券処理装置」に相当し、引用刊行物に記載された発明の「書換え表示部22」は、本件補正発明の「前科データ記録部」に相当し、同じく「同駅連続入場回数欄23c・同駅連続出場回数欄24cの回数」は、「前科データ」に相当しているものといえるから、両者は、次の点で一致しているものといえる。
「乗車券処理装置本体に挿入された定期券の前科データ記録部の中から、その定期券が不正使用されたときの内容の前科データを抽出する抽出手段と、
前記乗車券処理装置本体に定期券が不正使用されたときの内容の前科データを処理する処理手段と、
不正使用された定期券を前記乗車券処理装置本体に挿入して、前科データをその定期券に設けられている前科データ記録部に書込む書込み手段と、
を有する乗車券処理装置。」

しかし、次の点で相違している。
・相違点1:抽出手段が、本件補正発明では、「係員によって操作される」のに対し、引用刊行物に記載された発明では、「CPU51によって電子的に抽出処理している」点。
・相違点2:抽出手段によって抽出された前科データが、本件補正発明では、乗車券処理装置の「表示画面に表示して、又はプリンタを用いて印字して出力する出力手段」にてなされるのに対し、引用刊行物に記載された発明では、定期券21の書換え表示部22の同駅連続入場回数欄23c・同駅連続出場回数欄24cに表示してなされている点。
・相違点3:前科データを処理する処理手段が、本件補正発明では、「係員操作により入力する入力手段」であるのに対し、引用刊行物に記載された発明では、「CPU51が、当駅での入場・出場回数が連続して2回以上なされた定期券と判定した場合は、不正乗車行為がなされた定期券として取扱い、」とするように、CPU51によって判定し電子的に処理している点。
・相違点4:前科データ記録部に書込む書込み手段によって書込まれる前科データが、本願補正発明では、係員操作によって「入力された前科データ」であるのに対し、引用刊行物に記載された発明では、「CPU51が、当駅での入場・出場回数が連続して2回以上なされた定期券と判定した場合は、不正乗車行為がなされた定期券として取扱い、サーマルヘッド55側に導き、書換え表示部22を対応させる。」としているように、CPU51によって判定し電子的に処理するものである点。

そこで、この相違点を検討する。
・相違点1について
引用刊行物に記載された発明において、不正乗車行為がなされた定期券は、「当駅での入場・出場回数が連続して2回以上」として、その判定基準を定めている。不正使用されたものを抽出するには、不正乗車行為の判定基準に基づいておこなわれるものであるから、該判定基準に基づいて、係員によって操作されるか、係員によらず、CPU51によって電子的に抽出処理するかは、設計上の事項であって、係員によって操作されるようにすることは、当業者が容易になし得たというべきである。
・相違点2について
一般にデータ処理装置において、処理すべきデータを画面に表示出力したり、又はプリンタを用いて印字出力することは常套手段であり、そのような手段を装置本体に設けることは、当業者が必要に応じて適宜なし得たというべきである。
・相違点3について
相違点1と同様に、不正乗車行為がなされた判定基準を基にして、前科データの入力がなされるものであるから、その前科データの入力操作を、係員操作によってするか、係員によらず、CPU51によって電子的に判定し入力するものにするかは、設計上の事項であって、係員操作により入力する入力手段とすることは、当業者が容易になし得たというべきである。
・相違点4について
相違点3と同様に、不正乗車行為がなされた判定基準を基にして、前科データを前科データ記録部に書込むものであるから、該判定基準に基づいて、その書込みを、係員操作によって「入力された前科データ」とするか、係員によらず、CPU51によって電子的に判定するものとするかは、設計上の事項であって、係員操作によって「入力された前科データ」とすることは、当業者が容易になし得たというべきである。

そして、本願補正発明による効果についても、引用刊行物に記載された発明から当業者が予測し得たものである。

したがって、本件補正発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年2月13日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成15年7月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである。(以下、【請求項1】に係る発明を「本願発明1」という。)

「【請求項1】 乗車券本体に、その乗車券本体が不正使用されたときにその不正使用されたことを示す内容を係員によって操作される乗車券処理装置により記録するための前科データ記録部を設けたことを特徴とする乗車券。
【請求項2】 係員によって操作される乗車券処理装置本体に挿入された乗車券の前科データ記録部の中から、その乗車券が不正使用されたときの内容の前科データを抽出する抽出手段と、
抽出された前科データを表示画面に表示して、又はプリンタを用いて印字して出力する出力手段と、
を有することを特徴とする乗車券処理装置。
【請求項3】 係員によって操作される乗車券処理装置本体に乗車券が不正使用されたときの内容の前科データを入力する入力手段と、
不正使用された乗車券を前記乗車券処理装置本体に挿入して入力された前科データをその乗車券に設けられている前科データ記録部に書込む書込手段と、
を有することを特徴とする乗車券処理装置。」

(1)引用刊行物及びそれに記載されている事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は、前記「2.(2)引用刊行物」に示したものであり、その引用刊行物には、前記「2.(3)引用刊行物に記載されている事項」に記載したとおりものが記載されている。

(2)対比・判断
本願発明1と引用刊行物に記載されている発明とを、上記「2.(4)対比・判断」で検討したことも参酌して、検討すると、引用刊行物に記載された発明の、「定期券21」、「定期券を用いて不正乗車行為がなされたとき、この定期券は同一駅で連続的に2回以上改札されることになり、この連続使用された不正乗車毎に、券面の書換え表示部にその不適な改札利用データ」、「自動改札機」、「書換え表示部22」は、それぞれ本願発明1の「乗車券」、「乗車券本体が不正使用されたときその不正使用されたことを示す内容」、「乗車券処理装置」、「前科データ記録部」に相当しているから、両者は、次の点で一致しているものといえる。
「乗車券本体に、その乗車券本体が不正使用されたときにその不正使用されたことを示す内容を乗車券処理装置により記録するための前科データ記録部を設けた乗車券。」

しかし、次の点で相違している。
・相違点:不正使用されたことを示す内容を乗車券処理装置により記録する操作が、本願発明1では「係員によって操作される」のに対し、引用刊行物に記載された発明では、CPU51によって電子的に判定し処理している点。

そこで、この相違点を検討する。
引用刊行物に記載された発明では、不正乗車行為がなされた定期券は、「当駅での入場・入場・出場回数が連続して2回以上」として、その判定基準を定めている。不正使用されたものを抽出するには、不正乗車行為の判定基準に基づいておこなわれるものであるから、該判定基準に基づいて、係員によって操作されるか、係員によらず、CPU51によって電子的に判定し処理するかは、設計上の事項であって、係員によって操作されるようにすることは、当業者が容易になし得たというべきである。

そして、本願発明1による効果についても、引用刊行物に記載された発明から当業者が予測し得たものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-08 
結審通知日 2005-03-15 
審決日 2005-03-29 
出願番号 特願平8-279077
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小谷 一郎  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 長浜 義憲
櫻井 康平
発明の名称 乗車券処理装置  
代理人 石井 光正  
代理人 石井 光正  

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